太った中年

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ダムマネー

2009-09-27 | weblog

金融危機
アメリカを狂わせた馬鹿マネーの正体
Dumb Money: How Our Greatest Financial Minds Bankrupted the Nation

リーマン・ショックの真因は最高の金融マンから庶民にまで広がった、損失は他人のせいにするマネーカルチャー。国を挙げて破局へと突っ走った“愚かな10年”を検証する。

ダニエル・グロス(ビジネス担当)

2008年11月、金満ぶりと独特な髪形で有名なアメリカの不動産王ドナルド・トランプは、3億3400万ドルの債務を返済しなくてはならなかった。

ドイツ銀行を中心とする融資団から6億4000万ドルを借り入れて、シカゴに92階建てのタワーマンション建設を進めていたが、景気悪化の影響で高級マンション市場が冷え込み、販売はふるわなかった。そこで、トランプは返済の繰り延べを裁判で主張した。

その際に根拠としてあげたのが、不可抗力条項だった。洪水、スト、暴動、地盤陥没、隕石落下など、「借り手のコントロールが及ぶ合理的な範囲を逸脱した事態」が発生した場合に、不動産開発業者が竣工を遅らせることを認める条項がこの種の融資契約にはたいてい盛り込まれている。

アメリカ経済に降りかかった事態はこうした自然災害に匹敵するというのが、トランプの言い分だった。「不況は借り手のコントロールの範囲外」だと、著書に『大富豪トランプのでっかく考えて、でっかく儲けろ』という強気な題名をつけたこともあるこの男は言った。

同じころ、トランプとは対照的に、控えめで目立つことを嫌い、髪形も無難なロバート・ルービンは、自分の名声を守ろうと躍起になっていた。

ルービンはアメリカの財務長官を務めた1990年代、FRB(連邦準備理事会)議長のアラン・グリーンスパン、財務次官のローレンス・サマーズとともに金融危機の芽を次々と摘み取り、「世界を救う委員会」と称賛された。財務長官退任後は金融大手シティグループの経営に参画し、巨額の報酬を受け取っていた。

だが、今やシティは「世界を破産させる委員会」の不動のレギュラーメンバーだった。サブプライムローンなどの住宅ローンを担保とする証券や、その他の債務を裏づけとするさまざまな金融商品で負った損失は、総額で何百億ドルにも膨れ上がっていた。

本誌の取材に対して述べた次の言葉が、この男の考え方をよく表している。シティとアメリカの金融システムは予想外の「パーフェクト・ストーム」に襲われたのだと、ルービンは言った。

損失を増幅させる金融の基本設計

今日のアメリカ経済の骨組みをつくった設計者と言われて、誰もが真っ先に思い浮かべる人物は、アラン・グリーンスパンだろう。約20年にわたりFRB議長を務める間に2度の好景気を経験し、幸運を招く縁起物のような存在になっていた。

エコノミストとしての長年の経歴を通じて唱え続けたのは、いわば三位一体の教義。低金利、金融市場の規制緩和、そして市場(と大勢の市場関係者)を危機から守る金融革新の3要素がそろえば、万事うまくいくというのが基本的な考え方だった。

しかしFRB議長退任後の2008年10月、議会の公聴会に呼ばれたときは、市場の魔法に全幅の信頼をおいてきた自分の理論に対する疑念を口にした。「(理論に)一つ不具合があったことがわかった」と、グリーンスパンは言った。

不具合だって? ご冗談を。

徹底した低金利政策は、有価証券やデリバティブ(金融派生商品)に対する投機の乱痴気騒ぎを生み出した。そうした金融商品が私たちのリスク管理を助けるとグリーンスパンは約束したが、実際に出現したのは、金融システム全体を揺るがしかねない巨大なリスクだった。規制緩和により自由でオープンになった市場が暴走したせいで、政府が大がかりな介入に踏み切る事態を招いた。

要するに、グリーンスパンが言っていたことは、ほぼことごとく間違っていた。というより、損失や失敗をいっそう増幅・拡散させたのは、金融システムの基本設計そのものだったのだ。

パーフェクト・ストームの到来

2008年の夏から秋にかけてわずか数カ月の間に、金融業界は想像を絶するおぞましい「不可抗力」をどっさり味わわされ、最悪のパーフェクト・ストームに次々と襲われた。

アメリカ政府は2008年9月、住宅金融の中核をなしてきたファニーメイ(連邦住宅抵当公社)とフレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)を事実上国有化。経営危機に陥った保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に巨額の融資を行い、政府の管理下に置いた。

一方、アメリカ第4位の投資銀行リーマン・ブラザーズが連邦破産法11条の適用を申請すると、恐怖の連鎖反応の引き金が引かれて、ついには政府がマネー・マーケット・ファンド(MMF)の元本保証をする事態になった。それまでMMFは、寝室のベッドの下を別にすれば、庶民の虎の子の最も安全な保管場所とみなされていた。

雑貨・家具チェーンのリネンズ・アンド・シングズやメディア大手のトリビューンなどのアメリカの有名企業が、未公開株投資ファンドによる買収の際に背負わされた巨額の債務でふらつき、ついには破産した。大金持ちだけを相手にしてアメリカのマネーカルチャーに君臨する存在にのし上がったヘッジファンドは、清算・閉鎖に追い込まれることを恐れて解約を拒否しはじめた。

ドナルド・トランプを筆頭に、この10年間、でっかく考えて、でっかく儲けようとした人たちはことごとく、大やけどをしたように見えた。

もっとも、でっかいことを考えずにつましく生きてきた人たちも、「トランプの不幸は蜜の味」とばかりは言っていられなかった。

金融危機のダメージは実体経済にも飛び火した。金融システムが機能不全に陥って金を借りるのが難しくなり、ローンと密接不可分な自動車産業と住宅産業の業績が悪化。企業の倒産が増え、失業率が上昇し、政府の財政赤字が膨らんだ。1930年代の大恐慌時代以来、経済の先行きに対する漠然とした恐怖感がこれほどまでに強まったことはなかった。

自己責任を忘れて救済頼みに

なぜ、国民一人ひとりが自己責任をもつはずの社会が、政府による救済頼みの社会に変わってしまったのか。

なぜ、金利が低く、資産価値が増え続け、経済が力強く成長していた好景気の時代が、新たな大恐慌時代になってしまったのか。

なぜ、アメリカ資本主義の輝けるダイヤモンドだったはずの金融サービス産業が、安っぽいガラス玉に変わり果ててしまったのか。

いったい、何が起きたのか。

拙著『馬鹿(ダム)マネー』では、この10年間のマネーカルチャーの変遷をたどることを通じて、こうした疑問に答えていきたい。その答えは、ある面ではしごく単純だが、ある面ではきわめて複雑だ。

まず、押さえておくべきことがある。

それは、トランプやルービンやグリーンスパンといった下手人たちの弁解にも、一面の真理が含まれているということだ。金融システムを襲った破局は、人間の手の及ばない大きな力が生み出したものであり、それは確かにパーフェクト・ストームだった。

この事態をつくり出した原因はたくさんある。当局の不十分な規制、8年間続いた共和党ブッシュ政権の経済思想の誤り、ウォール街にべったりの民主党による改革の阻害、マイホーム取得を奨励しようとした見当はずれの超党派の取り組み、ウォール街の強欲さ、企業経営者の腐りきった発想、政府のお粗末な危機対応。このすべてに原因がある。

愛すべきグリーンスパンおじさんにも大きな責任があるし、その後を引き継いでFRB議長に就任したベン・バーナンキにも大きな責任がある。しかし、この惨事の責任を1人の個人に押しつけるのは見当違いだ。

いや、人為的な要素を無視しろと言うのではない。その正反対だ。

金融危機は、自分の利益を追求しようとした何百万人もの人々の意識的行動の副産物にほかならない。アメリカが経験したのは、言ってみれば全員参加型の金融危機だった。

「チープマネー」から「ダムマネー」へ

もう一つ、重要な点がある。

現在進められている刑事捜査の結果、数々の犯罪行為が明るみに出ることは間違いない。しかし、この金融危機で最大のスキャンダルは、詐欺師やイカサマ師の仕業ではない。本当のスキャンダルは、法律と規制の範囲内で行動した人々によって圧倒的大多数の損失が生み出されたことだ。
 
1.2兆ドルのサブプライムローン市場。62兆ドルの野放しで不透明なCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)市場。経営トップがよく理解できていないのに、上場企業である投資銀行が大量に抱え込んだCDO(債務担保証券)やRMBS(住宅ローン担保証券)。危なっかしいサブプライムローン担保証券を、トリプルA評価の信用度抜群の金融商品に変身させた信用格付けの錬金術。未公開株投資ファンドによる500億ドルの大型企業買収。ヘッジファンドの株式上場――。

すべて、その時点では素晴らしいアイデアに思えた。こうした新しいカラクリを考え出した人々は、天才だ、ビジネスの革命児だともてはやされた。端的に言えば、この人たちは賢い「スマートマネー(Smart Money)」の時代の象徴だと思われていた。

私に言わせれば、2000年代は、低利で多額の金を借りやすい「チープマネー(Cheap Money)」の時代が、「馬鹿(ダム)マネー(Dumb Money)」の時代へ、そしてそれに輪をかけて冷静な判断のできない「もっと馬鹿(ダマー)マネー(Dumber Money)」の時代へと変わっていった10年間だった。

借金というアルコールで狂乱状態になったパーティーが盛り上がるうちに、ダムマネー的な愚かな倫理基準とビジネスモデル、ものの考え方が、アメリカの経済、さらには政治や文化の隅々にまで染み渡っていった。

つまるところ、私たち全員が大がかりな妄想に取りつかれて、いくつかの致命的な誤解をしていたというのが真相だ。

グリーンスパンはこの危機を「100年に1度の信用の津波」と呼んだ。ポールソンは100年に「1度か2度」の事態だといった。1度か2度? 1度と2度では大違いだ。なにしろ今後の1回で消し飛んだ金は、アメリカだけで数兆ドルに達する。

いま私たちにできるのは、真実を理解し、2度と同じ愚行を繰り返さないためにどうすればいいのかを考えることだ。

(以上、NEWSWEEKより転載)

1年前、リーマンショックによる米国発世界金融危機の原因になったのは住宅バブルの破綻であり、その元凶がサブプライムローンだった。サブプライムローンとは負債の先送りシステムだからねずみ講に他ならない。ねずみ講を米国民は天才的なアイデア、スマートマネー(賢い投資)だと称賛した。また、サブプライムローンを生みだしたのはウォール街の白人であり、その毒牙に掛ったのが低所得で家など買うことのできないプエルトリカンを始めとする有色人種だった。そして不況のどん底に陥ってスマートマネーがダムマネー(愚かな投資)だったことに気づいた。つまり、白人は馬鹿だったのだ。上記コラムの「いま私たちにできるのは、真実を理解」とは白人が馬鹿であること自覚することである。さらに「2度と同じ愚行を繰り返さないためにどうすればいいのか」など考える必要はない。既に米国は破産状態でオバマ黒人大統領は破産管財人なのだ。米国は著しく衰退して同じ愚行を繰り返すほどの国力はない。馬鹿な白人は死んでも直らないだろう。