亀山焼の深皿です。
亀山焼は、江戸後期、長崎において、50数年間焼かれた、精細な磁器です。
径21.9㎝、 高4.3㎝
細かな胎土、純白の素地に、鮮やかな呉須で、洗練された山水図が描かれています。
亀山焼は、木下逸雲、祖門鉄翁、三浦吾門、田能村竹田などの絵師が下絵を描いたといわれています。
この品の山水紋は、亀山焼の中でもよく見られる代表的なパターンです。
かなり細やかな筆使いです。
上部の山々は輪郭をとらずに描かれています。日本画でいえば没骨法。滲みもなくシャープなのは、墨はじき技法が使われているのでしょうか。
裏側も、瀟洒な梅花紋。
高台の畳付は、幅広く、真っ平です。
高台外脇に3本、外縁に2本、内側に1本、計6本の圏線があります。
このように、絵付けには大変見るべきところがある亀山焼です。が、「幻の亀山焼」と呼ばれるほど、希少な物とは思えません。その気になれば、見つけることができます。短い期間ではありましたが、かなり大量に焼かれたのでしょう。
この品も、素焼きの段階で、高台内に大きな傷があるにもかかわらず、かまわず釉薬をかけて焼いています。また、その外側には、大きなくっつきもあります。
素地は純白ですが、器体の作りは、伊万里焼よりも分厚く頑丈です。まして、平戸焼のように薄手、精細ではありません。一部の上手品を除いては、日用品をめざしていたのではないでしょうか。
文化4年(1807)開窯、慶応元年(1865)閉窯。
その後数年間、坂本龍馬がこの場所に亀山社中を設立し、武器の斡旋や海運業などを行ったことはよく知られています。龍馬も、亀山焼の盃を愛用していたといわれています。洒落た絵付けながら丈夫な亀山焼は、庶民派の龍馬のお気に入りだったのでしょうか。