地球温暖化に伴い、将来的な雨量の増加も指摘されているなかで、
水害に強い日本の構築は?
東京工業大学 鼎 信次郎 教授に聞く
尾崎 洋二 コメント:鼎さんの指摘にある「天気予報のように、5日先までの河川洪水の
予測を公表できる、“洪水予測センター”」をぜひ日本にも設置して欲しいと思いました。
車で移動中における死亡割合が3割から5割という今回の台風災害において、やはり「傘
をさして歩ける」という安全な時に自宅や避難所に移動するには、早めの移動しかありませ
ん。そのためにも“洪水予測センター”は必須かと思います。
また1-低コストで設置できる簡易型の水位計を日本中に積極的に設置、2-現在の河川の
治水計画には温暖化の影響が入っていないので、きちんと考慮された治水画が必要、3-総
合治水という考え方からの、 町全体が雨水を吸収しやすい“スポンジシティー”の構築など
の4つの提案は貴重でした。
-----以下 公明新聞 11月30日2019年-要点抜粋箇条書き-----
Q1-今回各地で記録的な水害が発生した要因は?
A 今年の台風19号の特徴は「超巨大台風」と称されるように、非常に広範囲にわたって大
雨をもたらしたことだ。
その結果、河川の本流で水位が上昇し、それに伴い支流の水位も増加して川が逆流するよ
うな現象「バックウォーター」が発生したことが水害の要因の一つだ。
本流と比べて河川の整備が進んでいない支流の中小河川で氾濫した。
Q2-温暖化による影響も指摘されているが。
A 気象庁の気象研究所によると、昨年の西日本豪雨では、総雨量のうち6~7%が温暖化
の影響だと分析されている。
今回も少なくとも5~10%は温暖化の影響があると見ていいだろう。
つまり、仮に総雨量が500ミリだった場合に、温暖化の影響によって25~50ミリ
程度の雨量が増えているということだ。
温暖化はこれからも進む。
将来的には温暖化の影響の割合が10~15%になることも予想されるので、ますます
雨量は増加していく恐れがある。
Q3-バックウォーター対策で大事な点は?
A 今回の台風災害では、バックウォーターの危険性があらためて浮き彫りとなった。
この対策の中心となるのが、支流の中小河川の整備だ。
本流河川は、国が戦後、相当な時間と労力をかけて堤防などの整備を進めてきており、
これからは支流河川の整備が急務だ。
その多くが都道府県や市町村が管理しているが、整備が滞ることがないよう、国がリー
ドすべきだ。 同時に河川の状態把握に向けた水位計の設置も、今後ますます重要になる。
特に上流を中心に多くの観測データーが得られれば、洪水予想の精度も上げられる。
低コストで設置できる簡易型の水位計はポテンシャル(データー活用の可能性)が高い。
日本中に積極的に設置してもらいたい。
Q4-ほかには?
A 現在の河川の治水計画には温暖化の影響が入っておらず、きちんと考慮された治水計画
が求められる。
温暖化で海面も上昇するので、河川と海沿いの両方を含めた治水計画が必要だ。
ダムの運用についても、発電は農業用水に利用する関係者と調整し、大雨時には、事前
に水位を下げておける仕組みを検討することが大事だ。
Q5-水害に強いまちづくりに向けて必要なことは?
A 求められるのは「総合治水」という考え方で、まちの至る所に調整池や、水を地下に浸
透させる施設などを数多く造っていくことだ。
町全体が雨水を吸収しやすい“スポンジシティー”の構築と言える。これが効果の高い水
害対策となる。
具体化には、法整備も必要だ。東日本大震災を受けて、津波対策を講じたまちづくりを
進める総合的な法律ができている。
水害対策でも法整備が必要だ。
河川氾濫に備えて、川沿いにある本堤とは別に、住宅地側に第2の堤防を造る「二線堤」
の整備も重要だ。 本堤が破られた場合、被害の拡大を防げるよう、「二線堤」をまちの中
に組み込むことが求められている。 最初の“守備”だけではなく、万一に備えた二つ目の
対策の準備も大切だ。
Q6-河川情報発信のあり方については?
住民に最適な情報を伝える洪水予測システムの確立が課題だ。
例えばイギリスでは、全土を覆った2007年の大洪水を受けて設立された洪水予測セ
ンターが、いわば天気予報の河川版として、5日先までの予測を公表している。
日本においても、この地域の河川は洪水の危険性が高いということを、数日前から、あ
らかじめ住民に分かりやすく伝える仕組みが作れるのではないか。
Q7-住民側の意識改革では?
マイ・タイムライン(自分の防災行動計画)を準備しておくことは非常に重要だ。
人間は準備していること以上の行動はできない。
自治体作成のハザードマップ(災害予測地図)で、どの場所が浸水しやすいかを事前に
確認しておくといい。
今回、被害が出なかった所も、運よく出なかっただけだ。
ハザードマップに色が付いていない場所でも決して安心しないでほしい。
自治体もハザードマップの更新を行うことは当然だが、凝り過ぎる必要はない。
あくまで「一つの目安」として示すことが大事であり、ハザードマップが未整備の河
川を早急になくしていくべきだ。
「避難」の意識改革も被害を少なくする対策の一つと言える。
避難所に行くことばかりが避難ではない。移動中に負傷・死亡することも少なくない。
大雨の際、頑丈な建物の上階にいる場合には、外に出ないこと自体が避難になる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます