太った中年

日本男児たるもの

政治意識のめざめ

2010-04-30 | weblog

以下、月刊VOICE2008年1月号よりオバマ政権の外交顧問ブレジンスキーのインタビューを転載


アメリカのラストチャンス

-"Second Chance"という本を出されましたが、このタイトルはどういう意味でしょうか。

ブレジンスキー  アメリカがグローパルリーダーになってから3人の大統領、つまり先代ブッシュ大統領、ピル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュの3人がいるわけですか、この15年のあいだ、アメリカはリーダーシップを発揮できなかったのです。最初の2人は発揮できる機会があったにもかかわらず、しなかった。現在のブッシュ大統領は、イラク戦争という罪を犯しました。しかも、これがイランとの戦争にも発展しかねかい事態です。

次期大統領には、グローバル・リーダーシップを示すセカンド・チャンスがあるが、もしイランとの戦争にまで発展すれぱ、そのセカンド・チャンスを逸する可能性もあります。

-ということは、セカンド・チャンスというのはラストチャンスという意味ですか。

ブレジンスキー  まさにそのとおりです。私はこの3人の大統領に成績も付けました。先代ブッシュがB、クリントンがC、そしていまのブッシュ大統領がFです。大統領としての効率、達成度、そ.して彼らが達成すべきだったげれどもしなかったことを鑑みて、成績を付けました。

-先代ブッシュのときソ連が崩壊しましたが、彼はそこでグローバル・リーダーシップを示すチャンスを逸したのでしようか。

ブレジンスキー  ソ連崩壊については、大規模な反乱もなく、平和裏に収まりました。ソ連側も新しい現実に合わせるように努力し、冷戦が終焉を迎えました。それは非常に巧みな外交で達成されました。ブッシュのチームも素晴らしかった。

しかし、ブッシュは新しいロシアと分かち合えるようなピジョンを打ち出さなかったのです。ロシアが西洋のなかで価値観を共有できるビジョンを打ち出すことこそが、グローバル・リーダーシップとしてやるぺきことだったと思います。もちろん、そうするチャンスはありました。

もう一つは、サダム・フセインをクゥェートから追放したのはよいのですが、そのときはシリアを含めてアラブ諸国が協力国でした。あのときこそ、中東を平和に導く絶好のチャンスでした。

-クリントンがCという成績なのは、なぜですか。

ブレジンスキー  クリントンには8年という長い期間がありました。あれだけ長いあいだに達成できた問題はたくさんありますが、核拡散問題にもっとしっかり敢り組むぺきだったと思います。その8年間に4ヵ国が核兵器を入手しました。2ヶ国は公然と手に入れたのです。バキスタンとインドです。中東も最悪の状態にしたのです。またクリントンは、グローバリゼーションが必然的なものであると見ていました。グローバリゼーションがこの時代の大きな問題を解決すると言い続け、成り行きに任せました。

実際はグローバリゼーションは、不平等、苦痛、不公平をもたらしたのですが、クリントンはそれを問題にしませんでした。グローバリゼーションというのは政策であるので、この限界や、それが課す苦痛についても、責任をもたなけれぱなり.ません。効果的なものにしようと思えぱ、こういう問題に取り組まなげれぱなりません。

しかしクリントンは何もしませんでした。「すぺてのことが素晴らしい。皆、満足している。だから皆、人生を楽しむことができる。世界のことは心配するな」というような」気ままなことばかりいっていました。

-グローバリゼーションはアメリカにとってはプラスになることが多かったと思いますが、自己中心的な発想だと思いませんか。

ブレジンスキー  そう思います。それを拡大したのクリントンです。自己犠牲を払わずに、アメリカはよい部分だけを享受しているのです。

-現大統領のプッシュにはFを付けました。イラク戦争のせいですね。

ブレジンスキー  明らかにそうです。ブッシュはこの戦争で、アメリカの信用をガタ落ちにしました。アメリカの信用はかつて、自由の女神だったのですが、いまではグアンタナモ収容所になりました。いますぐにでも、イラクからすべてのアメリカ兵を、本国に戻すぺきです。現大統領を二言で表せぱ、catastrophic leadership(破壊的リーダーシップ)です。

われわれはいま、ポストコロニアルの時代にいるわけで、一つの大国が世界にスタンダードを押し付けるという時代ではありません。現大統領はpost-imperialial(帝国主義後)の時代に、事実上、帝国主義戦争をやっています。時代錯誤もはなはだしい。

-アメリカがここまで信用をなくしたいま、それを取り戻すには何をすぺきだと思いますか。

ブレジンスキー  まずイラクから撤退することです。この二年間、私はこのことを言い続けてきました。それから撤退後、イラク周辺の国がどうなるか、それぞれの国に考えさせないといけません。もっと積極的に、イスラエルーバレスチナ・プロセスにかかわらないといげません。このままにしておくと、ますます悪化していきます。

イランとの交渉も真剣にならなけれぱなりません。ここでアメリカのリーダーシップがテストされると思います。いかにアメリカが他の国とこれからかかわっていくか、再定義しなげれぱなりません。他の国に対し、模範となる国をつくらなけれぱなりません。

日中和解が東アジアを安定させる

-現大統領のブッシュは世界で信用を落としましたが、それでも日本はアメリカから独立すべきではないとお考えですか。

ブレジンスキー  B本はアメリカから分離すべきではありません。日本にもよくないし、アメリカにとってもよくありません。ブッシュの政策は馬鹿げていてアメリカにとってマィナスになるという批判ぱあっても、他国はアメリカから分離すぺきではありません。ブッシュの問題は、アメリカ人が変えるぺき問題であって、他の国の問題ではありません。アメリカ国民が自分の政策に批判的であるとわかっていても、ブッシュは頑固ですから、いまでも自分が絶対に正しいと思い込んでいます。彼の思い込みは、傲慢さの表れであって、真剣に考えて判断した緒果ではありません。

-現状を見ると、次期大続領は民主党から生まれる可能性が高いですね。

ブレジンスキー  世論調査を見るとそうです。

-新しい米大統領が誕生したとき、日本はどんな戦略をもてぱよいのでしょうか。

ブレジンスキー  グローバル戦略の観点からいえぱ、日本にとって最も明らかな利益になるのは、やはりアメリカと強力なバートナーシップを縫持することです。しかし、それだけではまったく不十分です。この強力なパートナーシップを使い、日米共同で、東アジアでの協力体制をつくろうと努力すぺきです。明らかにこの努力のなかで、日本と中国は直接大きな役割をもつことになります。アメリカはむしろ、聞接的な役割を果たすでしょう。

-しかし、日本は世界から孤立しつつあるという人もいますが。

ブレジンスキー  日本は国連でも平和維持の点でも、活発に参加しています。他の東アジアとの関係でも活発にかかわっています。インドや中国やオーストラリアなど大国以外の国ともかかわっています。孤立しつつあるとは思いません。そもそもいまの日本は、北朝鮮や中国を含めた世界的な脅威に直面しています。孤立したら、崩壊します。

-中国の台頭は、どう思われますか。

ブレジンスキー それは全体的にプラスになる発展だと思います。中国はますます経済的に成功し、ますますグローバル経済に統合されつつあります。中国は世界経済の安定に貢献しています。

そのコンテクストでみると、日本と中国の、漸進的か、手順を踏んだ、慎重な和解は両国にとって利益になります。しかも東アジア全体の安定にもつながります。東アジアの安定はさらにグローバルな安定につながるのです。

-日本はどのように、和解を求めて中国にアプローチすぺきですか。

ブレジンスキー  フランスとドイツ間の経験や、ドイツとポーランド間の経験を見ると明らかです。もちろん、イニシアテイブがもっと必要です。"Responsiveness(反応)をよくすることも必要です。ドイツ・フランスはお互いに優位を求めないという相互理解に達したが、日中もお互いに優位に立とうとしなけれぱ、和解に達すると思います。

-しかし歴史的に見て、日本と中国はまだわだかまりが残っています。

ブレジンスキー  特定の歴史的事件については、もちろん議論することかできます。中国の地で日本は中国と戦争をしていたのですから。それは事実として残っていますが、それにこだわっていると前進しません。

-2008年は韓国で新大統領が始動し、台湾総統選があるなど、東アジアも激変しますか、新しい米大続領は東アジア戦略をどのように行なうべきでしょうか。

ブレジンスキー  東アジア戦略は、超党派的な外交政策でなければなりません。東アジア戦略に関しては、それほど党で分離している個別の課題はありません。

外交政策にかかわるどの人も、日本との親密なパートナーシップ、中国との建設的な戦略関係、アメリカ、日本、中国の3カ国間の協力が非常に望ましいと考えています。台湾が分離独立国になり、国連のメンバーになることを主張している人は誰もいないと思います。ですから東アジアについては、基本的な合意があると思います。

テロを撲滅する唯一の方法

-ブレジンスキーさんは、「対テロ戦争」は悪いスローガンだと思いますか。

ブレジンスキー  非常に悪いスローガンですね。戦争というのはふつう、誰と戦っているかがわかっているものです。敵が誰であるか認織でき、歴史的な背景も明確です。第二次世界大戦にしても、冷戦にしても、すぺてそうです。一方、テロというのは人を殺すテクニックです。それだけです。誰と戦っているかわかりません。なぜ戦っているのかもわかりません。同盟国がどこかもわかりません。ファントム(怪人)のような雰囲気です。不安かじわっと広がっていきます。これはひどく破壊的です。現大統領は9・11同時多発テロを、一種のファントムのような脅威にしたのです。

私はこの国で育ちました。第二次世界大戦時のアメリカの自信を覚えています。人はときどきレストランで、"Remember Pearl Harbor"といいます。そういうことで心を一つにして、エネルギーをわかせるためです。いまは高速道路を走っていと、"Report suspicious activity"(疑わしい行動を通報せよ)というサインが目に入りますが、まるで、ジョージ・オーウェルの世界のようです。このような恐怖の伝播は破壊的です。

テロリズムを撲滅する唯一の方法は、テロの温床である国のすぺての穏健派の支持と、コンセンサスを得ることです。ますます人を疎遠にするような手段を使って、自分たちだけでやろうとしないことです。

-"Second Chance"内にあるpolitical awakening(「政治意識のめざめ」)とは何ですか。

ブレジンスキー  非常に簡単な考え方です。一世紀前までは、世界のほとんどは政治に消極的でした。人々は政治に無関心でした。しかし現代はインタラクティブ(相互作用的)で、情報が瞬時に世界中に伝わります。天安門広場でのデモ、メキシコ市でのデモ、ネパールでのデモ、エジプト、ポリピアのデモなど・・・。これは一種のポピュリズムです。落ち着きのないポピュリズムです。しかも人々は、民主主義よりも尊厳を要求している。お亙いに尊重しあうこと、異なる文化、宗教、男女の違い、そういうものを尊重し合うことを要求しています。それがpolitical awakeningです。

自分がこの世に生まれてくると、個人の自由を標榜します。だから移民がアメリカに来るのです。ここで自分の土地を買い、自分の価値を決め、銃をもって自由になるのです。人は個人の自由を行使するためにアメリカに来るのです。

第二次世界大戦で、民主主義を擁護するため、全体主義と闘うためわれわれは立ち上がったのです。いまわれわれは人聞の導厳、多様性、社会正義を擁護するために立ち上からなければなりません。さらにそれを超え、環境、地球湿暖化の点でも、共通の目的をもって立ち上がらなければなりません。

こういうことがアメリカの次期大統領のチャレンジになります。それこそがわれわれのセカンド・チャンスです。

いま、世界中の人が政治的に目覚めています。世界中の人がもっと正義のある世界、皆に個人の尊厳を与える世界を要求します。それは民主主義の前に来るのです。

-世界各国にはまだ、アメリカに世界をリードしでほしいというコンセンサスがあるのではないでしょうか。

プレジンスキー  だから、いま直面している中東の泥沼から抜け出すことができれぱ、われわれにはセカンド・チャンスがあります。現大続領がイランと戦争しないかぎり、次期大統領はその努力をするでしょう。イランではさまざまな、懸念すべき事態が起きています。もしそれが戦争にでもなれぱ、たとえアメリカが次期大統領を迎えても、セカンド・チャンスはないでしょう。


資金提供の裏側

2010-04-28 | weblog

以下、鳩山首相の政治と金、母親からの資金提供について松田光世氏のツイートまとめ。面白い。

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鳩山首相の政治団体の収支報告虚偽記載事件で、首相の不起訴を相当とする検察審査会の判断がでました。この問題については、あえてコメントを控えてきましたが、この機会にまとめてコメントしておきたいと思います。

国民の多くが感じていることと鳩山家では当たり前のことのズレの大きさが、この事件の背景にあります。検察審査会は、毎月1500万円の資金提供を「膨大な資金」と受け止めていますが、鳩山安子さんはブリジストン株などの配当益を3人の子供に均等に分け与えていただけ。資産を譲ってはいません。

おおざっぱに言えば、鳩山家の金銭感覚は、普通の日本人とは「3ケタ」ずれています。毎月4万5000円の配当収入があれば、それをおばあさんが子供に分け与えていても誰も文句は言わないでしょう。安子さんは持参金(現在価値100億円?)だけで一生優雅に暮らせるのですから。

ですから、鳩山首相が何も知らなかったなどということはありえません。首相個人の資産から事務所の資金繰りに必要なお金を出すときは、勝場秘書に言われて首相自身が「指示書」にサインをしていたのは、国会答弁でも明らかになっている通りです。

鳩山安子さんは、「自分は持参金だけで一生暮らしていけるだけのものをもらっている。資産はそのまま子供たちに残す」と周囲に話し、資産運用で出る運用益は、ねむの木学園など教育・福祉施設に積極的に寄付してきました。まさに日本のセレブの鑑のような人です。

鳩山安子さんは、納税の義務には特にうるさい人で、子供たちに配当金を分ける時には、税金分もきちんと上乗せして渡していました。鳩山家の金庫番だった副島氏が2002年に亡くなるまでは、贈与税もきちんと資産管理会社を通じて納税されていました。

問題は、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」の実務責任者だった副島氏の死後に起きました。鳩山首相の金庫番だった勝場さん(控訴せずに有罪が確定するようなので、敢えて被告と呼ばずに「さん」と呼びます)が、事務所の資金繰りの厳しさを訴えて、安子さんに相談をしたのです。

安子さんは、資産運用益はすべて子供たちに均等に分けることを決断し、指示書を六幸商会に出しました。もちろん、半分が贈与税として納税されるべきことも指示書にはありました。この点は、安子さんの上申書に書かれていて、検察も裏付け捜査をしたようです。しかし実際は、納税されていませんでした。

安子さんからの指示で六幸商会から引き出された約36億円のうち約6億円ずつが3人の子供に渡され、納税資金約18億円はある人物にわたりました。その人は、祖父鳩山一郎の時代からの古い支援者で、いわば大久保彦左衛門のような存在でした。その18億円が納税されずに消えていたのです。

その鳩山家の大久保彦左衛門をX氏としましょう。もちろん名前はわかっていますが、事件化しない見通しを持っているときは、どらえもんは匿名を通します。X氏は、文房具やイベント景品などを作る会社を経営。鳩山首相の「宇宙人携帯ストラップ」などのグッズもX氏の会社の製品です。

セブンイレブンで3食分100円のうどんやラーメンの麺を買ったことありますか? 実は、X氏の会社の子会社が作っています。あと、イトーヨーカドーのイートインコーナーの「ポッポ」という冗談みたいな名前のチェーンも。2002年以降に工場新設、本社新築など業容が急拡大しました。

安子さんの指示で引き出された36億円すべてが子供たちに渡ったのなら、贈与税はそれぞれ同額の12億円づつになるはずですが、国税当局も検察も、子供たち(代理人の秘書を含む)に直接渡ったのは6億円づつと特定しました。それはつまり、納税されなかった「消えた18億円」があるということです。

新聞・テレビ、自民党など野党が「消えた18億円」をなぜ問題にしないのか不思議に思います。この点を首相に質問すれば、首相が何を知っていて、何を知らなかったと言っているのかがはっきりするはずです。

鳩山家の人間は、それぞれが持つ資産の管理運用や必要な納税などの事務について一括して一任する契約を資産管理会社である「六幸商会」と結んでいます。六幸商会は、毎年1回、契約者にその年の資産運用実績や納税額などを報告しています。いわば「鳩山ファンド」のファンドレポートのようなものです。

ですから、鳩山首相が何も知らなかったなどということはありえません。首相個人の資産から事務所の資金繰りに必要なお金を出すときは、勝場秘書に言われて首相自身が「指示書」にサインをしていたのは、国会答弁でも明らかになっている通りです。

鳩山邦夫氏は、同僚議員との飲み会などで「母は、兄ばかり可愛がる。田園調布の家も母が買い与えたし、兄のほうが何でも取り分が多い」と嘆いて見せるのが”芸風”のようですが、安子さんは政治家兄弟と民間人の姉を差別せずに、まったく同額を分け与えていたというのが、検察が認定した事実です。

鳩山首相が「知らなかった」と言い、邦夫氏が「騙された」と激怒したのは、六幸商会が納税しているはずの資金が、消えていて、納税の義務が果たされていないという事実についてでした。それは、元大蔵事務次官を父親に持つ兄弟にとっては、ありえないぐらい不名誉なことだったのです。

単純化して言うと、鳩山首相の収支報告書虚偽記載事件の裏側には、安子さんが納税資金として渡した18億円もの資金の業務上横領事件があり、捜査当局も鳩山家もそのことをまったく説明しないので、国民の側には理解不能な割り切れなさが残るのです。

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脅される日本

2010-04-25 | weblog

以下、普天間移設問題についてフリージャーナリスト岩上氏のツイートまとめ

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ワシントンポストの記事を、首相はじめ、各閣僚も一応は、否定。だが、今日の琉球新報が、関係閣僚はすでに辺野古沖修正案で動いていると伝えたように、関係閣僚の五人のうち、平野、岡田、北澤、前原の四人は、辺野古沖修正案を受け入れ。まだ落城していないのは、鳩山総理ただ一人。

沖縄の地元紙と、本土メディアの情報落差ははなはだしく、地元紙は、三月半ばあたりから、内閣内部で、沖縄県内移転やむなし、との動きが見えてきたことを察知。警鐘を鳴らし続けてきた。沖縄に負担が押しつけられる方向が見えてきたことに、やはり、という反応も少なくないようだ。

早ばやと、米国の言いなりの官僚に取り込まれてしまった閣僚に包囲され、孤立してしまった鳩山総理が、いつ、辺野古沖修正案でいく、と言うか。あるいは、最後まで受け入れずに、別の秘策(あればの話だが)を切り出すのか。今はまだ、誰もその胸の内を知らない。

今日の首相の「海を埋めたてない」という断言も、裏読みをする者もいる。SACO合意の際に、埋め立て案、沖合いメガフロート案とともに、杭打ち桟橋案が取りざたされた。この案が蘇るとなると、今日の首相の言葉も、海を土砂で埋めたてず、杭を打つ、という話にすぎない、となる。

普天間問題について、飛び交う飛ばし情報を、そのまま垂れ流せば、いくらでも面白おかしく(あるいは腹立たしく)話を続けられるが、それでは無責任。鳩山総理が、辺野古沖修正案を受け入れたあと、解散し、衆参ダブル選挙、という観測もあるが、そんなことは、総理が決断するまでわからない。

海兵隊を含む米軍は、グァムを中心に再編される。これには相応の軍事的合理性がある。まず、米軍は太平洋の主要同盟国五カ国と合同演習を行いたいが、沖縄では制約が多く、しずらい。また、沖縄に限らず、日本国内に外国の軍隊が入ることに、日本は官民とも寛容ではない。

沖縄では、米軍は何かと不都合である。だから、グァムに移転する、という話になるのだが、これまでの計画の通りには進まない可能性もある。理由は、カネ。リーマンショックに加え、莫大な戦費がかかっているために、米国は予算が足りない。

8000人がグァムに移転する、とした計画も、実現しないかもしれないと、孫崎氏はみる。今、予算が優先されるのは、最前線のイラクやアフガンの戦費である。前線から離れた後方基地の再編事業には、どうしたって予算の割当は後回しになるだろう。

その点、日本は脅しあげれば言うことをきく。なんやかやと難癖をつけ、普天間に居座り、ゴネれば、カネが出てくる。ジャパンハンドラーが、そう値踏みをしているのは間違いない。

万が一、辺野古沖修正案以外のウルトラC的な解決策があるとしたら、グァムなどへの移転のみ。しかし、その際にはまた、莫大な手切れ金を要求されるだろう。先日のオバマ鳩山会談で、オバマがアフガン、イラク両戦争への、さらなる日本の支援を、見返りとして求めた、という説もある。

いずれにせよ、沖縄県民の大多数が県内移設反対を示した場合、辺野古に基地など作れない。明日の県民集会に出ないようにと、平野官房長官は、仲井間知事に電話をしたが、知事は出るそうである。仮に仲井間知事が、政府案に賛成しても、この秋の選挙で落選するだけだろう。

さて、ここで目を転じて、今日の北海道新聞。一面で「辺野古 桟橋方式で沖合へ~普天間移設、防衛相、首相に提案」と。昨日、ツィートした、鳩山総理をのぞく関係閣僚四人が合意しているとされる辺野古沖杭打ち桟橋案が、早くも姿をあらわした。

この、日米安保=戦後国体、という言葉を、私はこれまでもしばしば使ってきたが、今日の講演で佐藤優氏も、「日米安保は、国体のようなもの」と表現されていた。神聖不可侵。国体の名の下に権力をほしいままにする官僚。

日米関係について、もっとも残酷かつ、端的に表現した思想家は、私は精神分析の岸田秀だと、今でも思っている。日本はアメリカに開国を強いられ、レイプされたのだと。そのトラウマを隠すために、日本は過剰にアメリカに擦り寄って来た。現実に必要なレベルを超えて、である。根底にあるのは、恐怖である。かくて、日米安保は、戦後の国体となった。

この、日米安保=戦後国体、という言葉を、私はこれまでもしばしば使ってきたが、今日の講演で佐藤優氏も、「日米安保は、国体のようなもの」と表現されていた。神聖不可侵。国体の名の下に権力をほしいままにする官僚。

佐藤氏は、「この国の主人は誰か、という闘争が続いている」と言う。つまり、戦後国体たる日米安保体制を、国家の基盤そのものとみなす支配層(アメポチ)と、民選政府による闘争、である。図式としては。しかし、後者は普天間問題を見れば明らかなように、首相をのぞいては、もはや「あちら側」である。

戦後国体=日米安保と書きましたが、これは冷戦崩壊以降、第二戦後国体=日米同盟に徐々にシフトしてゆきます。この不可解な過程はまだすべて明らかではありません。

「日米同盟の深化」なるものは、国民に十分な説明責任を果たさないで進められています。安保のように国会の承認も経ず、国民的な議論も尽くされていない。米国の国益のために、極東だけでなく全世界(主として中東)に出撃可能な態勢をつくることが目的で、参加させられているのは日本だけではない。

その巨大な枠組みは、冷戦時の「ソ連封じ込め」体制のように、中国の封じこめを目的としたものではなく、ここに保守派の一部が唱える説明に無理が生じます。米中が互いに今世紀後半に向けての覇権のゲームを展開していることは間違いないが、経済的には相互依存を深めており、冷戦の再現はなし。

問題は、米国次第で、また中国との駆け引き次第で、日本が「捨てられる」可能性がないとはいえないことです。日本が周辺諸国から侵略されるとしたら、ほとんどは島々を巡る領土紛争の形をとるでしょうが(ロシアとは北方領土問題、韓国とは竹島問題、中国とは尖閣諸島問題)、米国は介入しない。

つまり日本にとって、深刻な問題となりうる尖閣諸島問題も、仮に中国が軍事的な侵攻を行っても、米国は「日中間の領土問題には関与しない」として静観する可能性が高い。日米安保体制とは、冷戦を前提としており、封じ込めの対象がなくなり、戦略が変われば、その体制にも質的転換が起こる。

日本の国内と国外で、普天間をめぐる話がまったくちぐはぐになるのはそのため。国外では米軍は出たがっているという話になり、国内では居座ろうとしているという話になる。日本の安保マフィアらが引き留めにかかっているのは事実、だが、本当にすべきことは空白を埋める自主防衛の努力でしょう。

この週末、ある防衛族関係者と電話で話しました。「防衛産業はボロボロですよ。自主防衛とはいっても、足元から崩れてきています」と嘆いてました。防衛商社・山田洋行の事件を東京地検特捜部が捜査して以来、業界はガタガタであると。

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米国からの自立

2010-04-23 | weblog

以下、The Journalより二見伸明氏のコラムを転載。

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今こそ、米から自立するチャンスだ

19日朝、テレビ朝日の番組で出演者たちが、前日の読売新聞一面トップのスクープ記事「『きちんと実現できるのか』"Can you follow through?"」を、鳩山退陣の絶好の材料だと、鬼の首を獲ったかのようにはしゃいでいるのを、鳥越俊太郎さんが、冷ややかな眼つきで「日本のメディアはアメリカの顔色をうかがい過ぎる」と厳しく批判し、徳之島での反基地集会は、沖縄のみならず、「米軍基地はいらないという日本人の気持ちを表していることを(メディアはアメリカに)伝えるべきだ」と、辛辣な口調で述べた。コメンテーターの三反園記者は鳩山批判を展開するつもりのようだったが、真っ当な反論に、返す言葉もなく「そうですね。鳩山さんが、(そのことをアメリカに)言えば、支持率が25%に下がることはないですね」とバツが悪そうだった。

「日本は属国だ」と米高官

読売の記事によると、12日の鳩山総理とオバマ大統領との非公式会談で鳩山総理が「日米同盟は大変大事だ。その考え方の中で今努力している。5月末までに決着する。大統領にもご協力願いたい」と述べ、大統領が「あなたは『私を信じてほしい(Trust me)』と言った。しかし、何も進んでいないではないか。きちんと最後まで実現できるのか」と強い疑念を示したということである。

まず、検証しなければならないのは、この記事の狙いである。私は外務省の幹部に「オバマ大統領は"Can you follow through?"と言ったのか。もし、言ったとすれば大変なことだ。これは、主人が召使に言う言葉だ」と質した。彼は「大統領はそういう発言をしていない。あの場に米国務省の関係者は一人もいない。通訳だけだ。国務省関係者は、又聞きの又聞きで、おそらく、大統領は"Can you"と言ったはずだと、多少はスピンをかける気持ちもあって、言ったのではないか」と答えた。私が「読売新聞が一面トップで報じた影響は大きい。国務省は日本をアメリカの属国なみに扱い、侮辱している。アメリカに何らかの対処を求めたのか」と聞き返したが、「総理がぶら下がり会見で、官房長官が定例の記者会見で、否定しているので、それ以外は何もしていない」とのことであった。それにしても、はからずも、米国務省の対日観の本音と本性が明らかになったといえよう。

読売はジャーナリストの精神を失った

読売新聞によれば「米政府の関係筋は、『本来は鳩山首相から、早期決着の約束を守れずに申し訳ないと謝り、自分の責任で必ず決着させると言うべきだった。(中略)大統領も堪忍袋の緒が切れたのではないか』」と言ったそうである。

沖縄は主権国家・日本の領土である。アメリカの植民地ではない。鳩山総理は、普天間基地の移設を沖縄県民、日本人の立場に立って、オバマと交渉すべきであって、むしろ、「なかなか、軍部を説得できなくて申し訳ありません」と謝罪すべきなのはオバマの方である。そのことを指摘するどころか、大はしゃぎしている読売は、アメリカの手先であって、「破廉恥」そのものである。なりふり構わず、日本の国益や名誉も考えず、「鳩山追い落とし」に狂奔する読売に暗澹たるものを感じる。読売はジャーナリストの精神を失っている。

ジャーナリズムの「小沢潰し=鳩山内閣打倒」のためのキャンペーンは、それにしても、異常である。そのスケールと執拗さ、「包囲網」の巨大さにおいて、戦後最大ではないか。日本のマスコミは、広告料収入の激減、読者の急減、視聴率の低下など、経営環境の悪化に苦しめられ、またぞろ、「いつかきた道」に戻る方向に走りはじめているのではないか。

そして、オバマの背後に、大統領ですらどうにもならない、アメリカのネオコン的な牢固とした覇権主義的国家観、人種差別観を見るのである。

私は国粋主義者、人種差別論者ではない。むしろ、嫌悪感を持っている。私は、真の愛国者、真の民族主義者とは、日本人として、日本の歴史、文化、伝統に誇りと愛情をもつだけでなく、全ての国、民族を心から尊敬し、愛することのできる者だと思っている。そうでなければ、複雑な国際社会で、日本は安心して生きていくことが出来ないことを知っているからである。オバマ大統領は、独りよがりの正義を振りかざしているアメリカを、他国と協調、共生するアメリカに改革する崇高な理想を掲げた「ニガー大統領」(注:ニガーとは黒人の蔑称)のはずである。オバマは、沖縄や徳之島の反対運動は、日本人の総意だと認識し、謙虚に日本の声を聴くべきである。

覇権国家の絶対的条件は、戦争の費用は自前で持つということである。しかし、アメリカは、自前で戦費の調達が出来ず、イラク戦争、アフガン戦争の費用を日本など諸国に依存した。日本がアメリカの国債を「買ってやった」から、戦争が出来たと言っても過言ではない。アメリカの世界戦略は、ベトナム戦争以来、すべて失敗である。それに、唯々諾々と従ってきたのが、戦後65年の日本外交史である。カレル・V・ウォルフレンのいう「世界史上、例を見ない"宗主国と属国"の関係」である。むしろ、「普天間問題」はアメリカから「自立」「独立」する、またとないチャンスだと思う。

「普天間問題」は、煎じつめれば、(1)国外移転(2)(中身は不明だが)鳩山案(3)アメリカと自公が合意した辺野古案しかない。昨年暮、鳩山総理が「普天間問題」を今年に先送りした時、新聞、テレビは一斉に、「辺野古案」で決着しない鳩山の決断を「日米同盟の危機」と騒ぎ立てた。マスコミと自民・公明は「辺野古案」支持である。鳩山総理は、ベストは「国外移転」だが、次善の策として、「辺野古案」より負担の少ない解決策を模索している。マスコミのずるさは、自分たちが「辺野古案」支持者であることをほっ冠りして、鳩山案を潰すため、世論を煽っていることである。国民はマスコミの扇動的な報道に惑わされることなく、成り行きを冷静に見つめてもらいたいと思う。

自民党は、石破元防衛相を中心に、アメリカの日米安保でメシを食っている高官や元高官たちと手を携えて「鳩山潰し」にやっきになっている。鳩山総理はアメリカ、自民、公明、マスコミに包囲され、集中砲火を浴びせられているのだ。知事や市町村長、国会議員、地方議員は、わが町に移設されれば、半狂乱になって反対するが、そうでなければ、口先だけで「沖縄」に同情するのである。本来であれば、知事たちが先頭に立って「国外移転」をアメリカに働きかけるべきではないのか。それが、「日本人の絆」というものだ。しかし、鳩山総理の稚拙とも見えるやり方は、意図的か、結果としてかはともかく、全国に「海兵隊はいらない」の気運を高めたといえるだろう。鳩山総理は国民の大多数の意思を追い風にして、オバマ大統領に日本の要求を認めさせるべきである。

海兵隊は日本を守らない

昨年暮、THE JOURNALに寄稿した拙文「日本のマスコミもアメリカも、頭を冷やして考えよ」で、私は、沖縄の海兵隊の任務は、日本の安全保障ではなく、在韓アメリカ人の救出であると指摘したが、21日の党首討論で、谷垣総裁は「(朝鮮有事の際)非戦闘員(注:在韓米軍家族)の救出」と明言した。国民の知らないうちに、自公政権はアメリカの都合に合わせて「抑止」の概念を変質させていたことを銘記する必要がある。

昨年2月、小沢一郎民主党代表(当時)は、訪日したクリントン国務長官に「両国で世界戦略を話し合い、その合意の上で個別問題に対応することが大事だ」と述べた。このようなことをアメリカの要人に通告した政治家は、小沢が初めてである。日本は、かつての「一国平和主義」に逆戻りすることは出来ない。憲法の範囲内で、日本は、例えば、極東アジアの平和のために、北朝鮮の核問題解決のために、積極的な役割、具体的な行動を自ら決める覚悟がなければならないのである。

逆風ではない、抵抗勢力のあがきだ

舛添新党が出来るそうだ。自民党は小骨、中骨が抜け落ちて、無惨な姿になりつつある。しかし、戦後の混乱の一時期を除いて、新党で成功したのは小沢一郎だけである。彼には「日本改造計画」という骨太の理念と国家像、社会観があり、(今も続いている)彼を葬り去ろうとする陰険な策謀、弾圧に動じない強靭な精神がある。雨後の竹の子のように出てきた新党に、付け焼刃ではない、持続性のあるグランドデザインと不撓不屈の精神があるのだろうか。あれば、民主主義にとって、歓迎すべきことである。
 
正論は、多くの場合、初めは「異端」である。ガリレオの「地動説」、アインシュタインの「相対性理論」、然りであった。フランス革命、インド独立、明治維新も、当初は「異端」だった。小沢一郎の「日本改造計画」は、今では、表面的には常識化しつつあるが、17年前は、強烈なエネルギーをもつがゆえに、強烈な逆風にさらされた「異端」だった。今、民主党には厳しい風が吹きつけている。しかし、これは、逆風ではない。逆風とは、失政に対する有権者の叱責だからである。この風は、「革命」が法則的に直面する、守旧勢力の最後のあがき、「抵抗の風」である。

「小沢革命」と守旧勢力の決戦場は7月の参議院選である。

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踊るフランケン

2010-04-21 | weblog

以下、フリー・ジャーナリスト岩上氏による岡田外相会見のツイート

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岡田大臣は、米軍が日本の安全のために、大事だと力説。私は、国外がありえないなら、沖縄か、本土かは別として、国内になる、ということかと確認を求めると、はっきりと国内に移設する、と言い切った。

岡田外相は、「在日米軍を国外に、というのは考えられない」と言い切り、「米軍は日本の現在の平和に貢献している」と。自民党とまったく同じロジック。ならば、普天間の元々の合意案でよかっただろうに。

もう少し詳しく岡田大臣の発言をお伝えしておく。今日はまず、機嫌がよくはなかった(いつも機嫌がいいとはいえないが)。順を追っていこう。前回、私は、民主党の川内博史議員が、自身の詳細な調査に基づき、海兵隊の総数18000人というそもそもの前提が根拠のないものではないかと聞いた。

すると、岡田外相は、4月13日の会見で「18000人というのはあくまで、大枠の話。中身はその時々で変わりうる」と答え、自分から「川内さんと武正副大臣は会う予定がある」と語った。実際に、この会見の翌日、川内議員は武正副大臣に会い、18000人という数は根拠がない、と伝えた。

その経緯を、私が直接、川内議員から聞いたのは4月15日。このインタビューはUstream中継をしたので御覧の方もいるはず。この中で、川内議員は、在日米軍の実情について調査を行った際、米国に照会をした情報を、岡田外相をトップとする政務三役が開示しないと決定したと明らかにした。

なぜ、米軍の情報を開示しないようにしたのか。この点も、今日の記者会見で聞いたが、岡田外相は「まったく事実ではない」と全否定。勘違いでなければ、川内議員か、岡田外相のどちらかが嘘を言っていることになる。この質問をした時点で、雲行きはかなり怪しくなっていた。

さらに、岡田外相の機嫌を悪くしたのは、「ビーフテンマ」と言われる、米国との「取り引き」の噂についての質問。普天間問題について米国は、譲歩する見返りとして牛肉の輸入再開問題をからめてくるのではないか、という「情報」の真偽である。これに対し、岡田外相は「蓋然性のある質問を」と。

つまり、まったくリアリティーのない質問は、するな、ということ。普天間問題が、牛肉問題のような、他の分野の問題と関連付けられることはない、と岡田外相は断言。ではと、「蓋然性のある質問をします」と私。「日本中で米軍反対運動が起きており、どんな移転先を見つけてもつぶれてしまう…」

岡田外相に対する、私の質問。「ということは、日本中が米軍の駐留に反対しているということ。反対運動もまた民意。であれば、沖縄か、本土かを問わず、国内に移設など無理で、国外しかない、という結論になる。元々、そうなることを見越したうえで、移設先を探してきたのか」と。

この質問に対する岡田外相の回答が、この連続ツィートの始まりの回答。つまり、「普天間の移設先が、国外になることはない」という断言であり、「米軍は日本の安全のために不可欠」という岡田外相の「持論」の力説。これは、スルーできる発言ではない、と思った。

私は、村田良平元駐米大使の「遺作」の話を出した。その中で、「日本は米軍の駐留経費の実に80%を負担しているが、ドイツは20%。負担を減らす交渉をすべき」と書いていること。また、米軍が国外に引いていき、その空白が安保上問題なら、自主防衛をする、そういう選択肢はないのか」と。

また、鳩山首相は、政権交代後、「今は現実的ではない」と、「撤回」した形になっているが、かつて「駐留なき安保」を唱えていた。こうした首相の持論と、在日米軍の存在を恒久化する岡田外相の主張は矛盾するのではないか、とも。これに対して、岡田外相は、はっきりと持論を展開した。

「自主防衛となると、防衛費はGDPの1%では足りず、2%、3%、それ以上、必要になる。そんな用意は日本国民にできていない」と岡田外相はいう。だから、在日米軍に頼るのだと。「米軍への依存」という私の言葉に敏感に反応し、「相互依存だ。米国は日本の基地を必要としている」とも。

米軍が日本の基地を必要とするのは、必ずしも日本を守るためでも、極東有事のためでもない。目下、遂行中のアフガン、イラクでの戦争のためである。それが日米安保ではなく、日米同盟の本質であり、岡田外相の言う「相互依存」の実態でもある。しかし、ここで、会見時間は終了。

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「米軍は日本の現在の平和に貢献している」、遂に馬脚をあらわしたフランケン岡田。岩上氏は自民党とまったく同じロジックと言っている。さらに踏み込めば、米軍という虎の威を借る官僚支配のロジックだ。フランケン岡田はそれを代弁したに過ぎない。しかもそのロジックは破綻している。

では、なぜ破綻しているロジックにフランケン岡田は固執し不機嫌な記者会見をしたのだろうか。

それについて、田中ウータンの分析が興味を引く。日中防衛協調と沖縄米軍基地より以下を抜粋。

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ガス抜き踊りをやらされる岡田外相

鳩山政権でもう一つ興味深いのは、岡田外相の動きである。岡田は、普天間移設問題について、何とかして米国と沖縄県民の双方が納得する解決法を編み出そうと、本気で駆け回っている観がある。鳩山や小沢は、最後は在日米軍を全撤退させたいと考えているようだが、岡田はその方針を共有していない。これは何を意味するのか。私の推察は「小沢や鳩山は、外務省のガス抜きのために、岡田を外務省を代弁する役回りに置き、あえて解決不能な状況下で、必死に駆け回らせているのではないか」というものだ。鳩山は岡田に「外務省幹部とよく相談して、普天間移設の解決策を編み出せ」と命じ、その一方で沖縄県民や社民党を基地反対の方に煽り、最終的に「外務省は岡田のもとで、できるだけのことをしたが、在日米軍撤退を止められなかった」という話にするつもりではないか。

鳩山政権は、外務省と敵対すると、以前の記事に書いた田中角栄のように、外務省の手練手管に潰される。対米従属の外交スキャンダルが不倫絡みの情報漏洩事件にすり替えられた「西山事件」(沖縄密約事件)に象徴されるように、外務省は話をすり替えつつマスコミを操作し、自分たちに都合の良い結論に持っていくプロパガンダに長けている。だから小沢や鳩山は、いちずな岡田を外相に送り込み、外務省のために本気で必死に働かせ、外務省が鳩山政権を敵視できない状況を作った上で、在日米軍引き留めという外務省の長期戦略を潰しにかかっている。

米国は今春、青森県の三沢基地から40機のF16戦闘機をすべて米国に引き揚げ、代わりに嘉手納基地のF15戦闘機群(50機)の半分を三沢に移転する話を日本側に持ちかけたが、米軍に出て行ってほしくない日本政府は、この案に反対した。この案を復活させ、嘉手納の空いた場所に普天間のヘリ部隊を入れれば、普天間を空けられる。だから岡田は「嘉手納移転」にこだわったが、これについては米国が小沢鳩山に「助け船」を出した。以前は米国から言い出した話を、今回は米国が拒否した。ゲーツ米国防長官は「嘉手納に空軍戦闘機と海兵隊ヘリを一緒に常駐するのはダメだ」と強く言い、外務省案を潰した。実際には、空軍戦闘機と海兵隊ヘリが一つの基地を共有してコストを削減する手法は、ここ数年の米軍再編で推奨されてきた柔軟運営策だが、ゲーツは「ダメ」の一点張りだった。

岡田は、普天間移設問題では外務省のために解決策を探して奔走したが、その一方で「西山事件」(沖縄密約。沖縄返還時の秘密の「思いやり予算」)や「核兵器の日本持ち込み黙認」といった、昔の外務省がやっていた対米従属の秘策について真相究明を進めると宣言している。沖縄密約については、当時の外務次官らが昔の自分の否定証言を覆し、密約の存在を認めている。これらの暴露は、外務省が権力維持のため在日米軍に象徴される対米従属を何とか維持しようと策を弄し続けてきたことを露呈するもので、日本を対米従属から引き剥がす民主党政権の隠れた戦略に沿ったものだろう。

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鳩山首相の腹案

2010-04-17 | weblog

来月末期限になる普天間移設鳩山腹案とは徳島案ではなく、ズバリ、グアム移転案だろう。

以下、沖縄等米軍基地問題議員懇談会会長川内議員のインタビュー記事とグアム移転案。

 

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普天間移設徳之島案「手続き間違っている」 民主鹿児島県連・川内代表

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先として有力視される徳之島。依然政府から正式な説明がなく、地元が警戒感を強める中、民主党鹿児島県連はどのような姿勢で問題に臨むのか。県連代表で、与党・超党派の国会議員でつくる沖縄等米軍基地問題議員懇談会では会長も務める川内博史衆院議員(鹿児島1区)に、政府の対応などについて聞いた。

-徳之島案をどう考えるか。

「軍事的評価、実現の可能性を差し置いても今日まで(政府から)県連だけでなく首長や議会、自治体などに正式な情報提供がない。マスコミ報道だけだ。情報を共有しておらず、物事の進め方として絶対無理だ。論理的にあり得ない。沖縄の負担を分かち合おうという気持ちはあるが、賛否以前の問題。手続きが間違っている」

「徳之島案といっても海兵隊が何人駐留するか、どんな施設が必要かなど全く分かっていないのではないか。日米関係、国の安全保障は大変重要。だからこそ、もしかしたら基地を移設されるかもしれない地域住民と(政府が)、きちんと情報共有するという議論の出発点こそ大事だ」

-川内氏は鳩山由紀夫首相に近いが、何も聞いていないのか。

「全然聞いていない。首相には手続きが間違っていると申し上げている。わたしは与党・超党派の沖縄等米軍基地問題議員懇談会長として調査研究した成果を鳩山首相に報告し意見交換。『自民党政権での日米合意を引き継ぎ、普天間飛行場の代替地探しに、まるで不動産探しのように血道を上げるのはおかしい』と言ってきた」

「米国の中期国防計画など公式文書を分析すれば、在沖縄海兵隊戦闘部隊がグアムへ行き、基地施設部隊のみ沖縄に残る。主な訓練はグアムで行うという。わたしは沖縄や岩国(山口県)の米海兵隊幹部、宜野湾市長、名護市長と会うなどして得た情報を首相に伝えている。最終的に判断するのは首相だ。真の腹案はグアム移転案だと思う」

-徳之島で住民の意見を聴き、説明する気はないか。

「行けば移設前提になる。現地に行くのはやぶさかではないが、現状では地元で心配している住民の気持ちを体現して官邸に訴え、徳之島案を白紙に戻す方法をとりたい」

-今夏の参院選鹿児島選挙区への影響は。

「何一つ正確な情報がない中で徳之島、奄美群島の人々が実態のないものに振り回されており、影響を大変憂慮している」

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平成22年3月6日

2010年5月日米両国政府合意案(第1次案)に向けて

沖縄等米軍基地問題議員懇談会

会  長 川内博史

事務局長 近藤昭一


1、グアム協定を維持し、遵守する。

2、SACO合意を改定する。

① 在沖縄海兵隊の本拠地を、2014年までにグアムに移設する。費用の相当部分は日本政府が負担する。
② 2014年グアム移転までは普天間基地を、負担軽減の上、使用する。
③ V-22オスプレイの運用については、日米両国政府で協議する。
④ 辺野古沿岸の基地建設は中止する。
⑤ 日本政府は、海兵隊のローテーション展開基地を、日本国内に確保するために、米国政府と誠実に協議する。 

3、日米地位協定見直しの協議を開始する。

① 刑事裁判権について
② 低空飛行訓練の日本の法令遵守について
③ 134ヶ所の米軍使用基地・施設の整理統合について

4、日米グローバルパートーナーシップの観点から、日米同盟を深化させるために協議を行う。

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先般、川内議員はUSTでジャーナリストの岩上氏とインタビュー対談。以下、本のセンセのまとめ。

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川内博史衆院議員インタビュー・海兵隊18000人の根拠は全くない。


川内 資料を分析すると、みんな信じられないかもしれないが、昨年11月20日に発表された。沖縄からグアムへの移転における環境評価書の中には、もう、沖縄では訓練ができなくなってきている、ということが明記されている。即応能力を維持するのが難しい。グアムテニアンに新しい基地を作り、部隊の即応能力を維持向上させるためにやる、ということが柱書きに明記してある。アメリカ側の文書をよく読んでいくと、アメリカはアジア太平洋地域の防衛力を向上させるために それらの国々をテニアン・グアムに呼んで一緒に訓練したい、それをすることがアジア太平洋防衛に寄与するということが書いてある。

岩上 にもかかわらず、日本のマスコミには全く報道されていない。

川内 アメリカにとっては、日本はアジア太平洋地域における一国でしかない。グアム・テニアンをハブにすることがきちんと明記されている。

川内 沖縄に残す部隊は一体どういう性質のものなのですか、アメリカ側は一体どう考えているのですか?と防衛省の局長クラスに聞くと教えられませんではなく、わかりません、と防衛省の役人が答えた。え、じゃあ、いったいどうなるの?と思ったことがこの問題を考え始めたきっかけなんです。そもそも、米側は海兵隊の中心部分をグアム・テニアンに移してアジア太平洋地域の防衛力を高めようという戦略をとっていることは間違いない。

岩上 沖縄がなくなることは、日米同盟の危機ではないか、というもっともらしい危機感をあおる報道がなされていますが、そもそも、アメリカの国際戦略上、日本の安全保障を低下させるようなことは全くないのですか?

川内 全くありません。なぜなら、海兵隊が移動するときは、佐世保から迎えに来ます。そして出発します。佐世保沖縄間の時間がかかる。グアムに移転すると、アップラ(港)を作って、そこから一体化して出発することになっている。この軍事的な評価についても、環境評価書に書いてあって、この戦略は満点である、と評価してあるのですから。

岩上 宜野湾市の伊波市長が読み解いて、取り上げたのだが、全国紙ではほとんど取り上げられてない。ローカルな市長の抗議であるとして取り上げられなかった。その又聞きなんですか?

川内 私自身も原典に当たって確認しております。何故、沖縄のことをマスコミが報道していないのかと言うとみな心の中で、沖縄に基地を押し付けとけばいいんだ、と。内心では思っているのではないでしょうか?。米は正直だから、ちゃんと評価を出してくれている。にもかかわらず、それを見ないふりをしている。これが何を意味するのかと言うと、日米同盟の大事さは変わらない、国民共通の財産であるが、沖縄にずっと押しつけ続けていたから日米同盟がごくごく一部のものになってしまっていた。それが辺野古案。

岩上 それは、一部の人が利権に群がっているという意味ですか?

川内 そんな情報は国民は知らなくてよいのだ。基地は沖縄にあればよいのだ、経済振興はするから、という態度でいた。日米関係を発展させるためには、アメリカの情報、日本の情報ともにオープンにして、国民に知らせなければならない。何のための政権交代か?対等で緊密な日米関係を作るため何によって担保するか?情報をすべて公開することからだ。

岩上 具体的な話に入りたい。防衛省がわからないと言ったことは、本当にわからなかったのか?それとも知らなかったのか?

川内 鈴木宗男氏が質問主意書を出し、これに対する答弁が「まだ決まってなくてこれから決まる」という答弁書が返ってきた。回答が来ないし、わからない、ということばかりが返ってくるので質問主意書を出すから、と鈴木宗男氏が言った。答弁書は閣議決定されるので、正式な政府の回答なのだが、全くまともな答えが返ってこない。

岩上 岡田大臣の会見で質問したのですが、沖縄駐留の海兵隊18000人の根拠は、中川大臣の発言だ。それをベースとしてるのだが、それは分からない。岡田大臣にも聞いてみたのだが、要領を得ない。

川内 沖縄に実際いる人数は何人ですか?ということに関して、何も根拠がない。アメリカ側の書面には全く数字が書かれていない。みんな信じ込まされてきたのだが、それは全く根拠のない話だ。08年 米軍の沖縄からグアムへの移転をどういう風に勧めるかの報告書の中で、ネットで手に入れた。スリーエムイーエフ(第三海兵遠征軍)戦闘部隊をグアムに移す。しかし、後方支援の基地は沖縄に残る。ということは、戦闘部隊は全てグアムに行ってしまう。基地施設部隊(施設管理要員)は沖縄に残る。

岩上 実際の戦闘部隊はグアムに行き、施設管理の部隊だけは沖縄に残るということですね。

川内 そうです。管理人は残ってます。さらに、第三海兵遠征部隊という部隊があるのですが、この31ミューは沖縄に残る。これは実働部隊です。キャンプハンセンに行った時の資料なんですが、沖縄すべて回った。岩国にも言った。来週キャンプ富士にも行きます。

岩上 そこの責任者すべてにあって、資料をもらってきた。百聞は一見に如かずですね。

川内 アメリカ人はみんな教えてくれるんですよ。ヒントを教えてくれます。現地の司令官はちゃんと分かっている。各基地の司令官に、どの部隊が移るのですか?と聞いたら、何が残り、何が残らないかをアメリカは説明してくれている。2000人くらい残る。アメリカにとっては、オーストラリア、フィリピン、タイ、韓国、日本が同盟国。31ミューは同盟国内を巡回する部隊である。常に動いていて、地政学的な環境に慣れていく。沖縄をベースにすると言っても、1年じゅう沖縄にいるわけではない。沖縄をベースにするが、常駐ではない。年に2,3カ月ではないか?と答えた。戦闘部隊はほとんど残らない。

岩上 鳩山政権ができようができまいが、沖縄の駐留なき部隊は生まれ始めている。というわけですね。ところで日米安保が危機的状況にある、とプロパガンダがなされているがこの点どうですか?

川内 アメリカの戦略上全く関係ないから戦略上ローテーションで回る。4年前に発表された06年の国防計画書によれば、中国は米国にとって利害関係国だ、仲間だ、と明記されている。10年にも同様の記述があるし、アジア太平洋地域の平和を作っていくと明記されている。国民の皆さんも、このことをぜひ知っていただきたいし、日中間も、戦略的互恵関係としてお互いに協力し合ってお互いに幸せになるように努力するとうたっているのだから、何故敵愾心をあおるのかがよくわからない。

岩上 中国は軍事力を増強しているし、経済力も増している。民主体制じゃないし、不安である。

川内 アメリカが今、自分の戦略上中国に侵略される恐れがないと判断しているからこそそういう戦略をとっているという基礎的なことが伝えられていない。国際的なパワーバランスというのは冷静に判断しているし、日本も南方に部隊を展開するように自衛隊を移動している。変におびえる必要もないし、変に身構える必要もない。淡々と行動していけばよいと思います。今回の普天間基地問題については、そこにだれがどこに移動するのかを誰も知らない。実は全く根拠が存在していない。どうしてそんなことを言えるのかがわからない。

岩上 現地の司令官に全部確認を取っている。毎日新聞に司令官たちと会い、18000人の根拠をただした外交政策次長の応答としてその数字は我々が出したものではない。それは日本側が言った数字だ、と言われたという件についてお話しいただけますか?

川内 4月5日に、沖縄海兵隊のログリング中将、参謀のメルトン大佐、エルドリッジ次長にキャンプ瑞慶覧で会談した。ご指導を頂きにお伺いした。ログリング中将に「日米安保は強化しなければならないが、18000人であるというのは、守屋さんが実質的に責任者としてまとめた数字です。信頼してもらえる数字とはいえない。そこで、あなたに教えていただきに来たんです」。「そりゃそうだ。何でも聞いてくれ 隠すことは何もない」。「じゃあ、教えてください」。「じゃあ、詳しい奴に答えてもらう」。「メルトン・エルドリッジ両氏に聞いた。18000人の根拠を見せてください」。「根拠はある。文書にのっている」と言っていた。しかし、18000人と言っている主語はだれだ?と聞かれた。それは日本政府だ。我々には責任はない、と答えた。アメリカも18000人とした根拠はその時代に言われていたことを利用していた。日本政府の責任である。米側も、利用してきたじゃないか、と述べた。だからこそ、根拠がないし、どこから出てきたのか未だにわからない

岩上 アメリカに紹介されたと聞きましたが。

川内 ヘリコプター部隊だけ数字が書いてない。しかし、そもそも沖縄から動く部隊なのだから、沖縄の部隊なんでしょ?と防衛省の役人にきいたら、「それは岩国の舞台です」と答えたので、その根拠は?と聞いたら「それはアメリカに聞いてください」と答えられた。そこで、アメリカ側に藤崎大使に岡田大臣から公電打ってもらって聞いたのだが、2月中旬になってようやく返事が来て副大臣が来て返事持ってきた。「返事は見せられない」と「岩国」という部分だけ見せてぱっと戻した。岡田大臣の職務権限で「信頼関係を損なう」という理由で川内の依頼で打った公電の返事は見せられない、ということになった。

岩上 岡田大臣によって、川内に対する情報提供は拒否された、ということですか?

川内 それで岩国にいって、岩国基地司令官にオハローラン司令官に岩国にヘリコプターはいるんですか、と聞いたら、名目上所属はしているが、見たことはない、という回答が出てきた。国民の皆さんが、(なるほどそういうことだったんだね)と思ってもらうように情報は共有化されるべきであると考えているそれをただ単純に繰り返しているのだが、答えてもらえない。そこで最初に帰るんですが、日本政府はアメリカに何も聞いてこなかったのではないか?18000人の根拠にしても、アメリカは全く知らないと言ってるし、辺野古は作ります、と言っているが、それには一兆円以上かかるし、国民の税金ですよ。事業仕訳でいま厳しくやられるわけでしょう?蓮舫さんにやられたらこの問題は大変ですよ(笑い)どういう基礎的なデータに基づいて基地建設がおこなわれるのかを国民に開示して説明すべきだ。

岩上 結局のところ、今鳩山政権が悩んでいるのが、地元の合意、米軍の条件ということと言う中に、地元のOKと言うという要素が組み込まれている。早い話が、米軍に運用上問題がないことが確認されること。今の現状は、元々の案は難しい。平野官房は無理だ、と発言。じゃあホワイトビーチ案はバツ。キャンプシュワブもバツ徳之島案もバツ。鹿児島県では反対が強いこの状況をどう見ますか?

川内 何が何だか分からないのだから、反対になるにきまっている。ものすごい大きな部隊が移ってくるんじゃないか、と誤解している。今日繰り返しますが、なんら情報が共有されていない。31ミューが日本に残る。各国を回るので、常駐しない。米側も認識している。何人来るか、どんな部隊か、いつ来るのかも全く把握されていない。情報が秘匿された状態でずっと来ている。杭一本打てなかったのは、情報が共有されていなかったからだ。自公政権の落とし前をつけますよ、ということで引き受けている。その担当をしている閣僚・官僚が情報を共有しておらず、以前と同じことを繰り返しているのだから、反対するにきまっている。

岩上 民主党政権も情報開示をしているのだが、あと一歩、重要なことろで公開していない。次回の会見で、帰ってきたらちゃんと岡田大臣に「何故、川内さんに情報を開示しなかったのか」について質問します。

川内 これは、必要なことだと思います。ホントはどうなの?と知ることから新しい日米関係が始まるのです。迷惑施設にしちゃっているところが問題なのだ。そんなことでは日米関係は持たなくなるし、アメリカも、自分達が正しいことをやっていると思っているわけで、そのプライドに対するリスペクトは払わなきゃいけないわけで、やっぱり彼らのことを理解し、地元とも仲良くやれる土壌を政府が作らなければならない。それが政府の仕事なんだから。徳之島案につき今の進め方では無理だと通告した。

岩上 長崎案(孫崎案)地元が反対している。

川内 進め方が間違っているからだ。そんなのわからない、というにきまっている。基礎となる情報を開示していないから当然反対になる。本来合わなくてもいい一国会議員に、現地司令官がわざわざ1時間半の時間を割いて教えてくれた、というのは、日本政府に対するメッセージだ。ちゃんと我々は話す準備があるよ、という日本に対するメッセージだ。五月末まで時間は十分あるのだから、海兵隊自身も、何を作っているのかがよくわかっていないのではないか?キャンプシュワブ、キャンプハンセンも返還交渉できる可能性はある。

岩上 講和条約を結んだと言っても、アメリカは占領国のつもり対等の防衛協力しようよ、と言うべき。

川内 そこを、SACO(守屋がやった合意)合意を改定、法的拘束力なしにする。ローテーション基地を確保するためにアメリカと誠実に交渉する。沖縄からグアムに移転する際、60,9億ドル融資しますという規定が盛り込まれている。これは国際約束で拘束力ある。 

岩上 沖縄の基地は中東に出撃するためのものである。その延長上にSACO合意というのがある。日米同盟自体はいいのかという話はどうなの?

川内 アメリカの国防評価所を見ても、伝統的な国対国の戦いではなくテロとの戦い具体的にはイスラム原理主義を相手にすると書いてある。

岩上 海兵隊は日米安保のためにあるのではない、ということを明白にしていただけますか?軍事オタクがたくさんいるけど、基本的な所で間違っている編めるかの文書に正直にきっちり書いてある。2014年に移転する。その間普天間はそのままなの?

川内 伊波市長もオッケーだと言っている。いま普天間は空っぽです。イラクアフガンに行っているから。14年まで待つということについて伊波市長は同意している。情報公開が行われたところで、公募すれば、必ず結果が出てくるはずだ。国民の理解を得られる唯一の道である。どの程度の負担がかかるのかがわからないので反対が強くなっているのだ。31ミューしか残らない(2000人くらい)常駐するわけではない。1年のうち大半は外国に行っている。そして日本に戻ってくる。日本ではそれほど激しい訓練をしないのではないか?と予想している。

岩上 既存の施設を使って吸収できるものなのか?

川内 いろんな選択肢がある。それも含めて地元の同意アメリカも歓迎されるところに行きたい。情報を開示し、共有化して公募すれば、必ず国民の理解を得られる。

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官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転

2010-04-14 | weblog

以下、昨年12月10日 田中宇のコラムを転載

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官僚が隠す沖縄海兵隊グアム全移転


沖縄の海兵隊は米国のグアム島に移転する計画を進めている。日本のマスコミや国会では「沖縄からグアムに移転するのは、海兵隊の司令部が中心であり、ヘリコプター部隊や地上戦闘部隊などの実戦部隊は沖縄に残る」という説明がなされてきた。しかし伊波市長ら宜野湾市役所の人々が調べたところ、司令部だけでなく、実戦部隊の大半や補給部隊など兵站部門まで、沖縄海兵隊のほとんどすべてを2014年までにグアム島に移転する計画を米軍がすでに実施していることがわかった。普天間基地を抱える宜野湾市役所は、以前から米軍に関する情報をよく収集し、分析力がある。

ヘリ部隊や地上戦闘部隊(歩兵部隊)のほとんどがグアムに移転するなら、普天間基地の代替施設を、名護市辺野古など沖縄(日本国内)に作る必要はない。辺野古移転をめぐる、この数年の大騒ぎは、最初からまったく不必要だったことになる。米軍が沖縄海兵隊をグアムに全移転する計画を開始したのは2006年である。日本政府は米軍のグアム移転に巨額の金を出しており、外務省など政府の事務方は米軍のグアム移転計画の詳細を知っていたはずだが、知らないふりをして「グアムに移る海兵隊は司令部などで、沖縄に残るヘリ部隊のために辺野古の新基地が必要だ」と言い続けてきた。

伊波市長は11月26日に上京し、この件について与党の国会議員に対して説明した。同市長は12月9日には外務省を訪れ、普天間基地に駐留する海兵隊はすべてグアムに移転することになっているはずだと主張したが、外務省側は「我々の理解ではそうなっていない」と反論し、話は平行線に終わった。

司令部は移転する8千人中3千人だけ

「米国は、沖縄海兵隊の大半をグアムに移そうとしている」と伊波市長が主張する根拠の一つは、米当局が11月20日に発表した、沖縄海兵隊グアム移転(グアム島とテニアン島への移転)に関する環境影響評価の報告書草案の中に、沖縄海兵隊のほとんどの部門がグアムに移転すると書いてあることだ。環境影響評価は、軍のどの部門が移転するかをふまえないと、移転が環境にどんな影響を与えるか評価できないので、米軍が出したがらない移転の詳細を報告書に載せている。

8100ページ、9巻から成る環境影響評価の報告書草案の2巻や3巻に、沖縄からの海兵隊移転の詳細が書かれている。そこには、海兵隊のヘリ部隊だけでなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊までグアムに行くことが書いてある。第3海兵遠征軍(MEF)の司令部要素(3046人)だけでなく、第3海兵師団部隊の地上戦闘要素(GCE、1100人)、第1海兵航空団と付随部隊の航空戦闘要素(ACE、1856人)、第3海兵兵站グループ(MLG)の兵站戦闘要素(LCE、2550人)が、沖縄からグアムに移転する。4組織合計の移転人数は8552人であり「沖縄からグアムに8000人が移転する」という公式発表と大体同じ人数である。「グアムに移転する8000人は司令部中心」という外務省などの説明は明らかに間違いで、司令部は3046人で、残りは実戦部隊と兵站部隊である。

米国側が、沖縄の海兵隊の大半がグアムに移る計画内容を発表したのは、これが初めてではない。2006年9月に米軍が発表した「グアム統合軍事開発計画」に、海兵隊航空部隊とともにグアムに移転してくる最大67機の回転翼機(ヘリコプター)などのための格納庫、駐機場、離着陸地(ヘリパッド)を建設すると書いてある。普天間に駐留する海兵隊の回転翼機は56機だから、それを超える数がグアムに移転する。普天間の分は全部含まれている可能性が高い(残りは米本土からの前方展開かもしれない)。

この「グアム統合軍事開発計画」は、グアムを世界でも有数の総合的な軍事拠点として開発する戦略だ。米国は「ユーラシア包囲網」を作っていた冷戦時代には、日本や韓国、フィリピンなどの諸国での米軍駐留を望んだが、冷戦後、各国に駐留する必要はなくなり、日本、韓国、台湾、フィリピン、インドネシアなどから2000海里以下のほぼ等距離にあるグアム島を新たな拠点にして、日韓などから撤退しようと考えてきた。

その具体策として、海兵隊の全構成要素を沖縄から移すだけでなく、海軍と空軍の大拠点としてグアムを開発し、米軍の全部門が連携できる体制を作る計画を打ち出している。沖縄の海兵隊は、小さな出先機能が残存する程度で、残りはすべてグアムに移る方向と考えるのが自然だ。

一週間で消された詳細なグアム計画

米軍の「グアム統合軍事開発計画」は、06年7月に策定され、9月に発表された。策定の2カ月前の06年5月には、米軍再編(グアム移転)を実施するための「日米ロードマップ」が日米間で合意され、この時初めて、日本政府が沖縄海兵隊グアム移転の費用の大半(総額103億ドルのうち61億ドル)を払うことが決まった。米軍は、日本が建設費を負担してくれるので、グアムに世界有数の総合的な軍事拠点を新設することにしたと考えられる。

とはいえ、米軍の「グアム統合軍事開発計画」は、国防総省のウェブサイトで公開されて1週間後に、サイトから削除されてしまった。「日米ロードマップ」にも、沖縄からグアムへの海兵隊移転は「部隊の一体性を維持するような形で」行うと書いてあり、司令部だけではなく実戦部隊も移転することがうかがえるが、同時に「沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される」とも書いてある。「海兵空地任務部隊」とは、海兵隊の主要機能全体をさす言葉で、曖昧である。

日米は、沖縄海兵隊のうち何がグアムに移転し、何が沖縄に残るかを意図的に曖昧にしておくことで、海兵隊が今後もずっと沖縄に駐留し続け、日本政府は「思いやり予算」などの支出を米軍に出し、財政難の米軍はその金をグアム基地の運用費に流用し、日本政府は1日でも長く続けたかった対米従属の構図を残せるという談合をした疑いがある。「グアム統合軍事開発計画」は、具体的に書きすぎており、沖縄海兵隊が全部グアムに移ることがバレてしまう心配が出てきたので、1週間で削除したのだろう。

その後、宜野湾市関係者が、グアム統合軍事開発計画を根拠に、米国沖縄総領事に「普天間基地の海兵隊ヘリ部隊がグアムに移転する計画ではないか」と尋ねたところ、総領事は「あれは紙切れにすぎない」「正式な決定ではない」と返答し、沖縄海兵隊でグアムに移るのは司令部機能だけだと主張した。だが、その3年後の今年11月20日の環境影響評価の報告書草案でも、グアム統合軍事開発計画の内容は踏襲されており、米軍は沖縄海兵隊の大半をグアムに移す計画を粛々と進めている。伊波市長は先日、グアム統合軍事開発計画について「この3年間、この計画に沿ってすべてが進行している」と指摘した。

宜野湾市は、周辺市町村も誘って、2007年8月にグアム島の米軍基地を視察し、米軍やグアム政府からの聞き取りや資料集めを行った。その結果、以下のことがわかった。(1)グアムのアンダーセン空軍基地の副司令官に、沖縄の海兵隊航空部隊の施設建設予定地を案内され「65機から70機の海兵隊航空機が来る」と説明を受けた。普天間の常駐機は71機。ほぼ全数がグアムに移る。(2)グアムのアプラ海軍基地に、今は佐世保に配備されている、強襲揚陸艦エセックス、ドック型揚陸艦ジュノー、ドック型揚陸艦ジャーマンタウン、ドック型揚陸艦フォートマックヘンリーのために、停泊施設が新設される。海兵隊の軍艦は、佐世保からグアムに配置換えになる。有事に備え、揚陸艦の近くに駐留せねばならない海兵隊の戦闘部隊や兵站部隊からなる第31海兵遠征部隊も、グアムに移る可能性が高い。

08年9月には、米国防総省の海軍長官から米議会下院軍事委員会に、グアム軍事計画の報告書「グアムにおける米軍計画の現状」が提出された。その中に、沖縄からグアムに移転する海兵隊の部隊名が示されており、沖縄のほとんどの実戦部隊と、ヘリ部隊など普天間基地の大多数の部隊がグアムに行くことが明らかになった。

外務省が捏造した1万人の幽霊隊員

外務省発表や大手マスコミ報道によると、沖縄には1万8000人の海兵隊員がおり、グアムに移るのはそのうち8000人だけで、グアム移転後も沖縄に1万人残る話になっている。私もその線で記事を書いてきた。しかし、在日米軍の司令部によると、1万8000人というのは「定数」であり、実際にいる数(実数)は1万2500人である。しかも、沖縄タイムスの06年5月17日の記事「グアム移転 人数の『怪』」によると、沖縄にいる海兵隊の家族の人数は8000人で、発表どおり9000人の家族がグアムに移るとなると、残る人数が「マイナス」になってしまう。

沖縄海兵隊の「実数」は、軍人1万2500人、家族8000人の計2万0500人だ。これに対してグアムが受け入れる人数は軍人8000人、家族9000人の計1万7000人である。家族数の「マイナス」に目をつぶり、総数として引き算すると、沖縄に残るのは3500人のみだ。米軍再編の一環としての「省力化」を考えれば、米本土に戻される要員も多いだろうから、沖縄残存人数はもっと減る。今回の宜野湾市の資料は「沖縄に残るとされる海兵隊員定数は、今のところ空(から)定数であり、実働部隊ではない」としている。空定数とは、実際はいないのに、いることになっている人数(幽霊隊員)のことだろう。

外務省などは、1万人の幽霊部員を捏造し、1万人の海兵隊員がずっと沖縄に駐留し続けるのだと、日本の国民や政治家に信じ込ませることに、まんまと成功してきた。沖縄の海兵隊駐留は、日本が対米従属している象徴であり、外務省は「米国に逆らうと大変なことになりますよ」と政治家や産業界を脅し、その一方で、この「1万人継続駐留」を活用して思いやり予算などを政府に継続支出させて米軍を買収し「米国」が何を考えているかという「解釈権」を持ち続けることで、日本の権力構造を掌握してきた。

この捏造された構図の中では、普天間基地は今後もずっと返還されない。辺野古では、すでにキャンプ・シュワブの海兵隊基地内に、海兵隊員用のきれいな宿舎や娯楽施設が何棟も建設されている。海兵隊員は2014年までにグアムに移るのだから、これらは短期間しか使われない。外務省らの詐欺行為によって、巨額の税金が無駄遣いされてしまった。これは、自分らの権力を増強するため公金を無駄使いする犯罪行為である。伊波市長は今年4月、参考人として国会に出たときに「幽霊定数が重視されるのなら(海兵隊グアム移転費として日本が出す)60・9億ドルは無駄金になりかねません」と言っている。

(最終的に、海兵隊が沖縄から出ていった後、キャンプ・シュワブは自衛隊の基地となり、辺野古の宿舎は自衛隊が使うことになるのかもしれない)

歓迎されない橋下関空容認発言

沖縄海兵隊は、1万人の幽霊定員を残し、日本から巨額の金をもらいつつ、着々と沖縄からグアムに移転している。しかし表向きは、1万人残存を前提に、辺野古に新しい基地を作る話が続いており、沖縄の人々は反対の声を強めている。

反対の声を聞いて、大阪の橋下徹知事が11月30日に「海兵隊が関西空港に移ってくることを容認する」という趣旨の発言をしたが、実は橋下知事はその2週間前にも記者団に同様のことを言っており、その発言は国会でも問題になったが、マスコミはこれらの出来事をまったく無視した。11月30日の会見はフリーのジャーナリストが会見の一部始終をユーチューブで公開し、それが人々の話題になったので、仕方なくマスコミも橋下の発言を報道したのだという。

マスコミを、外務省など官僚機構が操作するプロパガンダ機能としてとらえると、マスコミが橋下発言を無視する理由が見えてくる。米軍は沖縄海兵隊のほとんどをグアムに移転するのだから、普天間基地の代替施設は日本に必要ない。「普天間の移転先を探さねば」という話は、具体化してはならない。橋下がよけいな気を回し、本当に海兵隊を関西空港に移す話が具体化してしまうと、詐欺構造が暴露しかねない。だから、橋下の発言は歓迎されず、無視されたのだろう。

海兵隊の移転先として硫黄島の名前が挙がったり、嘉手納基地と統合する構想が出たりしているが、同様の理由から、いずれも話として出るだけで、それ以上のものにはなりそうもない。

(橋下知事は大阪府民に向かって「みんなで沖縄のことを考えよう」と呼びかけており、これは以前に書いた「沖縄から覚醒する日本」と「民主党の隠れ多極主義」で指摘した、沖縄基地問題と地方分権をつないだ日本覚醒の流れに見える)

日本の将来を決する天王山に

「海兵隊はグアムに全移転しようとしている」という、宜野湾市長の指摘も、マスコミでは報じられなかった。だが、11月末に伊波市長がその件を与党議員に説明した後、12月に入って鳩山首相が「そろそろ普天間問題に日本としての決着をつけねばならない」「グアムへの全移転も検討対象だ」と発言し、事態が一気に流動化した。鳩山がグアム全移転を言い出したことが、伊波市長の指摘と関係あるのかどうかわからないが、議論の落としどころは「グアム全移転」で、それに対する反対意見を一つずつガス抜きしていくような展開が始まっている。

そもそも「グアム全移転」は、日本側が提案することではなく、すでに米国がやっていることなのだが、世の中はマスコミ報道を「事実」と考えて動いており、海兵隊1万人沖縄残留という捏造話が、国民の頭の中で「事実」になっている。マスコミがプロパガンダ機能だと国民に気づかせることが首相にもできないほど、この機能が持つ力が強い以上、鳩山はグアム全移転を「米国に提案する」という形式をとらざるを得ない。

鳩山は「(普天間移設に関する)政府の考え方をまとめるのが最初で、必要、機会があれば(米大統領と会談したい)」と言っているが、まさに必要なのは、米国と再交渉することではなく、政府の考え方をまとめ、海兵隊員水増しの捏造をやめることである。外務省など官僚機構が了承すれば、日本は「海兵隊は2014年までにグアムに全移転してほしい」という方針で一致し、米軍がすでに進めている移転計画を、ようやく日本も共有することになる。

海兵隊グアム全移転が政府方針になると、海兵隊1万人沖縄残留という捏造話に基づく対米従属の構造が崩れ、外務省など官僚機構は力を失っていく。だから外務省とその傘下の勢力は、全力で抵抗している。事態は、日本の将来を決する「天王山」的な戦いとなってきた。自民党は、民主党政権を批判すべく、今こそとばかり党内に大号令をかけた。自民党は、官僚依存・対米従属の旧方針を捨て、保守党としての新たな方向をめざすべきなのだが、依然として官僚の下僕役しか演じないのは愚かである。

政権内では、北沢防衛大臣がグアムを訪問した。海兵隊のグアム全移転が可能かどうかを視察しに行ったのだろうが、向こうの米軍などに恫喝されたらしく、グアムにいる間に「グアム全移転はダメだ。日米合意からはずれる」と表明した。これに対して社民党の議員が「ちょっと行って、ちょろっと見て『ダメ』って結論が出るのか」と非難するなど、連立与党内も乱闘になっている。

日本政府が「グアム全移転」でまとまった場合、日本が米軍の移転費用を2014年以降も出し続けるかどうかが、日米の問題となる。米軍がグアム島を大軍事基地に仕立てる計画について、米軍は当初、総額107億ドルで完成できる(うち60・9億ドルを日本が出す)と言っていたが、これにはグアムで軍関係の人員や車両が増えることによる道路や上下水道、電力網などの補強工事にかかる61億ドルが含まれていない。米政府の会計検査院(GAO)は今年7月、この件で米軍を批判する報告書を発表した(基地移設により、島内人口は14%増となる見込み)。

米軍は予算オーバーの常習犯で、事業が予算を大幅に超過するのは30年前からの常態だ。米軍は、超過分は日本に出させようと考えていただろうが、鳩山政権は対米従属からの自立を掲げており、財政難を理由に、金を出し渋るだろう。今回の北沢防衛相のグアム訪問時に、グアムの知事が沖縄からの海兵隊移転に初めて反対を表明したが、この反対表明の裏には、日本にグアムのインフラ整備費も出してほしいという要求があるのだろう。

米政府も財政難なので、海兵隊グアム移転にかかる費用の増加分を日本が出さない場合、海兵隊がグアムに移らず、普天間に居座る可能性もある。だが、そうなると海兵隊の居座りに対する沖縄県民の反対も強くなり、鳩山政権は、金を出さないで海兵隊に撤退を要求するという、フィリピンなど世界各国の政府がやってきた「ふつうの国」の要求をするかもしれない。最終的に、米軍は日本らか追加の金をもらえずに出て行かざるを得ず、この場合はグアム移転の要員数が縮小され、米本土に戻る人数を増やすことで対応すると思われる。「政府や議会が一度決議するだけで米軍を出て行かせられる」という、日本人が「そんなことできるわけない」と思い込まされてきた世界の常識が、ようやく日本でも実行されることになる。

沖縄では、来年の沖縄県知事選で、宜野湾市の伊波市長に出馬してもらおうとする動きがあると聞いた。もし伊波市長が沖縄県知事になったら、沖縄県は米軍駐留をなるべく早く終わらせようとする姿勢に転換し、東京の政府も無視できなくなる。それは、沖縄が米軍基地の島を脱却することにつながりうる。


喜納昌吉コラム

2010-04-12 | weblog

以下、内憂外患より喜納昌吉氏のコラムを転載。

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普天間問題は鳩山政権の試金石だ

沖縄県連代表として「(政府は)僕たちとしっかり話し合ってもいいのではないでしょうか」と訴えた喜納昌吉氏。その後政府へ直接意見し、また党内では小沢幹事長と直接会談にのぞみ、一貫して米軍基地の県外・国外移設を訴えてきた。

普天間基地の移設はどうあるべきか。沖縄県連代表・喜納昌吉参院議員があらためて提言する。

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第1に、基地の存在そのものが21世紀にふさわしくないでしょう。人類が3000年の間に5,000回も戦争をして来たと言われているが、そんなことが出来たのは地球は無限だという無意識の観念があってのこと。

しかし、もう地球も水も空気も有限だということがわかっている。基地は、人類のグローバル・ビジョンから見ても必要がない。美しい辺野古の海を埋めて自然を破壊することは、オバマ大統領のグリーン・ニューディール政策にも核廃絶の訴えにも反するだろう。鳩山首相の二酸化炭素を1990年比で25%削減するというビジョンにも東アジア共同体という考えにも反している。

つまり、オバマ大統領や鳩山首相のビジョンが本物かどうか、沖縄の基地問題がリトマス試験紙になっている。

しかし、地元沖縄の人々は脇に置かれて議論されている。日本の政治では基本的に沖縄は異民族であるという潜在的な意識を露骨に示している。歴史的政権交代といわれるが、この「歴史」の中に「沖縄の歴史」が含まれているのか問わなければならない。もっとハッキリいうならば、「沖縄民族は日本人なのか」、このことの総括は復帰以降文化人や政治家たちが怠ってきた命題なのだ。2009年は薩摩藩による琉球侵攻から400年の節目にあたった、これを契機に、タブーとされてきた歴史を総括していかなければならない。

そもそも普天間の基地は危険だから移設すると誇張しすぎるきらいがある。真実の視点に立てばどこに移設しようが危険であることに変わりはなく、この論理は破綻している。普天間が危険だというのは、橋本政権時代にいきなり言われ出した。普天間は大田昌秀(おおた・まさひで)県知事(当時)の基地返還計画に最初は入ってなかったのに、時の政権が押し込んだ節がある。そしてメガフロートの話になっていった。

1996年4月に橋本首相が大田知事に電話して、普天間基地を県内移設する承諾を得たといわれている。当時、鉄鋼不況だったため、新基地建設案に日本の利権集団が飛びつき、大田知事と橋本政権に押し込んだのであり、米軍の戦略を持ち込むには格好の材料であったのだろう。

しかし、辺野古移設が条件とされることに住民の反対運動が燃え上がり、大田知事は住民側に舵をきらざるを得なくなった。その事は橋本首相の歴史的手柄を奪うことにもなり、その後の大田県政への政府の冷たい対応は、橋本首相の直接の怒りを買ったのであろう。浮体工法案の浮上は、実は私も関係していた。

1994年ごろ、李玖(い・ぐ)殿下と交流があったことから始まる。李殿下は日本から受けた李王朝の悲劇を話してくれて、琉球王朝と同じ運命を感じ、交流を深めなくてはいけないと思っていた。李殿下が浮体工法の研究家でその技術を持っていることを知り、すぐに新石垣空港問題が頭に浮かんだ。当時、アオサンゴのある白保の海を埋立てる計画が大反対運動を巻き起こしていた。

しかし、埋立てない浮体工法なら問題が解決できるのではないかと思い、「沖縄で使いませんか」と言うと喜んで承諾してくれた。早速、大濱石垣市長に繋ごうとしたが、友人が仲介したクリスティンソン米国総領事(当時)とのセッティングが先になってしまった。そこで浮体工法の話がでて、総領事が強く関心を示し米側に繋がっていったという事実がある。

その後、李殿下のパートナーから「殿下の技術が辺野古の基地建設に採用され、県道104号線越えの演習も本土に分散されることになりました」という連絡が入った。私は困惑し「その技術は平和のために使ってほしいのであって、軍事のために使うのはやめてほしい」と伝えたが、その後なぜか連絡は途絶えてしまう。

1995年には少女暴行という県民が驚愕する事件(※1)が起こる。この悲劇の事件は、当初少女の人権を考え記事にされなかったものが、数日経ってから大きく報道され始めた。連日の報道の過熱で、県民の怒りは増幅されていき、県民の叫びに応えるようにSACO(沖縄に関する特別行動委員会)は立ち上がっていくのである。

2004年には沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故直後に、感情を逆なでするかのように辺野古にボーリング調査が入り大々的に報道されて、沖縄の基地問題は全国に広がる。その時から沖縄の過重負担を分担しようという同情論に国民世論が形成されていく。時を同じくして米軍再編というモンスターが姿を現し、日本の安全保障政策にも大変革が起こってくるのである。

かつて、在沖米軍4軍調整官スタックポールが「キャンプ・キンザーは補給基地だから、もし返還するときがあればそれは海兵隊も引き上げるときである」といった内容を当時大田知事に語ったと言う。スタックポールは「沖縄の米軍は日本の軍国主義を抑える『瓶の蓋』だ」とも言っている。一連の米軍再編の流れを推察していくと、米国は安倍政権でこの「瓶の蓋」を開けようとしたのではないだろうか。強引に国民投票法を成立させた意味もそこにあるのではないか。

しかし民主党に政権交代し当初の計画は頓挫したのであろう。米国が日本国憲法作成に関与し、3分の2条項という高いハードルを設定しながらも手続きの国民投票法が今までなかったのは、「憲法の不作為」ではなく「米国の作為」と見たほうが納得がいく。

では今になって、「瓶の蓋」を開ける意図はどこにあるのか、我々は深く洞察しなければならない。それは日本の陸海空自衛隊が米軍のコントロール下に入ったということではないか。スタックポールの話は、決して平和のメッセージではなく、東アジアがより危険になるということを示唆している。

中国の飛躍的発展は日本をはさんで米中をより接近させ、G2と呼ばれるまでになり、アジアの未来は明るく映っている。しかしまだ東北アジアの不安定要素として台湾と北朝鮮は存在し、リーマンショックに始まった世界的金融危機は、アフガンとイラクで泥沼化した米国に打撃を与え、ドルを基軸通貨とする支配体制に翳りを落とさせている。米国債を多く抱える日中と米が景気の二番底を迎えたり米国がデフォルトに陥った時、あるいはホルムズ海峡が封鎖された時、東アジアの安定を保つことができるのかが問われているのである。

QDR(米国防総省の中長期的戦略文書)には、「予測不可能な状況がどこで発生しても柔軟で迅速な対応を可能にする場所に基地設置を目指し、同時に海外の基地を削減する」とある。ゲーツ国防長官は上院で「沖縄の海兵隊のグアム移転は、中国の軍拡の脅威からの逃避が目的だ」との考えを示した。それらが物語るのは何だろうか。

かつてのアフガン戦線の北部同盟のように、対中国の前方展開に韓国軍や台湾軍や日本の自衛隊を出し、米国は一歩下がって司令塔だけでコントロールしようとする戦略がそこから見えてくる。沖縄から海兵隊を一番帰したいのは、沖縄県民よりも実のところ米国だと思わざるを得ない。米海兵隊の家族は本国に引き上げ、司令部がグアムに残り後方支援に廻ることが本音であろう。それをあたかも反対派の熱望に応えるように見せるところに米戦略のマジックがある。

米国は、グアム移転費を日本にもっと出させたいということでしょう。米国は政権交代を予測して、辺野古問題をグアム協定を結ぶことによって閣議決定から2国間協定に引き上げた。日米地位協定では、外国への移転に日本の負担義務はない。負担する積算根拠を与えるためには、県民が徹底して反対運動をし、それに国民が同情し、お金で解決しようという精神構造を作り上げることが必要なのだ。もうすでに、実体をともなわないパッケージ論に嵌められ5,000億円の供出を強いられている。

また、中国包囲網を見据えているならば、那覇以南の宮古や八重山等の南西諸島の空洞地帯を埋めることによって安全保障が完成する。下地島空港には頻繁に米軍機が飛来している。南大東島の港も整備され、北大東島港も伊良部大橋も新石垣空港も建設中で、与那国島には米軍艦も寄港し、陸自配備案も浮上した。那覇港の大型バースは完成し、那覇空港には並行滑走路が計画中で、空港と那覇港を結ぶ海底トンネルも開通した。辺野古は潜水艦も入れる地下トンネル建設の噂も絶えないし、隠された軍港建設計画の方が問題だ。

嘉手納より南の基地返還の意図は、県民から見えにくくするために北部にコンパクトに基地を集約することだと指摘する識者もいる。めまぐるしく展開されていく様々なインフラ整備は、費用対効果も考えて本当に民間使用のみなのか疑問が湧いてくる。

1966年の米海軍マスタープランでは、辺野古は嘉手納基地が破壊されたときの代替基地のはずだったが、現行の有事法制下で那覇空港の新設並行滑走路が出来上がることで補足されることになる。出来るだけ基地候補地を造っておけば、「有事の際の施設使用」でいかようにも展開できるところに、マジックの本質がある。

私が危惧するのは、強制集団死に関する教科書検定問題でも露わになった旧日本軍の総括されていない精神構造をそのまま持ち込むことになり、鳩山首相の「駐留なき安保」と民主党右派の唱える「国防の自立こそが真の独立である」ことが利用され、沖縄民族に新たな不幸を課し、沖縄と日本の間に新たな分断の歴史が生まれることである。

今後民主党政権が注意しなければならないのは、日米軍産複合体によって描かれた図面に取り込まれないことである。日米同盟権益者が与党にも野党にも潜り込み、両方がハンドリングできるように布石を打ってくるはずだ。今は55年体制の自民党・社会党時代に見られた古い体質のアメリカが作ったダブルハンドルを国民の手に取り戻せるかどうか、その攻防なのである。日本の未来のためには同じ民主党議員であっても問い質していかなければならない。

こういった米国のネオコン系の目論見を一番気付いてるのは小沢幹事長ではないだろうか。強引な小沢幹事長への検察の圧力も根はそこにある。まさに日本の真の独立が問われているのである。

EUではリスボン条約が締結され憲法条約が発効されることになり、2010年から事実上のEU合衆国が誕生し、EU大統領と外相が生まれる。NATO軍はEU軍に変容し、国際連帯税も導入され、国連を媒体に世界政府が台頭してくる兆しも見え始めている。オバマ大統領が米国のゴルバチョフにならぬよう、中国が急激な発展の反動に潰されぬよう、日本の民主党政権が、内部の不協和音を取り除き、オバマ大統領を支持した米国と目覚めた中国が力を合わすよう取り持つくらいのリーダーシップを発揮することだ。

今日本に必要なことは、グローバルな世界の大変革に対し、科学、文化、政治、宗教等あらゆるベクトルが、戦争に従事している戦争文明から、病み疲れた地球を再生する方向へとシフトし、「地球が最初」であるという人類の未来ビジョンを掲げることだ。


従者の復讐

2010-04-10 | weblog

以下、内田樹の研究室よりコラムを転載

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従者の復讐

取材で鳩山政権の迷走について訊かれる。
どうして日本政府はアメリカに対して毅然とした態度が取れないのかというお訊ねである。
メディアは単純に「それは総理が無能だから」という属人的な説明でケリをつけようとしている。
もちろん統治者の資質が外交の成否に深く関与するのは事実である。
だが、現在の日本のメディアの、すべての政治的できごとの成否を属人的な能力によって説明するスキームの定型性に私はいい加減うんざりしている。
たしかに、外交がうまくいっていないという事実に為政者の個人的能力はふかく関与している。
けれども、それが「外交の失敗のすべての理由である」としてそれ以上の吟味を放棄するのは、思考停止に等しい。
歴代の統治者たちが組織的にある外交に失敗するとしたら、それは属人的な要素によっては説明できない構造的な問題があるのではないか、と考えるのが科学的な考え方である。
日本のジャーナリストには、この「構造的な問題」を「科学的に考える」という構えが致命的に不足しているように思われる。
日米間には権力的な非対称関係がある。
端的に言えば、日本はアメリカの軍事的属国である。
これは歴史的事実である。
日本人は全員その事実を知っているが、「知らないふり」をしている。
だから、改めて「どうして日本はアメリカに対して毅然とした態度が取れないのか」などと凄んでみても始まらない。
話は「そこから」始まっているわけで、「そこ」に話を戻しても私たちは日米関係について何ら新たな知見を得ることができない。
問題は「どうして日米の権力的非対称関係を熟知していながら、知らないふりをする」という佯狂的な戦略を日本人が国民的規模で採用しているのかということである。
さらに言えば、それは「どのような外交的得点を日本にもたらすのか」ということである。
基本的なことを確認しておこう。
人間は「自分の得になる」と思うことしかしない。
日本がアメリカの下風に立って、外から見るとどうにも醜悪な「従者」のふるまいをしているのは、それが「自分の得になる」と思っているからである。
日本の「得」とは何か。
アメリカの従僕として、その「獲物の分け前」に与ることか。
多少はそれもあるだろう。
けれど、そのようなふるまいはただ日本人の国民的誇りを傷つけるだけで、得たよりも多くを奪い去る。
「アメリカに諂って、余沢に浴する」のは差し引き勘定では「赤字」になる。
人間は「赤字になるとわかっていること」はしない。
ということは、論理的に答えは一つしかない。
私たち日本人は「『赤字になるとわかっていること』をすることを通じて、黒字を出そうとしている」ということである。
わかりにくい書き方ですまない。
国民国家にとっての「黒字」というのは一つしかない。
それは国民的統合を達成し、国民的矜恃を高く保つことである。
それ以外の、貿易赤字だの、不況だの、格差だの、仮想敵国の脅威だのということはそれが国民的統合と国民的矜恃を傷つけない限り、副次的な「解決可能」なトラブルにすぎない。
しかし、国民がばらばらに分裂し、その国の国民であることを恥じるようになったら、外貨準備があっても、景気がよくても、平等でも、平和でも(などということはありえないが)、その国は終わりである。
国民国家である日本に課せられた課題は一つだけである。
それは、日本人が国民的に統合され、日本人であることに誇りをもつことである。
それが達成されれば、ボロを着てようが、粗食に甘んじようが、敵に取り囲まれていようと、国民国家的には「黒字」なのである。
それはもちろん国民ひとりひとりの個人生活における「幸福」とは関係がない。
個人的には「きれいな服着て、うまいもん食って」いれば、国なんて滅んでもアイドンケアーという人はたくさんいる。
私は「国家」の話をしているのである。個人の話をしているのではない。
そして、普天間基地は「国家の問題」なのである。
だから、これについての国民的な構えは「国民国家としての黒字」をどうやって出すか、という問いに絞り込まれる。
まず原理的なことを確認しておこう。
外交はゼロサムゲームである。
一方が失った分が他方の得点になる。
基地問題で、日本の「得点」になるのは「米軍基地の国外移転と用地返還」である。
それはおそらくアメリカが許さない。
その理路についてはすでに何度も書いた。
それは別にアメリカの西太平洋における軍事的に実証的な根拠があってのこだわりではなく、幻想的な「西漸圧力」にアメリカ国民が抗しきれないからである。
となると、日本に残された選択肢は論理的には一つしかない。
それは「アメリカの失点」である。
基地問題をめぐる外交交渉をめぐって、手札の限られた日本に許される「勝ち」は、「この交渉を通じてアメリカの国力を殺ぐこと」である。
アメリカ政府高官たちを悪代官的な「憎々しげ」な対応に追い込み、日本人の反米感情に心理的エネルギーを備給し、アメリカとは「軍事力だけで属国を恫喝しているあくどい超大国」であるというイメージを広く国際社会に印象づけ、国際社会における威信を低下させ、覇権を脅かし、ついには「帝国の瓦解」を達成することである。
基地交渉の過程でもし、日本政府がアメリカの植民地主義的本質を露呈させることに「成功」するならば、沖縄の基地問題が「解決しない」ということそれ自体が日本のアメリカに対する「得点」にカウントできる。
この理路にご同意いただけない方もいるかも知れないから、もう少し説明しよう。
日本がほんとうに「親米的」であり、かの国の行く末を真剣に気づかっているとする。
だとしたら、日本がまずなずべきことは、アメリカとその「仮想敵国」たちのあいだの和解を周旋し、アメリカが「世界から敬愛され、その繁栄を世界中の人が望むような国」になるように一臂の力を貸すことであろう。
そのために短期的にはアメリカ政府をきびしく叱正したり、怒鳴りつけたり、その協力要請を断ったり、という「教育的指導」があって然るべきである。
ところが、戦後65年間日本人は「そんなこと」を一度もしたことがない。
日本は「アメリカが世界中の人々から敬愛され、その繁栄を世界中の人々が望むようになるため」には指一本動かさなかった。
これはほんとうである。
その代わりに、朝鮮戦争のときも、ベトナム戦争のときも、アフガン侵攻のときも、イラク戦争のときも、「それをするとアメリカの敵が増える政策」については日本政府はきわめて熱心な支持者であった。
イラク戦争開始時、ヨーロッパの多くの国がその政治的大義についても軍事的見通しにも、つよい疑念を投げかけていたときに、小泉純一郎はこれを世界に先駆けて断固支持し、ジョージ・ブッシュの背中を押して、アメリカを「出口のない戦争」に導き入れた。
私の判断では、小泉純一郎は「アメリカ帝国の没落」に最も大きな貢献を果たした外国人政治家の一人である。
それゆえ、私は小泉の対米戦略をもっぱら「悪意」という動機によって説明できると考えている。
彼はA級戦犯の祀られている靖国神社に公式参拝して、アメリカ主導の東京裁判の歴史的意義を全否定してみせた。
また「規制緩和・構造改革」と称して、あきらかに日本の風土になじまないアメリカ的モデルを強権的に導入し、日本国民全員が痛みのうちに「だから、アメリカの制度はダメなんだ」という合意に達するところまで社会制度を破壊してみせた。
彼がその政策のすべてに失敗したにもかかわらず、いまだに根強い国民的人気を誇っているのは、彼がたぶん歴代の総理大臣のうちでいちばん「アメリカに対してひどいことをした」からである。
日本の「口にされない国是」は「アメリカと戦って、次は勝つこと」である。
敗戦の日に日本人は「次は勝つぞ」と言うべきであったのに、言わなかった。
言えなかった。
圧倒的な彼我の軍事力の差がその言葉を言わせなかった。
大日本帝国戦争指導部のあまりの無能ぶりがその言葉を凍りつかせた。
その言葉は日本人の「無意識の部屋」に閉じ込められた。
それから65年間ずっと、その言葉は門番の眼を騙して、その部屋から「外」へ出ようともがいている。
抑圧されたものは症状として回帰する。フロイトの言う通りである。
日本人の「アメリカと戦って、次は勝つ」という抑圧された欲望はさまざまなかたちをとって回帰してきた。
その中で、もっとも成功したのは「アメリカが愚かな、自滅的な外交政策を採るときにはそれを全力で支援する」というものであった。
別に珍しい話ではない。
侵略者に滅ぼされた旧家の王族が、父母を殺した王位簒奪者の従者に採用された。
屈辱的な仕事だ。
非力な彼に残された復讐の方途は一つしかない。
それは王に迎合し、おもねり、へつらうことである。
王の愚劣な意見をほめそやし、奸佞なもの忠臣だと持ち上げ、諫言するものを讒言によって陥れ、酒色に溺れるように誘い、豪奢な宮廷を建て、無用な外征を全面的に支持してみせる。
そのような阿諛によって「王を没落に導くこと」が従者に零落したものに許された、おそらくもっとも効果的な復讐なのである。
私は日本人は戦後65年かけて「従者の復讐」を試みてているのだと思っている。
それがはっきりわかったのは、何年か前にハリケーンがアメリカ南部を襲ったときの現地レポーターの顔を見たときだった。
スラムの黒人たちが電器屋を襲い、窓ガラスを破って、オーディオを盗み出している資料映像をはさみながら、レポーターは濁流に呑まれた街を指さし、連邦政府の救援活動が遅遅として進まないこと、移動手段をもたない貧しい黒人たちが取り残されて被害者となったこと、街では略奪やレイプが日常茶飯事化していることを「ほとんどうれしげに」報じていた。
私はそのときに「主人の館」が焼け落ちるさまを薄笑いを浮かべながら見つめている「従者」のニヒリズムを見た思いがした。
なるほど、私たちはアメリカの滅亡を心底願っているのだ。
もちろんアメリカが没落するとき、日本もその余波で無事ではいられない。
主人の館が焼け落ちれば、従者もまた寝る場所を失うのである。
けれども、自国の没落を代償に差し出しても、アメリカの滅亡を達成することは日本人の歴史的悲願なのである。
私はさきに日本人は「アメリカの軍事的属国であることを知っていながら、知らないふりをしている」と書いた。
これにはもう少し追加説明が必要だ。
日本人がほんとうに知らないふりをしているのは「日本が従者として主人におもねることを通じて、その没落を念じている」ということそれ自体なのである。
私は沖縄の基地問題はこのような分析的な文脈で考察すべきことだろうと思う。
この交渉における、日本政府の真の勝利はむろん「米軍の沖縄からの撤退と基地の全面返還」である。
次善の策は、米軍が「ごねて」、理不尽な要求を日本政府と沖縄県民に突き付け、その植民地主義的本質を露呈し、世界中の人々から「厭な国だ」と思わせることである。
その妥協の「おとしどころ」は極端な話、どうでもいいのである。
沖縄県民が「私たちはいつまで犠牲にされるのでしょう」と絶望的な訴えをする映像がこの交渉の「本質」を伝えるものとして世界中のメディアに宣布されるなら、この政策は部分的には「成功」と言えるのである。
日本のメディアはこの交渉の不首尾について、もっぱら「日本政府の腰の弱さ、定見のなさ」ばかりを批判するが、欧米のメディアは、総じて「アメリカ政府の首尾一貫した横暴ぶり」の方を優先的に批判している。
当然である。
ワルモノが弱々しい市民をいたぶって理不尽な要求をしているときに、市民に向かって「堂々と戦え」と言うより先に、ワルモノに向かって「理不尽なことを止めろ」と言うのがことの筋目だからである。
そして、実際にそうなっている。
私たちは沖縄基地問題を「それだけ」で見ているが、それはこれからも続く長い物語の一節にすぎない。


日本はアメリカの植民地

2010-04-07 | weblog

以下、ビル・トッテン氏のコラムを掲載

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先週、マイケル・パレンティが15年前にアメリカを帝国と呼んだことについて書いたが、私は13年前に自著「日本はアメリカの属国ではない」でそれを指摘した。私の主張は日本はアメリカの属国、すなわち植民地だ、というものだったし、いまでもそう思っている。 

(ビル・トッテン )

 

日本はアメリカの植民地

 

その根拠は、植民地の特徴である、領土の一部を宗主国が所有(米軍基地)、植民地の軍隊は宗主国が指揮、宗主国に天然資源を供給(日本には天然資源はないが、工作機械などをアメリカに輸出していることに置き換えられる)、植民地の税金は宗主国の意のまま、などが挙げられる。この税金というのは、日本が長年外貨準備高のほとんどをアメリカの国債で保有している事実である。

日本の輸出企業が製品を海外に販売すると、代金はほとんどの場合米ドルで受け取る。それを日本政府または日銀が円で買い取り、輸入業者など米ドルを必要とする人に売る。この政府や日銀の行為によって、円と米ドルの為替変動のリスクを負うのは納税者だといえる。日本は貿易黒字国であるため、政府が保有する外貨は毎年増え、日本政府は米国債を購入し続けている。為替レートが固定相場制であった頃は外貨準備高も一定だったが、1971年から変動相場制が採用され、円に対してドルはどんどん安くなった。従って、例えば30年国債などは、償還時期には購入価格の3分の1の価値しか受け取ることができなくなるということが起きる。この損失の影響を受けるのは日本の納税者なのである。

世界人口の5%に満たないにもかかわらず、世界の天然資源の3分の1を消費し、世界で生産される工業製品の3分の1を消費しているアメリカだが、しかし、どんなに日本がお金を貢いでもその帝国の衰退はもはや誰の目にも明らかである。アメリカ一般国民自身もその帝国主義の犠牲となり、国内の貧富の格差はもはや第三世界の国ほどに広がっている。アメリカではわずか1%の富裕層が富の半分以上を所有し、それとは対象的に90%のアメリカ人は住宅ローンやその他の借金を差し引いた後は、ほとんど何の資産も持っていない。消費者の平均借金額は収入の2倍に膨らみ、数百万人が貧困線以下の生活をし、健康保険や他の保険にははるかに多くの国民が未加入なことはいうまでもない。

その一方でアメリカ帝国は、世界の国々を全部合わせたよりも多くの資金を軍備に使い、何百もの軍事基地を世界中に維持し、核兵器を含む新たな巨大兵器を開発し続けている。日本が属国としてアメリカに奉仕することは、世界中のあらゆる普通の人々に巨大な犠牲を支払わせることを意味する。

アメリカ財務省が発表した2010年1月末の統計によると、日本の米国債保有残高は7,654億ドルであった。米国債を買う人がいなければアメリカは戦争ができない。財政赤字の軍事帝国主義国家アメリカを支えているのはまさに日本人のお金なのである。

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日本人は何を失ったのか

2010-04-06 | weblog

以下、池田信夫blogよりドゥルーズ・ガタリの記事を転載。

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日本人は何を失ったのか

ドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』(以下D-G)は、ドゥルーズの著作として紹介されることが多いが、本書を読むと、その基本的な発想はガタリのものであることがわかる。本書はD-Gの執筆の材料となったドゥルーズあて書簡などをランダムに集めた草稿集で、一般の読者にはおすすめできないが、D-Gは20世紀のもっとも重要な書物であり、現在の日本の状況を考えるヒントになるような気もする。

D-Gは副題が『資本主義と分裂症』とあるように、分裂症(今日の言葉では統合失調症)を家族関係や個人の意識の中で考える精神分析を否定し、分裂症をいわば資本主義の鏡像と考えるものだ。伝統的な社会が個人を共同体に埋め込むコード化によって安定を維持してきたのに対して、君主制国家はそれを広域的な超コード化によって軍事的に統合するシステムをつくった。

ところが資本主義は、既存の秩序を破壊する脱コード化によって変化やイノベーションを生み出して利潤を追求し、それを資本として蓄積する。これは世界史上では「突然変異」ともいうべき奇妙な経済ステムで、長期的に維持することはむずかしい。事実ほとんどの市場経済は、イタリアの都市国家に典型的にみられるように、経済的には栄えたが軍事的には脆弱で、長続きしなかった。

しかし近代のイギリスから始まった産業資本主義だけは、戦争や競争に生き残り、今日ではほぼ世界の全域をおおうに至った。その秘密をD-Gは、資本主義が脱コード化によって生まれる利潤を財産権によって再コード化し、国家という公理系(制度)に回収するメカニズムをそなえていたためだと考える。しかしこのように人々につねに激しい変化を求める一方で、それを国家に統合するシステムは根本的な矛盾を抱えており、それが個人に投影されると、自己の統覚を失う分裂症として発症する――というのがD-Gの見方である。

これは現在の日本の置かれている状況の裏返しのようにみえる。日本は平和がながく続いたために、ローカルな共同体によるコード化が数千年にわたって続いたが、そこに近代以降、天皇制という超コード化が移植された。これは結果的には戦争によって破綻し、それに代えて占領軍によって脱コード化の資本主義が移植されるという変化が、わずか100年足らずの間に起こった。

したがって日本社会には、数千年にわたって蓄積されたコード化の精神構造が根強く残っており、これは戦後の60年ぐらいで消滅するとは考えられない。事実、1980年代まではこうしたコード化構造を巧妙に利用した「日本型」企業システムがそれなりの有効性を発揮した。ところが1990年を境に、この幸福なシステムが突然崩壊した。その結果、信用不安で企業倒産の激増した1998年には、自殺者が前年の35%も増えて3万人台になり、それ以後ずっと続いている。

これは「小泉改革の市場原理主義」のせいではなく、資本主義の本来そなえている暴力性が一挙に顕在化したためだと考えられる。つまり80年代までは、人々は「会社」という繭にくるまれて資本主義の脱コード化メカニズムから身を守っていたのだが、90年代後半以降、会社が破綻すると、裸の個人が絶えず変化するコードなき社会に、いきなり放り出されたわけだ。

この結果おこるのは、統合失調症ではなく鬱病である。鬱病の原因も複雑だが、現象学的にいえば「安定した人間関係の崩壊」(木村敏)が最大の原因だと考えられている。それまで有能で部下からも信頼されていたビジネスマンの所属していた企業が破綻すると、彼の組織人としての価値を支えていた集団的コードも消滅し、彼の人生の意味が失われてしまうのだ。

今の日本が豊かな国であることは事実だとしても、「幸福度」は世界で第90位であり、自殺率は主要国で断然トップだ。こうした広義の福祉を考える上で、従来の「厚生経済学」は何の役にも立たない。かといって「いのちを守りたい」と称して補助金をばらまく民主党の福祉政策がナンセンスであることはいうまでもない。資本主義の暴力が伝統的共同体を破壊し尽くした「無縁社会」で、どんなコミュニティが再建できるのか(あるいはできないのか)という問題が、日本人の真の幸福を考える上で重要だと思う。

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「保守再生」の声

2010-04-05 | weblog

以下、産経新聞より西部邁の「民主主義否定」コラムを転載

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【正論】国家を歯牙にかけぬ民意の堕落 西部邁

「自民党はだらしない」という批判がしきりである。しかし、そう難じる者たちも自民党の未来を本気で心配しているわけではない。自由民主主義の何たるべきかについて、真面目に考えることすらしていないのである。批判する資格のない者たちからかくも激しく叱(しか)られるところをみると、「自民党マイナス政権党はゼロ」ということかもしれない。


何を「再生」するのか

自民党の内部から「保守再生」の声が挙がってはいる。だが、「保守」の意味が一向に明らかにされていないのだ。保守とは、自由のための秩序を国家の「歴史的」な規範に求め、平等の限界を国民の「歴史的」な公正感に見いだし、友愛に伴う偽善を国民の「歴史的」な節度によって防止する、という姿勢のことであろう。戦後の65年間、それら「歴史的なるもの」が破壊にまかされてきた。それを放置してきたのは、ほかならぬ自民党の責任である。

いや、昭和期の自民党は歴史の慣性のようなものをひきずっていた。つまり、アメリカ流の自由(個人)民主主義の実行の仕方において、日本流がかろうじて生き長らえていたのである。しかし、平成期の世代交代につれて、その慣性も消え失せた。安倍元首相のように日本の歴史をよびもどそうとする指導者もいたが、小泉改革にみられたように、アプレゲール(大戦後派)による歴史破壊がほぼ完成したのである。「モダン(近代)」の原義は「モデル(模型)のモード(流行)」であるという趣旨で、平成改革という単純な模型が盛大に流行したわけだ。その騒がしい改革運動に自民党も迎合したのである。

社民主義が氾濫する

アメリカ流の自民主義は自由の過剰としての無秩序を、格差の過剰としての差別を、競合の過剰としての弱肉強食をもたらした。それをみて日本の民主党は、アメリカの民主党と軌を一にし、社会(介入)民主主義を、つまり社民主義を標榜(ひょうぼう)した。平成改革を強く要求したその舌の根も乾かぬうちに、秩序回復、格差是正、友愛喚起を訴えるという二枚舌で、政権を奪取したのである。

昭和期の自民党も社民的政策を推し進めていたのだが、そこには、無自覚にせよ、国柄保守の態度が何とか維持されていた。派閥や談合といった非公式の場において、少数派の立場にも配慮するという形で、国柄の持つ多面多層の性格を保持せんとしていた。しかし、「改革」がその国柄をついに破砕したのである。その結果、アメリカ主流の自由民主主義とその反主流の社民主義という、ともに歴史感覚の乏しい政治理念のあいだの代理闘争がこの列島で演じられる仕儀となった。

かかる状況に切り込まずに保守再生をいうのはお笑い種でしかない。必要なのは「保守誕生」ではないのか。日本国憲法は社民主義のマニフェストにすぎないこと、自民党の旧綱領は社民主義へのアンチテーゼにとどまっていたこと、平成改革は国柄喪失の自民主義に突っ走っていたこと、そうした事柄を全面的に省察するのが保守誕生ということである。

あと3年半は、政権から遠く離れた自民党にとって、保守の国民運動を繰り広げるのに絶好の機会ではないのか。多くの国民も、内心ひそかに、自分らの国柄が米中両国に挟み撃ちされている危機的様子に気づいて、保守誕生を待望していると思われる。

腐敗していく民衆政治

自民党を怯(おび)えさせ、また民主党を高ぶらせているのは「数の論理」である。「民主主義は多数決だ」(小沢一郎民主党幹事長)という猛々(たけだけ)しい言葉の前で自民党は萎縮(いしゅく)している。しかし、この文句はデモクラシー(民衆政治)の腐敗の明らかな兆候なのだ。

なるほど、民衆政治は「多数参加の下での多数決制」という数の制度である。しかし、これから正が出るか邪が出るかは、「民意」なるものが優等か劣等かによる。たとえば、議会での議論が必要なのは、民意によって選ばれた多数派の政権も、フォリビリティ(可謬性つまり間違いを犯す可能性)を免れえないからだ。またたとえば、ほとんどすべての独裁が民意によって、換言すると民衆政治を民衆自身が否定することによって、生み出されもした。こういうものにすぎぬ民衆政治を民主主義の理念にまで昇格させたのは、自民主義にせよ社民主義にせよ、近代の理念における錯誤だらけの模型であり流行である。

デモクラティズム(民主主義)は民衆という多数者に「主権」ありとする。主権とは「崇高、絶対、無制限の権利」のことである。ただし、民衆が「国民」であるならば、国家の歴史に秘められている英知のことをさして、主権という修辞を与えることも許されよう。しかし、平成列島人のように国家のことを歯牙(しが)にもかけない単なる人民の民意に主権を見いだすのは、民衆政治の堕落にすぎない。これから誕生する保守の最初の仕事は、民主主義を国民政治への最大の敵と見定めることであろう。


レイシズム論争

2010-04-03 | weblog

日米戦争「人種」原因論で物議(産経新聞) - goo ニュース

 

トム・ハンクス氏といえば、米国でも有名な映画スターである。

そのハンクス氏の最近の発言が物議をかもした。日米戦争の原因についての歴史認識だった。

「第二次大戦ではわれわれは日本人を異端の神を信じる黄色の、目のつりあがったイヌたちだとみなした。彼らはわれわれを生活方式が異なるという理由で殺そうとした。われわれもまた彼らが自分たちと異なるという理由で殲滅(せんめつ)しようとした。こんな実態は現在、進行中の(戦争の)状況にもあてはまるのではないか」

「われわれ」というのは当然、往時の米国民一般という意味である。米国と日本が戦争をした原因は両国民の人種偏見(レーシズム)だったというのだ。そして米側の人種偏見はいまのアフガニスタンでの対テロ戦争でも、イラクの民主化の戦いでも、同じ要因になっていると主張するのである。もちろんハンクス氏自身はそんな偏見を非難する立場をとる。

この大胆な発言の契機は同氏が制作した映画「ザ・パシフィック(太平洋)」だった。ミニシリーズと呼ばれる10回連続のこの作品は映画チャンネルのHBOテレビで3月14日から週1回の放映が始まった。太平洋での米軍と日本軍との死闘を米側の視点で描いたドキュメンタリー・フィクションである。数冊の米軍将兵の回顧録をもとに、3人の海兵隊員が主人公とされた。偏見を強調するためか映画では米兵たちが使っていた「ジャップ」の蔑称(べっしょう)が頻発される。

この映画には著名な監督のスティーブン・スピルバーグ氏も共同制作者となっていた。同氏もハンクス氏も政治的にはハリウッドを代表する民主党リベラル派である。だからオバマ大統領は医療保険改革で超多忙の3月中旬、ホワイトハウスでわざわざ試写会を催した。その試写前にタイム誌がカバーストーリーとしてこの映画を取り上げ、ハンクス氏に取材した中で前述の発言が出たのだった。

保守派や中道派とされる側からの反発は敏速で激しかった。米国でも自国の非をことさら拡大するのがリベラル派の特徴とされるが、ハンクス発言に対してはまず著名な軍事史研究学者のビクター・D・ハンソン元カリフォルニア州立大学教授が「太平洋戦争の原因はあまりに多様なのに、人種的敵対が最大要因だと主張するのは幼稚にすぎる」と述べ、第一次大戦や日露戦争では日米両国の仲が緊密だった歴史を強調した。

FOXテレビの人気コメンテーターのビル・オライリー氏も「私の父も海軍の軍人だったが、日本人の信仰や外見になんの悪意も抱かず、ただパールハーバーを奇襲されたから戦ったと語っていた」と述べた。歴代共和党政権の高官を務めたリチャード・パール氏も「米国がいまテロ対策や民主化のためにアフガニスタンとイラクで続けている戦いを『イスラム教徒への人種偏見による絶滅作戦』だなどとはとんでもない」とハンクス発言を酷評した。

政治的にはまったく中道の映画評論家のパトリック・ゴールドスタイン氏もハンクス氏を「突然、正常な軌道を外れ、無謀な政治活動家となった」と批判し、とくに米国一般に「偉大で聖なる戦争」とされる太平洋戦争を現在の対テロ戦をけなすための材料に使うのは錯乱だとまで断じた。

さて突然、燃え上がったこの論争や、その原因となった映画がいまの日米同盟に負の影響を及ぼさないことを願うところだ。

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タイトルを少し変えた。

トム・ハンクス氏の発言は正しい。


アッと驚くタメゴロウ!

2010-04-02 | weblog

以下、あいば達也氏ブログ「世相を斬る」より感動的なタイトル記事を転載。

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小沢一郎「神機妙算」=「アッと驚く為五朗!」

小沢民主党幹事長のウルトラ選挙戦術に触れたら、31日の「党首討論」の論評などする気も起きない。(笑)先ずは、そのウルトラ戦術を伝える毎日の記事をお読みください。


≪ 民主党:参院選 河上衆院議員がくら替え出馬 議席減へ

民主党の小沢一郎幹事長は31日、京都市と静岡市で相次いで記者会見し、参院選京都、静岡両選挙区(改選数2)で、現職に続く2人目の新人候補擁 立を発表した。京都では府連が推していた女性を拒否し、昨年の衆院選で初当選した河上満栄衆院議員(比例代表近畿ブロック)をくら替えさせる。衆院選比例 代表近畿ブロックの民主党候補は全員当選し、繰り上げ当選者がいないため、河上氏がくら替えすれば同党は衆院で1議席減となる。衆院選での民意を重く見な い異例の対応には批判も出そう。小沢氏が大義名分に掲げる「参院選勝利」は一層不透明さを増している。

「衆院の議席を失うのは残念だが、参院の勝利によって民主党の支援者に報いることができる」。小沢氏は会見で、衆院の議席を減らしてでも参院での 単独過半数獲得を優先する考えを強調した。

河上氏は「小沢チルドレン」の一人。小沢氏は、昨年の衆院選で側近の青木愛氏に参院議員を辞職させて、東京12区で太田昭宏公明党代表(当時)へ の対立候補としてぶつけた。07年の岩手県知事選では、達増拓也氏を衆院議員を辞職して立候補させた。勝負時には「必要な駒」として議員を転身させるのが 小沢氏の手法だ。

が、今回は府連が公認申請した候補を拒否してまで独断で擁立した。小沢氏は「現職以上に支援する」と明言したが、地元選出の国会議員は「小沢氏自身の政治とカネの問題で2人当選が困難になっているのになぜ押しつけるのか」と強く反発している。

一方、県連が2人目は擁立しない方針を決めていた静岡選挙区では、会社員、中本奈緒子氏(30)を立てた。小沢氏は「静岡県だけを全国の例外にして扱うというわけにはいかない」と県連の態度を厳しく批判したが、連合静岡の吉岡秀規会長は31日の記者会見で「内閣支持率の低下の原因は小沢氏のカネの 問題にある。小沢氏が辞職願を出してほしい。そうすれば2人擁立にも真剣に向き合う」と述べ、公然と小沢氏の辞職を要求した。【念佛明奈、平林由梨】(毎日新聞:電子版)  ≫


今夜の見出し「神機妙算」とは、「神機」は、神が考えたような、非常にすぐれたはかりごと。「妙算」は、巧みなはかりごとって意味。朝日新聞は「青木愛議員同様、二匹目のドジョウだ!」と腐している(笑)

連合静岡の連中も「悲鳴を上げて、小沢辞めろとまで口走る」(笑)味方の支持母体を怒らせてでも、小沢は約束通り複数区2名以上の候補者擁立戦略から一歩も引かない姿勢を貫いている。

今回の参議院選戦略が、民主党政権の盤石を狙うと云うより、自民党の溶解を小沢一郎が狙っているのが良く判る。参議院の選挙制度を最も熟知している政治家が精緻な計算と勇気を奮った結果の戦略、勝算は充分にあると思われる。現時点での民主党への逆風が参議院選直前まで継続する逆風でないと云う読みが勝っているのだろう。

支持団体が手抜きをすれば、即刻手抜きが判明する候補者の擁立方式は票の掘り起こしに極めて有効だ。「玉が良ければ」参議院選は勝てる。支持団体擁立候補と無党派浮動票掘り起こしの両面戦略は現時点では「共倒れ!」と悲鳴を上げる県連があるのは承知の上で、小沢は強行突破である。多少の「共倒れ」は計算づく、比例の票が伸びれば、それはそれでヨシである。

4月から5月にかけて、民主党に順風が吹く小沢の読みも含まれている。「コンクリートから人」の予算の執行だけではない。沖縄を含む、駐留米軍基地の根本的課題交渉の開かずの扉が開く出来事が起きるかもしれない。北朝鮮拉致問題の開かずの扉も開くかもしれない。「毒ギョウザ事件」の中国当局の対応を見たら、何かが深く深耕していることが判る。

小沢一郎の参議院選挙戦略が「アッと驚く・・・」なだけではない。マスメディアなんかには到底信じられない我が国の雁字搦めになった組織構成を破壊する突破戸が開かれる可能性があるような気がする。その準備として、亀井大臣の郵貯限度額2000万円引き上げは、重大な意味を持つ。

今までの基軸で動く政治家はいずれ全員淘汰されるだろう。自民党だけでなく民主党の議員も同じ事だ。官僚も検察もマスメディアも同様に淘汰されることを肌で感じるから「窮鼠猫を食む」パニック症候群なのである。下手をすると鳩山首相も知らない間に、その「アッと驚く・・・」は表層的政治現象とは別の次元で動いているのかもしれない。


≪ 小沢一郎代表幹事長は31日夕、静岡市内で会見を行い、次期参院選静岡県選挙区の2人目の候補者として工学博士で会社員の中本奈緒子氏を擁立することを 発表した。

はじめに小沢幹事長は参院選の方針について、「我々は次期参院選に向け、過半数確保を目標に頑張ろうということから、複数区の選挙区には複数の候補者を 擁立すると決め、当該都道府県にはその調整に入るようにお願いし、選挙まで長くても4カ月を切っている中で、候補者の擁立をお願いしている」と状況を説 明。そして、「静岡県は唯一複数候補の擁立は困ると主張していたが、例外を認めるわけにはいかず、(その中で)磐田市在住でスズキ自動車に勤めている中本 さんを2人目の候補者として県連から示され、擁立する態勢ができた」と経緯を述べた。

そのうえで小沢幹事長は中本氏に対して、「静岡県の皆様にご支援を頂き、(現職の)藤本議員に続き、2人目の参院議員を掴むようになっていただきたいと 考えている。選挙まで僅かな時間しか残されていないが、ぜひとも本人には公認候補として決まった日から全力で勝利に向けてまい進してもらいたいし、必ずや れると信じている」と檄を飛ばした。

続いて中本氏が挨拶に立ち、次期参院選への出馬について、「働く女性が活躍できる社会、男性も女性も家庭生活と仕事が調和され、心身ともに健康な状態で それぞれが活躍できる社会の実現を目指したいとの思いと民主党の政策が一致していることから出馬を決めた」と思いを語った。そして、「今まで選挙に興味がなかった方々、特に若い子育て世代の方々に関心を持っていただき、より良い国づくりが出来るように力を尽くしたい」と決意を表明した。(民主党HPより転載)≫


郵政民営化の真実

2010-04-01 | weblog

以下、現代ビジネス、伊藤博敏「ニュースの深層」よりコラムを転載 

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総務省ガバナンス委員会がメスを入れる日本郵政「西川利権」

亀井静香郵政・金融担当相が暴走、鳩山由紀夫首相がそれを制御できず、郵貯限度額は2000万円に引き上げられた。郵政民営化を中断、国債引受を強化させるという亀井氏の"野望"は、今後も閣内に騒動を引き起こしそうだ。実は、その一方で、自民党政権下で民営化を担った西川善文社長時代の疑惑解明が進んでいる。

西川疑惑といえば、刑事告発もされている「かんぽの宿」である。なぜ、巨費を投じて建設したこの宿泊施設を、政府審議会などを通じて「小泉(純一郎元首相)―竹中(平蔵元金融相)路線」を側面支援する宮内義彦氏のオリックスグループに格安で、任意売却したのか。

そうした疑惑解明を、ガバナンス(企業統治)の観点から検証することを目的に、総務省は、今年1月8日、「日本郵政ガバナンス検証委員会(ガバナンス委員会)」を発足させた。この狙いを、ひとことでいえば、「西川利権」の解明である。

西川氏は、非効率で旧弊がはびこる伏魔殿のような日本郵政に、わずかな私兵を連れて乗り込んだ。おそらく周囲は、面従腹背の「敵」に見えただろう。

当然、重用するのは三井住友銀行出身者を中心とする私兵。彼らはやがて「チーム西川」と呼ばれ、社内で権力を確立していく。権力の集まるところに利権は発生する。その象徴とされたのは、西川氏と親しい宮内氏への不動産譲渡であった。

問題はこの取引が悪質かどうかである。「かんぽの宿」は売却時期を限定、急がねばならなかった。その拙速さが怪しい取引を生んだのだとしたら、ガバナンス上の問題は指摘できても、個人の責任追及には及ばない。

総務省顧問の郷原信郎名城大学教授を委員長とするガバナンス委員会は、そうした観点から西川時代の問題として指摘された

(1)不動産取引、

(2)日通ペリカン便との宅配便統合、

(3)クレジットカード業者、グループ広告責任代理店等の業者選定、
 
といった問題について、情報収集、資料分析、関係者のヒヤリングなどで解明を進めている。

社外取締役の会社との取引が急増

その結果は、委員会が近くまとめる「報告書」を待つしかないが、「かんぽの宿」で指摘された「事業遂行の迅速性」が自己目的化したことで、さまざまな問題を引き起こしている。

例えば、日本郵政グループの郵便事業会社と日本通運の共同出資により、08年6月に設立されたJPエクスプレスは、ビジネスモデルが崩壊している。今年7月に解散することになっており、その時点で855億円もの累積損失を抱える見通しである。

郵便事業会社の「ゆうパック」と、日本通運の「ペリカン便」との宅配統合は、当初から実現が危ぶまれていた。事業収支は、試算の段階で統合から5年経っても赤字で、連結累損予想は1000億円に近かった。

そうした客観的判断やそれに基づく数字を無視、郵便事業会社幹部の懸念を押し切る形で統合へ向けて突っ走ったのは、西川氏とチーム西川の面々だったという。

博報堂との不可解な取引は、「悪質」と断じてよかろう。

また日本郵政グループは、07年10月の民営分社化後、「企業イメージの統一性を図る」として、特定の1社に限定する契約に切り替えた。選ばれたのが博報堂。契約金額は2年間で368億円にのぼるが、契約書類は一切、交わしていなかった。

しかも、この「広告代理店の一元化」という重要事案を稟議決裁した形跡がなく、事実上、三井住友銀行出身の事務方幹部が決定した。この幹部は、博報堂関係者からの飲食・ゴルフ接待を受けており、「博報堂選定」の際の稟議決裁の責任者である上司も同じような接待を受けていた。

「民―民」の話ではない。日本郵政は100%政府が出資しており、日本郵政株式会社法によって収賄が禁止されている。接待の内容によっては、あるいは現金授受が発覚すれば、刑事事件に発展する。

また、活発な財界活動や政府審議会への関与で知られる奥谷禮子氏の問題は、国会でも追及されたことがある。人材派遣会社のザ・アールを経営している奥谷氏は、公社時代から「マナー研修」など約7億円分の仕事を受注していた。にもかかわらず、奥谷氏は06年1月の日本郵政の設立時、社外取締役に就任していた。

それだけでも「マナー違反」だが、ザ・アールの契約件数は、社外取締役就任後に急増、就任前の2年で13件が、退任までの1年9ヵ月で27件に達している。堂々たる利益相反行為だ。ガバナンス上、多いに問題がある。奥谷氏は、07年11月の国会質問を機に退任するが、オリックスの宮内会長同様、「規制緩和の政商」といわれても仕方がない。

明らかになった「お手盛り選定」

露骨な"古巣"への利益誘導に、クレジットカード事案がある。ゆうちょ銀行は、07年4月、発行するクレジットカードの業務委託先に三井住友カードを選択した。それまで共用カードの実績がわずか0.2%しかない三井住友カードが選定されたのはなぜか。

国会に呼ばれたゆうちょ銀行の宇野輝常務執行役は、共産党の大門実紀史議員に「三井住友カードの副社長だったんですね」と、質問され、「さようでございます」と、答えると、「つまり三井住友カードの出身者が三井住友カードを委託先に選んだんですね」と念押しされた。

宇野常務執行役は、8社による「企画コンペ方式だった」と述べて公正さをアピールしたが、ガバナンス委員会の調査では、完全な比較は行われていない。業務の公正さを損なう「お手盛り選定」であったことが明らかになっている。

キーワードは、「お手盛り」である。ガバナンス委員会の報告が、「かんぽの宿」に続く刑事告発につながるかどうかは不明だ。しかし、捜査対象を疑わせるものは少なくない。

仮に、経済事件にならなくとも、日本郵政の資産や業務委託が、西川氏とチーム西川、及び宮内、奥谷といった限られたひとたちに有利なようにコトが運んでいたのは、紛れもない事実である。それを「西川利権」と呼ぶとは当然であろう。

郵便、郵貯、簡保が国民の貴重な資産であることを考えれば、発覚した「不当利得」に対して、民事刑事での追及を考えなければならない局面もありそうだ。

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