来て、一歩
出て、一歩
この一歩の、意味を考える
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「JR京都駅中央出口から、京都大学吉田キャンパス本部構内、工学部三号館情報学研究学科・知識情報学研究室に到達するアルゴリズムを作りなさい」
野崎まどが描くknowという文庫に出てくる問いだ。
なかなか面白い本だ。
長年、水中ロボットを扱っていて感じることだが、技術者は自分の目線でシステムを開発したがる。
操作画面は、とても複雑だ。
航行に必要な情報が、画面上にあふれている。
これでは、売り物にならないな、と思ってしまう。
ものづくりは、上流からではだめだ。
ユーザーの立場にたって、下流から眺める必要がある。
上流の目線で作ったものは、オタクの趣向から出ない。
したがって、まともな人は買わない。
使いものにならないことを知っているからだ。
「知る」ということ。
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先生の言葉を反芻する。
あの時僕は、どれくらい知るべきですか、と聞いた。
「知れるだけだよ」
道終・常イチ先生はそう答えた。
先生の言葉の一つ一つが、僕の規定コードになった。
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知的好奇心
それが失われつつある
知る、ということ
存在を知り
他者を知り
宇宙を知る
一歩が意味を持つ
積み上げた知識は意味を持ち
結果として価値を持つ
それに対する対価が
あまりにも小さい
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難しいことを
易しく示すことほど
難しいことはない
しかし
難しいことを
難しく示すことは
ごまかしにつながる