中華街ランチ探偵団「酔華」

中華料理店の密集する横浜中華街。最近はなかなかランチに行けないのだが、少しずつ更新していきます。

中華街の理髪店は今…

2020年04月29日 | レトロ探偵団

 中華街を歩いていて、理髪店の多いことに気づいた人はどのくらいいるかな。この偏りには理由があるんだよね。
 横浜開港後、華僑として横浜に入ってきた中国人の仕事は、コック仕立て屋理髪店、商館での通訳・買弁、両替商など多種多様だった。このうち、最初の三つは三把刀といって、手先の器用な中国人が得意だった刃物を使った職業だ。
 ここ、横浜中華街では、かつての「三把刀」のうち包丁(料理店)だけが突出していることは確かだが、結構、剃刀(理髪店)も奮闘しているのね。
 横浜市中区内にある理髪店舗数を町別にみると、山下町には理髪店が多いことが分かる。これは、西洋理髪発祥の地ということが関係しているに違いないと思う。

 そこで今日は、横浜における理髪の歴史を訪ねてみよう。
 明治2年(1869)、居留地148番で理髪店を開いている日本人がいた。ちなみに、この148番という場所は、現在でいうと中区山下町148番、市場通りのあたりだ。
 チョンマゲは「古くて野蛮」という理由で断髪令が出されたのが明治4年だから、それより2年も前に営業していたことになる。
 こんなに早くから営業をしていた男の名は小倉虎吉といった。彼は横浜で髪結床を営業していたのだが、外国船が入港するたびに、仲間の松本定吉らを誘って船へ乗り込み、乗組員の髭などを剃っていた。もともと手先の器用な髪結師のこと、何回も通っているうちに、虎吉は外国人の理容技術を覚えてしまったのである。
 同様に松本定吉も居留地151番に店を出し、外国人を主な客にして成功した。彼の店があった場所は、現在で言えば「一楽」や「山東」などが並ぶブロックだ。


 妙香寺にある彼の墓石には「元祖西洋理髪師 松本定吉」と刻まれている。

 この西洋理髪発祥の地を後世に伝えるため、平成2年、山下公園に記念碑「ザンギリ」が建てられた。本来ならば、店のあった中華街あたりがふさわしいのだろうが、今の市場通りや大通りにそんなスペースはない。そこで、小倉たちが技術を学んだ港の近くということで、山下公園の大桟橋寄りに建てられた…と思う。


 西洋理髪発祥之地 横浜市長 細郷道一書
  ――ザンギリ頭をたたいてみれば 文明開化の音がする――
  安政の開港とともに、生活様式の洋風化が進むなか、政府の「断髪令」に先がけ、明治2年(1869年)横浜に我が国初の「西洋理髪店」が開業され、欧米風「ザンギリ頭」は文明開化の一翼を担うこととなった。
 平成元年11月 
 彫刻名「ザンギリ」  彫刻製作 木村賢太郎
 寄贈 神奈川県理容環境衛生同業組合 全国理容環境衛生同業組合連合会


 この記念碑は山下公園の樹木の中にあるのだが、いっとき何かの工事で移転していたことがある。その時の写真がこれだ。

 さて、そんな理髪店の多い中華街の中に、その名もズバリ「發記中国理髪」という店があった。(冒頭の写真)
 外観は何の変哲もない普通の店なのだが、一歩中へ入ると、そこはもうレトロの世界、毛沢東もビックリ、「昭和30年代」が生き残っているのだった。
 床は古い板張り、理髪用のイスも電動ではなく手動式。洗髪するときはイスとは別の洗髪台まで歩いて行かねばならない。
 そして面白いのが店主の名前。理髪店だけあって毛さんという。毛沢東もビックリだ。
 毛さんの話では、彼が横浜に来た昭和初め頃は、市内に150人ほどの中国理髪師がいたらしい。
 現在地での開業は1946年だが、当時の中華街には7軒の中国理髪店があった。それが取材当時では、この「発記中国理髪」だけになってしまった。
 この店で最後に髪を刈ってもらったのは何年前だったか……。毛さんは、テレビで競馬中継を見ながら散髪してくれた。あのときは彼の馬券も当たっていたが、剃刀のアタリも柔らかで、剃りあがりは素晴らしいものだった。さすが三把刃、その腕は確かで、2,000円という料金が嬉しかった。
 この値段は廃業するまで変えないと言っていたが、20年近く前だったかなぁ、閉店してしまったのだった……。

 ここからは懐かしの理髪店と現役で頑張っているお店を並べておくね。


 「華都飯店」近くにある2軒並びの理髪店。1階が「理容堀内」で2階が「理容センター山口」。


 南門通りにあった「ヘアーサロン出口理容室」。


 関帝廟通りにあった理容「トミ」。店内はレトロ感満載で楽しい床屋さんだったが…


 現在は建て直したビルの中に入っている。以前の場所からすぐ裏の路地だ。


 「華都飯店」の隣にある「理容室モナコ」。


 南門通りにある「理容ウチウミ」。


 こんな写真しか残っていないが、開港道にある「佐東」。右端に写っているのがそれ。


 ヘアースタジオ「タッド」。華僑基督教会の近くにある。隣のビルには、あの「エロガッパ」が♪


 その「エロガッパ」が入っているビルの1階にヘアメイク「FACES」。


 その先にあるビル。ヘアサロン 「オリーブ」は閉店したようだね。その向こうはカットサロン「ニトー」が見える。ここも2軒並びだった。


 北門通りの「ヘアサロン カットセブン」。


 そして、その先にあった「バーバー ハラシマ」。

 やはり、こうして並べてみると理髪店が多い町なのだということが分かる。
 今日は中華街における理髪店を眺めてみたが、そうえば、私の髪の毛も随分と伸びてきた。ハゲだからその周辺部分だけなのだが、そろそろ理髪店に行かなければ、と思っている。
 でもねえ、新型コロナウイルスが流行っているから、どうもズルズルと……

 10分、1000円という店があるけど、なんだかそこも混んでいそうだしなぁ……

 ということで、妻にカットしてもらった。数年前にやってもらったときはトラガリになってしっまたが、今回はまあまあかな。


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2 コメント

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Unknown (ミドリムシ)
2020-05-13 19:24:23
中国理髪の毛さん。。。ヘアーサロン出口。。。華僑の方々はお洒落なんですね。
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Unknown (管理人)
2020-05-15 12:40:53
>ミドリムシさん
紳士服の仕立て屋さんもたくさんありました。
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