建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

命綱の使命・役割(Ⅱ)

2024-05-13 08:08:12 | 建設現場 安全

命綱の使命・役割    ――― つづき―――

鉄骨工事、これには絶対必要だ。
親綱が無いと柱に直接巻き付けても墜落防止を心掛けるのは、危険性を肌で感じられ
るからだ。
だからと言う訳ではないけれども、弋(とび)さんが墜落したというのは滅多にしか聞かない。

鉄骨の上でボルトを締める時、安全ネットが張ってあっても危険を感じられるの
で、鉄骨
の上では誰もが用心して(気を引き締めて)作業する。

命綱の着装・使用の問題ではないのだ。
《気持ちの問題》が大きいと私は思う。

この鉄骨の上にスレートとか折版(せっぱん=トタン板の様なもの)で屋根を葺(ふ)
業種の職人さんは比較的、墜落事故に遇いやすい条件は揃っている。
でも、屋根の上には命綱を固定し引っ掛けておけるモノ(親綱類)は何も無い。

それでも万一事故が発生すると、
「命綱を着装してなかった、使用していなかった」
を理由のトップに掲げている。

だから今後の対策として
「命綱を着用しよう」
と結論を書く。
これで墜落事故が無くなれば、万々歳だ。
空を飛べない限り『猿も木から落ちる』と言うではないか。
(この場合意味が違ったが、落ちると言う事をいいたいのだ)

命綱に頼るよりも、落ちる穴を落ちない様にフサグ事が先決なのは、皆承知
なのだ。
屋根の上ならここを通りなさいという専用通路を作る。
マンホールの蓋(ふた)は鎖付きとして、必ず蓋を閉めておく。
人が落ちそうな所はネットを張る、
スキマは塞(ふさ)ぐ、手すりは必ず取り付ける―――。

全て結構な事で重要項目だ。
安全勉強会ではイイ答えを出して、合格点をも
らっているのに、現実は危険が・・・。

建築現場を知ってか知らずか、5Kの中の一つ(危険のK)が言われているのが、
気に掛かる所なのだ。

安全、安全と常に言っているのは、裏を返せば危
険がいっぱいに思える様だ。
だが、やる事をきっちりやり、不安全行動を各々
が自覚すれば、事故はかなり
防ぐ事が出来ると、皆も思っている事だ。

とにかく、現場内の安全監理は終わりがない位に、やるべき事が多い。
これを、
『統括安全衛生責任者』
という腕章を巻いた、現場最高責任者は
「全
て毎日、最大もらさずチェックしなさい、事故が起きると全てあなたの責任ですよ」
と含みを持った任命書(現場辞令書)を、所長は頂く。

時には業務上過失致死の容疑で、警察に手錠出頭になる場合(出頭の責任アリアリ)は
『社長代行してる所長なんだよ』
と言う意味の任命書なんぞ、私は欲しくない。

《落ちる》から対策を考えるのか《落とさない様に》対策を考えるのかの、
発点によって、安全に対してのチェックも変化して来るのではないだろうか。

「命綱を着用させていたが本人が使用しなかったので墜落したのだ」
と責任の一端を逃れる様な監理、命綱着用、墜落防止注意の指導、看板の掲
では意味は無く、安全監理だとはとても言えない。
事の本質は、
『危険な所を作らない・放っては置かない事だ』と言ってみた。

いとも簡単な結論だが、墜落事故だけは首から縄をかけて(この場合命綱を
付けてが正解かな)でも、起こしたくない。

何も高い所からの危険だけでなく、たったの1メートルでも、後方へ倒れる
と(プロレスのバックドロップ)になって、
『1メートルで《イチメイ(一命)》取る』
事にもなりかねない。

特に脚立とか梯子を使って、簡単な作業でしかも比較的低い所こそ、思いも
よらない重大災害が待ち受けている。

ここでも、ひとたび事故をおこすと『命綱』が論ぜられるものだ。

実際、脚立の上で命綱をどの様に・・・しろと・・・だ。
『命綱の有効活用』が決めてなのだが、結論は出ない。

有効に使おうと前向きに考えれば、現場では常に命綱を先ず着装し、重くて
も腰に巻いて仕事をする。
(最近は両肩にタスキ掛け(命綱2組)するように指導もしているよね)
イザという時に身を守る事が出来る感覚を持ちたい。

命綱の重さを感じれば、墜落の怖さを予知できると思える筈だ。
重いから、低いから、引っ掛ける所が無いから、あれば仕事にならないから
等の言い分を聞いていたら、結局は
「着装したくない」
という事を前提にして、安全
を語っているとしか、私には思えない。

私自身、命綱を付けて設計図を脇に挟んで現場内を巡察するのは『矛盾』を
感じるし、正直言っ
て嫌いだ。

現場の決まり、会社の決まりなのだから―――という押し着せのも
のだからか、
命綱に対する恩恵を受けていないからかで、考えの別れ道だね。

鉄骨工事の現場なら、擦り切れる位まで使うほどの命綱だから、本来の使用
目的に合った安全教育でいいと私は言いたい。
我身を守ってくれる『綱』だもの、行動に於いて『命綱』に感謝しよう。

―――命綱を『語る道具』にして欲しくない……これが私の結論だ――――


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