さて、田沢湖の話をしよう。
たつこ像から、遠く、秋田駒ケ岳(右)と乳頭山(左)を望む。
このアングルが、最も美しいのだろう。
ただ、夏時分の午前中は、湖面の照り返しがきつそうだ。
周囲が20kmほどしかない湖だが、深さは423mとわが国でもっとも深い。
海抜が249mだから、半分くらいは海面より低い。
意外にも、この湖、成因が不明である。
その形状からして、たぶんに火山湖だと思われるのだが、確定しているわけではない。
辰子姫伝説などからしても、神秘の湖と言ってよいのだろう。
周辺には、縄文時代の遺跡が見つかると言う。
約4000年前に、縄文の人々が住んでいた。
琵琶湖でも8000年前の縄文式土器が見つかることから、縄文人は湖が好きだったのかも知れない。
ただ、田沢湖と呼ばれるようになったのは、明治以降のようだ。
田中阿歌麿(1909年)や吉村信吉(1937年)らがこの湖を調査した当時は、透明度もよく多くの魚種が生育していた。
しかし、1940年に別の水系である玉川温泉の強酸水(pH1.1)を導入したことから、湖水は急速に酸性化した。
これは、田沢湖の下に発電所を建設することと、農業振興が目的だった。
これによってクニマスをはじめとした多くの魚が死滅し、わずかにウグイだけが棲む湖となった。
その後、1972年から石灰石を用いた中和対策が始まったが、湖水の色は白青色となり、透明度は回復していない。
つまり、田沢湖の神秘性は失われ、世俗の欲にまみれた湖が残った。
仙北市長である門脇光浩は、絶滅したクニマスを西湖から里帰りプロジェクトを立ち上げ、 田沢湖の環境を元に戻そうとしている。
しかし、その前途は多難であるようだ。
田沢湖を復活させるためには、科学的根拠に基づいた、よほどしっかりしたプログラムが必要だろう。
多額の予算が必要かもしれない。
ただ、そのような困難を克服するだけのすばらしさを、この湖は持っている。