QT Lab.品質・技術研究室

技術者のための品質工学、品質管理、統計学、機械設計、信号処理を
解説します。

技術者にとっての仕事にたいする思いとは

2014-12-05 12:13:54 | 技術・エンジニア

 昔は・・・だった。とか、俺たちの若いころには・・・ などというとかなり脳の老化が進行し、
記憶の劣化が進んでいることを十分認識しつつも

 私は入社4年目から、約3年半にわたって4機種のタイムレコーダを連続して開発しました。
 一番最初に開発した機種がもっとも汎用性が高く非常に広い仕様をカバーするべき機械
だったので、タイムレコーダに関する膨大な知識を得ることができました。

 最後に開発した機械は、当初おどろくほど低いコストを設定され、それを満足するために
メカニズムを主体とした構成で、試作完成時点でいろいろな方々に
「お茶を運びそうだな」などといわれたカラクリ装置の様相を呈していました。
 この機械の正式出図がすみ、ドキュメント整理や金型業者対応のために休日出勤
していたところ、当時の社長がご自宅からプロジェクトリーダの私に直接電話をかけてきて、
「あんな機械すぐ中止にしろ!」 といわれました。わすれもしない、1987年6月10日
(時の記念日)でした。

 社長には安いだけで、全く魅力が感じられなかったようです。そのため、金型製作などを
ストップして、全く別なコンセプトで再設計することになりました。

 しかも、ある式典に間に合わせるため、設計期間はわずか3か月、そして、今までにない
機能を多数組み込む、というめちゃくちゃな要求でした。

 しかし、予定より12日遅れでしたが、設計開始からちょうど100日で出図することが
できました。そして、ある式典に試作を20台初公開したところ、当日に1万台の注文が
はいり、翌日の午前10時までにさらに5千台の注文が・・・
 
 当時の工場の容量を軽くオーバーしてしまったため、その直後から受注を停止することに
なりました。

 ディーラーにとってはそれほど魅力的に映ったのです。なにしろ、今までにない機能が
多数盛り込まれていて、しかも、安いのですから。

たぶん、タイムレコーダとしては、世界一売れた機械だと思います。

数年前、深夜アニメでその機械が登場したとき、なんともいえないうれしさを感じたものです。



 なぜ、短時間で新規機能を多数盛り込んだ機械が開発できたのか?

 その機械の開発設計にたずさわった技術者が、1機種開発が終わるたびに、
「こういう機能があるといいな。それには・・・すればよいかも?」などと、常に自分たちが
つくりたいタイムレコーダの機能に思いをはせ、それの実現方法を常に考えていたから
だと思います。

 技術者の仕事に対する姿勢は、
「なにができるか?ではなく、なにをしなければならないのか?なにを実現したいのか?」
ということが重要だと思います。