在京大手マスメディアが、安倍晋三時代の悪しき「忖度メディア」の汚名を返上するかのような報道ぶりである。
パーティー裏金疑惑の松野官房長官を更迭へ、首相「役割果たして」から一転・後任調整 読売新聞… pic.twitter.com/Ip0apeCncX
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) December 8, 2023
安倍派幹部6人に裏金疑惑。日本の政治のいかにズレていることか。安倍派一気に弱体化へ
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) December 8, 2023
安倍派幹部6人に裏金か 塩谷・松野・高木・世耕・萩生田・西村氏… pic.twitter.com/J6qz4ONBEs
とりあえず、恒例の「在野のアナリスト」氏の一部を引用する。
[12月2週の動き」
岸田政権の終焉 政治資金パーティーの裏金問題で、岸田政権が死に体です。岸田首相は派閥の長を辞し、パーティーなどを中止するよう要請していますが、何とか延命策を講じても、松野官房長官に疑惑が直撃した以上、もち堪えるのは不可能です。しかも西村経産相など、まだ続々と疑惑を抱えた政治家もいる。西村氏といえば、パソナ政治家。パソナといえば、政治家、官僚を接待攻勢で雁字搦めとし、国からの支援金、補助金事業でぼろ儲け。行政への人材派遣といった受注もパソナが多くを受けもつなど、極めて危ない企業です。その企業が通称、パソナ島と呼ばれる淡路島に本社を移した後も、頻繁に西村氏はお呼ばれしていた、と報じられます。 派閥主催のパーティーでも、このコネは存分に利いたでしょう。つまり西村氏はパソナに買ってもらうことで超過分が多くでたはずで、それが裏金にまわる。政治家、西村を応援してきたパソナだけに、裏金を送りこめるのですから、こんなあり難い仕組みはありません。松野氏の1000万円など、可愛いぐらいの金額が入っていた可能性すらあります。その他でも、続々と安倍派の議員は危ない。自民党最大派閥なので、副大臣・政務官にも多数いる。全員がその対象で、裏金の使途ですら政治家同士で融通していた、つまり政治家同士の資金のやりとりは、安倍派に限らずもっと多くなる可能性があり、事件は拡大し続けるかもしれません。 これは安倍内閣時代、杉田内閣官房副長官が元警察官僚として、行政を牛耳った、もっと悪い言い方をすれば警察を操って罪を逃れさせた、これは意趣返しとなる可能性も高い。つまり当時の警察官で忸怩たる思いを抱いた人は、多くいるでしょう。内閣の圧力で、捜査を中断させられたり、起訴できなかったり。つまり安倍派の捜査は、そのときの恨みが籠められる。心ある警察官こそ、本気でやることになります。 岸田氏の権力欲が、未だに派閥の長を辞す、などという悪あがきをみせますが、下手をすれば年内総退陣。年明けに自民総裁選、来年は別の内閣、という道すら見えてきました。しかし安倍派の一定の方向性がみえないうちに、内閣が消えたら、それこそ警察は一気呵成に捜査の輪を広げてくるでしょう。今回、いくら秘書のせいにしても額が額だけに、政治家が知らないはずがない。しかもその使途さえ、政治家が関与していないはずがない。1000万円を秘書の裁量で、右から左にできるはずもないのですから、政治家にもイイワケができない問題です。その解がみつからないから、松野氏は答弁から逃げ回っています。 いずれにしろ、もう岸田政権で選挙を戦うことはありません。来年の通常国会さえ、まともに開けるかどうか…。自民としては選挙の前に、総裁選で盛り上げて…と考えるところですが、これまでの総裁がそうであるように、自分が総裁となったのにすぐ選挙、はない。でも1年経てば支持率が低下し…のくり返し。つまり自民党重鎮が考える選挙戦術と、総裁選とはまったく合致してこなかった。その結果、麻生政権のように選挙で大敗することになります。果たして総裁選をいつやるか? 自民党は頭が痛いでしょう。 しかも自民党は、政治資金パーティーをほぼ出来ずに選挙をすることになる。実弾がない、もしくは実弾をどこかの企業にださせて…となって、それが後にバレたら今度こそ自民党は終わりです。それぐらい切羽詰まったことになる。これから裏金疑惑が、他の派閥に飛び火しても、それは同様でしょう。しかも朝日新聞が、自公国の提案した旧統一教会の財産保全法が、衆院で通過したタイミングで岸田氏と元米下院議長が面談した際に、旧統一教会の有効団体のトップが同席していた、と報じる。朝日新聞も意趣返し、経営者は事なかれ主義でも、記者の中には未だに気骨をもつ者もいて、こうした大胆な攻撃をしかけてきた。安倍政権時代から狂った歯車、それを修正する動きがそこかしこで起きてきています。岸田氏にそれを裁き切ることなど、到底不可能。いずれにしろジ・エンド。後は幕引きの姿だけが焦点です。 文春砲と大阪万博 文春砲が、大阪万博と吉村大阪府知事を直撃です。吉村氏と昵懇の企業に多額の発注、などですが、政治のムダ削減を訴える維新だけに、余計に深刻度は甚大です。それでいて関西の企業にチケット購入をして、と訴えるのですから、誰もが話がちがう、となるでしょう。2兆円の効果、などと喧伝するのも眉唾。木造の円形ドームもごり押し、など散々です。脇の甘い維新が、愈々ぼろをだしてきた、といったところ。 これまでも吉村氏の醜聞を、関西人は聞き流してきた。まるでそれはジャニーズや宝塚と同じ、ファンだから臭いものに蓋、という危険な態度です。鑑定眼を失わせ、正しく相手を評価することさえ暗くする。むしろ関西人は阪神タイガースなど、入れ込みやすい気質があるのかもしれませんが、だから阪神は滅多に優勝できない、などとされます。つまり関西全体を弱体化させることにつながりかねない、ということです。 万博は橋下元大阪府知事のブレーンだった、堺屋氏の肝いりで招致に動いた、という経緯があります。それに安倍政権が全面的に乗っかった。しかし先週も指摘したように、この招致でさえ日本の裏金が動いていたかもしれない。安倍政権ならやりかねない。つまり2兆円ぐらいの経済効果がないとペイしないぐらい、すでに予算を駄々洩れさせたのかもしれない。堺屋氏は万博ブレーンでもあり、そこへの忖度が働いた、とみてもよいでしょう。つまり当時の安倍氏と、橋下氏の強い結びつきが万博を実現させたのです。 その堺屋氏は『小さな政府』『規制緩和』という路線。それを維新も踏襲しています。しかし万博は明らかに国家事業の肥大化。逆行です。そもそも維新がこれを訴えたこと自体、矛盾なのです。本当に大阪府など、維新に毒された府県、市町村が小さな政府に移行したら、関西の経済はより縮小していくだけでしょう。つまりその矛盾が、この万博には集約されます。要するにツッコミどころ満載なのです。何となく国家のすることに反対できない空気が、これまで醸成されてきた。それは安倍政権が、統一教会の献身をつかってネット世界を牛耳り、反対する意見に対して攻撃をくり返してきたから。しかしその献身が消滅しかかる中、果たして万博をつづけられるか? 逆に維新の責任問題を重くするだけかもしれません。 安倍的なものの見直し 上記したいくつかの記事は、これまで日本を毒してきた安倍的なものの見直しです。政治では安倍派にメスが入った。今回、あまり報じられませんが、安倍元首相がもっとも裏金に関与した、とみるのが正しいでしょう。むしろ安倍氏が積極的に裏金をつくり、政治を牛耳ったからこそ、派閥もそれに倣った。そう考えた方がシンプルです。他の派閥がこれを真似しなかった、二階派でもノルマを越えた分は記載なし、としますが、それでも一定の抑えが働いたのは、この仕組みがかなりヤバいと知っていたからです。 安倍派がナゼ、ここまで野放図になったかといえば、安倍氏が主導したことと同時に、上記したように杉田氏が完全に警察をコントロールし、事件化させないようにしていたから。そこに油断が生じ、この仕組みが出来上がった。さらに安倍氏が亡くなった後、杉田氏が政治の一線から身を引いた後も、その慣行がつづいてしまったのも旨味が大きかったからです。結果的に、時限爆弾を抱えてきた派閥だったのです。 安倍政権時代の、黒田日銀がはじめた異次元緩和も、ここに来て見直しがかかりそうです。10年以上も異次元でありつづけたのですから、いい加減に正常な次元にもどす必要がある。東京五輪はコロナ禍という以上の大失敗で終わり、汚職、癒着が相次いで発覚しましたが、恐らく大阪万博も同様の構図です。その頭の名前が、安倍から吉村に変わるだけでしょう。安倍関連企業が五輪に関わり、不祥事を起こした。同じことが大阪万博で起こり、それは吉村関連企業となる。同じところに、同じように乗っかるのですから、何の不思議もありません。関西人がその構図に気づけなければ、後に大きな失望を招くだけです。 産経新聞が、臨床心理士のコラム盗用問題で、百田氏に謝罪したことが話題です。産経も百田氏も、同じ安倍支持層をターゲットにしてきた。要するに支持層が同じなので、盗用が刺さる、と判断したのかもしれませんが、同じ穴のムジナが互いの尻尾を噛みあう構図にみえます。どちらも痛みを伴い、結果的に安倍支持層が離れていく。安倍的なものを導入し、色々なことが日本では劣化した。もう取り返しがつかない部分もありますが、これからその見直しが始まるとすれば、痛みはかなり厳しいものとなるはずです。 |
「裏金大手紙の内容で、「裏金」や「キックバック」に関して関係者によると・・」という表現があるが、どうやらそのネタ元は検察からのリークかもしれない。
「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」
■常態化した裏ガネづくり 東京地検特捜部が自民党に、猛禽のように襲いかかっている。 臨時国会が閉会する12月13日以降は、派閥パーティー券の裏金疑惑で各派閥の会計責任者、会長・事務総長経験者、キックバックを受け取った所属議員、パーティー券を購入した側の政治団体幹部などの事情聴取が、いよいよ本格化する。 疑惑の中心は最大派閥の安倍派だ。所属議員に当選回数やポストに応じてパーティー券販売のノルマを与え、ノルマを超過した議員に対してはその分をキックバック。派閥も議員側も報告書に記載していないので完全な裏ガネだ。判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる。 そもそも摘発のきっかけは、5派閥が18~21年の収支報告書にパーティー券収入を約4000万円少なく記載していたとして昨年11月に『しんぶん赤旗』日曜版がスクープし、それを受けて調査した神戸学院大学の上脇博之教授による告発だった。 受理した特捜部の捜査によって、「常態化した裏ガネ作り」が判明。無申告の脱税事件でもあり過少記載から局面は変わった。 自民党に対する23年分の政党交付金は約159億円。国民にそれだけの負担をさせながら、なおも派閥ぐるみで裏ガネを捻出する自民党政治とは何なのか――。 検察は全国から応援検事を集めて捜査する体制を固めており、安倍派を中心に全派閥を捜査。証拠と供述によっては未公開株が政界を浸食したリクルート事件なみの展開となる可能性がある。それだけ自民党政治家は政治資金規正法をなめていた。 ■検事総長人事介入問題との関係 端緒を開いた上脇氏は、政治資金問題に粘り強く取り組んでおり、02年に市民団体「政治資金オンブズマン」を立ち上げて以降、これまでに100件を超える告発を行った。政治資金絡みの不正はそれだけ常態化していたわけだが、それを受けた特捜捜査が今回、深みを持つに至ったのは、別の事件が関係しているからだ。 「官邸vs検察」といわれた安倍晋三政権下における検事総長人事介入問題である。奇しくも、その余波ともいえる公判が12月1日、行われて当時、事務方トップの法務省事務次官でその後、仙台高検検事長を務めた辻裕教氏が法廷に立った。 この裁判の原告となったのも上脇氏で、20年に東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を半年間延長することを決めた閣議決定をめぐり、国が「法解釈を変更した関連文書を開示しないのは違法だ」として訴えた。 こうした行政文書の不開示決定取消訴訟において「天皇の認証官」である高検検事長が出廷するのは前代未聞。徳地淳裁判長ですら「辻さんというかなり上の方より実際の実務、実情を知る人が適切じゃないですか」といったほど。だが国は、「証人尋問の必要性はありません」と拒否し、その結果、大阪地裁は「辻尋問」を決めた。 この一連の過程に、検察が自民党派閥政治を壊しかねない捜査に踏み切った遠因がある。まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった。 ■「官邸の代弁者」をさらしものに その後、黒川氏は知り合いの記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚して検事長を辞職した。その結果、人事介入はなかったが、上脇氏は「法解釈を変更した経緯」にこだわった。 だが、出廷した辻氏は、「定年延長は黒川氏のために行ったわけではない」「文書決裁は特になかった」と、「官邸主導による解釈変更での黒川氏の定年延長」という見方を否定した。ただ、徳地裁判長も納得しなかったようで、最後にこう質問した。 「第三者的に観ると、2月8日の黒川氏の定年に合わせるように急いだと見えなくもない」 だが、辻氏はこう繰り返した。 「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である。 ■もはや忖度する幹部はいない 官邸は当時、黒川人事を正当化するように政府の裁量で検察首脳の定年を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法改正案を上程していた。これに検察OBらが反発、次のような意見書を政府に提出した。 <今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に添わない検察の動きを封じ込め、検察の力を削ぐことを意図していると考えられる> 世論も法改正に反発、「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターには、小泉今日子ら著名人を含めて1日で700万件もの投稿があった。マスメディアも反対の論陣を張るなか、官邸は検察庁法改正案の成立見送りを決めた。 ただ、安倍氏には一連の騒動を経ても、「検察人事」への不満は残ったままだった。ベストセラーとなった『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)には、検察OBらの人事介入批判について次のような苦言を呈している。 <検察OBは、政治が我々の領域に入ってくるな、と言いたかったんでしょ。役所のOBはどこも、人事は自分たちで決める、とはき違えていますから。そもそもトップの検事総長や最高検の次長検事、全国8カ所の高検検事長の任命権は、内閣が持っています> こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった。 ■全ての環境が整った むろん検察が安倍派を返り討ちにした、というレベルの話ではない。今年1月、特捜部は政治資金パーティーの収入を虚偽記入していたとして、薗浦賢太郎元衆議院議員を政治資金規正法違反罪で略式起訴した。 虚偽記入の総額は自由民主党千葉県第5選挙区支部と薗浦元代議士の政治団体を合わせて約5000万円。こうした捜査を通じて、「パーティー券の闇」の認識は検察に蓄積されていた。 またパーティー券を大量に捌くことによって政界に食い込む政商の問題も指摘されており、こちらの水面下の捜査も進んでいる。 今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発、裏ガネ作りに疑問を感じない自民党代議士の感覚麻痺、政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである。 |
さて、国からの政党交付金制度があるにもかかわらず経団連が毎年約24億円の政治献金を自民党側に続けていることについては「民主主義を維持していくにはコストがかかる。企業がそれを負担するのは社会貢献の1つだ」と言ってはばからないのが、経団連・十倉雅和会長。
「自民党への政治献金は本当に『社会貢献』で『問題ない』のか 経団連会長発言、実は全然唐突じゃなかった」
経団連の十倉雅和会長は、自民党への政治献金について「企業がそれを負担するのは社会貢献だ」「何が問題なのか」と語った。社会貢献という言葉の使い方が根本的に間違っている上、そもそも企業団体献金を禁止する代わりに、毎年300億円以上の政党交付金が配られているはずでは。政策をカネで買うかのような財界・企業と政治献金の関係を見直すべき時が来ている。(岸本拓也、木原育子) ◆「政策提言とか言っちゃいけないんですか?」 十倉会長の発言が出たのは4日の記者会見。企業による政治献金の目的を問われた際に「民主主義の維持にはコストがかかる。政党に企業の寄付(献金)をすることは一種の社会貢献だ」と言ってのけた。 企業献金には、政策的な減税額が大きい業界ほど自民党への献金額が多い傾向があるなど、「政策を金で買う」との批判が付きまとう。しかし、十倉氏は「政策提言とか言っちゃいけないんですか? 希望とか要望とかどこの国でもやってる」と批判を一蹴した。 政策誘導の危険をはらむ献金が「社会貢献」という考え方は、およそ一般の市民感覚からは違和感しかないが、経団連にはそうではないらしい。20年も前から主張しているからだ。 その考えが初めて示されたのが、奥田碩(ひろし)会長時代の2003年5月。「政党活動に要するコストの負担を社会貢献の柱の一つと位置付け、応分の支援を行うべき」との見解を出し、約10年前に廃止されていた企業献金を04年から再開する足掛かりとした。 ◆献金廃止で「自民党から相手にされず、相当焦っていた」 なぜ社会貢献と言い出したのか。「政治献金」(岩波新書)を著した茨城大の古賀純一郎名誉教授(メディア論)は「当時、企業不祥事が頻発し、企業の社会的責任が問われていた。『政策をカネで買う』という評判を打ち消すために『社会貢献活動の一環』という意味合いを押し出した」と振り返り、こう続ける。 「本音としては早急に復活したかったのだろう。廃止直後は、自民党から全く相手にされず、経団連は相当焦っていた。自民党はカネでないとなかなか動かないから。別の経済団体幹部が当時、自民党の有力政治家から『カネを出してくれる方の言うことを聞く』と言われ、悔しがっていた」 以来、経団連は「社会貢献論」を繰り返す。09年の民主党政権の発足で一時中断した期間を経て、安倍政権下の14年に復活させた際も「企業の政治寄付は、社会貢献の一環」とした。その後も会員企業に献金を呼びかける文書には毎年「社会貢献」という主張が展開されている。 しかし、この主張はかねて批判されてきた。政治資金オンブズマンなどは04年1月、経団連が各政党の政策を評価して各社に献金を促す形で関与を再開した際に「対価を公然と要求する寄付は、『企業の社会的貢献』ではない」と指摘。「カネも口も出す」(当時の奥田会長)という姿勢に、「対価を求めないからこそ評価されてきた社会貢献の概念をはき違えたもので、その概念をおとしめる」と批判した。 経団連は長年、資金面で自民党を支えてきた。1950年代から、各社に献金額を割り当ててあっせん。自民党にはピーク時、年間約100億円もの金が集まった。これが金権政治の温床となり、国民の批判も受けて経団連は平岩外四会長時代の93年、あっせんを廃止した。企業・団体献金の廃止を前提に、国民負担による「政党交付金」が導入された。だが、前出のように2004年に献金は再開。廃止の約束は果たされないまま、今も交付金との「二重取り」が続いている。 ◆政党交付金があるのに献金とパーティー券収入も 政党交付金は過去10年、年間約315億〜320億円交付され、うち自民党は約150億〜175億円を得てきた。これで企業・団体献金、パーティー券収入も受けているのだから、二重取りとの批判は当然だ。 もっとも企業献金の禁止を強硬に言い続けてきたのは政党交付金を受け取っていない共産党。5日には、企業・団体の寄付と政治資金パーティー券の購入を全面的に禁止する政治資金規正法改正案を参院に提出した。共産ほどではないが、立民、維新、れいわも、企業・団体献金を禁止する方針を打ち出している。 ただ、政治ジャーナリストの泉宏氏は「政界はいまだカネが全てにおいて潤滑油だ。今回は自民党の派閥のパーティー券に照準が当たったが、政治資金を巡る問題のごくごく一部に過ぎない」と指摘、自民党が二重取り批判など気にもとめていない実態を明かす。 11月下旬に公表された2022年分の政治資金収支報告書でも、企業・団体献金の総額は24億4970万円で、このうち自民が9割超の22億7309万円を政治資金団体「国民政治協会」などで集めた。 ◆ようやく開いた「パンドラの箱」 「自民と財界はずっと表裏一体の関係。自民党の経理局長が大企業でつくる経団連を回るのが慣例。経理局長は1年で交代せず5年も6年も担う。長年培ったリストを手に必死に献金を集めていた」と泉氏。「ようやく検察のメスが入った。これまでは安倍・菅タッグの強権政治で抑え付けてきたが、岸田首相では抑えきれず、ある種のパンドラの箱が開けられた状態と言える」と話す。 一方、中央大の中北浩爾教授(政治学)は「実際、有権者への国会報告の送付など政治にはお金がかかる。政治資金を汚いと決め付ける議論は、民主主義を危うくする」と話す。自民党5派閥によるパーティー券問題は「これは完全なアウト。パーティー券のキックバック分の不記載は明確な法律違反で、何のための裏金か疑問でならない」とするも、「法律違反の部分と、企業・団体献金の是非などの議論は切り分けるべきだ」と語る。 とはいえ、やはり企業・団体献金に対する国民の目線は厳しい。駒沢大の山崎望教授(政治理論)は「企業献金はカネというツールを政治に持ち込み、自身の利益につなげる単なるビジネスの手法だ。大企業が政治をカネで買うことと同義で、大企業に有利な政策ばかり居並ぶことになりかねない」と指摘する。 ◆このまま「市民の声」は反映されないのか 例えば、今夏のマイナンバーカード問題を巡る騒動もそうだ。岸田政権が来秋の保険証廃止を掲げていることに対し、経済同友会の新浪剛史代表幹事が廃止時期を「納期」とし、「納期を守るのは日本の大変重要な文化だ」と語り、波紋を広げた。同友会は献金廃止の立場だが、新浪氏率いるサントリーは自民に献金をしている。山崎氏は「多額の献金をしているために、政策を買って発注したという目線とも取れる」とし、「極論ではあるが、寄付や献金などの政治資金はこの際、全てなくすべきだ。本当に応援したい政党があれば政治資金ではなく、声を上げて正々堂々と選挙活動をすればいい」と続ける。 自民党と財界が一体化し、市民の声が反映されない構造は変わらないのか。 思想家で神戸女学院大の内田樹名誉教授は「対米自立という国家戦略を放棄した自民党は、今や対米従属による権力維持以外に目的を持たないただの利権集団になった」と指摘。一連の派閥のパーティー券の問題も「利権を求めて議員になった者にとっては当たり前の収益事業だ」と一蹴する。「長年続いた財界との癒着を断ち切るだけの自浄力が自民にない以上、制度の根本的改革には政権交代しかない。このまま米の属国でいるのか、再び対米自立をめざすのか、有権者も問われている」 ◆デスクメモ 政治献金は一応、見返りを求めない建前だ。見返りありなら賄賂との線引きが問われる。そういうあやうい関係を、あたかもクリーンなように言い換えてもう20年。「何が問題か」と気色ばむ表情からは、言い換えではなく本気で「社会貢献」と信じる様子がうかがえ、かえって怖い。(歩) |
自民党の各派閥のパーティー券を自分で買う国民は皆無であり、すべてが経団連傘下の企業であろう。
どちらも自分たちの利益しか考えていない「利権集団」のビジネス化となっており、政治献金が決して「社会貢献」でないことは、カネで買われた数々の政策をみれば国民に不利益を及ぼすだけであることは明らかであろう、とオジサンは思う。
【参考】