建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

7月熱中症完璧防御

2023-07-03 08:46:10 | 建設現場 安全

   七月二十五日(火) 晴れ 

バカヤロウ、この柱もアンカー違うじゃあないか、どこ見てるんだ!アンカーボルトを直す迄、
俺たち帰っているよ、監督さんよ、組の方で直しなよ!!」
「何とか建ててよ、鉄骨の搬入トラックも入って来た事だし・・・」
「何ともならねえよ、そのまま工場へ持って帰らせろ!
と言い争って、汗がグッショリ出ている所で目が覚めた。

夜中の3時だった。
もう鉄骨建方が工事が終わってホッとしているつもりだったのに、神経の疲れは体に入り
切っていたのだ。
抜け切っていないのだった。
(もう大丈夫だ、大丈夫なのだ・・・)
自分に言い聞かせても、心臓のドックンドックン音が脳裏までも聞こえて届いて来る。

冷蔵庫からビールを出して、心を落ち着かせようと飲んでいたら、
(昔もこんな事があったなあ……)と思い出していた。
(私が計画したレッカーで果たして建方が可能だろうか?鉄骨の手配や作業手順にはミスがな
いか?つり込みワイヤーロープの予備は?安全ネットは?全てチェックしたにもかかわらず、
鉄骨建方中には眠れない日々があったなあ)
と、そういう事をしみじみ思って、
(俺もトシを取ったんだ、あの頃のひたむきさは何処へ行ってしまったんだろうか―――)
と悩んでしまった。

朝、少し遅れてKビル出勤となったがM店舗へ廻った。
夢が何となく現実と重なっているようで、まるで昔の自分が歩いている様だった。

小さい鉄骨造の建物でも、むき出しのままの鉄骨本体の組立完了姿は立派だ。
(今は骨組だけだが、自立しているんだ、ここに建っているんだ、さあ仕上げ材料を何なりと
くっ付けて飾ってくれよ、裸は寒いゼ・・・)
とでも鉄骨柱君が言っているみたいだ。

 鉄骨造は(橋、鉄塔もそうだが)意匠面(見ため)でも全体のバランスが良く設計されている。
絵になる構造体でコンクリート構造物より「美しさ」がある。
こう思うのは私の偏見だろうか。

 鉄骨工事は『眺められている』事を一般の工事以上に気をつけておく事が必要だ。
鉄骨工事の建て方中は青空・特に今は真夏の真っ盛りと言うのに日陰が全くない。
炎天下で日陰もない工事現場に、
「これから暑い時期になりますので熱中症に気を付けましょう」
のポスターが1枚掲示してあるが、熱中症になれば現場の責任の如く言われる。

気を付けているだけで防げるのならば、建設業界に熱中症や《労災》は発生しない。
挨拶用の言葉になっているだけだから、気に入らない。
水分を十分補給し、気分が悪くなったら涼しい所で休息して、体を冷やす時は……等の話を耳
に入れ、ポスターを目にすれば《気を付けられる》とでも思っているのでしょうね。

最近、建設現場から熱中症で病院へ運ばれる人が年々増加しているのだから、もっと有効な熱
中症対策があってしかるべき話が聞こえて来ないのが、現状であるみたいだ。

「車の運転には注意して安全運転しましょう」
と車の免許更新時に言われるのだが、死亡事故は発生するし、少なくもならない。
掛け声をかけている側から、どこまで本気なのか熱意が伝わって来ません。
交通安全に掛け声をかけて運転席にはショックアブソーバーも装着されているし、死亡事故の
責任は運転手側に原因があるとでも言いたげな《車は安全だ》と言う様な宣伝もある。

 これは熱中症対策を呼びかけていても、救急車で搬送される人が年々増えていて、注意喚起の
ポスター枚数を増やすだけの《呼びかけ》と似た様なモノであろう。

「安全に注意しなさい、スピードは控えめに」
の決まり文句に対して、
「温度が高くなったら、涼しい所で作業しなさい、水分補給をこまめにしなさい」
と、まるで選挙カーからの叫び声のようで、炎天下で保護帽を被り、命綱を腰に巻き、重装備で
働く人の為を思っている呼びかけでは決してない。

 屋上で作業していて頭上には太陽しか無いような場合に、クールビズではないけれども保護帽
を脱いで麦わら帽子でも与えて、日射病も熱中症も気に掛ける事なく《軽装備》で作業した方が
よほど安全作業になると思えるのだが、誰も麦わら帽子を準備しようとしないで、
「熱中症に気を付けよう…(暑いのは我慢しよう……)」
の繰り返しであり、《我慢をさせながらの安全監理》だから熱中症にさせているのだ。

  朝礼も安全大会でも、労基署署長さんの訓話からも、
「暑くて大変だけど、職人さんだから何とかするだろう」
と他人事の問題として、エアコンの効いた部屋から現場を眺めて、熱中症対策会議が終わるのだ。

 墜落防止を呼びかけていても、墜落死亡事故が発生するのは、落ちる空間があって墜落防止の
ネットが張ってないからであり、ポスターや言葉で事故は防げはしない。

 熱中症に注意させながら、涼しい所で体温を冷やしたくても、職人さんの休憩所にクーラーが
設置されてない小さな現場が大半であり、対策の手立てを差し伸べない限り、熱中症に罹(かか)る
人は増える一方である。

熱中症の『自己防衛』をいかにするか―――私の安全大会時の《熱中症対策》を次回述べよう。

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