ガラパゴス通信リターンズ

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「正当化される差別は存在する」

2007-12-25 06:41:26 | Weblog
「合同ゼミ」に参加してきました。3つの大学から6つのゼミが集まって研究発表をする集まりです。今年は2回目の参加。わがゼミは「ミクシィとフリーペーパー」というテーマで報告をしました。とてもよいできでした。その他のゼミの報告も力作ぞろいです。それぞれのゼミの担当教員の指導方法にも学ぶところが多く、非常に刺激を受けました。

 ところが一つだけとんでもない報告があった。さるかなり偏差値の高い大学のゼミです。唯一の2年生のゼミなので、同情すべき点がなくはないのですが…。このゼミは例年一つの映画を取り上げ、それを多角的に分析します。今年は「手紙」。東野圭吾の小説が原作で、犯罪の加害者となった男の弟が世間の迫害にあうという物語です。弟の勤める家電量販店の店長は、兄の犯罪を理由に彼を配置転換した上、こういいます。お前が差別にあうのは当然だ。お前の兄貴は、自分の犯した罪が身内にまで及ぶことを考えるべきだったのだと。

 店長のことばに、このゼミの学生たちはいたく感心したようです。彼らは次のような結論に逢着しました。「犯罪は社会に重大な危険を及ぼす行為だから、それを抑止するために犯罪加害者の家族が差別されることは正当化される」。「社会防衛上正当化される差別は存在する」という一大発見をなした彼らは、その大学でアンケート調査を実施します。彼らは報告を、誇らしげにこう締めくくりました。「約半数の学生が、この命題を肯定しました」。

 こんなでたらめな報告を看過するわけにはいきません。ぼくをはじめとする教員連の集中砲火を浴びました。去年の同じゼミの報告はいたってまともだったので、一体どうしちゃったのだろう。しかしそういう問題ではない。彼らは自分が差別される側に落ちるかもしれないという想像力をもたないのです。それ以上に半数もの学生がこの「命題」を肯定したことが恐ろしい。20年後、30年後の日本は、一体どんな国になっているのでしょうか。