引き続き、朝顔、酔芙蓉の花色の変化です。
先回、朝顔も酔芙蓉も、時間がたつにつれて花色が変化するのは、花色の成分、アントシアニンの変化によるものだということを、簡単な理科実験で確かめてみました。
でも、どうしてそんな変化が起こるんでしょうか。
根から栄養分が吸収され、蔓や幹から葉、花へといろいろな成分が送られて、アントシアニンが作られるはずです。
朝顔では、蕾の段階でアントシアニンが作られ、花が開くと、液胞内のpHが酸性からアルカリ性に変わり、色も青から赤紫へと変化します。
酔芙蓉の場合、花が開くとアントシアニンが作られ始め、花色は白からピンクへと変わります。
両方とも、色の変化は、一日(実際は、半日)かかって進みます。
ここで、2つの疑問が。
①色の変化は、根から栄養分が補給されて起こるのだろうか?
②色の変化には、日光が関係しているのだろうか?
そこで、早朝、花を摘み、真暗な箱の中に入れて、時間変化を見てみました(写真をとる時だけ、やむを得ず外へ)。
左が酔芙蓉、右が朝顔(いずれも、水に浸けてある)
午前7時
午後1時
午後4時
午後6時
午後9時
翌朝7時
おー、御見事。
茎と繋がっていなくても、光がなくても、色が変わりました。
しかも、両方とも、午前中はそれほどでもないのですが、午後になると、急速に色が変わりました。
このような時間経過は、朝顔や酔芙蓉の花で、実際に見られる変化と同じです。
まるで、時刻に合わせて変化しているみたいです。
これは、体内時計と呼ばれているものです。
動物、植物、そして、人間も、リズムをもっています。一番はっきりとしたものは、一日のリズムです。外の時間の流れとは別個に、自分の中に時間調節の仕組みをもっていて、体が一日を刻んでいるのです。海外旅行などで、時差が大きいと、体がもっている時計とのズレを調整するのに長くかかるわけです。
体内時計の仕組みは、少しずつ、科学的に明らかにされつつあります。体内時計の基になっているのは、時計遺伝子群とよばれる遺伝子とそれによって作られる時計タンパク質です。時計遺伝子が作用して時計たんぱく質が作られ、それがある量に達すると、スイッチがオフになります。時間がたち、時計たんぱく質が少なくなると、再び、スイッチが入って、時計たんぱく質が作られます。結果として、時計遺伝子と時計タンパク質が時間を作り出しているのです(2017年、ノーベル医学生理学賞受賞研究)。
植物の時計遺伝子は、日長や温度の影響を受けるので、植物は季節に敏感なんですね。
人間の場合、体内時計は脳にあります。それに対して、植物には、脳はもちろん、中枢神経もありません。司令塔のようなものがないので、体内時計があっちこっちにあっても不思議ではありません。
朝顔と酔芙蓉の花。花が開いた段階で、花の中に、体内時計がセットされた状態になるのですね。だから、蔓や枝から外れても、きちんと時間通りに変化をすると考えられます。
おー、それなら、ちょっとアートしてみましょう!
題して、『時間の花』
ということで、白磁の大水盤を引っ張り出してきました。
朝顔と酔芙蓉の花を摘んできて、水に浮かべました。
『時間の花』
午後11時
午後2時
午後5時
午後8時
床の間にそれらしい書軸を掛け、アートは完成です。
加藤旭嶺『逍遥任自然』
加藤旭嶺:書家、山形出身、1870~1960年、名、登太郎、号、旭嶺、坦齋。