武漢ウイルスを巡る習近平体制の歪みと日本の報道の歪みを遠藤誉さんの解説で
https://youtu.be/BiakYy199EI
報道クリップ:新型コロナウィルスの真実~習近平の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」より
新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士 1/24(金) 9:03
昨年12月8日に最初の感染者が出た新型コロナウイルス肺炎に関して、習近平は1月20日になって初めて重要指示を出した。なぜ遅れたのか?「野生動物捕獲摂取」や地方議会「両会」などから意外な事実が見えてきた。
感染人数の推移や場所などに関しては、すでに多くのメディアが時々刻々報道しているので、ここではストレートに隠蔽工作を「誰がやったのか」、そして「何のためにやったのか」に焦点を絞って考察したい。
◆地元政府の隠蔽工作:その1――野生動物保護法と食品安全法
まず最も注目しなければならないのは、ウイルスの発生源が野生動物なども売っていた海鮮市場(華南海鮮卸売市場)だということである。
今のところ感染源として注目されているのはタケネズミとか蛇などだが、この海鮮市場では100種類以上の野生動物を売っていて、1月22日の北京の地方紙「新京報」は、そのメニューと価格表一覧を掲載した。
以下に示すのは、そのメニューと価格表である。
メニューによれば、タケネズミや蛇だけでなく、アナグマ、ハクビシン、キツネ、コアラ、野ウサギ、クジャク、雁、サソリ、ワニ……など、野生の動物が「食品」として日常的に売られているようだ。
それも調理して売るとは限らず、生のまま売ったり、目の前で殺したり、中には冷凍して宅配するというサービスもある。
問題は、このような野生動物を食べ物として売ることが許可されているのか否かということだ。
実は野生動物の捕獲や摂取を取締る法律はいくつもあり、特に2003年のSARS(サーズ)発生以来、さまざまな規制が試みられてきた。
たとえば「野生動物保護法」(第二十九条、第三十条)や「陸生野生動物保護実施条例」という観点や「食品安全法」あるいは刑法(第三百四十一条)においてさえ、さまざまな規制を設けている。
この野生動物メニューの中に、合法的なものもあるかもしれないが、100種類も供されていれば違法性のあるものも含まれているだろう。その入手方法となると、「養殖が許されている野生動物」もあれば「捕獲自身が禁止されている野生動物」もあり、ましていわんや「食べていい野生動物」となると数が限られる。
このような野生動物を食していること自体に違法性もしくは犯罪性がある。
そこで武漢政府の当局は、今回の新型コロナウイルスによる肺炎の発症を、できるだけ外部に漏らさないようにしたことが考えられる。特に中央政府に知られることを最も恐れたと考えていい。
なぜなら以下に示す「全国両会」が間もなく開催されることになっていたからだ。
◆地方政府の隠蔽工作:その2――地方議会である「両会」が開催される
中国では3月5日から日本の国会に近い機能を持つ全人代(全国人民代表大会)が始まるが、それと同時(一般に2日前から。会期は同じ)に開催される全国政治協商会議の二つを「全国両会」と称している。その前に各地方の全てのレベルにおける「両会」が開催され、おおむね春節前には終わるようになっている。
武漢市は湖北省にあるが、省レベルの「両会」は今年1月12日から17日まで開催されることになっていた。この湖北省両会における審議結果は、3月6日以降の各省レベル分科会において、習近平国家主席も参加して北京の人民大会堂で報告されるのである。
そのような「神聖な」湖北省両会を汚すわけにはいかない。
そこで武漢市政府は湖北省政府にも北京の中央政府にも、知られないように画策したと考えていい。
それを示す画像が中国のネットで出回っている。
それを以下に示す。
この赤い線の所にご注目頂きたい。12日に湖北省両会が開幕し、17日に「勝利閉幕(勝利的に閉幕した)」と書いてあるが、なんとその間だけは「密接に接触した者同士による新しい感染者はゼロ」とあるではないか!
つまり、この間だけは無事にすり抜けたかったのである。
その証拠に、1月19日になると、患者数が突然「3倍以上に」増加していることが報告されている。
6日間の間に発症した患者数を、19日に一気に発表したからだ。
この「裏事情」を知らない人々は、「19日を境に一気に感染が広がった」と報道しているが、それは実は「真っ赤なウソ!」なのである。
これが、北京、中央政府に感染の実態を報告しなかった本当の理由だ。
◆なぜ中央政府に情報が上がったのか?
ではなぜ中央政府・北京の知るところとなったのか。第一段階は「上海」の働きにある。
こちらの情報をご覧いただきたい。
2019年12月26日、上海市公共衛生臨床センター科研プロジェクトが通常のサンプル収集として、プロジェクトの相手である武漢市中心医院と武漢市疾病制御センターから発熱患者のサンプルを入手し、精密に検査した。
その結果、2020年1月5日に上海市のセンターは、この病原菌が未だかつて歴史上見たことのない「新型コロナウイルス」であることを突き止めた。
それでも湖北省政府は両会を開催し、「たしかに病例はあったが、問題は解決していますので大丈夫ですから」という無言の偽装メッセージを北京に送った。
しかしさすがに北京は疑わしいと思ったのだろう。第二段階として、1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。
そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。
こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。それを境に中国国内はパニックに突入。
1月21日になると、武漢市東西湖区市場監督管理局は「市場経営者に告ぐ」という通知を出したが、もう遅い。このページの「二」に書いてある漢字をご覧いただきたい。「食品安全法」とか「野生動物保護条例」などの文字があるのを確認することができるだろう。その項目にある「生きたまま殺す」などの文字を見ると、誠にゾッとする。
もっとゾッとする話を最後に付け加えておこう。
1月17日まで湖北省両会があったとはいえ、1月5日から19日までの空白期間がどうも気になったので、さらに詳細に調べたところ、1月21日に、武漢市で湖北省春節祝賀演芸会が開かれていたことを知った。
湖北省政府や武漢市政府の上層部が全員参加したとのこと。おまけに舞台の出演者の中には新型コロナウイルス肺炎の疑いがある症状を来たしている者が数名いたという。
それを押して、動きの激しい演技をさせたと中国のネットでは激しいバッシングが見られる。これだけ多くの人が武漢市の劇場に集まれば感染も広がるだろう。
それでも強行したのは、又しても繰り返すが、「新型コロナウイルス肺炎だと判明はしたが、武漢市の肺炎はすでに解決し、コントロールされているので、問題はありません」と偽装したかったものと判断される。そのため湖北省政府や武漢市政府の指導層がずらりと顔をそろえた。
しかしさすがに北京は今度は騙されず、1月23日に武漢市に対して封鎖令を発布した。武漢市民は一切武漢から外に出てはならないことになってしまったのだ。それを事前に察知した市民の中には封鎖令が発布される直前に上海などに脱出した者もいるという。その数、数千とも数万とも言われている。
注意すべきは「封鎖令」を出せるのは中央政府だけだということである。
どんなに武漢政府や湖北省政府が姑息な偽装工作を行っても、その運命は見えている。
それにしても、「北京に対する保身のためなら全世界を恐怖に巻き込んでも平気」という考え方の恐ろしさと愚かさよ。一党支配体制でピラミッド型に命令系統が徹底されているように外からは見えるかもしれないが、中央と地方の連携が如何にお粗末かということの証しの一つでもある。
14億人もいれば統率に漏れが出て来ることもあろうが、中国の病根を見る思いだ。
中国のもろさは、実はこんなところにもあるのかもしれない。
習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士2/4(火) 10:18
武漢赤十字会が、新型肺炎患者が最も多い武漢の指定病院・協和医院に全国から集まった物資や献金を渡していなかったことが判明。背後に金銭癒着がありネットが炎上。習近平を緊急会議開催へと追い込んだ。
日本の「習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ」という報道は不正確。
◆武漢赤十字会(紅十字会)で何が起きたのか
武漢赤十字会(中国語では紅十字会)には各地からマスクなどの医療物資や献金が集まっているが、医師や看護婦などを含めて8000人もの従業員がいる協和医院には3000枚しか配布されておらず、肺炎患者治療に関して指定されていない小さな特定の二つの私立病院に3万6000枚のマスクが配られていた。このことを知った中国のネットユーザーは激しく炎上。
まず何が起きたのかを見てみよう。
1月23日に武漢が封鎖されると、武漢市のいくつかの医院が新型コロナウイルス肺炎患者を治療するための医院に指定された。その中で最大の医院が協和医院(正式名:華中科技大学同済医学院付属協和医院)である。700ベッドあり、医者や看護婦を含めて8000人ほどの従業員が患者の緊急治療に当たっている。
ところが23日から29日にかけて協和医院が医院や医者個人の名義で、朋友圈、Wechat、Douban、学習強国など様々なところにマスクや医療用防護服などの物資不足を訴えたり、寄付を求めたりする声を発信してきた。
実はこの日までに中国国内外から多くの支援があり、海外の華人華僑からだけでも5622.8万個のマスク、73.8万着の医療用防護服が届いており、そのほとんどは湖北省、特に武漢に集中的に送られている。
それなのになぜ医療物資が不足しているのか不思議だと、中国共産党機関紙「人民日報」のウェイボーも1月30日17:28に武漢協和医院の訴えを転載している。転載された元の訴えはここにある。
これは1月30日12:29に武漢協和医院神経科の医師「Do先生」が発信したものだが、それが削除されたので、ダウンロードしてあった訴えを再掲載したものである。
大至急、「防護服3000着、医療用95型マスク5000個、外科用マスク8000個…」などが必要で、協和医院にはもう防護服もマスクもなく、一刻の猶予もないので緊急に助けて欲しいと書いてある。
事態の展開に慌てた湖北省赤十字会(紅十字会)は1月30日、新型肺炎発症後第1回の支援物資や支援金に関する使用状況を発表した。
それによれば、なんと、指定病院の協和医院は新型肺炎発症以来、3000個のマスクの配給と1万2千元(1元 = 15.46円)の献金しか受けておらず、武漢市の仁愛医院と天佑医院にのみ、それぞれN95型マスク1.6万個と36万元を寄付したとのこと(後に1.6万個ではなく1.8万個であったと訂正。
したがって合計3万6千個のマスク)。仁愛医院の従業員は協和医院の従業員の10分の1にも満たず、また美容整形とか婦人科、不妊治療あるいは性病関係などを扱うことで名が知れた病院であって、新型肺炎治療とは何の関係もない民間病院でしかない。
しかも協和医院に送られたマスクと献金は、武漢赤十字会からではなく、陝西省の韓という女性からの寄付であった。
1月31日になると武漢赤十字会が新型肺炎発症以来、第1回の援助物資に関する明細を発表した。武漢市には合計61の病院が指定医院になっているのだが、1月30日までに支援物資を配布した病院数は13であるとのこと。
中国政府の通信社である新華社通信によれば、30日までに武漢赤十字会はすでに「6.0808億元、9,316箱のマスク、74,522着の防護服、80,456個の医療用ゴーグルおよびその他の薬品や医療器械」などを受け取っているという。
その金と物資はどこに行ったのか?
協和医院の関係者によれば、武漢赤十字会の援助物資や献金などの配布先一覧表の中に、そもそも協和医院の名前がないという。
以上の情報の主たる内容は比較的リベラルな(習近平政権以前は非常にリベラルだった)「南方人物週刊」に書いてある。
また2月1日16:18には、協和医院の看護師が鳳凰網新聞センターの「正面FACE」に語った音声がウェイボー(微博、weibo)で発信された。鳳凰網による看護師への取材動画はこちらでも観ることができる。削除される可能性があるので、念のため複数ご紹介しておく。
看護師が何を訴えたのかに関して、以下に概略を記す。
●協和病院には医療用防護服が、もう1着もないのです。
●ニュースを見て、数万のN95マスクが武漢紅十字会(赤十字会)に届いていることを知りましたが、私たちのところ(協和病院)に届いたのは3000枚の普通のマスクでした。協和病院には8000人の職員がいるのに、3000個のマスクで足りるはずがありません。
●看護師長によると、紅十字会に物資を取りに行くときは、協和病院だと言わないようにしないとなりません。協和医院だと言ったら、物資をくれないのです。なぜなのか、理由は分かりません。
●協和病院は武漢で最初にコロナウイルス患者を受け入れる病院として指定されました。それなのに防護服がないので、協和病院西院ではゴミ袋で防護服を作って働く写真を見たということです。それが本当かどうかは分かりませんが。
これ以降、中国大陸のネットは炎上したのである。
◆なぜこのようなことが起きているのか?
協和医院の看護師長でさえ、なぜだか分からないと言っているので、ここからは推測的な考察となる。
まず考えられるのはこちら。
1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。
この時に鐘南山院士が視察した先が武漢一の病院である協和医院だった。
そこで「人‐人」感染があることを知ったのだ。
実は協和医院の脳神経外科が1月7日に趙軍実という患者の外科手術をした。このとき趙軍実氏は新型コロナウイルスに感染していたらしい。
しかし武漢市はまだ新型コロナウイルス肺炎の事実を公けにしていないので、脳神経外科の医者たちは認識していなかったようだ。
ところが1月11日になって、患者が原因不明の肺炎に罹り、15日になると、その病原菌が新型コロナウイルスだと診断された。この患者によって、手術や治療に当たった14人の医者・看護師が新型コロナウイルス肺炎に罹ってしまったという。
趙軍実の感染源は武漢市の海鮮市場である可能性が高いが、手術や治療に当たった医者や看護師たちは誰一人海鮮市場には行っていない。つまり野生動物に直接接触はしていないのである。全員、患者である趙軍実から感染したことになる。
医者たちなので、新型コロナウイルスは「人‐人」感染することを自ら確認した。
鐘南山はこの協和医院に視察に行ったのだから、武漢で流行している肺炎は「人‐人」感染をする重要な証拠をつかんで、「これはまずい!」というので北京にとんぼ返りし、習近平に重大事態だと報告したわけだ。
これにより習近平が「重要指示」を全国に出したので、武漢市政府と湖北省政府は、「協和医院」を恨んだということになる。これは勝手な推測ではなく、武漢市の周先旺市長自身が、協和医院の14名の医療関係者が感染したことに言及しているし、また大陸の少なからぬサイトがこのことを取り上げている。
たとえば1月21日に中央テレビ局CCTVの取材を受けた時に武漢市長はこのことに触れているし、また「財新」というサイトも、このことに触れている。
特に武漢市の市長がCCTVの取材の際に「協和病院の脳外科がこの患者に対して入院前に新型コロナウイルスに感染しているか否かを確認しなかったのがいけないのだ」と言っている。つまり、協和病院の脳神経外科の不注意がこの一連の感染の原因だと批判しているわけだ。
武漢政府はそれまで「人‐人」感染はないとして、「十分にコントロールはできている」と偽装工作していたため、それがばれたので、協和医院のせいにしようとしているのである。
しかしCCTVの記者はひるまず、「それならあなたはなぜ1月19日に万家宴などという大宴会をやったのですか?」としつこく追い込んでいる。それに対して武漢市市長は、「いや、あれは、昔からある庶民の習慣なので…」などと弁解しているのである。
◆仁愛医院と湖北省政府幹部との金銭的癒着
さらに一党支配体制を揺るがすようなことが起きていた。
いつものことながら、ここまでの事態に立ってもなお、金銭癒着が背後でうごめいていたのである。
2月1日、独立真相調査報告「黒夜研究室」なるものが武漢赤十字会に関してさらなる真相を暴いた。その結果が多維新聞に出ている。
それによれば「仁愛医院の大株主は湖北省政治協商会議の委員だ」ということである。
また仁愛医院は湖北省赤十字会や武漢赤十字会と2012年から2019年の間に何度も協力イベントを開催したことがある。
北京の新京報網によれば、このイベントは「不妊治療」に関するもので、湖北省赤十字会と、このたびマスク1.6万個(のちに1.8万個と訂正)が配られた武漢の仁愛医院および天祐医院は、湖北省の不妊治療イベントで多くの資金を提供したという。
おまけに湖北省赤十字会の会長は湖北省の副省長で、金にまみれた背後関係がうごめいている。湖北省政府と武漢政府は赤十字会を通して美容整形や不妊治療あるいは性病治療などの分野で仁愛医院と天祐医院の二つの民間医院と金でつながった関係にあった。
そこにはさらに別のマスク製造民間企業との持ち株などに関する利害関係が複雑に絡んでいる。
◆習近平が緊急会議!
武漢赤十字会の、あまりに驚くべき実態にネットが炎上しているため、北京にある中国赤十字会の代表団が2月1日、武漢を視察した。人民網やその傘下の環球時報の電子版である環球網などが伝えている。
しかし、そのようなことで事態が収まるはずがない。
2月3日、習近平・中共中央総書記をトップとする「チャイナ・セブン」(中共中央政治局常務委員会委員7人)は会議を開催し、新型コロナウイルス肺炎に対する中央の領導小組(指導グループ)から事情を聴取し、現況に関する討議を行った。
その結果、習近平は厳しく現状を批判し、概ね次のように述べている。
――このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。対応策の中で露呈した数々の弱点を改善しなければならない。経験から教訓を学び、一層の検証を行い改善せよ!*注記(文末)
これに関して例えば「北京共同」が「初動対応の遅れに対する国民の強い不満を無視できなくなったとみられる」と書いているためなのか、日本メディアは一斉に、あたかも「習近平が謝罪した」ようなことを報道しているが、原文のどこに「初動の遅れ」や「謝罪」などと書いているだろうか。
この緊急会議は武漢赤十字会のスキャンダルに対して緊急開催されたものである。
だから日本の報道は「なぜか、突如」と、その理由が分からず「きっと初動対応が遅れたからなのだろう」と推測しているだけで、一つ一つのファクトの検証を行っていないように思われる。
そのようなことをしていたら、「習近平を国賓として招聘すること」同様、それが如何に間違った選択であるかを判断する力をも鈍化させる。注意を喚起したい。
*注記:長すぎるので控えたが、習近平は特に「中でも湖北省と武漢は重点中の重点だ」とも述べ、「医療防護物資の供給を保障せよ」と強調している。
さらにまったく「謝罪」とは無関係である証拠に「今年の経済社会発展の目標達成に努力せよ」とも檄を飛ばしている。日本は一律「自分が見たい方向」にニュアンスを勝手に変えて報道している。
「希望的観測」という主観で客観的事実を捻じ曲げると真実は見えなくなる。それは結果的に日本の国益を損ねる。
習近平は「初動対応の反省をしていない」し「異例でもない」
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士2/5(水) 16:54
習近平が2月3日の会議で「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という言葉がワンセットとなって日本のメディアを駆け巡っている。なぜこのような歪曲報道を拡散するのか。警鐘を鳴らしたい。
◆習近平は何と言ったのか
2月3日に習近平総書記が中共中央政治局常務委員会委員を招集し会議を開催した。筆者は「中共中央政治局常務委員会委員7人」に対して「チャイナ・セブン」という名前を付けたので、この後は便宜のため「チャイナ・セブン会議」と略称することにする。
2月3日のチャイナ・セブン会議で討議された内容は2月4日のコラム<習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」>でも述べたが、日本のメディアは異口同音に北京共同の報道<習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ>の線でしか報道していないので、それが如何に間違っているかを、単独に取り上げて考察したい。
以下に示すのは、共同通信の報道をはじめとして日本のメディアが一斉に報道しているチャイナ・セブン会議の内容の中の、根拠としている部分の文章である。
これをご覧いただければわかるように、会議では赤線で囲んだ一文は、その後に書いてある「5つの要」を指している。
まず、赤線囲みの中を丁寧に翻訳すると「このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。われわれは必ず経験を総括し、そこから教訓を学ばなければならない」となる。
そのためには、何をしなければならないかということが、この赤線囲みの下に列挙された5つの「要」である。この「要」とは「~しなければならない」という意味で、政府文書でそのように書けば、「~せよ!」ということに相当する。
要1:今回の疫病伝染対応で露わになった短所や不足に対して、国家応急管理システムを強化し、危機処理能力(緊急・困難・危険という重要任務に対処する能力)を高めよ!
要2:公共衛生環境に対して徹底的にローラー作戦を実施し(しらみつぶしに不衛生な部分を捜査せよ)、公共衛生の短所を補え!
要3:市場監督を強化せよ!どのようなことがあっても、違法な野生動物市場と貿易を徹底的に打撃して取締り、源から重大な公共衛生のリスクを制御せよ!
要4:法治建設を強化し、公共衛生の法治を保障せよ!
要5:システマティックに(系統的に)国家の備蓄物システムの欠点を整理し、備蓄物の効能を高め、肝心な物資生産能力と布陣を向上させよ!
以上である。
この指示のどこに、「初動対応の遅れを反省する」などという言葉があり、またまるで習近平が「謝罪の意思を表明した」ような要素があろうか。
報道は事実に忠実でなければならないし、正確でなければならない。
日本人の「希望的情緒」を挟み込みながら報道するのは、ジャーナリストとしての使命から外れるのではないだろうか。
そのようなことをすれば、正確な状況判断を中国に関してできない状況に日本人を追い込むことになり、日本国民の利益に貢献しないことを肝に銘じるべきだ。
◆自省するのは異例ではない
習近平に限らず、国家の指導者が「自省」をしてから「重要指示を出す」というのは、これまでずっと中国で一貫して行われてきたことだ。
毛沢東時代は省くとして、近くはトウ小平が日本の新幹線に乗って帰国した後に改革開放の号令を掛けた時には(日本に比べて)「我が国はまるで廃墟だ!」と叫んでから改革開放の指示を出した。
またソ連が崩壊した後の1992年1月に南巡講話をした時には、改革開放が遅々として進まない状況を「まるでヨチヨチ歩きの纏足女のようだ!」という侮蔑用語まで使っている。すべて檄を飛ばすのが目的だ。
中国のハイテク国家戦略「中国製造2025」を発布する前も、習近平は「我が国の様(さま)を見ろ!組み立て工場プラットホーム国家に甘んじていれば中進国の罠に陥る!」と「自省」をした上で檄を飛ばし、国家戦略を発布した。
都市化を進める「新型国家城鎮化計画」の時も同じだ。「我が国の都市化率のなんと低いことよ!」と嘆いた上で、農民工が帰郷できる田舎の郷鎮を城(都市)にしろと指示を出している。
ブロックチェーン技術を促進させよという談話を出す時にも「一回行けば済むようにせよ!」という役所の複雑性と怠慢を例に挙げている。これに関しては2019年11月5日付のコラム<習近平「ブロックチェーンとデジタル人民元」国家戦略の本気度>の「四」に書いた。
今般、習近平がチャイナ・セブン会議で「要1」に書いたような「ダメじゃないか!」という内容のことを言ったのは、「だから改善せよ!」という檄を飛ばすためである。
武漢の病棟が足りないために突貫工事で1000床のベッドを備えた病院を10日ほどで建ち上げたのも、その改善の一つだが、このチャイナ・セブン会議の指示により、本日(2月5日)、武漢では11の体育館や博物館などの大きな公共施設が、突貫工事で緊急医療施設に作り替えられている。こういったことに「緊急に対応しろ!」と言っているのである。
「人民の不満を抑えるため」と大手メディアも報道しているが、それもあろうが、もっと大きいのは本格的なパンデミックになって中国共産党による一党支配体制が崩壊してしまうことを習近平は最も恐れているだろう。
米中覇権競争の中、完全にアメリカに負けてしまい、中国経済も立ち行かなくなることを恐れているはずだ。
特に重要なのは「要5」で、これは正に武漢の赤十字会の不正行為を非難したものである。最も言いたいことを、文書の最後に持ってくるのは政府文書の特徴だ。
習近平が1月20日に今般の新型コロナウイルス肺炎に関する「重要指示」を出してから1月25日にもチャイナ・セブン会議を開き、
「早報告」をしろ(早く報告しろ)!
「漏報告」を無くせ(報告の漏れを無くせ)!
などという言葉を使って武漢を批判している。
李克強国務院総理が習近平国家主席の委託を受けて主催している国務院の「新型コロナウイルス感染の肺炎流行と防御抑制活動(工作)指導グループ(領導小組)」も昨日までに何回も会議を開催している。
この会議の中でも「早報告」や「漏報告」といったフレーズが頻出する。暗に武漢に対して、「いい加減にしろ」と言っているわけだ。
この指導グループの中には孫春蘭という、全中国の健康や衛生を司る副総理がいる。彼女の管轄下に中国の全ての健康衛生関係や厚生福利関係などが入っている。ちょうど米中貿易交渉の先頭に劉鶴副総理(経済担当)が立っているのと同じ立ち位置だ。
◆情報を歪める目的は何か?
この指導グループに関してさえ、李克強を組長としたので、これは権力闘争だという論説がまかり通っている。胡錦涛時代に温家宝(首相=国務院総理)が四川地震の現地訪問の先頭に立ったことでも分かるように、国務院総理が災害の現地視察に行くことが中国では慣例になっている。
2002年に発生したSARS(サーズ)の時は江沢民がなんとか胡錦涛政権にバトンタッチする時(2003年3月の全人代)まで公表を延ばし、胡錦涛のせいにしようとしたために、胡錦涛政権が誕生した後、江沢民との違いを人民に見せるために胡錦涛国家主席が現地視察に行ったことがあるが、これは例外だ。
権力闘争論者たちは、習近平は自分が危険な武漢に行きたくないので、李克強に押し付けたという分析をしており、また指導グループに健康衛生関係者がいなくて習近平の側近で固めているのは李克強の暴走を止めるためだと指摘しているが、健康衛生関係の最高トップである孫春蘭副総理がいる。それで十分だ。
こういった事実歪曲は何の目的で成されるのかが問題である。
日本人の注意を引きたいからだとすれば、自分可愛やの思考が優先していることになる。日本国民の利益を軽視している。
今般の共同通信のような「歪んだ真相の伝え方」をする目的は何だろうか?
決して意図的ではなく、中国語の読解力の問題だろうか?
目的はご本人に聞いてみないと分からないが、少なくともいま日本では「習近平が初動対応の遅れを認めた。習近平が自省するのは異例のことだ」というワンセットの言葉が独り歩きして、誰もがこの方向でしか報道していない。
これが修正もされずに流布していった時に、何が起きるかを考えてみよう。
その影響を考えると、たとえばだが、「習近平には謝罪する気持ちがあるんだ」→「ならば許してあげようか」→「ならば、国賓として来日させてもいいのではないか」という連想へと日本人を導く危険性がないと断言できるだろうか?
それがないことを、ひたすら祈るのみだ。
ジャーナリストの方々には、「真実を伝える」という使命を忘れないようにしてほしいと切望している。そうでないと、日本の国益を損ねることを危惧する。
https://youtu.be/BiakYy199EI
報道クリップ:新型コロナウィルスの真実~習近平の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」より
新型コロナウイルス肺炎、習近平の指示はなぜ遅れたのか?
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士 1/24(金) 9:03
昨年12月8日に最初の感染者が出た新型コロナウイルス肺炎に関して、習近平は1月20日になって初めて重要指示を出した。なぜ遅れたのか?「野生動物捕獲摂取」や地方議会「両会」などから意外な事実が見えてきた。
感染人数の推移や場所などに関しては、すでに多くのメディアが時々刻々報道しているので、ここではストレートに隠蔽工作を「誰がやったのか」、そして「何のためにやったのか」に焦点を絞って考察したい。
◆地元政府の隠蔽工作:その1――野生動物保護法と食品安全法
まず最も注目しなければならないのは、ウイルスの発生源が野生動物なども売っていた海鮮市場(華南海鮮卸売市場)だということである。
今のところ感染源として注目されているのはタケネズミとか蛇などだが、この海鮮市場では100種類以上の野生動物を売っていて、1月22日の北京の地方紙「新京報」は、そのメニューと価格表一覧を掲載した。
以下に示すのは、そのメニューと価格表である。
メニューによれば、タケネズミや蛇だけでなく、アナグマ、ハクビシン、キツネ、コアラ、野ウサギ、クジャク、雁、サソリ、ワニ……など、野生の動物が「食品」として日常的に売られているようだ。
それも調理して売るとは限らず、生のまま売ったり、目の前で殺したり、中には冷凍して宅配するというサービスもある。
問題は、このような野生動物を食べ物として売ることが許可されているのか否かということだ。
実は野生動物の捕獲や摂取を取締る法律はいくつもあり、特に2003年のSARS(サーズ)発生以来、さまざまな規制が試みられてきた。
たとえば「野生動物保護法」(第二十九条、第三十条)や「陸生野生動物保護実施条例」という観点や「食品安全法」あるいは刑法(第三百四十一条)においてさえ、さまざまな規制を設けている。
この野生動物メニューの中に、合法的なものもあるかもしれないが、100種類も供されていれば違法性のあるものも含まれているだろう。その入手方法となると、「養殖が許されている野生動物」もあれば「捕獲自身が禁止されている野生動物」もあり、ましていわんや「食べていい野生動物」となると数が限られる。
このような野生動物を食していること自体に違法性もしくは犯罪性がある。
そこで武漢政府の当局は、今回の新型コロナウイルスによる肺炎の発症を、できるだけ外部に漏らさないようにしたことが考えられる。特に中央政府に知られることを最も恐れたと考えていい。
なぜなら以下に示す「全国両会」が間もなく開催されることになっていたからだ。
◆地方政府の隠蔽工作:その2――地方議会である「両会」が開催される
中国では3月5日から日本の国会に近い機能を持つ全人代(全国人民代表大会)が始まるが、それと同時(一般に2日前から。会期は同じ)に開催される全国政治協商会議の二つを「全国両会」と称している。その前に各地方の全てのレベルにおける「両会」が開催され、おおむね春節前には終わるようになっている。
武漢市は湖北省にあるが、省レベルの「両会」は今年1月12日から17日まで開催されることになっていた。この湖北省両会における審議結果は、3月6日以降の各省レベル分科会において、習近平国家主席も参加して北京の人民大会堂で報告されるのである。
そのような「神聖な」湖北省両会を汚すわけにはいかない。
そこで武漢市政府は湖北省政府にも北京の中央政府にも、知られないように画策したと考えていい。
それを示す画像が中国のネットで出回っている。
それを以下に示す。
この赤い線の所にご注目頂きたい。12日に湖北省両会が開幕し、17日に「勝利閉幕(勝利的に閉幕した)」と書いてあるが、なんとその間だけは「密接に接触した者同士による新しい感染者はゼロ」とあるではないか!
つまり、この間だけは無事にすり抜けたかったのである。
その証拠に、1月19日になると、患者数が突然「3倍以上に」増加していることが報告されている。
6日間の間に発症した患者数を、19日に一気に発表したからだ。
この「裏事情」を知らない人々は、「19日を境に一気に感染が広がった」と報道しているが、それは実は「真っ赤なウソ!」なのである。
これが、北京、中央政府に感染の実態を報告しなかった本当の理由だ。
◆なぜ中央政府に情報が上がったのか?
ではなぜ中央政府・北京の知るところとなったのか。第一段階は「上海」の働きにある。
こちらの情報をご覧いただきたい。
2019年12月26日、上海市公共衛生臨床センター科研プロジェクトが通常のサンプル収集として、プロジェクトの相手である武漢市中心医院と武漢市疾病制御センターから発熱患者のサンプルを入手し、精密に検査した。
その結果、2020年1月5日に上海市のセンターは、この病原菌が未だかつて歴史上見たことのない「新型コロナウイルス」であることを突き止めた。
それでも湖北省政府は両会を開催し、「たしかに病例はあったが、問題は解決していますので大丈夫ですから」という無言の偽装メッセージを北京に送った。
しかしさすがに北京は疑わしいと思ったのだろう。第二段階として、1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。
そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。
こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。それを境に中国国内はパニックに突入。
1月21日になると、武漢市東西湖区市場監督管理局は「市場経営者に告ぐ」という通知を出したが、もう遅い。このページの「二」に書いてある漢字をご覧いただきたい。「食品安全法」とか「野生動物保護条例」などの文字があるのを確認することができるだろう。その項目にある「生きたまま殺す」などの文字を見ると、誠にゾッとする。
もっとゾッとする話を最後に付け加えておこう。
1月17日まで湖北省両会があったとはいえ、1月5日から19日までの空白期間がどうも気になったので、さらに詳細に調べたところ、1月21日に、武漢市で湖北省春節祝賀演芸会が開かれていたことを知った。
湖北省政府や武漢市政府の上層部が全員参加したとのこと。おまけに舞台の出演者の中には新型コロナウイルス肺炎の疑いがある症状を来たしている者が数名いたという。
それを押して、動きの激しい演技をさせたと中国のネットでは激しいバッシングが見られる。これだけ多くの人が武漢市の劇場に集まれば感染も広がるだろう。
それでも強行したのは、又しても繰り返すが、「新型コロナウイルス肺炎だと判明はしたが、武漢市の肺炎はすでに解決し、コントロールされているので、問題はありません」と偽装したかったものと判断される。そのため湖北省政府や武漢市政府の指導層がずらりと顔をそろえた。
しかしさすがに北京は今度は騙されず、1月23日に武漢市に対して封鎖令を発布した。武漢市民は一切武漢から外に出てはならないことになってしまったのだ。それを事前に察知した市民の中には封鎖令が発布される直前に上海などに脱出した者もいるという。その数、数千とも数万とも言われている。
注意すべきは「封鎖令」を出せるのは中央政府だけだということである。
どんなに武漢政府や湖北省政府が姑息な偽装工作を行っても、その運命は見えている。
それにしても、「北京に対する保身のためなら全世界を恐怖に巻き込んでも平気」という考え方の恐ろしさと愚かさよ。一党支配体制でピラミッド型に命令系統が徹底されているように外からは見えるかもしれないが、中央と地方の連携が如何にお粗末かということの証しの一つでもある。
14億人もいれば統率に漏れが出て来ることもあろうが、中国の病根を見る思いだ。
中国のもろさは、実はこんなところにもあるのかもしれない。
習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士2/4(火) 10:18
武漢赤十字会が、新型肺炎患者が最も多い武漢の指定病院・協和医院に全国から集まった物資や献金を渡していなかったことが判明。背後に金銭癒着がありネットが炎上。習近平を緊急会議開催へと追い込んだ。
日本の「習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ」という報道は不正確。
◆武漢赤十字会(紅十字会)で何が起きたのか
武漢赤十字会(中国語では紅十字会)には各地からマスクなどの医療物資や献金が集まっているが、医師や看護婦などを含めて8000人もの従業員がいる協和医院には3000枚しか配布されておらず、肺炎患者治療に関して指定されていない小さな特定の二つの私立病院に3万6000枚のマスクが配られていた。このことを知った中国のネットユーザーは激しく炎上。
まず何が起きたのかを見てみよう。
1月23日に武漢が封鎖されると、武漢市のいくつかの医院が新型コロナウイルス肺炎患者を治療するための医院に指定された。その中で最大の医院が協和医院(正式名:華中科技大学同済医学院付属協和医院)である。700ベッドあり、医者や看護婦を含めて8000人ほどの従業員が患者の緊急治療に当たっている。
ところが23日から29日にかけて協和医院が医院や医者個人の名義で、朋友圈、Wechat、Douban、学習強国など様々なところにマスクや医療用防護服などの物資不足を訴えたり、寄付を求めたりする声を発信してきた。
実はこの日までに中国国内外から多くの支援があり、海外の華人華僑からだけでも5622.8万個のマスク、73.8万着の医療用防護服が届いており、そのほとんどは湖北省、特に武漢に集中的に送られている。
それなのになぜ医療物資が不足しているのか不思議だと、中国共産党機関紙「人民日報」のウェイボーも1月30日17:28に武漢協和医院の訴えを転載している。転載された元の訴えはここにある。
これは1月30日12:29に武漢協和医院神経科の医師「Do先生」が発信したものだが、それが削除されたので、ダウンロードしてあった訴えを再掲載したものである。
大至急、「防護服3000着、医療用95型マスク5000個、外科用マスク8000個…」などが必要で、協和医院にはもう防護服もマスクもなく、一刻の猶予もないので緊急に助けて欲しいと書いてある。
事態の展開に慌てた湖北省赤十字会(紅十字会)は1月30日、新型肺炎発症後第1回の支援物資や支援金に関する使用状況を発表した。
それによれば、なんと、指定病院の協和医院は新型肺炎発症以来、3000個のマスクの配給と1万2千元(1元 = 15.46円)の献金しか受けておらず、武漢市の仁愛医院と天佑医院にのみ、それぞれN95型マスク1.6万個と36万元を寄付したとのこと(後に1.6万個ではなく1.8万個であったと訂正。
したがって合計3万6千個のマスク)。仁愛医院の従業員は協和医院の従業員の10分の1にも満たず、また美容整形とか婦人科、不妊治療あるいは性病関係などを扱うことで名が知れた病院であって、新型肺炎治療とは何の関係もない民間病院でしかない。
しかも協和医院に送られたマスクと献金は、武漢赤十字会からではなく、陝西省の韓という女性からの寄付であった。
1月31日になると武漢赤十字会が新型肺炎発症以来、第1回の援助物資に関する明細を発表した。武漢市には合計61の病院が指定医院になっているのだが、1月30日までに支援物資を配布した病院数は13であるとのこと。
中国政府の通信社である新華社通信によれば、30日までに武漢赤十字会はすでに「6.0808億元、9,316箱のマスク、74,522着の防護服、80,456個の医療用ゴーグルおよびその他の薬品や医療器械」などを受け取っているという。
その金と物資はどこに行ったのか?
協和医院の関係者によれば、武漢赤十字会の援助物資や献金などの配布先一覧表の中に、そもそも協和医院の名前がないという。
以上の情報の主たる内容は比較的リベラルな(習近平政権以前は非常にリベラルだった)「南方人物週刊」に書いてある。
また2月1日16:18には、協和医院の看護師が鳳凰網新聞センターの「正面FACE」に語った音声がウェイボー(微博、weibo)で発信された。鳳凰網による看護師への取材動画はこちらでも観ることができる。削除される可能性があるので、念のため複数ご紹介しておく。
看護師が何を訴えたのかに関して、以下に概略を記す。
●協和病院には医療用防護服が、もう1着もないのです。
●ニュースを見て、数万のN95マスクが武漢紅十字会(赤十字会)に届いていることを知りましたが、私たちのところ(協和病院)に届いたのは3000枚の普通のマスクでした。協和病院には8000人の職員がいるのに、3000個のマスクで足りるはずがありません。
●看護師長によると、紅十字会に物資を取りに行くときは、協和病院だと言わないようにしないとなりません。協和医院だと言ったら、物資をくれないのです。なぜなのか、理由は分かりません。
●協和病院は武漢で最初にコロナウイルス患者を受け入れる病院として指定されました。それなのに防護服がないので、協和病院西院ではゴミ袋で防護服を作って働く写真を見たということです。それが本当かどうかは分かりませんが。
これ以降、中国大陸のネットは炎上したのである。
◆なぜこのようなことが起きているのか?
協和医院の看護師長でさえ、なぜだか分からないと言っているので、ここからは推測的な考察となる。
まず考えられるのはこちら。
1月19日に中国政府のシンクタンクの一つ中国工程院院士(博士の上のアカデミックな称号)である鐘南山氏率いる「国家ハイレベル専門家グループ」が武漢市の現状視察にやって来た。そこで現状を把握した一行は、その日の内に北京に引き返し、中央に報告したという。こうして習近平の知るところとなり、20日に習近平が「重要指示」をやっと発布することになったわけだ。
この時に鐘南山院士が視察した先が武漢一の病院である協和医院だった。
そこで「人‐人」感染があることを知ったのだ。
実は協和医院の脳神経外科が1月7日に趙軍実という患者の外科手術をした。このとき趙軍実氏は新型コロナウイルスに感染していたらしい。
しかし武漢市はまだ新型コロナウイルス肺炎の事実を公けにしていないので、脳神経外科の医者たちは認識していなかったようだ。
ところが1月11日になって、患者が原因不明の肺炎に罹り、15日になると、その病原菌が新型コロナウイルスだと診断された。この患者によって、手術や治療に当たった14人の医者・看護師が新型コロナウイルス肺炎に罹ってしまったという。
趙軍実の感染源は武漢市の海鮮市場である可能性が高いが、手術や治療に当たった医者や看護師たちは誰一人海鮮市場には行っていない。つまり野生動物に直接接触はしていないのである。全員、患者である趙軍実から感染したことになる。
医者たちなので、新型コロナウイルスは「人‐人」感染することを自ら確認した。
鐘南山はこの協和医院に視察に行ったのだから、武漢で流行している肺炎は「人‐人」感染をする重要な証拠をつかんで、「これはまずい!」というので北京にとんぼ返りし、習近平に重大事態だと報告したわけだ。
これにより習近平が「重要指示」を全国に出したので、武漢市政府と湖北省政府は、「協和医院」を恨んだということになる。これは勝手な推測ではなく、武漢市の周先旺市長自身が、協和医院の14名の医療関係者が感染したことに言及しているし、また大陸の少なからぬサイトがこのことを取り上げている。
たとえば1月21日に中央テレビ局CCTVの取材を受けた時に武漢市長はこのことに触れているし、また「財新」というサイトも、このことに触れている。
特に武漢市の市長がCCTVの取材の際に「協和病院の脳外科がこの患者に対して入院前に新型コロナウイルスに感染しているか否かを確認しなかったのがいけないのだ」と言っている。つまり、協和病院の脳神経外科の不注意がこの一連の感染の原因だと批判しているわけだ。
武漢政府はそれまで「人‐人」感染はないとして、「十分にコントロールはできている」と偽装工作していたため、それがばれたので、協和医院のせいにしようとしているのである。
しかしCCTVの記者はひるまず、「それならあなたはなぜ1月19日に万家宴などという大宴会をやったのですか?」としつこく追い込んでいる。それに対して武漢市市長は、「いや、あれは、昔からある庶民の習慣なので…」などと弁解しているのである。
◆仁愛医院と湖北省政府幹部との金銭的癒着
さらに一党支配体制を揺るがすようなことが起きていた。
いつものことながら、ここまでの事態に立ってもなお、金銭癒着が背後でうごめいていたのである。
2月1日、独立真相調査報告「黒夜研究室」なるものが武漢赤十字会に関してさらなる真相を暴いた。その結果が多維新聞に出ている。
それによれば「仁愛医院の大株主は湖北省政治協商会議の委員だ」ということである。
また仁愛医院は湖北省赤十字会や武漢赤十字会と2012年から2019年の間に何度も協力イベントを開催したことがある。
北京の新京報網によれば、このイベントは「不妊治療」に関するもので、湖北省赤十字会と、このたびマスク1.6万個(のちに1.8万個と訂正)が配られた武漢の仁愛医院および天祐医院は、湖北省の不妊治療イベントで多くの資金を提供したという。
おまけに湖北省赤十字会の会長は湖北省の副省長で、金にまみれた背後関係がうごめいている。湖北省政府と武漢政府は赤十字会を通して美容整形や不妊治療あるいは性病治療などの分野で仁愛医院と天祐医院の二つの民間医院と金でつながった関係にあった。
そこにはさらに別のマスク製造民間企業との持ち株などに関する利害関係が複雑に絡んでいる。
◆習近平が緊急会議!
武漢赤十字会の、あまりに驚くべき実態にネットが炎上しているため、北京にある中国赤十字会の代表団が2月1日、武漢を視察した。人民網やその傘下の環球時報の電子版である環球網などが伝えている。
しかし、そのようなことで事態が収まるはずがない。
2月3日、習近平・中共中央総書記をトップとする「チャイナ・セブン」(中共中央政治局常務委員会委員7人)は会議を開催し、新型コロナウイルス肺炎に対する中央の領導小組(指導グループ)から事情を聴取し、現況に関する討議を行った。
その結果、習近平は厳しく現状を批判し、概ね次のように述べている。
――このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。対応策の中で露呈した数々の弱点を改善しなければならない。経験から教訓を学び、一層の検証を行い改善せよ!*注記(文末)
これに関して例えば「北京共同」が「初動対応の遅れに対する国民の強い不満を無視できなくなったとみられる」と書いているためなのか、日本メディアは一斉に、あたかも「習近平が謝罪した」ようなことを報道しているが、原文のどこに「初動の遅れ」や「謝罪」などと書いているだろうか。
この緊急会議は武漢赤十字会のスキャンダルに対して緊急開催されたものである。
だから日本の報道は「なぜか、突如」と、その理由が分からず「きっと初動対応が遅れたからなのだろう」と推測しているだけで、一つ一つのファクトの検証を行っていないように思われる。
そのようなことをしていたら、「習近平を国賓として招聘すること」同様、それが如何に間違った選択であるかを判断する力をも鈍化させる。注意を喚起したい。
*注記:長すぎるので控えたが、習近平は特に「中でも湖北省と武漢は重点中の重点だ」とも述べ、「医療防護物資の供給を保障せよ」と強調している。
さらにまったく「謝罪」とは無関係である証拠に「今年の経済社会発展の目標達成に努力せよ」とも檄を飛ばしている。日本は一律「自分が見たい方向」にニュアンスを勝手に変えて報道している。
「希望的観測」という主観で客観的事実を捻じ曲げると真実は見えなくなる。それは結果的に日本の国益を損ねる。
習近平は「初動対応の反省をしていない」し「異例でもない」
遠藤誉 | 中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士2/5(水) 16:54
習近平が2月3日の会議で「初動対応の遅れを認めた。反省を表明するのは異例」という言葉がワンセットとなって日本のメディアを駆け巡っている。なぜこのような歪曲報道を拡散するのか。警鐘を鳴らしたい。
◆習近平は何と言ったのか
2月3日に習近平総書記が中共中央政治局常務委員会委員を招集し会議を開催した。筆者は「中共中央政治局常務委員会委員7人」に対して「チャイナ・セブン」という名前を付けたので、この後は便宜のため「チャイナ・セブン会議」と略称することにする。
2月3日のチャイナ・セブン会議で討議された内容は2月4日のコラム<習近平緊急会議の背後に「武漢赤十字会の金銭癒着」>でも述べたが、日本のメディアは異口同音に北京共同の報道<習近平指導部、対応の誤り認める 新型肺炎で初動に遅れ>の線でしか報道していないので、それが如何に間違っているかを、単独に取り上げて考察したい。
以下に示すのは、共同通信の報道をはじめとして日本のメディアが一斉に報道しているチャイナ・セブン会議の内容の中の、根拠としている部分の文章である。
これをご覧いただければわかるように、会議では赤線で囲んだ一文は、その後に書いてある「5つの要」を指している。
まず、赤線囲みの中を丁寧に翻訳すると「このたびの感染は我が国の統治システムと能力に対する大きな試練だ。われわれは必ず経験を総括し、そこから教訓を学ばなければならない」となる。
そのためには、何をしなければならないかということが、この赤線囲みの下に列挙された5つの「要」である。この「要」とは「~しなければならない」という意味で、政府文書でそのように書けば、「~せよ!」ということに相当する。
要1:今回の疫病伝染対応で露わになった短所や不足に対して、国家応急管理システムを強化し、危機処理能力(緊急・困難・危険という重要任務に対処する能力)を高めよ!
要2:公共衛生環境に対して徹底的にローラー作戦を実施し(しらみつぶしに不衛生な部分を捜査せよ)、公共衛生の短所を補え!
要3:市場監督を強化せよ!どのようなことがあっても、違法な野生動物市場と貿易を徹底的に打撃して取締り、源から重大な公共衛生のリスクを制御せよ!
要4:法治建設を強化し、公共衛生の法治を保障せよ!
要5:システマティックに(系統的に)国家の備蓄物システムの欠点を整理し、備蓄物の効能を高め、肝心な物資生産能力と布陣を向上させよ!
以上である。
この指示のどこに、「初動対応の遅れを反省する」などという言葉があり、またまるで習近平が「謝罪の意思を表明した」ような要素があろうか。
報道は事実に忠実でなければならないし、正確でなければならない。
日本人の「希望的情緒」を挟み込みながら報道するのは、ジャーナリストとしての使命から外れるのではないだろうか。
そのようなことをすれば、正確な状況判断を中国に関してできない状況に日本人を追い込むことになり、日本国民の利益に貢献しないことを肝に銘じるべきだ。
◆自省するのは異例ではない
習近平に限らず、国家の指導者が「自省」をしてから「重要指示を出す」というのは、これまでずっと中国で一貫して行われてきたことだ。
毛沢東時代は省くとして、近くはトウ小平が日本の新幹線に乗って帰国した後に改革開放の号令を掛けた時には(日本に比べて)「我が国はまるで廃墟だ!」と叫んでから改革開放の指示を出した。
またソ連が崩壊した後の1992年1月に南巡講話をした時には、改革開放が遅々として進まない状況を「まるでヨチヨチ歩きの纏足女のようだ!」という侮蔑用語まで使っている。すべて檄を飛ばすのが目的だ。
中国のハイテク国家戦略「中国製造2025」を発布する前も、習近平は「我が国の様(さま)を見ろ!組み立て工場プラットホーム国家に甘んじていれば中進国の罠に陥る!」と「自省」をした上で檄を飛ばし、国家戦略を発布した。
都市化を進める「新型国家城鎮化計画」の時も同じだ。「我が国の都市化率のなんと低いことよ!」と嘆いた上で、農民工が帰郷できる田舎の郷鎮を城(都市)にしろと指示を出している。
ブロックチェーン技術を促進させよという談話を出す時にも「一回行けば済むようにせよ!」という役所の複雑性と怠慢を例に挙げている。これに関しては2019年11月5日付のコラム<習近平「ブロックチェーンとデジタル人民元」国家戦略の本気度>の「四」に書いた。
今般、習近平がチャイナ・セブン会議で「要1」に書いたような「ダメじゃないか!」という内容のことを言ったのは、「だから改善せよ!」という檄を飛ばすためである。
武漢の病棟が足りないために突貫工事で1000床のベッドを備えた病院を10日ほどで建ち上げたのも、その改善の一つだが、このチャイナ・セブン会議の指示により、本日(2月5日)、武漢では11の体育館や博物館などの大きな公共施設が、突貫工事で緊急医療施設に作り替えられている。こういったことに「緊急に対応しろ!」と言っているのである。
「人民の不満を抑えるため」と大手メディアも報道しているが、それもあろうが、もっと大きいのは本格的なパンデミックになって中国共産党による一党支配体制が崩壊してしまうことを習近平は最も恐れているだろう。
米中覇権競争の中、完全にアメリカに負けてしまい、中国経済も立ち行かなくなることを恐れているはずだ。
特に重要なのは「要5」で、これは正に武漢の赤十字会の不正行為を非難したものである。最も言いたいことを、文書の最後に持ってくるのは政府文書の特徴だ。
習近平が1月20日に今般の新型コロナウイルス肺炎に関する「重要指示」を出してから1月25日にもチャイナ・セブン会議を開き、
「早報告」をしろ(早く報告しろ)!
「漏報告」を無くせ(報告の漏れを無くせ)!
などという言葉を使って武漢を批判している。
李克強国務院総理が習近平国家主席の委託を受けて主催している国務院の「新型コロナウイルス感染の肺炎流行と防御抑制活動(工作)指導グループ(領導小組)」も昨日までに何回も会議を開催している。
この会議の中でも「早報告」や「漏報告」といったフレーズが頻出する。暗に武漢に対して、「いい加減にしろ」と言っているわけだ。
この指導グループの中には孫春蘭という、全中国の健康や衛生を司る副総理がいる。彼女の管轄下に中国の全ての健康衛生関係や厚生福利関係などが入っている。ちょうど米中貿易交渉の先頭に劉鶴副総理(経済担当)が立っているのと同じ立ち位置だ。
◆情報を歪める目的は何か?
この指導グループに関してさえ、李克強を組長としたので、これは権力闘争だという論説がまかり通っている。胡錦涛時代に温家宝(首相=国務院総理)が四川地震の現地訪問の先頭に立ったことでも分かるように、国務院総理が災害の現地視察に行くことが中国では慣例になっている。
2002年に発生したSARS(サーズ)の時は江沢民がなんとか胡錦涛政権にバトンタッチする時(2003年3月の全人代)まで公表を延ばし、胡錦涛のせいにしようとしたために、胡錦涛政権が誕生した後、江沢民との違いを人民に見せるために胡錦涛国家主席が現地視察に行ったことがあるが、これは例外だ。
権力闘争論者たちは、習近平は自分が危険な武漢に行きたくないので、李克強に押し付けたという分析をしており、また指導グループに健康衛生関係者がいなくて習近平の側近で固めているのは李克強の暴走を止めるためだと指摘しているが、健康衛生関係の最高トップである孫春蘭副総理がいる。それで十分だ。
こういった事実歪曲は何の目的で成されるのかが問題である。
日本人の注意を引きたいからだとすれば、自分可愛やの思考が優先していることになる。日本国民の利益を軽視している。
今般の共同通信のような「歪んだ真相の伝え方」をする目的は何だろうか?
決して意図的ではなく、中国語の読解力の問題だろうか?
目的はご本人に聞いてみないと分からないが、少なくともいま日本では「習近平が初動対応の遅れを認めた。習近平が自省するのは異例のことだ」というワンセットの言葉が独り歩きして、誰もがこの方向でしか報道していない。
これが修正もされずに流布していった時に、何が起きるかを考えてみよう。
その影響を考えると、たとえばだが、「習近平には謝罪する気持ちがあるんだ」→「ならば許してあげようか」→「ならば、国賓として来日させてもいいのではないか」という連想へと日本人を導く危険性がないと断言できるだろうか?
それがないことを、ひたすら祈るのみだ。
ジャーナリストの方々には、「真実を伝える」という使命を忘れないようにしてほしいと切望している。そうでないと、日本の国益を損ねることを危惧する。