港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


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『処女の泉』 旅の友・シネマ編 (3) 

2018-06-13 23:20:34 | 旅の友・シネマ編



『処女の泉』 Jungfrauskallen (瑞)
1960年制作、1961年公開 配給:昭映フィルム モノクロ
監督 イングマール・ベルイマン
脚本 ウラ・イザクソン
撮影 スヴェン・ニクヴィスト
音楽 エリク・ノルドグレン
主演 テーレ … マックス・フォン・シドー
    カリン … ビルギッタ・ペテルソン
    インゲリ … グンネル・リンドブロム
    メレータ … ビルギッタ・ヴァルベルイ

十六世紀の山村の豪農テーレの一人娘カリンは養女インゲリと二人で遠く離れた教会にローソクを捧げに行くことになり
二人は馬に乗って出発した。教会までの道は長く途中で異教徒で身重のインゲリは小川の小屋で待つと言う。カリンは
一人で馬を進めたが道中で少年を含む三人の羊飼いの男に会う。その男たちはカリンを暴行したうえ殴り殺してしまった。
夕刻になりカリンを待つテーレの家にカリンを殺した三人の羊飼いたちが現れ一宿一飯を乞うので彼らを受け入れたが、
男たちががカリンから剥ぎ取った衣服をカリンの母メレータに買ってくれと頼む。テーレはようやく事態を察して三人を
殺してしまう。テーレは片隅に隠れていたインゲリに事のあった場所に案内させた。
テーレはそこで変わり果てたカリンを抱き上げるとその場所から奇跡のように泉が湧き出した。テーレは復讐の罪の償いに
ここに教会を建てると誓うのであった。



中世説話の映画化なのですが、ベルイマン作品の特徴でもある神と人間とのかかわりあいに対する疑念とこれらから
派生する人間不信を北欧独特の神秘主義という視覚的な造形として見事に映像化しています。そしてその純潔清澄な
映像が表現したのは最も暗い人間の根源的な罪であり、絶望的な世界に救いを見出す人間の姿そのものでした。
理不尽な事件にもなぜに神は沈黙されるのかというやり場のない怒り、そのために自分もまた罪を犯したという連鎖。
人間の原罪と、神の不在に向き合うベルイマンの叫びが響きわたる傑作です。
特にモノクロームならではの光と影のコントラストによる映像美が他に類を見ないほどの完璧な出来栄えとなりました。
ベルイマンの【神の沈黙】というテーマは後の『沈黙』『鏡の中にある如く』へと挑戦を続けていくことになります。