女は、滋賀県が発表したデータを眺めていた。
湖底でメタロゲニウムという物質が増えているとのこと。
酸素が少ないからだと結論づけているが、そんなに簡単な話ではないと思っている。
というのは、泥の中の酸素濃度は、年中ゼロに近いからだ。
そして、メタロゲニウムそのものは、水中の溶存酸素濃度が高い時にも存在するからだ。
メタロゲニウムというのは、不思議な物質だ。
生物だという人もいるし、無生物だという人もいる。
***
メタロゲニウム
aff. Metallogenium symbioticum Zavarzin
20億年以上も昔の岩石から微化石としても記載され、現生の淡水プランクトン、あるいは湖底堆積物中にも
広く分布し、マンガンを沈着させることで知られるが、生物であるかどうかも含め、謎の多い存在。
属名「メタロゲニウム」は、「金属を産出するもの( metallos+genium )」を意味するラテン語。
この微生物によって湖底堆積物中の鉱石 ( ore )が形成されるとして、名付けられた。
Zavarzin (Bergey’s Manual, p. 1986-1989)によれば、メタロゲニウム属は、放射状に伸びる多数の先細の繊維にマンガン酸化物を
沈着させながら発達する星状構造の段階を持つ点で、他のマンガン酸化型微生物から区別され、これまでに2種が記載されている。
今回観察した星状構造物は、先細の繊維の内部に球菌などの細胞をいっさい持たず、また繊維の先端からの出芽も見られないこと、
その他の形態的特徴において、 Metallogenium symbioticum Zavarzinによく一致する。
また、同じくZavarzinによれば、Metallogenium symbioticumの繁殖は、細胞壁を持たない球状細胞(マイコプラズマ)による。
球状細胞段階のメタロゲニウムは、混合培養された菌類やバクテリアに感染し、寄生することによって、マンガンを酸化する能力を
獲得して、細胞表面にマンガン酸化物を沈着させ、放射状の繊維を形成するとともに、宿主細胞の生長阻害と溶解を引き起こすという。
***
確かに、湖底泥表面中のマンガン濃度が異常に増えている。
マンガンの集積が行われているのだ。
問題は、このマンガンがどこから来ているかだ。
以前、セディメントトラップのサンプルを用いて上方から沈降してくるマンガンのフラックスを計測したが、それでは説明できなかった。
また、泥の下から湧出してくるマンガンのフラックスも大きくない。
泥の中の物質輸送はとても小さい。
別の仕組みを考える必要がある。
たかだか100mの深さである琵琶湖の底にも、不思議なことが多くある。
今回発見したベントとメタロゲニウムとが関係しているかもしれない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます