DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

生きる(63)

2015-06-22 17:25:36 | ButsuButsu


さて、田沢湖の話をしよう。

たつこ像から、遠く、秋田駒ケ岳(右)と乳頭山(左)を望む。

このアングルが、最も美しいのだろう。

ただ、夏時分の午前中は、湖面の照り返しがきつそうだ。

周囲が20kmほどしかない湖だが、深さは423mとわが国でもっとも深い。

海抜が249mだから、半分くらいは海面より低い。

意外にも、この湖、成因が不明である。

その形状からして、たぶんに火山湖だと思われるのだが、確定しているわけではない。

辰子姫伝説などからしても、神秘の湖と言ってよいのだろう。

周辺には、縄文時代の遺跡が見つかると言う。

約4000年前に、縄文の人々が住んでいた。

琵琶湖でも8000年前の縄文式土器が見つかることから、縄文人は湖が好きだったのかも知れない。

ただ、田沢湖と呼ばれるようになったのは、明治以降のようだ。

田中阿歌麿(1909年)や吉村信吉(1937年)らがこの湖を調査した当時は、透明度もよく多くの魚種が生育していた。

しかし、1940年に別の水系である玉川温泉の強酸水(pH1.1)を導入したことから、湖水は急速に酸性化した。

これは、田沢湖の下に発電所を建設することと、農業振興が目的だった。

これによってクニマスをはじめとした多くの魚が死滅し、わずかにウグイだけが棲む湖となった。

その後、1972年から石灰石を用いた中和対策が始まったが、湖水の色は白青色となり、透明度は回復していない。

つまり、田沢湖の神秘性は失われ、世俗の欲にまみれた湖が残った。

仙北市長である門脇光浩は、絶滅したクニマスを西湖から里帰りプロジェクトを立ち上げ、 田沢湖の環境を元に戻そうとしている。

しかし、その前途は多難であるようだ。

田沢湖を復活させるためには、科学的根拠に基づいた、よほどしっかりしたプログラムが必要だろう。

多額の予算が必要かもしれない。

ただ、そのような困難を克服するだけのすばらしさを、この湖は持っている。