HP版 『QT Lab.品質・技術研究室』 の 【品質工学】 のページで、パラメータ設計は、ダーウィンの進化論を科学・技術へ応用したものと解説しています。
進化論とは遺伝子を変異させて子孫に多様性をもたせ、時間で変化し空間で異なる環境の中でほとんどの子孫が淘汰されたとしても、わずかでも環境に対応できる子孫がうまれる確率を高めることで、遺伝子の核心(永続的に伝え続けなければならない情報)を伝達するという、生物の生存戦略のことです。
この考えは開発や設計にパラメータ設計としてだけでなく利用できる戦術となります。
私は、コイルスプリングの設計に進化論を利用しています。
コイルスプリングの設計は、おもに4つの要素 (素線径、コイル平均径、ターン数、取り付け、および、作動時の長さ) を試行錯誤して自身が目的とする設計条件 (動作荷重や密着高さなど)に合致するように追い込んでいく設計手法が一般的です。
しかし、この作業がなかなか大変で私が若いころは筆算でコイルスプリングを設計には、とても時間がかかっていました。そのため、とりあえず設計条件を満たすことができる諸元がみつかるとそこで作業を終了させてしまい、図面化にとりかかることも多かったのです。
しかし、コンピュータがつかえるようになって、設計方法をかえました。まず、制約条件(設計上コイル平均径、密着高さ、荷重)をさだめ、その範囲のなかで、素線径(JISで決められている素線径の寸法)、ターン数(たとえば1/4ターンきざみ)、コイル平均径(制約条件の範囲のなかで、たとえば0.1㎜きざみ)のすべての組み合わせでスプリングをとりあえずコンピュータ上でつくってしまいます。
そして、そのなかで、製作可能、かつ、スプリングとして機能できる組み合わせだけを生存させ、それが成立しない諸元を淘汰します。
このようにして、生き残ったスプリングを1次の候補とします。つぎにこの1次の候補のスプリング群について、素線径、コイル平均径、ターン数、自由長などの公差を振って、品質工学の 【許容差設計】 や公差解析をおこない、最適な設計諸元(チャンピオン)を抽出します。
そして、モンテカルロシミュレーションをつかって生産時点での品質を確認します。
この設計戦術は非常に有効で機能・品質両面で最適化されたスプリングが設計できます。
Excel_VBA で設計シートを1度作りました。汎用的につかえるのでとても重宝しています。
生き残った1次候補のなかで、ばね定数が小さいものがチャンピオンになることが多いのですが、そうではない場合もあることを蛇足ながら記しておきます。