パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

あの人たちが訪れた場所

2021年07月15日 10時49分50秒 | 徒然なるままに

勉強はしなければならないと思うと面白くないが、好き勝手に向かえると面白い
好奇心を刺激されて、少しばかり勉強に熱が入ってきた感じなのが
3月まで新城にいて、今はブラジル生活をしている女の子(中学一年相当)

ブラジルに帰る時に、せっかく覚えた日本語を忘れるのはもったいないので
ZOOMで勉強をしてみる?と伝えたところ親御さんも乗り気で
今年の5月から定期的に行っている(時差は12時間で割りとやりやすい)

最初はボランティアで自分が担当していた男の子(今は3年相当)の子がメインで
お姉ちゃんは、そのついでに、、という感じだったのが
お姉ちゃんの勉強は日本語の勉強だけでなく違う要素も入れたので
面白く感じるようになったようだ
例えば「古池や蛙飛びこむ水の音」の575の俳句の時刻は何時だと思う?
と聞いてみたり、その表現意図を伝えたりすると、何か感じるところがあったようだ
そこで松尾芭蕉の名前も覚えた

最近はお姉ちゃんが開始時にモニターの前で待っている
前回、お姉ちゃんにこの写真を見せた


「知ってる?」
と聞くと残念ながら「ううん!」
「新城のここでね、織田信長と竹田軍が戦ったんだよ。
 この柵の向こうには馬にのった兵士がいて、この柵で自分たちを守りながら銃を射ったんだよ」
「織田信長は教科書で習ったことがある」
「その教科書に載っている人がこの新城にきて戦ったんだよ」
「ふーーん」
彼女は知識として織田信長を知っていても、まさかこの地にきて戦ったとは思っていなかったようだ
馬防柵のある東郷地区の子供達は当たり前のように、この地区があの戦いの場所と知っていても
他の地区(千郷とか八名)の子どもたちは教科書の中のこととしか記憶にないかもしれない

この写真を見せたのが前回の話で今回は別の写真を見せた


ふんどし姿のインパクトのある写真で、この人の名前は地元の人は知っているが
他地区の人は知らないと思われる一種のローカルスターだ
彼の名前は鳥居強右衛門(とりいすねえもん)

「この絵は見たことがある」
彼女は答えた、だが彼が何をした人かは知らないようだ
そこで、前回見せた写真の戦いの時、長篠城という城が竹田軍に囲まれて
もうダメだ、、という時に、この男、鳥居強右衛門が城を抜け出して
岡崎の徳川家康のところまで助けを出してもらえるように伝えに行った
その役割を果たした帰り道、長篠城に入る手前で武田軍に捕まってしまった

竹田軍は城に向かって「もう諦めよ、城を明け渡したほうが良い」と訴えれば
鳥居強右衛門の命は救うとしたが、彼は「応援はまもなくくる、今少しの辛抱だ」
とまるっきり反対のことを大声で叫んだ
そこで彼は殺されることになったが、その生き様が武士らしいということで
こうして絵に残されているんだよ、、と自分の知ってる範囲で彼女に伝えた

女の子だから戦いはあまり関心がなかったかっもしれない
だが、看板で見かけた人がどんな人だったのかは、、頭に入ったに違いない

「徳川家康は教科書で習ったけど、徳川家康の娘さんがここの新城にお嫁に来たんだよ
 名前は亀姫って言って、新城小学校からピアゴに向かう道の西に少し行くと
 幅広い道があって、その道を亀姫通りと言うんだよ」

「ふーーん」
聞いてる方は(聞かされている方は?)どんな気持ちかわからないが、徐々にこっちが調子がでてきた
「あのね、松尾芭蕉も新城に来ているんだよ
 多分、新城小学校からピアゴに向かう道路の大きな信号の東の方の家に泊まったんだよ
 そこから鳳来寺に行ったんだよ、、鳳来寺は知ってる」
「うん」
「鳳来寺にはこんな像が立ってるよ」



自分たちが少しだけ住んでいた新城市は、こんなことがあったのか
と彼女は改めて思ったに違いない

後で気がつく寝小便ではないが、あとで気がつくことは多い
もっと前に、あるいはその時に、しっかり学んだり覚えたり行っておけばよかった
などということは自分の生活の中ではしょっちゅうある
あまりにもそういう事が多いので、自分は永遠の未完が自分に与えられた宿命など思ったりする

自分が面白いからと言って、日本名の彼女が面白いかどうかわからない
そこで少し気を使って(?)女の子に興味の湧きそうな恋の話をしてみた
小野小町の和歌からこんなのを紹介した
「思ひつつ寝ればや人の見つらむ 夢と知りせば覚めざらましを 」

どんな内容かだいたい分かる?
「ううん」
「あのね、好きな人のことを思って寝たから夢に見えてきたのでしょうか
 夢とわかっていたなら、目覚めることもしなかったのに、だいたいこんな意味
 その気持ってわかるよね
 どの時代の人も、どの国も同じように感じるってことはとても多くある
 それを知ることは大事だと思うな、、」
彼女はうなずく

これが日本語の勉強か?といえば少し違うかもしれない
でも肝心なのは本人のやる気の問題
やらされるのではなく、なにか面白そうなことを感じて自発的に何かを感じるようになること
それには役立っている、、と勝手に思いこんでいる

せっかくお父さんが見せたいと思った日本に来て、少しの間、暮らした新城
その場所とそこにいた人が、彼女や弟にとって良い記憶の場所であった、、、
そんな思いをいつまでももってもらいたいと思う



 


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