智徳の轍 wisdom and mercy

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ウッパラヴァンナー

2005-01-16 | ☆【経典や聖者の言葉】
一 ウッパラヴァンナー比丘尼は、神通において究竟に達し、師のおみ足を頂礼して、こう申し上げた。
二 「既に生の輪廻を渡り、私は不動の道を手にしました。大いなる牟尼よ、お伝え申し上げます。
三 最高の勝者に極限の信を持つ人々。もし彼らに対し、私に罪があるならば、勝者の面前でお許しください。
四 輪廻に輪廻するうちに、もし私に過ちがあるならば、大いなる勇者よ、お伝え申し上げます。どうか、その罪をお許しください。」
五 「私の教えを順守する者よ、神通を現わせ。それによって、四衆は今日、疑惑を断ちなさい。」
六 「大いなる勇者、智慧者、光ある方よ、私はあなたの娘です。そして、多くのなし難く、極めてなし難いカルマを、私はなしたのです。
七 私の容色は青蓮華と同じように美しいので、青蓮華【ウッパラー】と名付けられました。大いなる勇者、眼ある方よ、あなたの弟子の尼は、おみ足に頂礼し奉ります。
八 ラーフラと私とは、数限りない趣において、一緒に生まれて、欲心もお互いに一致していました。
九 父母も同じ、趣もまた同じでした。最後の有に達すると、両者とも生まれを異にしました。
一〇 そして、その子はラーフラと名付けられ、娘はウッパラーといいます。見よ、勇者よ、私の神通力を師にお示ししましょう。」
一一 四つの大海を手に置いた。あたかも、小児の医師が、入手した油を手に置くように。
一二 大地を裂いて手の中に置いた。あたかも、子供や青年が、美しいムンジャ草を裂くように。
一三 鉄囲山に等しい手を頭上に広げて、しばしば様々な色の雨を降らせた。
一四 地を漆喰【しっくい】にして、穀物を砂礫【されき】にして、須弥山を槌【つち】にして壊した。あたかも、子供のように。
一五 「私はウッパラーという名の、最高の勝者である仏陀の娘です。神通において自在者となり、あなたの教えの遵奉者です。
一六 様々な変形をなして、世界のグルに見せて、姓名を明かし、眼ある方よ、おみ足に頂礼し奉ります。
一七 神足および天耳界において自在であり、他心智の自在者です、大牟尼よ。
一八 宿命を知り、天眼は清浄となり、一切の漏は尽き果てて、もはやこの世に転生することはないでしょう。
一九 義・法・詞、また、弁における私の智慧は、大聖によって、広大・清浄となりました。
二〇 昔の最高の勝者達の会合で、あなたに示した、私の奉仕は大きなものです、偉大なる牟尼よ。
二一 私の過去世の善業を思い出しください、牟尼よ。あなたのために私は功徳を積んだのです、大いなる勇者よ。
二二 あり得ない所を除いて、障害ないことを熟させながら、大いなる勇者よ、あなたのために、私の命は捧げられたのです。
二三 百億の財と私の命を施し、そして私はあなたに対して完全に献上いたします、偉大なる牟尼よ。
二四 今から十万カルパもの昔、私は龍女でした。ヴィマラーという名で、女達の中では尊敬されていました。
二五 大蛇・大龍は、勝者の教えを信じ、大いなる威光のある方、バドゥムッタラをそのお弟子さん達と共に招きました。
二六 宝石造りの仮堂、宝石造りの寝椅子、宝石の砂がちりばめられた、宝石造りの受用品や、
二七 宝の旗で飾られた道を準備し、彼は楽器を奏でながら、等覚者を迎えれば、
二八 世界のグルは、四衆を伴って、大蛇の宮殿の優れた座に座られました。
二九 高価な食べ物・飲み物、硬い食べ物・軟らかい食べ物、それぞれ最も勝ったものを、大いなる名声がある龍王は献上したのです。
三〇 その等覚者が食事し、完全に鉢を洗い終わると、大神通がある龍女は歓喜しました。
三一 花咲ける、一切を知る方、大いなる名声がある方を見て、師に対して、心は信を深め、また意はよく定まったのです。
三二 私の心を知って、最上の蓮華と名付けた大いなる勇者は、その刹那【せつな】に、神通で比丘尼を現わされました。
三三 その比丘尼は、恐れるところなく、数々の神通を現わしました。喜び感激が生じ、師にこう申し上げました。
三四 『この控え目になされた神通を見て、私には、よくわかりました。勇者よ、どうして、彼女は神通において、全く恐れるところがないのでしょうか。』
三五 『口から生じた私の実の娘だから、大神通があるのだ。そして、私の教えを順守し、また神通においては恐れるところがないのである。』
三六 仏陀の言葉を聞いて喜び、『私もまた、彼女のように、神通において恐れるところがないようになりたい』と、私は願い求めました。
三七 『私は喜び歓喜し、最上の意を得て、未来世にこのようになれますように、グルよ。』
三八 飲食で満足させて、マニ珠【しゅ】造りの寝椅子や、光り輝く仮堂や、
三九 龍達の最上の花である、アルナという名の青蓮華を、『私の容色がこのようになりますように』と、世界のグルに供養いたしました。
四〇 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
四一 そこから没して、私は人間界に生まれて、青蓮華で覆われた食事を、私は施したのです。
四二 また、今から九十一カルパの昔には、ヴィパッシーという名のグル、妙なる眼の方、一切の法における眼ある方が出現なさいました。
四三 そのとき、私は最高の城バーラーナシーの長者の娘となって、等覚者、世界のグルをサンガと共に招いて、
四四 青蓮華によって、教え導く方に大いなる布施をなして、それによってまた供養して、白い容色を願い求めたのです。
四五 この賢なるカルパにおいては、バラモンの末裔であって、大いなる名声がある、カッサパという名の、論者の中で最も優れた者が出現なさいました。
四六 そのとき、大聖の従者は人間の主であり、最高の城バーラーナシーのカーシ王キキーという名の者でした。
四七 私は彼の第二女であって、サマナグッターと呼ばれていました。そして、最高の勝者の法を聴いて、出家を希望したのです。
四八 私達の父が許さなかったので、そのとき私達は家の中で二万年の間勤精進して、
四九 幼い娘としては梵行を行じ、幸福に暮らしていた七人の王女としては、仏陀へのおもてなしを楽しみ、喜んだのです。
五〇 その七人とは、サマニー、サマナグッター、ビックニー、ビッカダーイカー、ダンマー、およびスダンマーと、第七はサンガダーイカーでした。
五一 それは今生では、私と、智慧あるケーマーと、パターチャーラーと、クンダラー、キサーゴータミー、ダンマディンナーと、第七はヴィサーカーのことです。
五二 その善をなしたカルマと思願によって、人の身を捨てて、私は三十三天に行きました。
五三 そこから没して、私は人間界の大家に生まれて、私は黄色の清浄で優れた正装衣を阿羅漢に施しました。
五四 そこから没して、私はアリッタプラのバラモンの家に生まれ、ティリータヴァッチャの娘である美しいウンマーダンティーとなりました。
五五 そこから没して、私は地方のあまり裕福ではない家に属して、そのとき私は稲を取っておりました。
五六 辟支仏を見て、私は五百のうるち米を炊き、蓮華で覆った五百の鉢を施して、
五七 また、それらの鉢に入れた蜜を独存者に施して、願い求めました。そこから没して、私は林の中の蓮の腹に生まれました。
五八 カーシ国王の皇后となって、尊ばれ供養され、五百余りの王子を生みました。
五九 彼らが青年に達し、水遊びをしていたとき、蓮華が落ちたのを見て、辟支グルとなったのです。
六〇 その私は、彼ら多聞である勇者をなくして憂え、そこから没して、私は仙人窟【せんにんくつ】の村民の家に生まれました。
六一 仏陀より教えを受けていない、智慧者である八人の辟支グルが、まだ自ら聞いた者の粥【かゆ】を受けることなくして行くそのときに、
六二 托鉢のために、村に行くところを見て、私の子供達を思い出し、そのとき、私の子供に対するように、愛情を持ち、牛乳を持って出ていったのです。
六三 それから彼らに信を起こし、自ら粥を施しました。それから私は没して、三十三天の歓喜園に生まれました。
六四 楽苦を享受して、諸々の有に輪廻して、大勇者よ、あなたのために、命は完全に捧げられたのです。
六五 このように、苦にも多くの種類があり、幸福にも多くの種類があり、最後の有に達すると、サーヴァッティーに生まれました。
六六 大きな財があり、安楽であって、同様に何の不足もなく、様々な宝が輝き、一切の欲を遂げる長者の家において、
六七 尊ばれ、供養され、また敬われ、同様に崇められ、容色の美しさを得て、諸々の家において、極めて尊ばれました。
六八 容色を受用することにおいて、恵まれた人々により、大変うらやましく思われ、また数百の長者の子供によって、うらやましく思われました。
六九 在家から出家者となり、まだ八カ月に至らないうちに、四諦を体得いたしました。
七〇 神通によって、四頭立ての馬車を化作し、世界の主であり、栄光ある仏陀のおみ足を頂礼いたします。」
七一 「比丘尼よ、頂きに美しく花開いた沙羅双樹【さらそうじゅ】の下に、あなたは一人立つ。あなたの他にはだれもいない。若き女【ひと】よ、あなたは誘惑者を恐れないのか。」
七二 「百千の誘惑者が、一気に押し寄せようとも、私は一毛も動かすこともなく、動揺することもない。悪魔よ、お前一人でどうしようというのだ。
七三 私は姿を消すだろう。お前の腹の中に入るだろう。お前の眉間に立つだろう。しかし、お前は立っている私を見ることはできない。
七四 心は自在となり、神足を修め、すべての結縛から解脱した私は、お前を恐れることはないのですよ、友よ。
七五 諸々の欲は剣戟【けんげき】にたとえられ、諸々の蘊【うん】は断頭台である。お前が欲楽と呼ぶもの、今それは私の楽しみではない。
七六 歓喜はあらゆる所で取り除かれ、闇の蘊は砕かれた。悪魔よ、このように知るがいい。死神よ、お前の剣は破壊されたのだ。」
七七 「勝者はその徳に満足なさり、私を第一の位に置いてくださいました。『神通ある者の中の最も優れた者である』と、会衆を前に教え導く方はおっしゃいました。
七八 私は師に帰依し、仏陀の教えを実践し、重荷を捨て、有に導く煩悩をすべて取り除いたのです。
七九 その意義のために、私は在家から出家者となりました。生存の束縛を滅尽する、その意義を、私は体得いたしました。
八〇 衣食および牀座の必需品を、瞬間にあまねく千人に捧げました。
八一 私の諸々の煩悩は焼き尽くされ、有はすべて断じられ、一切の煩悩は尽き果てて、もはやこの世に転生することはありません。
八二 実に私はよく至れる者です。我が最勝なる仏陀のみもとで、三明は体得され、仏陀の教えは実践されます。
八三 四無礙解と、またこれら八解脱と、六通を現証して、仏陀の教えを実践いたします。」
――このように、ウッパラヴァンナー比丘尼は、これらの詩句を唱えたのである。