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数学のテストの問題の「求めよ」

2011-07-31 | アカデミック
べつに誰からも問われてはいませんが,見解を書いておきます.

て日々 - 2011年7月29日(金)
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数学のテストの問題の決まり文句「求めよ」が嫌いだ。テストにおいて何かを「求めて」いるのは出題者であり、解答者はその求めに応じて解答を「与え」なければならない。「求めなさい」なんて要求があるものか。おそらくは文語の「求む」が口語に置きかえられる過程で何かが捩れてしまったのだろう。
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この意見は,数学のテストで「求む」なり「求めよ」というときの「求」の字をもっぱら「要求」「請求」の意味に解釈することが前提になっています.言い方を変えれば,「求める」とは「出題者が解答者に(解答を)差し出すよう命じる」,という解釈です.

ところで,「求」という字には,「希求」「探求」「追求」などのように,「手に入れようと(あるいは,見出そうと)欲して努力する」という別の意味もあります.この意味での「求める」の対象は,人ではなく,「探す範囲」あるいは「可能性の世界」です.
て日々で言及されている,和算での「求積」の用法も,「希求」「探求」「追求」などの「求」だと思えば,納得がいきます.

数学のテストという文脈での「求める」を,「出題者が,解答者に請求する」という意味でなく,「解答者が,数学知識の世界の中を探って見出す」という意味に解釈すれば,「求めなさい」という言葉遣いに難癖をつける理由はなくなるはずです.