ガラパゴス通信リターンズ

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足踏堂さんに答えて

2007-12-18 09:11:53 | Weblog
 足踏堂さま。私は赤木さんの文章を読んだ時に、これは戦後憲法体制と私たちの世代(団塊の世代に始まる戦後第一世代)に対する痛烈な批判を含んでいるなと直感的に思いました。憲法は公論が生まれる基盤であり、現憲法が大日本帝国憲法よりもはるかに進歩的な内容をもつものだということに対して、私にはまったく異論はありません。足踏堂さまのおっしゃるとおりです。しかしその憲法の進歩的な条項は、いま生きているのでしょうか。

 憲法には「健康で文化的で最低限度の生活」が保障されています。しかし、若いワーキングプアの生態を描いたルポルタージュのタイトルは『生きさせろ!』でした。憲法は、若者の窮境を救う力にはまったくなっていない。そう考えれば赤木さんの左翼=護憲派に対する怒りもよく分かります。立派な条項がまるで空文でしかない憲法!これほど「むかつく」ものが他にあるでしょうか。丸山真男とは、戦後憲法体制の象徴なのだと思います。

 私はこの文章を読んだ時もの凄く不快な気持ちになりました。戦争待望論など愚劣の極み。帝国陸軍の新兵いじめへの憧憬を語るなどとはもっての他。そう思ったからです。その評価は変わりません。しかしこの国には、弱者が依拠すべき原理原則が存在しません。憲法こそそうした原理原則となるべきもののはずですが、この国ではまったくそうはなっていない。原理原則の存在しないところで上げる叫びは、ひどくねじくれたものになるのではないか。憲法の機能不全が赤木さんの論議を狂わせていったといえなくもありません。

 何故とっくに死んでしまった丸山を、赤木さんはひっぱたかなければならなかったのか。われわれ戦後第一世代には、ひっぱたくべきどんな思想家も存在しないからです。この世代は経済的には高度経済成長期の、そして思想的には戦後民主主義の遺産にパラサイトしてきたのです。若者の窮境を前に「護憲」を唱えるのは、知的怠慢のように思えてなりません。後の世代のためになるものを何か遺して死にたいというのが正直ないまの心境です。