太った中年

日本男児たるもの

消えゆく中国包囲網

2010-06-28 | weblog

消えゆく中国包囲網

6月24日、日本政府が日本の最西端にある沖縄県与那国島の周辺で、上空に設定されている「防空識別圏」を西側に14海里(約26キロ)移動した。防空識別圏とは、各国政府が、領空(海上では領土から12海里までの範囲)の少し外側(通常は領空から2海里)までを識別圏として設定し、外国の飛行機が許可なくそこに入ってきたら戦闘機がスクランブル発進するなど防衛策をとるために設定された空域だ。外国機は、ある国が設定した防空識別圏に入る前に、その国の当局に通知する必要がある。

与那国島周辺の半径12海里の空域は日本の領空であり、その2海里外側の、島から半径14海里の楕円形の空域に日本が防空識別圏を設定することは、ずっと昔に行われていても不思議ではなかった。しかし戦後日本を占領した米国は、日本の防空識別圏の西端を、ちょうど与那国島の上空を南北に通る東経123度に設定し、その東側は台湾(中華民国)の防空識別圏と決めた。そのため、与那国島の西半分の上空は、日本の領空だが台湾の防空識別圏に入るという変則的な状態になった。与那国島から台湾まで110キロである。

1970年代まで、台湾(中華民国)と日本は、ともに米国の軍事力の傘下にあり、中国(中華人民共和国)に対抗する同盟国だったから、日本の領土の西端が台湾の防空識別圏に入っていても特に問題なかった。72年に与那国島を含む沖縄県が日本に復帰するとともに、米国はニクソン訪中によって、台湾を捨てて中国と国交正常化していく道を歩み出し、日本は中国と国交を樹立して台湾と断交した。だが米国はその後、中国と台湾の関係についてどのような態度をとるか曖昧にしておく戦略をとり、日本もそれに従ったため、与那国島の防空識別圏の問題でも、日本政府は、終戦直後に米国が決めたとおりに放置して変更を加えない方針をとった。

その後、台湾政府が、自発的に与那国島から半径12海里の半円形を自国の防空識別圏から外して運営していることがわかった。与那国空港はジェット機対応となり、台湾からの旅客機も飛来するようになって、地元の与那国町や沖縄県は、与那国島の西半分の周囲に日本の防空識別圏を拡大してほしいと要請し、日本政府も必要性は認めたものの動かなかった。

それが、鳩山政権末期の5月後半になって日本政府は、与那国島西側の防空識別圏を拡大する方針を決め、台湾政府に伝えた。台湾側は、これまで与那国島周辺を自国の防空識別圏から自主的に除外していたにもかかわらず、もともと反日傾向のあった国民党議員らが日本を激しく非難し、馬英九政権は日本からの要請を拒否すると発表した。もともと防空識別圏の設定は、その国が他国の許可を得ずに宣言することができる。日本政府は、台湾と国交がないことも口実にしつつ、台湾政府の拒絶を無視し、6月24日に与那国島西側の防空識別圏の拡大を正式決定した。

「第3次国共合作」との関係

この話を日台関係だけでとらえると、馬英九政権になって国民党の反日勢力が強くなったとか、親中国の国民党政権が日本にいやがらせをしたという、ありきたりな論評にしかならない。だが、前回の記事に出てきた「第1列島連鎖」(第1列島線)の関連や、その背後にある米中関係の大枠を見ていくと、今回の日本政府の決定が、もっと大きな話であることがわかってくる。

もともと第1列島線、第2列島線は、米国とその同盟諸国が形成する中国包囲網に、中国軍が対峙・突破するために、中国側が作った概念である。第1列島線は、台湾の西側を南北に通っており、日本と台湾の防空識別圏の境界線として設定されている東経123度に沿っている。

そして、前回の記事で説明したとおり、米国は、台湾が中国に取り込まれていくことや、中国が第1列島線の内側(西側)に米軍の軍艦や軍用機が入ってきて遊弋することを禁じる傾向を強めそうであることに対し、それを黙認する態度をとっている。米軍は、第1列島線にある恒久基地つまり日韓の基地を放棄し、第2列島線つまりグアムの基地まで撤退せざるを得ないと考えている。

米国はまだ、台湾に武器を売る姿勢をとっているが、経済面では、すでに台湾は中国に取り込まれている。6月29日には、中国の重慶で、台湾と中国の政府が、自由貿易協定にあたる「経済協力枠組み協定」(ECFA)を締結する。協定は第一段階として、台湾から中国への539品目の輸出と、中国から台湾への267品目の輸出の関税を引き下げる。台湾の国民党政権は「これは経済の協定であって、政治的な影響は何もない」と強調するが、中国側は「台湾側には、ほしいものをすべて与えている。台湾が中国の2倍の関税引き下げ品目を得ることは中国側の譲歩の結果だ。中国が台湾と『一つの家族』であることを重視して譲歩した」と言っており、政治的な駆け引きであることを示唆している。

そもそも、中台の自由貿易協定の調印が四川盆地の重慶で行われることに、非常に政治的な感じが込められている。重慶は第2次大戦中、日本と戦う国民党(中華民国)の臨時政府が置かれていた(重慶は日本軍が到達しにくい山奥の盆地にあり、米国は西の英領ビルマから軍事物資を送り込んで国民党を支援した)。国民党は、国民党と共産党の協調体制である「国共合作」で共産党の協力を得て日本軍と戦い、1945年10月の日本敗戦直後には、米国の仲裁によって、重慶で国民党(蒋介石)と共産党(毛沢東)が話し合い、日本の敗戦後、国民党と共産党が連立政権を作る国共合作の新生中国を作っていくと決めた「双十協定」も結ばれている。

その後、国共両党の合作(協調)体制が崩れて国共は内戦に突入し、共産党が勝って49年に中華人民共和国ができた。国民党は台湾に逃げ、冷戦体制の中で国共は鋭く対立し続けた。今回、国民党と共産党が重慶に集まり、経済限定ではあるが「第3次国共合作」ともいうべき65年ぶりの協調体制に入ることは画期的なことであり、十分に政治的な話である。(国共合作は1924年にもソ連の仲裁で行われており、今回が3回目となる)

現在、台湾の全輸出の4割近くが中国向けであるが、今後、中台の自由貿易体制が定着すると、この割合はもっと増える。台中間の人的交流もさらにさかんになる。近い将来、台湾の輸出の半分以上が中国向けになり、台湾は、たとえ反中国・台湾独立派が強い民進党が政権をとっても、中国と縁を切れなくなる。民進党は、反中国や台湾独立の旗印を下げていかざるを得ない。すでに中国側は今回の貿易協定で、民進党の支持者が多い台湾南部の農家が中国に輸出してくる農産物を重点的に非関税化して、南部農民を経済的に取り込む策略を採っている。

今後もし中国と米国の対立がひどくなっても、台湾が積極的に親米・反中の立場をとる可能性は低い。台湾総統(大統領)の馬英九は、米国に対してF16新型戦闘機などの武器を売ってくれと依頼してはいるものの、同時に「台湾のために戦争してくれと、米国にお願いすることは決してない」と米テレビのインタビューで述べている。「米国が、中国の脅威から台湾を守る」という体制は、すでに消失している。

台湾が中国に取り込まれる準備としての防空識別圏拡大

このような台湾・中国・米国の現状をふまえた上で、再び視点を与那国島の防空識別圏の話に戻すと、今回の日本政府の防空識別圏の拡大が「台湾が中国に取り込まれた後の、日本と中国の境界線、米国と中国の影響圏の境界の明確化」を意味していることが見えてくる。

冷戦体制下では、日本と台湾の境界線は、軍事的に重要でなかったが、中国が台湾を取り込んだ後には、中国の事実上の国境線が与那国島のすぐ西側までやってくる。米国と中国の影響圏の境界線は、台湾海峡から、与那国島の西側(東経123度、第1列島線)に移る。今後の日本と中国、米国と中国の関係は、冷戦体制下よりも敵対が薄れ、協調関係や「米中G2」(多極型世界分割)の状態に近づくものの、日中や米中は、完全な同盟関係ではない。そのため、日中の境界線となる与那国島の西側の線は、かつての日台の境界線だったときよりも、厳格に規定しておく必要がある。領空だが防空識別圏ではないという変則的な空域が境界線に存在したままでは困る。

だから日本政府は、台湾が中国に取り込まれていく流れを加速する6月29日の重慶での「第3次国共合作」的な中台の自由貿易協定の調印の5日前にあたる6月24日に、与那国島の西側を日本の防空識別圏に編入したのだと考えられる。

その上で残る謎は、なぜ台湾の国民党政権が、これまで自発的に与那国島の西側を台湾の防空識別圏から除外していたにもかかわらず、日本政府が、そこに日本の防空識別圏を設定すると通告したら猛反対して拒絶したのかという点である。これも「国共合作」の歴史的故事をふまえて考え直すと、見えてくるものがある。

第2次大戦中の第2次国共合作は、日本の中国進出(侵略)との戦いが目的だった。日本を共通の敵として、国民党と共産党が協力し合った。今回の第3次国共合作では、日本は関係ない。だが、戦時中からの流れで(あるいは日本帝国時代の台湾人とその末裔が支持者に多い親日傾向の民進党に対抗するかたちで)反日の傾向を持つ台湾の国民党政権としては、今のタイミングで思い切り反日を扇動し、台湾の世論を反日の方向に振っておいて、その間に重慶で中国と自由貿易協定を結んでしまえという、ナショナリズム的な戦略をやっていると考えられる。

(実は、台湾と中国の経済関係には、間接的に、日本が大きな役割を果たしている。台湾の工業は戦前から日本の影響下で発展し、戦後も日本の製造業の下請けが多かったが、台湾の製造業はそうして培った技術を中国進出時に活用した。中国側は、台湾企業から製造業の技術を吸収したが、その多くはもともと日本の技術だった。だから実は、日本は今回の「第3次国共合作」に間接的に関係している)

中国に台湾チベット取り込みを許した米国

前回の記事で紹介したロバート・カプランの論文は「台湾が中国に取り込まれていき、米国がこれを傍観したら日本、韓国、東南アジア、豪州などアジア諸国が米国に頼れないと感じて中国に接近し、米国とアジア諸国の同盟関係が崩壊する」という趣旨が書いてある。同様のことを指摘した別の論文(Farewell to America's China Station)が、5月中旬のウォールストリート・ジャーナル(WSJ)にも出ていた。いずれも、台湾を使った米国の中国包囲網が解体しつつある方向を示している。

米国側は、昨年11月にオバマ大統領がアジア歴訪時に北京の大学で講演して「一つの中国を完全に支持する(台湾独立を支持しない)。中国と台湾は、話し合いで問題を解決すべきだ」と述べている。その後、今年初め、中国政府は「主要な国益に関して、中国は、外国から主権を侵害されることをもう許さない」という態度を表明した。主要な国益とは、台湾、チベット、新疆(トルキスタン)という「3T」のことだ。欧米が「人権」「民主」などを理由に、これらの問題に関して中国を非難することに対し、中国は従来、欧米の経済軍事面の強さを考慮して、通りいっぺんの反論だけにとどめる傾向があったが、今後は容赦しないことにした、という宣言だった。

中国のこの宣言を試すかのように、オバマは今年1月、台湾への武器売却を決めた。中国側は強く反発し、中国との軍事交流を凍結した。だがその後、米国のスタインバーグ国務副長官は、今年3月に訪中した際に「一つの中国の考え方を支持する。中国と台湾が協調関係を強めていることを評価する」と述べ、台湾問題で中国と対立しないことを、米国としてあらためて表明した。スタインバーグはチベットに関しても「チベットは中国の一部である。チベットの独立は認めない」と述べた。米政府が、チベットは中国の一部だと言ったのは、これが初めてだった。

米国は、台湾に武器を売ると発表した一方で、中国の「主要な国益で譲歩しない」という宣言を認める宥和策を採っていることが明らかになった。米国の中国包囲網は、この時(今年3月)に解かれていたことになる。中国は、台湾でもチベットでも、ほしいものをすべて得られる立場を米国から保障された。

その後、4月に、オバマ政権が重視するシンクタンクCNASのロバート・カプランが「米国が中国包囲網(第1列島線)を解き、台湾が中国に取り込まれたら、米国と日韓など東アジア諸国との同盟関係は終わる」と書き、5月にWSJも似たような論文を出した。

鳩山辞任や天安艦事件との関連も

日本で鳩山前首相が「普天間基地の県外移転」から「米軍基地を沖縄に置き続けることはやむを得ない」という態度に転換した挙げ句、辞任に追い込まれたのは、ちょうどこの時期である。米国が事実上、台湾を中国に割譲し、対中包囲網を解き、米政府肝いりのシンクタンクが「日本や韓国もいずれ中国になびき、米国との同盟関係は終わるだろう」とうそぶく中で、日本では、そうした米国の流れと正反対の、沖縄米軍基地のグアム追い出しをやめる逆流が起きた。これは、日本がいよいよ対米従属を続けられなくなりそうな中で、官僚機構(とその傘下のマスコミ)が、鳩山潰しのプロパガンダのボリュームを正念場的に強めた結果と考えられる。

しかし今後7月の参院選や9月の民主党党首選を経た後、民主党政権が再び対米従属離脱の試みを再開しそうなことは、たとえば朝日新聞の船橋洋一主筆を駐米大使にしようとする動きがあることからも感じ取れる。これは民主党政権が、駐中国大使だけでなく、駐米大使までも、外務官僚ではなく民間人を就任させ、対米従属派の牙城である外務省を日本の外交から外し、外務省の暗躍的な妨害を受けず、官邸が駐米大使を直接に指揮できる体制を作る政治主導の試みだろう。菅首相は表向き、官僚に譲歩し、小沢一郎と距離を置くような言動をとっているが、実際は、鳩山とさして変わらず、官僚支配と対米従属を潰そうとする小沢系の戦略を秘めていることが感じられる。

米国が中国包囲網を解いた今年3月、韓国では天安艦の沈没事件が起きた。これも、中国包囲網解体に対する、韓国の対米従属派や、米国の軍産複合体からの反撃と考えられる。天安艦が沈没した黄海は、中国が米軍の遊弋を禁じたいと思っている第一列島線の内側にある。

(以上、田中宇の国際ニュース解説より転載)


増税国会

2010-06-26 | weblog

参院選挙後の菅政権を待ちかまえる「増税国会」の難局

単独過半数を握らなけらば早晩行き詰まる

参院選がスタートした。

参院選後の政局はもちろん選挙結果に大きく左右される。したがって情勢は流動的だが、それでも見えてきた部分もある。もっとも重要なポイントは「民主党が単独過半数を握らない限り、いずれ菅直人政権は行き詰まる」という点だ。

菅政権は参院選後に「連立組み替え」や「部分連合」に踏み切るという観測が強まっている。だが、現実には連立組み替えも部分連合も難しい。

たとえ一時的に実現できたとしても、政権は安定せず、来年1月から始まる通常国会前後には崩壊の危機に直面する可能性が高い。

以下、民主党が単独過半数を握れない前提で参院選後のシナリオを検討してみる。

まず、国民新党は先の国会で廃案になった郵政改革法案を秋の臨時国会で再提出・成立させることが最優先だ。

だから、当面は民主党の連立を継続する。郵政改革法案が国会にぶら下がっている限りは、民主党との関係もできるだけ波風を立てないように行動するだろう。

ところが、法案成立後はどうなるか分からない。国民新党は消費税引き上げに強く反対している。

菅首相は消費税引き上げを自分が言い出したというだけでなく、増税路線を敷かざるを得ない立場に自らを追いやっている。それは次のような事情からだ。

菅政権は財政運営戦略と中期財政フレームを決めた閣議決定で、2011年度予算編成について国債発行の上限額を10年度並みの約44兆円、国債費を除く一般会計歳出の上限も約71兆円と縛った。

ところが、閣議に参考として提出された内閣府試算によると、11年度予算は国債発行を上限の44兆円、国債費を除く一般会計歳出も同じく71兆円とすれば、税収を前年度比2.2兆円増の39.6兆円と見込んでも、歳入と歳出の差額(財政赤字)は約5兆円に上る。社会保障費の自然増約1兆円を加えると、赤字は計6兆円である。

にもかかわらず、菅政権は子ども手当の上積みや高速道路無料化、農家への戸別所得補償の段階的実施などマニフェスト政策の積み残し分を実施すると言っているので、他の予算項目を大幅に削らない限り、赤字はもっと拡大する。

一方で、仙谷由人官房長官はすでに「無駄削減で生み出せる財源はせいぜい2兆円」とテレビ番組で語っている。この2兆円を全額マニフェストの積み残し分に充てたとしても、なお6兆円足らない状況に変わりはない。

すると、菅政権に残された道は基本的に3つしかない。

すなわち国債発行の上限44兆円を突破する。マニフェスト政策を含めて歳出を大幅に削る。最後が増税である。おそらく3つの組み合わせが現実的出口になるだろう。これとは別に、埋蔵金の発掘も必死で続く。

国債費のうち利払い分を計上せずに(定率繰入の停止)国債発行額を抑える手もあるが、荒井聡国家戦略相は「現時点では、まったく検討していない」と語っている。

11年度をしのげたとしても、12年度はさらに苦しい。日銀との強力な連携によってデフレを克服し経済成長を確実にしない限り、菅政権は増税路線から逃れられない。肝心の経済政策が中途半端だから、結局は増税に追い込まれてしまう。

本題はここからだ。

菅政権が頼らざるを得ない財務省は来年1月からの通常国会に的を絞って、近い将来の消費税引き上げを盛り込んだ法案を提出しようと動くに違いない。つまり、11年度予算案は増税を確実にする財政健全化法案とセットになる可能性が高い。

財務省から見れば、将来の増税を一歩でも二歩でも確実にすることが最大の戦略目標である。はっきり言えば、それ以外に菅政権を支える理由はない。増税路線が進まないなら、さっさと政権を見限るだろう。

そのときが国民新党の正念場だ。増税法案を国民新党は受け入れるだろうか。私は受け入れないとみる。菅首相が増税法案にこだわれば、秋の臨時国会で郵政改革法案の成立を見届けた国民新党は、増税法案の閣議決定前にも連立を離脱する可能性が高くなる。

ほかの党はどうか。

部分連合では政権が安定しない

新たな連立候補とみられていた公明党は、山口那津男代表が先の党首討論会で「閣外協力を含めて民主党とは連立しない」と明言した。これで公明党カードは消えた。

みんなの党は公務員制度改革をはじめ政策路線が民主党ともともと違ううえ、菅首相が消費税引き上げを言い出して、連立の可能性は完全に消えた。

新たに浮上したのは、平沼赳夫代表のたちあがれ日本と舛添要一党首の新党改革である。

たちあがれ日本は消費税引き上げで民主党と一致できる半面、外交安保防衛問題では保守路線を掲げて相容れない。

新党改革は増税を否定しないが、郵政改革で民主党や国民新党と相容れない。さらに反小沢を強く打ち出しており、菅首相が小沢一郎前幹事長との関係を払拭できるかどうかが鍵になる。

自民党は増税路線で政策の方向感は一致しているが、野党の立場では与党にすり寄れないという政局事情を優先して、民主党と対立している。かつて一部で模索された大連立も「与党なればこそ」の選択肢だった。野党に転落した立場では、もはや自殺行為である。

すべての政策分野で民主党と一致できる政党はなく、だからこそ部分連合がとりざたされている。だが部分連合を探ったとしても、たちあがれ日本や新党改革が大きく議席を伸ばす可能性は薄く、結局のところ、政権が安定しないのである。

加えて、小沢ファクターも依然として残っている。

小沢自身は検察審査会の議決問題を抱えているが、消費税引き上げ問題では菅首相と対立し、むしろ国民新党の亀井静香代表の立場に近い。小沢にとっては、9月の民主党代表選、そして暮れの増税法案決定前後と勝負の局面が続く。

菅首相にとって本当の正念場は参院選後である。

(以上、現代ビジネスより転載)


ファシズム化

2010-06-24 | weblog

菅直人政権には国家社会主義的傾向がある

6月21日の記者会見において菅直人総理がこう述べた。

<首相は消費増税について、「早期に超党派で議論を始めたい。その場合、自民党が提案している10%を一つの参考にしたい」と改めて表明。「そのこと自体は、(参院選の)公約と受け止めて頂いて結構だ」と述べた。その上で、参院選では自らが掲げる経済・財政・社会保障の一体的立て直しが問われるとの考えを強調した。

一方で、参院選後ただちに税率引き上げに踏み切るのではないかという見方に対しては「まったく間違いだ」と否定。「少なくとも2年、3年、あるいはもう少しかかるのではないか」との見通しを示した。

首相は、低所得者ほど負担感が増す逆進性を緩和するため、生活必需品の税率を軽減する複数税率や税金を還付するための納税者番号制度の導入の検討が必要だという認識も明らかにした。>(6月22日asahi.com)

6月21日朝日新聞朝刊には、同19~20日、電話により行った全国世論調査の結果、<菅内閣の支持率は50%で、1週間前の前回調査(12、13日)の59%から下落した。不支持率は27%(前回23%)。「消費税率10%」に言及した菅直人首相の発言には「評価しない」が50%で、「評価する」の39%を上回った。首相が引き上げに前向きと取れる発言をしたことで、消費増税に反対の人たちの離反を招いているようだ>という記事が掲載されている。記者会見における菅総理の発言は、この朝日新聞の記事を読み、消費税問題に焦点をあてることが参議院選挙において民主党に不利になるということを十分踏まえた上での、「確信犯的」発言だ。この発言から、菅政権が、恐らく無意識のうちに、国家社会主義体制に日本を転換していこうとする傾向が浮かび上がってくる。そのポイントは、以下の3点だ。

第一に自民党が提案する消費税率の10%を「一つの参考」すなわち、基準点にすることによって、与野党の争点から消費増税問題を外そうとしている。「財政再建に与党も野党もない」という全体の代表となることを菅政権が無意識のうちに指向している。

政党を英語でポリティカル・パーティーと呼ぶように、政党とは社会の一部(パート)を代表する結社である。税問題は、国家観と表裏一体の関係にある。政党を差異化する上で、重要な問題である消費増税について、最初から野党が提示した数値を基準とするという菅総理の発想自体に、部分の代表(政党)が開かれた場(国会がそこにおいて重要な機能を果たす)における討論で、切磋琢磨して合意に達することを避けようとする傾向が認められる。

第二に、低所得者への税率軽減や税金の還付が想定されていることだ。結果として、国家(官僚)による社会への関与が増大する。
 
第三に、日本国民だけでなく日本に居住する全ての人を対象とする納税者番号制度の導入が検討されていることだ。事実上の総背番号制、国家(官僚)が個人の経済状態を詳細に把握することになる。

菅直人氏を左翼、市民派と見なす論調が多い。フランス革命における左翼には、理性を絶対視し、合理的な設計によって、社会を構築するという了解があった。その意味で、菅氏の思想がこの系譜に属する政治家であることは間違いない。しかし、菅氏はマルクス主義的左翼とは本質的に異なる。日本の非共産党系左翼においては、伝統的に労農派マルクス主義の影響が強かった。旧社会党において、労農派マルクス主義者は平和革命を主張する社会主義協会というグループを作っていた。このグループに属する人々は、共産主義社会をつくるというユートピアをもっていた。菅氏はこのようなユートピアをもたない。菅氏は社会主義協会と闘う中で世界観を形成した非マルクス主義的左翼である。

<本来、政治は夢を語り理想を語り、ユートピアを語るわけですが、私の言い方で言うと不幸を最小化する仕事であって、幸福というユートピアを強制的につくると『Brave New World』(引用者註*イギリスの作家オルダス・ハックスレーの小説『すばらしき新世界』のこと)のようになってしまう。当時、学生運動でもマルクス主義なんかの連中と議論すると、彼らはユートピア社会を語るわけです。階級がなくなればすべてが解決するんだ、みたいなことを言っていた。でも、階級がなくなってすべてが解決するなんてとても思えなかった。だから僕はマルクス主義には最初から懐疑的でした。>(五百旗真/伊藤元重/薬師寺克之編『90年代の証言 菅直人 市民運動から政治闘争へ』朝日新聞社、2008年、15~16頁)


菅氏は、「不幸を最小化する仕事」を国家が社会に介入することによって実現できると信じている。ところで、国家とは抽象的存在ではない。官僚によって担われている。従って、菅氏の発想を図式化すると「よき官僚によって、不幸がミニマム化された社会がつくられる」ということだ。菅氏は官僚を価値中立的な道具ととらえている。ナイフが人殺しに使われたといっても、それは道具であるナイフが悪いのではなく、ナイフを使った人間が悪い。自民党の政治家は、官僚を悪用していた。民主党政権は、官僚を善導し、よい目的のために用いることができるという了解を菅氏はもっている。

菅氏の発想は、先行思想と比較すると19世紀ドイツのフェルディナント・ラッサールの国家社会主義(シュタート・ゾツィアリスムス)に近い。日本では、陸軍と提携して「上からの社会主義社会」の構築を考えた大正時代から昭和初期に活躍した高畠素之と親和的だ。高畠は自らの思想を国家社会主義と名づけた。もっとも、マルクスの『資本論』全3巻をはじめて日本語に訳した高畠は、官僚を道具的な存在とはとらえず、国家悪を体現した危険な存在なので、社会によって官僚に対して圧力をかけることが不可欠と考えた。

菅政権下、日本は国家社会主義に向けて舵を切ろうとしている。国家社会主義には、北欧型の福祉国家からイタリア型ファシズムまでの幅がある。ここで重要なのは官僚よる社会への介入をどのようにして、防ぐメカニズムを構築するかであるが、国家を中立的存在と見ている限り、このようなメカニズム構築の必要性がわからない。

マルクスとマックス・ウエーバーは、論理構造は異なるが、暴力を合法的に独占するところに国家の本質があると考えた。この視座をもたないと官僚の危険が見えない。菅氏が道具主義的に官僚を使おうとすると、そこから「よき官僚たち」によって無知蒙昧な国民を保護することを真面目に考えるファシズムが生まれる。

もっともマルクス主義理論に通暁している仙谷由人内閣官房長官が、菅氏の世界観的限界を補うことが想定されるので、そう簡単に日本がファシズムに転換することはないと筆者は考える。いずれにせよ、菅氏が、恐らく無意識のうちに国家社会主義的傾向を示していることを軽視してはならない。

(以上、佐藤優の眼光紙背より転載)


小沢追放会議

2010-06-22 | weblog

新総理・菅直人 仙谷 枝野 前原「小沢追放会議」 血で血を洗う権力闘争、その内実

見えてきた参院選圧勝 あとは亀井をどうするか

菅首相と仙谷官房長官は、小沢前幹事長との対決姿勢を露にした。執念深い小沢氏が、辞任に追い込まれたまま引き下がるわけもない。生き残るのはどちらか。激しい抗争の幕が開いた。

鳩山由紀夫前首相の退場から、菅直人新政権の発足へ---。民主党による政権交代の第2幕が開いた。

だがそれは、政権内での主導権を巡る、血で血を洗う激しい権力闘争の幕開けでもある。

鳩山前首相の最後の一撃で、小沢一郎前幹事長は強制的に退場処分となった。世に言う「道連れ辞任」である。小沢氏は事実上、失脚。これを見た民主党のベテラン議員はこう語る。

「これで小沢さんは、おしまい。政治家として消えていく。小沢幻想、小沢神話に振り回されるのも、そろそろ終わりということだ。

自民党で、森喜朗や古賀誠、青木幹雄らのことはもはや誰も気にしていない。同じことが小沢さんの身にも起ころうとしている」

その一方で、小沢派の議員らからは、猛烈な反発が沸き起こっている。

「これは戦争だ。菅内閣が小沢グループを一掃するつもりなら、こちらにも考えがある。菅内閣など、単なる選挙管理内閣に過ぎない。後でほえ面をかくのは、菅や仙谷(由人・官房長官)、枝野(幸男・幹事長)のほうだ」(小沢側近の一人)

民主党を揺るがす権力闘争の一端は、6月9日に行われた、小沢氏から枝野氏への新旧幹事長の引き継ぎ会談からも垣間見えた。

昨年9月、約20年ぶりに奪還した国会内の与党幹事長室を、わずか8ヵ月あまりで退散することになった小沢氏は、表面上、淡々としていたが、内心は腸が煮えくり返る思いだった。

「格下の枝野なんかに、何を引き継ぐんだ。お前みたいな小者に、何ができる。ケッ!」と言わんばかりの尊大な態度。

従って枝野新幹事長との面談は、たったの3分。膨大な資料を枝野氏にドサリと渡しただけの形式的な作業で、小沢氏はそっぽを向いたままだった。

小沢氏に近い議員らからは、さっそくこんな声が聞こえてくる。

「枝野は政策通と言われるが、選挙対策や国対関係など、党務にはまるで詳しくない。結局、居残っている細野(豪志幹事長代理)ら、小沢系の議員に頼らなければ実務なんかできないんだよ。枝野は、引き継ぎで渡された山のような資料を見て、蒼くなっている。参院選までに、ゼロからそれを見直すなんてことは不可能だからな」(小沢グループ中堅議員)

小沢氏から見て、枝野氏は「チンピラ」(同)に過ぎない。そして枝野氏のほうも、小沢氏のことを評価せず、「(自分と違って)弁護士になりたかったのに、なれなかった奴(小沢氏は司法試験に合格することができなかった)」として、陰で蔑んできた。

そのことを、実は小心者の小沢氏は、大いに気にしている。というより、絶対に許すことのできない侮辱なのだ。

「勝手にしろ。お前なんかに、どうせまともに幹事長が勤まるわけがない」

小沢氏は3分で切り上げた引き継ぎによって、枝野氏にそう通告したに等しい。

ただ小沢氏がそうした対応をすることを、人事を決めた菅直人新総理も、仙谷由人新官房長官も、十分に承知していた。

組閣の直前。菅、仙谷氏らが集まり「小沢追放」のための対策を話し合った会議でのこと。当の枝野氏本人が、「私が幹事長で本当に大丈夫なんですか」と就任を渋った。国家戦略相に就任した菅首相の側近・荒井聰氏も、「それでは政権がもたない」と猛反対していた。

「幹事長室は、小沢一派の牙城です。そこに枝野氏が徒手空拳で飛び込めば、嫌がらせやサボタージュで仕事が回らなくなる。枝野氏は『自信がない』と、就任を躊躇していたのです」(全国紙政治部デスク)

小沢のカネの流れを洗え!

ではなぜ、菅首相と仙谷長官は、それでも枝野氏を幹事長に任命したのか。

実は仙谷氏には、小沢封じの"秘策"があった。小沢氏の影響力が残る党と幹事長室を掌握し、コントロールする方法---。それは、従来は国会内にあった幹事長室を、「官邸内」にも設置しようという構想だ。

国会対策を含めた党務の最高責任者である幹事長の執務室は、党本部以外は、通常、国会内にある。小沢氏もその慣例を踏襲し、「モノを言いたい」時にだけ首相官邸に乗り込み、鳩山政権の政策を鶴の一声で左右し、力を誇示してきた。

仙谷氏は、そのシステムを破壊しようとしている。

「小沢氏の力の源泉は、幹事長室、選対、国対の3つ。逆に言えば、ここから小沢氏の影響力を取り除けばいい。そこで、幹事長室そのものを官邸内に移し、菅---仙谷コンビの直轄にしてしまえ、というのがこの構想です。幹事長職を、実質的に官房長官の管轄下に置くことで、枝野氏を仙谷氏がバックアップする。

同時に、選挙もカネも、これから官邸が主導権を握る。党から無用の横槍は許さない。たったこれだけで、小沢氏は丸裸になる」(仙谷氏周辺)

カネのない小沢氏には、何もできない。そのことを一番よく分かっているのも小沢氏だ。だからこそ、小沢氏はあれだけカネに執着してきたわけだが、そのカネを、今度は反小沢グループが掌握したのだ。

「もともと政府側は、前原誠司国交相や岡田克也外相ほか、反小沢・脱小沢系の議員ばかり。今後は、官邸そのものが"小沢追放"の秘密会議の場となる。昨日まで小沢氏が自由に使っていたカネは、これから小沢潰しのために使われる。小沢氏が退場勧告を受けた際、呻くようにして苦しげな表情を浮かべたのも、当然です」(全国紙政治部記者)

そして仙谷氏は、枝野氏には別のある因果を含め、幹事長に送り出したという。

「小沢氏が幹事長時代に使ったカネの流れを、徹底的に洗え、という指示です。少しでも不正なカネの流れがあれば、小沢氏の政治生命を完全に断つことができる。仙谷氏は、小沢一派の息の根を止めるまで、追及の手を緩めないつもりでいる」(民主党幹部)

少なくとも、菅政権の滑り出しは上々だった。発足直後の世論調査で、支持率は66%(毎日新聞)。10%台に低迷した前政権から跳ね上がっている。

政党支持率も、一時は自民党に逆転されていたが、菅政権は自民党にトリプルスコアに近い差(民主38%、自民14%=朝日新聞)をつけており、苦戦が伝えられた予想を覆し、参院選で圧勝する可能性も出てきた。

「菅政権は、鳩山政権の失敗の上に立ってできた政権です。まずは失敗の分析から始めなければならない。鳩山政権は理想論を語り失敗しましたが、今後は、地に足が着いた、安定的な政権運営が求められています」(渡辺周・総務副大臣)

新政権が高い支持を得ているのは、あらためて言うまでもなく、「反小沢」「脱小沢」路線を明確にしたことが大きい。仙谷氏は、枝野氏や前原氏ら反小沢系議員の"総元締"的な存在であり、

「小沢派の議員など、全員落選してしまえばいい」

とまで語っていたほどの、急先鋒。その仙谷氏を懐刀に迎えることで、菅首相は「小沢外し政権」を作り上げたことを、国民に強くアピールしたのだ。

鳩山前政権下で、小沢氏によって逼塞させられていた仙谷氏らは、息をひそめるようにして、この機会をずっと窺っていた。そして、小沢氏退場によって機が熟したと見るや、その影響力を根絶すべく、一気に追い討ちをかけ始めたのだ。

鳩山氏が両院議員総会で辞任を表明した6月2日の夜。彼らは素早く行動を起こした。菅首相はすでに、代表選に勝って総理に就任することを前提に、定宿にしている東京・赤坂のホテルニューオータニの一室で、仙谷氏、枝野氏と向き合っていた。「小沢追放会議」の始まりだ。

仙谷氏らはのっけから、

「この際、徹底した人事を断行して、党を再構築しようじゃないか」

「政治とカネの問題で、しっかりとけじめをつけてほしい」

と、小沢切りを菅首相に強く迫り、了承を取り付けた。これは、前原国交相、岡田外相、野田佳彦財務相ら、反小沢派の「七奉行」が、菅氏を総理に担ぐ上での条件でもあった。

菅首相はこれまで、小沢派にも、反小沢派にも属してこなかった。小沢氏とは折に触れ連絡を取り合い、つかず離れずの絶妙な遊泳術で党内の地位を保ってきた。

ただそれはすべて、「首相になる」という菅氏自身の野望のため。徹底した現実主義者としても知られる菅氏は、反小沢の流れに乗れば総理の座が転がり込んでくると見るや、小沢氏への友好的態度をかなぐり捨て、即座に小沢潰しの行動に踏み切ったのである。

「小沢はボケた」とまで言われ

一方で、その類の政界工作が得意のはずの小沢氏は、完全に出遅れた。6月2日の両院議員総会で、権力の座から強制退去させられた小沢氏は、菅---仙谷ラインが動き出した時、まだそのショックが抜けきらず、動揺の真っ只中にあった。

2日から3日にかけ、小沢氏の携帯電話には、菅首相からかけた電話の着信記録と、伝言メッセージが残されていたという。

「代表選に出馬したいと思います。小沢幹事長にも、一言ご挨拶申し上げたい」
  しかし、小沢氏が直接、菅氏からの電話に出ることはなかった。というより、精神的に「出られなかった」というほうが正しい。

鳩山は替える。だが自分は選挙とカネの権限を手放さない。それが小沢氏の描いた理想のシナリオ。ところが、この目論見は前述のように鳩山氏の叛乱で、完全に覆されてしまう。

自身の政治的影響力を維持するため、小沢氏は菅氏に対抗し、自分の息がかかった対抗馬を即座に立てる必要に迫られた。しかし、小沢氏の手元には、"手駒"がいなかった。

「頭は自分ひとりでいい」

そうやって後継者を育ててこなかったことが、この土壇場になってアダとなった。こうした焦りが、その後の小沢氏のすべての判断を狂わせる。

焦燥に駆られた小沢氏は、考えられないような行動に出た。あろうことか、あの田中真紀子元外相を菅氏の対抗馬に立てようと画策したのだ。しかも、あっさりと袖にされたというのだから、面目丸潰れである。

「真紀子さんの自宅まで口説きに行ったと聞いて、小沢氏の正気を疑いました。トラブルメーカーの真紀子氏に、代表や、ましてや総理なんて勤まるわけがない。ちょっと目立つ人間なら誰でもいいのか。小沢氏は谷亮子の立候補といい、今回の真紀子擁立といい、政治的勘が鈍っている。ボケたんじゃないか」(菅グループの民主党代議士)

真紀子元外相は、しつこく口説く小沢氏に対し、「担がれたら、国民に『愚弄している』と思われ、政治生命が終わる」として、断固出馬を拒否した。それどころか、逆に「小沢さんが自分で代表選に出ればいい」と勧めたが、本人は「無理だ」と言って躊躇っていたという。

この一連の経緯をすべて真紀子氏に暴露されてしまい、小沢氏はますます政治的立場を下げてしまった。

お坊ちゃまと見下していた鳩山前首相に足を掬われ、真紀子氏にふられ、菅---仙谷コンビにはいいように翻弄され・・・。幹事長職を失ったショックがあったにせよ、そこにはもはや、政権を裏で牛耳ってきた、"闇将軍"の勢威はない。

菅直人新総理が確定した6月4日夜、小沢氏は配下の議員らと、都内の料理店で"残念会"を開いた。その席上、小沢氏はビールを注いで回りながら、

「(小沢派の支持を得て代表選に出馬した樽床伸二国対委員長は)あと90票で、過半数だった。ちゃんと(得票工作を)やっていれば、過半数もいけた」

と、強気に語ったという。

しかし、集められた若手議員たちの態度は、いかにも冷めたものだった。

「『必ず来い』と動員をかけられたのですが、来たのは80人くらい。小沢さんは不自然にニコニコしていて、気持ちが悪かった。もうキレちゃったのかも。大丈夫かなあ? 『あと90票で過半数』って言われても、代表選の過半数212票は、樽床氏が獲った129票の倍近くでしょ。そんなの無理ですよ」(新人議員)

検察情報と国税情報で

落ち目の小沢氏に対し、仙谷氏らは手を緩めない。「外堀」を次々と埋められているのは、小沢一派のほうである。

反小沢系の中堅代議士が、こう語る。

「選対委員長に就任した安住淳氏も、反小沢派の一人。彼はNHK政治部の出身ですが、自民党政権時代、国政選挙ではNHKの全国世論調査のデータが、自民党に流出していたのは公然の秘密でした。鳩山政権では、それが小沢氏のもとに届いていた。

小沢氏は、党独自の選挙情勢調査も含め、こうした生のデータを他の幹部にも見せずに独占していました。しかし今後は、NHKとパイプがある安住氏が選対委員長になり、枝野氏が幹事長となったことで、それもできなくなる。まともな選挙情勢のデータは、もう小沢氏に届かない」

また、仙谷長官らが、小沢追放の強硬路線に走った背景には、検察審査会の動向もあると見られる。

小沢氏の資金疑惑について審査を続けている検察審査会は、早ければ7月中にも、2度目の議決を下す可能性が高い。1回目の議決で「起訴相当」となったが、その後、検察の再捜査と小沢氏本人の事情聴取の結果、不起訴となった。

しかし、2回目の議決で「起訴議決」となれば、小沢氏は強制的に起訴されることになる。

「弁護士出身で法曹界にネットワークを持つ仙谷氏は、小沢氏の起訴に備え、東京地検が公判準備を開始したとの情報を得ています。小沢派の牙城である幹事長室に乗り込むことを枝野氏が渋った際、仙谷氏がこの強制起訴情報をもとに、『どうせ小沢の政治生命は終わりだ』と説得したのです」(別の民主党ベテラン議員)

菅首相にしても、財務大臣を務めたことで、小沢氏に対して強気に出る材料を得たのではないか、という見方がある。財務大臣が、脱税捜査を行う国税庁を統轄しているのは周知の通り。そのため、「首相は国税庁から、小沢氏の税務調査の結果を得て、首根っこを押さえたのではないか」(財務省関係者)と囁かれているのだ。

いまや官邸そのものが、小沢追放のための秘密会議の場であり、策源地なのだ。次々と繰り出される反小沢派の攻撃の中、小沢氏に残された選択肢はあまり多くない。政治評論家の伊藤惇夫氏はこう語る。

「参院選で菅政権が勝ってしまえば、もう小沢さんの出る幕はない。したがって、サボタージュか、分裂選挙を画策する可能性があります。つまり、自分がこれまで築き上げてきた選挙ネットワークを、枝野幹事長や安住選対委員長には触らせない。そして、自分が擁立した新人候補だけを徹底的に支援するのです」

さらに9月の代表選では、小沢氏が傘下の議員にハッパをかけて集めた、「党員・サポーター票」がものを言う、という見方もある。

「小沢氏は5月までに、党員・サポーターを1000人集めろ、との指示を各議員に出していた。それを忠実に実行していた小沢グループの議員は、実際に1000人以上を集めましたが、小沢氏と距離があった議員は不熱心で、300~400人ほどしか集めていません。これが、党員・サポーター票が勝敗を左右する9月の正式な代表選できいてくる可能性があります」(政治評論家・浅川博忠氏)

民主党の党員・サポーターは、現在30万人ほどと言われている。約150人の小沢グループがそれぞれ1000人以上のサポーターを抱えているとすれば、全体の約半数は、"小沢票"ということになる。

「党員・サポーター票の優位を、議員投票で覆すのはかなり難しい。小沢氏の息のかかった候補が、かなりの票を集める可能性はある」(浅川氏)

脱走する小沢チルドレン

しかし、そう目論見どおりにいくのかどうか。鉄の結束を誇っていたはずの小沢グループに、分裂の兆しがあるからだ。

小沢氏が失脚した直後に、"小沢チルドレン"からは、「私は、河村たかし名古屋市長の秘書出身なので"河村チルドレン"」(田中美絵子代議士)など、一斉に「小沢離れ」を強調する発言が飛び出している。

「小沢氏に従っていれば選挙に勝てるし、逆らうと落選させられる。そう思ってみんな我慢して来ましたが、もう小沢氏の顔色を窺う必要がない。菅政権が続く場合、小沢氏の年齢を考えれば、先もない。

仙谷長官は、副大臣ポストを小沢グループに提供しようとしましたが、これは懐柔工作の一環です。選挙が不安な議員を中心に、小沢派は次々と切り崩されていく」(民主党若手議員)

となると、小沢氏に残された道は、居場所がなくなった民主党を飛び出し、再び野に下る、ということくらいしかない。

一部で注目されているのは、6月11日に辞意を表明した亀井静香氏の動向だ。菅政権は、支持率が65%前後に跳ね上がったのを機に、国会を予定通り6月中旬に閉会し、7月11日を参院選投開票日とする日程を目指したが、郵政改革法案の成立を求める国民新党との軋轢を招いた。

もともと亀井氏は財政拡大論者で、財政再建・消費増税を掲げる菅氏や仙谷氏とはその点も相容れない。

「外国人参政権や夫婦別姓の問題で政権が紛糾したとき、小沢氏が党を割る大義名分が出てくる。そこで亀井氏や自民党の一部、たちあがれ日本など保守勢力と小沢氏が組んで、政界再編に動くことも考えられる」(政治評論家・鈴木棟一氏)

しかし繰り返すが、民主党内の空気は、もはや小沢氏に対して完全に冷め切ってしまっている。

「小沢さんが党を割っても、側近以外は誰もついていかないよ。83人いた小泉チルドレンは、次の選挙で10人になった。新人議員は、自分たちが小沢氏の力でなく、民主党の看板で勝ったことをよくわかっている。飛び出せば落選確実なのに、誰が小沢さんについていくのか。小沢さんはいまや、裸の王様だ。どう転んでも、これでおしまいだよ」(菅首相の側近議員)

小沢氏は、「民主党には、権力の何たるかを分かっている人間がいない」と嘆き、それを逆手にとって鳩山政権を操ってきた。

その鳩山前首相は、6月9日に近しい議員らが主催した慰労会の席で、「小沢さんが、子どもだった民主党を、大人の政党に変えてくれた。感謝しなければいけない」と語ったという。

そう、民主党は大人になった。小沢氏が見下していた者たちは、小沢氏から権謀術数の何たるかを学び、最後にその小沢氏を、権力の座から引き摺り下ろすことに成功したのだ。

ただ、それでも小沢氏の周辺には、依然として不穏な空気が漂っている。

「小沢さんをないがしろにした報いは、必ず9月に訪れる。最終的に、小沢さん自身が出馬するというカードも残っている。仙谷が人事で切り崩しを図った際も、全員が拒否し、グループの団結の強さもあらためて確認された。菅は、どこまでクビが繋がるのか、戦々恐々としているはずだ」(小沢派中堅代議士)

生き残るのはどちらか。民主党政権の行方を左右する血腥い権力闘争は、これからが本番だ。

(以上、現代ビジネスより転載)


ムネオ、カメ、ヤスオ

2010-06-21 | weblog

菅首相の消費税10%発言が話題になっている。

民主主義は手続きが一番であり、次に中身である。党内議論がないままに、「10%」が一人歩きしている。

昨年の総選挙で民主党は、4年間消費税は上げないと国民に約束した。将来の国のあるべき姿を考える時、財源の確保は当然である。しかし、手の平を返した様な発言は受け入れられないのではないか。

消費税アップの話の前に、徹底的に国会議員の定数を削減し、更にボーナスはじめ特権の廃止をすることである。あわせて、国家公務員の特権、優遇もなくすことである。

こうしたことをしっかりやってから、国民に負担増を求めるのが筋ではないか。

選挙は一週間で流れが変わる。平成10年の参議院選挙では、当時の橋本首相が投票日の一週間前、減税について慎重な発言をテレビでの党首討論で言ったことで流れが変わってしまい、大惨敗し、退陣となっていった。

トップリーダーの発言一つで歴史が変わることを、菅首相も頭に入れておくべきである。

(以上、ムネオ日記6/19より)

 

「首相の消費税10%発言」に関して

・我が国においては10年間以上もの長期に渡りデフレが持続しており、名目GDPも1990年代前半の水準で推移している現状認識が非常に重要であると考える。経済全体が縮小している状況での健全財政などあり得ない。

・現下のデフレ環境から脱しきれていない我が国において消費増税を行う事は経済全体の下振れ圧力を助長し、更なるGDPの減少が結果として惹起される事が、数々のマクロ経済モデル等から推測される。

・これらの事態の発生は、消費税以外の所得税、法人税への負の波及効果をもたらし財政面においても得策ではないと考えられる。とりわけ、近年の国際的な財政健全度の指標である(債務残高/国内総生産)においてはGDPの減少は財政健全度の判断に決定的な悪影響を及ぼす事が想像出来る。

・中長期的には高齢化社会が進展するわが国において、インボイス制度(食料品や医薬品などを非課税にする)を織り込んだ、消費増税はいずれ避けられないと考えられるが、現在の我が国は昨年来の景気対策が漸く効果を示し始めた経済の治癒過程のただなかにあり、直ちに増税を決断出来る局面ではないと我々は考える。

・今後、三年間程度は景気回復に集中し、GDPが複数年連続して成長し得る環境が確認された段階で、消費税を含めた税制全体の議論を行っても、決して手遅れではない。我が国は今も年間10兆円以上の経常黒字国家であり、対外純資産も266兆円という世界随一の対外債権国家である。本質的な問題は、経済が縮小している中で高齢化が進展しているという点であり、産業構造の転換を始めとして高齢化社会に対応出来る為の経済環境こそ早急に構築しなければならないと考えるものである。

・政権交代後、昨年9月に当時の連立三党は政権合意を交わしたが、その中には消費税率の維持が盛り込まれていた。また去る6月4日の連立二党合意においても昨年の三党合意を尊重して引継ぐという非常に重要な項目が盛り込まれている。連立政権を構成する上での基本要件を守る為にも、昨年の総選挙における国民への約束を守る為にも、第一党である民主党に今一度、初心を思い起こして頂きたいと思うと同時に、国民生活を守る責任ある連立政権のパートナーとして国民新党が警鐘を鳴らしてゆきたいと思う。

(以上、国民新党HPより)

 

逃げ足の速い「奇兵隊内閣」は何もやれない

「私は不思議でなりません。国家公務員制度の見直しを声高に語る民主党は何故、地方公務員制度の見直しをマニフェストの何処にも明記しないのかと。貴方が所信表明演説で述べられた、『個々の団体の利益を代表する政治との決別』は本当だろうかと」

“逃げ足の早い奇兵隊”を率いる菅直人氏に、新しい与党会派「国民新党・新党日本」を代表し、衆議院本会議で代表質問に立ちました。

解雇も倒産も無縁な地方公務員の月額給料は、諸手当を除き、控え目に見積もっても、民間事業の平均賃金の1.5倍余りも恵まれています。

286万人の地方公務員、64万人の国家公務員、合わせて350万人の公務員給与を10%削減するだけでも2.5兆円、消費税1%分の財源が生み出せるのです。

と質問するも、「地方公務員の給与をどうこう言うのは、それこそ地方分権の考え方として問題」と“官僚作成答弁”の棒読みに終わりました。

又しても、不思議でなりません。国家公務員給与に連動し、地方分権どころか中央集権的要素の強いのが、地方公務員給与。都道府県人事委員会の給与勧告は、先立って国に提出される人事院勧告の書き写しなのです。

労働貴族な官公労の既得権益にメスを入れてこそ、所信表明演説で掲げた「課題解決型の国家戦略」の実践です。

先月末の財政緊縮法可決を受けて、スペインのホセ・ルイス・サパテーロ首相は、この6月から即時、公務員給与平均5%削減を導入。スペイン社会労働党書記長の彼は、支持母体の労働組合が公立学校等を占拠し、“ゼネスト”を展開しても怯(ひる)まず、“第2のギリシャ”回避策を敢然と実行に移したのです。

辞意表明から所信表明に至るまで丸々10日、首班指名の本会議以外、政策論争も法案採決も“開店休業”の「政治空白」に陥りました。その間、企業倒産は350件、口蹄疫殺処分対象家畜は19万頭、自殺者は900人を超え、日本の借金は1兆円以上の増加です。

「『増税で経済成長』は語るに落ちた理屈」と畏兄・野口悠紀雄氏も慨嘆の“安易な増税論”を掲げる「奇兵隊内閣」を、にも拘らず、何かやってくれそうと善男善女は信じて疑わず。

う~む、大政翼賛の空気に抗(あらが)うべく、「親身の指導・日々是決戦」の気概を抱き、今後も諫言(かんげん)するしかありませんなぁ。【田中康夫】

(以上、ゲンダイネットより)


消費税10%

2010-06-20 | weblog

消費税10%:悪徳ペンタゴンにとことんなめられる国民
 
1.消費税10%を参院選争点に、悪徳ペンタゴンの悪知恵
 
2010年7月11日、参院選が決定、早速、2010年6月18日の大手新聞にいっせいに“消費税10%”を大見出しで報道しています。悪徳ペンタゴン(注1)の一味・大手新聞は、例によって誰の要請なのか、消費税10%を参院選の争点にすべく、世論誘導を開始しました。
 
悪徳ペンタゴン連中は民主党に消費税10%を認めさせようとしているのは明らかです。
 
6月頭に辞任した小沢・鳩山コンビ率いる民主政権は、これまで消費税を上げないと公約してきたのですが、悪徳マスコミは、菅政権に消費税10%を公約させようと世論誘導を始めたとみなせます。なお野党第1党・自民党は消費税10%引き上げを参院選用マニフェストに明記したようです。
 
一方、菅民主政権は、自民の消費税10%公約を“参考にする”とお茶を濁したかっこうです。今後、大手マスコミのうち何社かは、消費税10%の既成事実化を目指して、自民よいしょ、民主攻撃キャンペーンに入るのでしょうが、この路線で各マスコミの足並みがそろうかどうか、未知数です。柳の下のドジョウ作戦ミエミエです。
 
また、筆者の悪い予感、すなわち自民、民主どっちにころんでも、米戦争屋の手のひらで踊らされる事態(日本の永久的対米属国化という悪夢)になりそうです。つまり日本国民の選択権(オプション)が奪われるということです。
 
2.図に乗るな、悪徳ペンタゴン
 
背水の陣を敷いた自民党は、消費税10%公約と引き換えに悪徳ペンタゴン支持をとりつけたのは明らかです。
 
一方、小沢・鳩山コンビの追い落としに成功して慢心した悪徳ペンタゴンが図に乗ってきたのも明らかです。悪徳ペンタゴンは今回のねつ造的世論調査作戦にて国民を思うままに誘導できると自信をもち、悪徳ペンタゴンが一致団結すれば消費税10%を実現できると読んでいるのです。
 
世論調査国民よ、あなたたちは、悪徳ペンタゴンからとことんなめられているのですよ、いい加減、気付いてください。
 
3.消費税値上げに賛成する世論調査国民の頭脳構造を疑う
 
悪徳ペンタゴンの狙いは何か、ズバリ、消費税など間接税を財源とする外国為替資金特別会計(注2)にて米国債を買い増し、米国戦争屋に年間20兆円を献上するためでしょう。その財源として、消費税を5%から10%に上げれば、年間20数兆円の税収増(=GDP500兆円の5%)が得られるはずです、ただし、景気がこれ以上悪化しないという前提で。偶然か、両者、数字がピタリ一致します。
 
ところで、オバマ大統領は先ごろ、向こう5年で100兆円(1兆ドル)の軍事費削減(年間平均20兆円)を発表しています(注3)。現在、日本をステルス支配する米国戦争屋にとって、連邦軍事予算削減を穴埋めするのに、当然、日本国民のふところを狙ってきます(注3)。日本の買い増す米国債を財源に特別予算枠を設定して、極東防衛予算などの名目にて、米国民負担の軍事予算削減分を補充・確保するつもりでしょう。筆者が米国戦争屋の会計担当だったらそうします。
 
戦争屋傀儡政党・自民党が、親米官僚(悪徳ペンタゴンの一味)経由にて戦争屋の要求に屈して、消費税10%を選挙公約に入れざるを得なくなったということです。非常にわかりやすい話です。これまで、選挙前に、消費税値上げを訴えて、勝った政党はないのです、当然です。国民からみれば、不景気で収入は減るは、増税はされるは、という、踏んだり蹴ったりの話ですから。庶民は悲鳴を上げ、消費低迷で企業も悲鳴です。自民党は、財務省が背後から毎度、要求する消費税値上げ公約をめぐって、これまでさんざん苦労しています。
 
ところが、財務官僚と、彼らと癒着する大手マスコミの洗脳によってなのか、世論調査国民の過半数66%が消費税増税に賛成しているそうです(読売新聞6月12~13日調査)。エエー! 世論調査国民の頭脳構造はいったいどうなっているのか、不思議でしようがありません。
 
4.消費税は国民に還元されない
 
周知のように消費税は、日銀の円売り・ドル買いオペ(結局、米国債に化けて米国にドルが還流される)、大量の官僚天下り法人経費、そして国債償還(償還と同時に借り換え債を発行するので、実質的には国債を保有する金融機関への利払い)に当てられ、国民には還元されないとみなしてよいでしょう。国民には取られ損です。この点が、北欧諸国とは大違いです。財務省と癒着する日本の金融機関は、われわれの預貯金にほとんど利子を払わないのに、われわれ預貯金を原資に買う国債の利子を政府からたっぷり受け取っています。大手銀行は笑いが止まらないはずです。
 
上記のような悪徳ペンタゴン・ウハウハの構造は、ネット情報をちょっと調べれば、すぐにわかる話です。ただし、大手新聞をいくら読んでもわかりません(笑)。
 
悪徳ペンタゴンのカモにされている世論調査国民のみなさん、もういい加減、カモにされるのは止めてください、他の国民が大迷惑です。
 
5.日本の根本問題:米国が日本国民から借りたカネを返さないこと(大赤字で返せない)
 
日本全体の対米ドル債権累積総額は700兆円規模(日米研究のプロ・副島隆彦氏の試算)といわれています。そのうち、日本政府のドル債権保有は2001年以降だけで100兆円(財務省公表)、また2001年以前の対米貿易黒字累積相当額および米国債利子累積分は秘密にされています。
 
日本政府の官僚も政治家も、米国政府に対し、日本の保有する米国債の償還を要求する勇気がないのです。もし面と向かって要求したら、急死した故・橋本元首相や、不審死した故・中川元財務大臣と同様の運命が待っているのです。
 
民主党も、この問題(タブー)を取り上げたら、かつて暗殺された故・石井紘基元民主党衆院議員のような運命が待っていると知っているのです。
 
ちなみに日本の大手マスコミは、このタブーを国民に知らせないようにするために存在すると言って過言ではありません。
 
政権交代を果たした小沢・鳩山コンビは、これ以上、米国に日本の国富を吸い上げられないよう、対米独立(日米安保見直し含む)を希求したのです。だからこそ、米国戦争屋の代弁機関である大手マスコミや、米国戦争屋のロボット官僚(一部の官僚)に追い落とされたのです。この不健全極まりない日米構造の実態を知ってください、世論調査国民のみなさん。悪徳マスコミの言いなりになるということは、自分で自分の首を絞める愚行です。いい加減、目を覚ましてください。
 
6.官僚天下り法人経費を合理化すれば、消費税値上げは不要
 
政権交代によって、官僚天下り法人の事業仕分けが行われるようになっています。消費税、酒税、ガソリン税など間接税の徴収になぜ、官僚が熱心であるか、それは、これらの税金は、官僚の収入になるからです。国民に還元するという北欧先進国の発想は、これっぽっちもない!ということ。世論調査国民よ、彼ら官僚の詭弁にころっとだまされないようにしましょう。
 
言っておきますが、日本の大手マスコミは、われわれからカネと取って、官僚と癒着(記者クラブなどで)して、官僚の代弁者に成り下がっていると思った方がよいです。大手マスコミ情報へのアンチテーゼを提供するネット情報をもっと勉強してください。
 
あなたたち、世論調査国民の不勉強が、国政選挙で間違った1票を生み、その結果、他のマジメな多くの国民への不利益をもたらすのです。その意味で、国民の選挙で成り立つ民主主義体制とは、ときの権力やマスコミの言いなりになることではなく、国民がかしこくなって、ときの権力やマスコミへの批判力をつけて初めて成立するシステムです、お忘れなく。

(以上、新ベンチャー革命より転載)


再び新自由主義

2010-06-19 | weblog

菅政権と小泉政権は同じ新自由主義。

2006年、小泉内閣のとき、財界が司令塔となって政府に法人税減税と消費税増税の計画を作らせ、11年度までに消費税増税の法案を成立させるレールを敷くところまで行きました。

本日、菅首相は、小泉内閣のときのように、消費税の増税をはっきりと公言。

さらに、法人税減税も実施する方向らしい。

消費税増税でつくった財源が大企業減税に回るとすれば、財源の使い道を含めて考えても景気には大きなマイナス 。

日本の大企業は、この10年で90兆円近くもため込み金(内部留保)を積み上げ、過剰貯蓄になっています。大企業減税は必要もないし、意味もありません。

新自由主義の基本政策を小泉政権が、「構造改革」として実行する前から、新自由主義の基本政策をとろうとしていた勢力があった。

例えば、前原誠司、岡田克也、玄葉光一郎、長島昭久、野田佳彦、古川元久、は新自由主義が思想信条だった。

小沢一郎の「国民の生活が第一」の路線に対して最も拒絶的だったのが玄葉光一郎で、小沢一郎が党内で実権を握っている間、ずっと頑迷に抵抗して無役を通した。

原理主義者の玄葉光一郎は猛反発し、自分は新自由主義の節を曲げられないと言い、小泉勉強会に参加して新自由主義者の信仰告白をした。小泉純一郎や小池百合子と一緒に、「改革」の新党を立ち上げて政界再編したいと申し出た 。

党内で最も狂暴で過激な新自由主義者の玄葉光一郎が、政調会長の要職に就いたことは、菅直人が最終的に新自由主義者に転向したことを意味する。

長い長い政治家人生の果て、社会民主主義者から出発した菅直人は、竹中路線を再興する新自由主義者に流れ着いた。

政府は15日午前の閣議で、丹羽宇一郎・伊藤忠商事元社長を駐中国大使に任命した。

丹羽氏は小泉政権幹部と米国に都合のいい人物。

丹羽宇一郎氏は、小泉政権時代に、重用された人物。もっとも記憶に残っているのは、残業代ゼロ法案を推進していた点である。「従業員は、たとえ残業代をもらえなくても、仕事が覚えられるだけで満足するものなんだ。だから残業代ゼロ法案を推進すべしだ」という趣旨の発言を、主張していた。

米倉弘昌経団連会長と直嶋正行経済産業相は16日、東京・大手町の経団連会館で意見交換し、法人税の実効税率引き下げで共闘する方針を確認。国会閉会で政界が参院選モードに入る中、手のひらを返したように経団連との距離を縮めようとする民主党に対し財界には戸惑いの声もある。

結党以来のコアのメンバーは、新自由主義が思想信条なのである。例えば、前原誠司、岡田克也、玄葉光一郎、長島昭久、野田佳彦、古川元久、皆、そうだ。

ところが、この新自由主義の基本政策を小泉政権がパクって、「構造改革」という名の下で自家薬籠中の物にしてしまうのである。2000年代前半の出来事だ。こうして、新自由主義は自民党の看板になり、民主党は政策の対立軸を打ち出せなくなり、オロオロするばかりとなり、郵政選挙で惨敗した後は前原誠司が「改革競争」を唱えるに至った。小泉政権が登場する以前、民主党が批判する自民党の像は田中角栄と宮沢喜一の自民党だったと言える。

その後、「構造改革」の弊害が顕著となり、国民生活の破壊と窮状が歴然として、国民の不満が高まったとき、民主党は「国民の生活が第一」の路線へと切り換えた。この路線転換は、98年の「基本政策」を原理的に否定するものである。だからこそ、原理主義者の玄葉光一郎は猛反発し、自分は新自由主義の節を曲げられないと言い、小泉勉強会に参加して新自由主義者の信仰告白をした。小泉純一郎や小池百合子と一緒に、「改革」の新党を立ち上げて政界再編したいと申し出たのである。

小沢一郎の「国民の生活が第一」の路線に対して最も拒絶的だったのが玄葉光一郎で、小沢一郎が党内で実権を握っている間、ずっと頑迷に抵抗して無役を通した。党内で最も狂暴で過激な新自由主義者の玄葉光一郎が、政調会長の要職に就いたことは、菅直人が最終的に新自由主義者に転向したことを意味する。長い長い政治家人生の果て、社会民主主義者から出発した菅直人は、竹中路線を再興する新自由主義者に流れ着いた。

思い出すのは、昨年5月に代表選に立ち、鳩山由紀夫に後塵を拝しつつ幹事長に就任した岡田克也が、テレビで国民に言った言葉である。記憶では、こんな事を言っていた。自分の目指す政治は、政府が国民に介入しない政治であり、政府は国民の最低限の後押しをするだけでよく、国民は自ら自由に人生を楽しめばいい。この言葉は、「構造改革」の政治によって生活に深刻な打撃を受け、瀕死の状態で喘ぎながら、民主党の「国民の生活が第一」に一縷の望みを寄せ、衆院選の一票で政治を変えようとしていた多くの国民にとって、意外で神経を逆撫でする一言で、国民の心情を察する感性のない坊ちゃん政治家の言葉だった。

岡田克也としては、ボンボンらしく正直に自分の思想信条(=新自由主義)を言ったつもりだったのだろうが、実に場違いで、政権交代に盛り上がったムードに冷水を浴びせた一幕だった。この岡田克也の哲学は、菅直人の今回の「最大多数の最小不幸を目指す政治」と思想的に共通している。政府は何もしないと言っているのであり、国民が幸福になることに関心がないのだ。能力と責任がないというエクスキューズにも聞こえる。

新自由主義の政府にとって、大多数の国民は単に収奪の対象である。税金を奪い、社会保障を削ることが任務であり、国民の幸福や権利の拡大は使命ではない。個人的には、岡田克也や前原誠司がこうした姿勢を示すのは、十分頷けるし、オリジナルの思想の発現であると認めることができる。しかし、菅直人が平然とこう言ってのけるのを聞くと、変節と転向の腐臭に不愉快な気分にならざるを得ない。4年前の「国民の生活が第一」の政策への転換には、菅直人も深く関わっていたはずだと思うからである。

(以上、世界の真実の姿を求めてより抜粋)


菅直人の野望

2010-06-17 | weblog

新総理・菅直人 その野望

この男にとっては、ようやく手にした総理の座だったのだろう。

6月4日に樽床(たるとこ)伸二議員を破って民主党代表に選ばれた菅直人は、鳩山辞任の観測が流れ始めた6月1日の小鳩会談以降、その高揚感を隠しきれない様子だったという。

「国会の居眠り王」がついに

「小鳩退陣の2~3日前から菅さんは上機嫌でした。6月1日に閣僚が揃ってかりゆしを着たときも、記者たちは『チンピラみたいだ』と言い合っていましたが、本人だけは『どう、似合ってる?』と浮ついていた。ついに自分に順番が回ってきたと思っていたんでしょうね」(財務省担当記者)

1996年に厚生相として薬害エイズ問題に取り組んで以来、「総理大臣にしたい人物」では常に名前が挙がりながら、民主党設立を挟んで、足掛け15年越しの悲願。いつも以上に目尻が下がってしまうのも致し方ないところである。

その菅新総理に対して、周囲がもっとも心配しているのが、酒癖の悪さだ。

総理を意識し始めた最近でこそ、極力外出を控えていたようだが、菅氏の酒好きは有名で、同じグループの若手を誘って呑むのはもちろん、銀座のカウンターバーで一人で酔いつぶれていたという目撃談もある。

深酒がたたってか、国会で居眠りをすることもしばしば。今年3月にも、国会で自民党議員から「国会の居眠り王」「『官から民』ならぬ、『菅から眠』だ」と揶揄されている。

国会で居眠りするのはもちろん許されることではないが、有事の際に総理が二日酔いで、対応が遅れるなんてことがあれば、国家の危機に直結する。

また、菅氏は財務相時代から消費税増税論者だが、民主党が4年間は上げないと言って総選挙を戦った手前、「次の衆院選までは上げないが、議論は必要」という慎重な態度を示してきた。ところが、これも酒が入ると一変してしまう。

今年度予算が成立して半月余り経った4月16日。菅氏は予算成立の慰労を兼ね、財務省幹部と会合。その後、普段はあまり記者の夜回り取材を受けない菅氏が、珍しく番記者10人ほどを自宅に上げて、オフレコ懇談を行った。すでに酒が入っていた菅氏は上機嫌。

「消費税は15%がいい」と大演説をぶったのである。

財務省キャリアが言う。

「記者に教えてもらったのですが、菅さんは増税分の25兆円を介護や福祉、年金に充あてれば国民は納得すると話し、突然『俺は景気対策をダイナミックにやりたいんだ』と叫んだそうです。さらに、一度15%に上げて、景気が戻ったら消費税減税をやって8%くらいに下げると具体的に話した。

『鳩山総理は4年間は上げないと言っていますが』と聞いた記者には、『なにぃ、俺が政権を担当したら別の話だ』とタンカをきったとか。増税論者の菅さんが総理になるのは、ウチとしては大歓迎です」

菅氏もさすがに言い過ぎたと思ったのか、それ以降は自宅での記者懇談は全面禁止になった。

さらに、消費税増税に留まらず、菅氏は予算編成の仕組みそのものを変えるという野望を持っているという指摘もある。野党時代から菅氏を知るブレーンの一人が語る。

「菅さんは昨年6月にイギリスに行きましたが、そこでイギリスの大蔵省の研究をした。あちらでは、予算は総理と財政担当大臣が相談して枠を決める。それを各省に配分する方式です。

日本の省庁からの積み上げ方式とは正反対。配分した予算は、各省の大臣がそれぞれの権限で使えるが、どれくらいの成果を出すかという達成目標を内閣と約束する。この方式を取り入れることが、総理になったときの目標の一つなのです」

この目標が実現できれば画期的だが、もちろん一朝一夕にできるものではない。菅氏が自分の野望を叶えるには、1年ごとに代わるような政権ではなく、本格政権が必要となる。

本当は別の人がよかった

菅氏が本格政権を睨んだ「鳩山後」をはっきりと意識し始めたのは、鳩山政権が月末の普天間問題決着へ向けて、完全に機能不全に陥った5月頭あたりからだった。

この頃、財務省内で行われた会見では、普天間問題について、こう語っている。

「私自身は、この問題にほとんど内閣の中でも関わりをもっておりません。総理からも、この問題は、私までは煩わさないでやりたいと以前から言われておりました」(5月7日)

副総理に就いた直後から、「イラ菅」ならぬ「ダマ菅」と呼ばれるようになった菅氏だが、「次」が見えるとますます口が堅くなっていった。

その一方で、多忙を理由に欠席することも多かった、毎週金曜日の自分のグループの会合に続けて出席して、「ポスト鳩山」を意識するような発言をしている。

民主党関係者が語る。

「菅さんが連続して会合に出席したのは5月14日、21日です。鳩山さんは普天間問題で完全に窮地に追い込まれていた。

14日の会合では、菅さんは『問題は現体制のまま選挙に突入して大負けした後のこと。そのとき、次の首班をどう選ぶのか。最悪なのは小沢派と反小沢派に分裂して党が割れることだ』と語りました。

出席者は、菅さんが鳩山後の政局を予想することで、自分がポスト鳩山に向けて行動を起こす機会をうかがっていることをアピールしていると受け止めました」

普天間問題のような重大問題を前に、ナンバー2でありながら「我関せず」の態度を貫いた菅氏。ややこしい問題に首を突っ込むと、次期総理の自分に傷が付くと思ったのだろうが、そんな姑息な考えで、一国の総理が務まるのか。

実際、民主党内には消去法で菅氏しかいなかったという声も多い。民主党若手議員はこう語っている。

「即戦力ということで考えれば菅さんになるのだろうが、果たして菅さんで民主党が生まれ変わったという清新なイメージが出せるのか。国民人気から言うと前原さんもありえたが、彼だけは絶対にダメだ。自分が代表時代に、偽メール事件で党をボロボロにして小沢さんにバトンタッチしたくせに批判ばかり。岡田さんは普天間問題の戦犯だし、やっぱり仕方ない」

別の民主党議員も、時間が限られた中での代表選で、やむを得なかったと胸中を明かす。

「本当は40代くらいの若い人を思いきって選びたかった。それに、党員・サポーターに投票してもらう機会があれば納得度も高かったのでしょうが、それもできない状況では、副総理の菅さんをそのまま上げて、窮余の策だったとご理解いただくしかなかった」

したたかに小沢切り

今後、菅総理にはいくつものハードルが待ちかまえている。財務相を務めながらも、決して経済に明るくなかった菅氏は、今年2月、G7に出席、「日本の金融財政状態の危機的状況がわかった」と財務省幹部に漏らしたという。それ以降は朝が苦手にもかかわらず、朝8時前には財務省に登庁するようになった。

「自分が経済をよく知らないと思っているから、役人のレクチャーもよく聞く。だから、厚労省などと違って、官僚との折り合いは悪くない。心配は財務官僚に取り込まれないかということだが・・・」(民主党幹部)

「消費税の4年間据え置き」や「脱官僚」は民主党の金看板だが、鳩山氏のようになんでも政治主導でやろうとして迷走するくらいなら、きっちり説明したうえで必要に応じて見直せばいい。ただ、財務官僚は税収を増やし、自分たちの裁量権を拡大することが至上命題である。

総理が財務省の操り人形になれば、なんのための政権交代だったのかと有権者の怒りを買うことは間違いない。 もともと市民運動家・市川房枝氏に師事して政治家になった菅氏は、鳩山氏とはまったく異なるルートで総理に上り詰めた。思えば、「元総理の子や孫」ではない総理は小泉純一郎以来。

世襲政治家でない総理は、その前の森喜朗以来となる。

菅氏のお膝元である東京・武蔵野市選出の都議会議員・松下玲子氏は、野党時代の菅氏とのこんなエピソードを明かす。

「私が'05年に都議に当選して、都政報告会を開いたとき、参加者が二人しか集まらなかったんです。それを菅さんにお話ししたら、『僕にもそういう時期があったんだよ。二人来てくれただけでも、その人たちに感謝しなくては』と言っておられました。なんでも、国会議員になって国政報告会をやったら、一人しか集まらなかったんだそうです。そういう苦労を知っている菅さんに対して、地元ではずっと前から『菅総理待望論』がありました」

社市連という弱小野党からスタートし、途中、女性スキャンダルや年金未納問題など、それなりに泥にまみれてきた菅氏が、政界で生き延びてきた武器は何といっても、国会論戦などでの舌鋒鋭い攻めの姿勢だ。

だが、総理という立場は、国会では常に攻められる立場である。攻めには強いが、守りに弱い菅氏が、イラ菅の本性を出さずに、国会を乗り切れるのか。

なにより、最大のハードルは「脱小沢」だろう。今回の代表選にあたり、菅氏は前日の会見で、あえて「小沢」の名前を出し、「しばらく静かにしていただいたほうがいい」と突き放した。

「鳩山氏に抱き合い心中され、無役になった小沢氏は、参院選まで表立って動くこともできない。それをわかったうえで今後の小沢氏の動きを封じ、反小沢グループを味方につけて党内基盤を固める戦略でしょう。さすがに30年にわたって永田町で生きてきただけはある。あの会見を見て、長期政権があるかもしれないという気になった」(別の民主党関係者)

菅氏と小沢氏は、2003年の民由合併の際に、民主党代表だった菅氏が、党内の小沢アレルギーを抑えつけて手を結んで以来の関係だ。菅氏は小沢氏に恭順の意を示し、政権交代にも成功、ポスト鳩山最右翼に躍り出た。そして、勝負所と見るや小沢氏を切った。

かつて中曽根(康弘)内閣は、田中角栄の影響力の強さから「田中曽根内閣」と呼ばれた。だが、中曽根氏はしたたかで、5年に及ぶ長期政権を築いている。

菅総理も小沢氏の支配から脱し、長期政権を築くのか。

小沢氏も党内での影響力が落ちたと判断すれば、グループ150人余りを引きつれて党を割り、政界再編に動くだろう。たとえそうなったとしても、元の民主党に戻るだけ。党の創立者の一人として、菅氏が腹を括れるかどうかが、地に墜ちた党への信頼を取り戻し、本当の民主党政権を作る唯一の方法ではないか。

(以上、現代ビジネスより転載)


鳩山の裏切り

2010-06-16 | weblog

「ダブル辞任の仕掛け人はどちらか」

6月11日のEJで、政官財プラス記者クラブメディアの連合軍が小沢幹事長を中核とする鳩山政権を崩壊させるために組んだ3つの目標を示しましたが、再現しておきます。

1.小沢一郎幹事長を失脚させて鳩山内閣を崩壊させる

2.各省庁の官僚による抵抗で記者クラブ温存をはかる

3.2010年参院選で民主党を過半数割れに追い込む

この1と2については、既に達成されています。問題は3ですが、これについてはどうでしょうか。既に参院選は7月11日に投開票が行われることに決定しています。

つい2週間前までは、民主党の過半数割れはほぼ確実の情勢であったのです。しかし、小鳩政権が崩壊し、菅政権になってからは、民主党の支持率は急回復して、単独過半数も不可能ではなくなっています。これは連合軍側にとっては大きな計算違いになりつつあります。

実は連合軍が一番恐れたのは、小沢幹事長が権力を維持したまま民主党が参院で単独過半数を達成することだったのです。そのため、相当荒っぽい手段まで取って小沢幹事長潰しをやったのです。はっきりいうならば、世論の誘導です。これはメディアが一番やってはいけない禁じ手です。

もし、一人の現職国会議員を含む小沢氏の秘書3人の逮捕・起訴がなければ、鳩山政権の失政があったとしても、連合軍側が恐れた最悪の事態──小沢氏が権力を維持したまま民主党が参院選で単独過半数を達成──これは実現していたはずです。今回の民主党の支持率の急回復を見ると、小沢氏にからむ「政治とカネ」の問題が、いかに鳩山政権や民主党の支持率の足を引っ張っていたかが歴然としています。何しろ、何もしていない菅政権の支持率が鳩山政権時の3倍も回復しているからです。

さて、今後の政治情勢を判断する重要なポイントは、今回の鳩山─小沢のダブル辞任の本当の仕掛け人が、鳩山か小沢かのどちらであるかということです。

1.仕掛け人は「鳩山首相」である   ・・・・ 鳩山主導

2.仕掛け人は「小沢幹事長」である ・・・・ 小沢主導

興味本位の詮索ではなく、このどちらの立場に立つかによって今後の政治情勢は違ってくるのです。つまり、無役になった小沢氏の影響力をどう見るかの度合いが違ってくるからです。

小沢氏を批判する側──政官財プラス記者クラブメディアの連合軍は1の立場に立ち、「小沢の時代は終わった」と宣伝しています。これに対して、小沢主導説に立って報道している週刊誌メディアがあります。どちらが正しいのでしょうか。

6月7日のEJ第2828号では、私は鳩山主導説に立って記事を書きましたが、その後の調査によると、鳩山主導説は違っている可能性が高くなっています。

鳩山主導説を最初に口にしたのは、田原総一朗氏です。6月2日の小鳩辞任を受けて急遽設けられたテレビの特別番組で田原氏はこういったのです。

実は首相を訪ねてきた小沢幹事長、輿石参院幹事長に対して、最初に辞任を迫ったのは鳩山さんなのです。自分も辞めるから小沢さんも辞めて欲しいとね。──田原総一朗氏

これを私は聞いていたのです。さらに、「夕刊フジ」のコラム『風雲永田町』を担当している鈴木棟一氏がやはり鳩山主導説に立って、鳩山氏の立てた親指と小沢氏への辞任要求を結び付けて書いていたので、7日の時点では正しいと思ったのです。

鈴木棟一氏は9日発行のコラムでも次のように書いて、さらに鳩山主導説を展開しています。

6月1日の鳩山、小沢、輿石の3者会談。鳩山首相が言ったという。「私も責任を感じております。しかし、幹事長、あなたも辞めてください。この(支持率低下の)事態は普天間問題ではない。リーダーシップでもない。『政治とカネ』の問題ですよ」。これに輿石氏が強く反発したという。「とんでもない、いま小沢幹事長に辞められたら、参院選をどう戦うのだ」。鳩山氏が重ねて言った。「私は一緒に辞めるというなら辞めますが、小沢幹事長が辞めなけば辞めません」(一部略)「鳩山は同時辞任を提案したので、小沢と輿石が鳩山辞任のホコを収めるのではないかと期待してた節もある」。「夕刊フジ」6/9

しかし、最初に鳩山主導説の口火を切った田原総一朗氏はBSの政治番組で、微妙に表現を修正させ小沢主導説に舵を切ったように見えるのと、6月7日発売の『週刊ポスト』の上杉隆氏の記事「官邸崩壊再び──すべては小沢の『永田町爆弾』だ」は完全に小沢主導説に立っています。

鳩山氏は小沢氏に対して辞任を求めたと語り、報道も「鳩山が小沢を道連れにした」との見方が一般的だ。だが、今回の辞任劇は小沢氏が巧妙に仕組んだものだ。鳩山氏には小沢氏を辞めさせるような力はない。一方の小沢氏は、自分が辞める時は鳩山氏を抱きかかえて辞めると決めていた。つまり、逆である。──『週刊ポスト』6/18・25

さらに決定的なのは、10日発売の『週刊文春』6/17の冒頭記事「菅総理『小沢斬り』の全内幕」において、小沢主導説が展開されていることです。『週刊文春』は一貫して反小沢側の雑誌であり、それが小沢主導説に立っているのです。その内容は明日のEJで述べます。

関連情報

W辞任は織り込み済み──仕掛け人は小沢氏?

関係者によると1日の会談では参院選の厳しい情勢を踏まえ輿石氏が首相に辞任を促したという。その際、輿石氏は野党が参院に首相の問責決議案を提出した場合、社民党や民主党の一部議員が賛成し可決の可能性が高いことなどを説明。その背景には「小沢幹事長が水面下で社民党に対して働きかけて、同党が問責決議案や衆院での内閣不信任案に賛成する方針を表明することで鳩山首相に圧力をかける構図を作った。これを裏付けるかのように社民党の又市征治副党首がこの日の退陣表明を正確に“予言”していた」(民主党の内情に詳しい報道関係者)。小沢氏は先月30日に側近議員らに「鳩山降ろしに動いていい」と指示を出したとされる。

 

「予想できなかった鳩山の裏切り」

すべては小沢氏のシナリオ通りに動いたのです。ただ、ひとつの計算外のことを除いてです。

小沢氏のシナリオでは、6月4日に鳩山首相と小沢幹事長が辞任して、その日のうちに新首相で組閣し、翌日5日に認証式を終える──すなわち、挙党態勢で電撃的に新体制に移行するというシナリオです。しかし、5日は土曜日であり、天皇陛下の健康状態も含めて、スケジュール的に可能であるかまで調べているのです。5月28日のことです。

ここで大切なのは挙党態勢ということです。代表選をやると政治空白ができ、猟官運動がはじまって、誰が代表になるにしてもグループ間に亀裂が起きる──選挙前にそういうことを起こしたくないと小沢氏が考ええたのです。

5月31日に、鳩山首相は小沢幹事長と輿石参院幹事長に面会を求められたのです。このとき、小沢氏はシナリオを首相に打ち明け、首相にこう話しています。

鳩山さん、新体制になれば、起死回生になる。僕も退くから、鳩山さんも退いてくれないか。──『週刊文春』6/17より

しかし、いきなり退陣要求を突き付けられた鳩山首相は、煮え切らない態度を取り続けたのです。しかし、輿石幹事長から「参院議員の命を預かる代表ではないか!」と一喝されると鳩山首相は、「しばらく考えさせて欲しい。その方向で考えますから」といったので、小沢氏と輿石氏は引き揚げたのです。もちろん、小沢氏が鳩山首相にこのことは誰にも喋るなと念を押したことはいうまでもないことです。

そして次の6月1日、2度目の3者会談が行われ、鳩山首相は辞任を了承したのです。ここまではシナリオ通りだったのです。しかし、小沢氏の想定外の事態が起こったのです。それは、前夜の3者会談の内容をすべて菅氏に喋っていたのです。

「あとは菅さんがやってくれるか」と鳩山氏がいったところ、菅氏は「条件がある。非小沢でやりたい」と鳩山氏に提案したというのです。ここで、小沢シナリオは一気に崩れ、代表選の流れができてしまったわけです。

小沢氏は裏切られたのです。その怒りは相当のものであったといわれます。その証拠に小沢氏の関係者は、鳩山氏側にわざわざ次のように通告しているのです。

小沢が怒っていることは2つある。約束を違えて喋ったこと、菅への根回しは小沢がやるつもりだった。次に小沢外しを陰で画策していること。──『週刊文春』6/17より。

これは何を意味するのでしょうか。

これは完全に小沢氏に喧嘩を売っています。小沢氏としては菅首相を中心とする反小沢グループに加えて、鳩山氏も許せないでしょう。しかし、これは政治の世界というものなのでしょう。小沢氏は党内の権力抗争を避けようとしたのですが、結果としては民主党の首脳陣が小沢氏に喧嘩を売り、権力抗争になってしまう
ことは確実です。

6月4日の代表選の朝のことです。衆議院第一議員会館の会議室に一年生議員が続々と集まってきたのです。その数は約60人ほどです。菅支持グループが前日からFAXやメールで一年生議員に連絡を回したのです。菅氏を支持する総決起大会への誘いなのです。彼らは小沢チルドレンの切り崩しを画策したのです。

会議室に入ると、数人がマイクを手に自分の思いを喋り始めたのです。「今までは自由な政治活動ができなかった」とか、「暗い気持ちで過ごした」とか話し始め、それは小沢批判集会そのものになったのです。

6月7日の両院議員総会のあった日のことですが、奇妙な情報が党内を駆け巡ったのです。それは民主党本部の金庫を開けたら空っぽだったというウワサであり、間もなくそれは根も葉もないガセネタとわかったそうです。

しかし、この一件は、今回の執行部人事で、日頃小沢氏に批判的な発言を繰り返す小宮山洋子議員が財務委員長に就任したことに関係があります。小沢氏のカネの使い方を調査し、公表するぞとの牽制であるとの見方もあります。次元の低い話です。

しかし、民主党の前途は多難なのです。せっかく小沢氏が選挙前に党内にそういう波風を起こさないように自らの身を捨てて選挙に勝利するよう考えたプランを踏みにじり、逆に党内を反小沢で結束させるなど最悪の選択といえます。一体誰のお陰で万年野党の民主党が政権がとれたと思っているのでしょうか。そこに小沢氏に対する少しは感謝の念はないのでしょうか。

ところで、支持率が回復した民主党ですが、果たして参院選は勝てるのでしょうか。目標は3つあるのです。

1.単独過半数 ・・・・・・ 60議席

2.改選数維持 ・・・・・・ 54議席

3.改選第一党 ・・・ 自民党を上回る

現時点の分析ではっきりしていることは、「単独過半数」は難しいということです。社民党が連立離脱をしなければ、現在の支持率があれば単独過半数も可能だったのですが、今となってはよほどのことがない限り、困難です。

菅政権は「改選数維持」を目標としていますが、選挙戦が最もうまくいってこのレベルです。しかし、これもギリギリの目標であり、ハードルは高いといえます。

結局達成できそうなのは、3の「改選第一党」です。自民党が獲得できそうな議席は最大で46議席であり、これ以上は伸びないと考えられます。民主党は少なくともこれを上回ることは可能であるといえます。

関連情報

・民主党が改選議席数を下回わるとどうなるか

与党が改選議席数を下回り、参院で過半数割れに陥ると、衆参ねじれ国会となり、民主党はかつての自民党と同様に国会運営に行き詰まる。この場合、公明党と連携を探る必要が出てくるが、「民主党幹部で公明党とパイプがあるのは小沢氏ぐらいです。小沢氏は連立組み替えの窓口役となることで、復権のきっかけをつかむのではないか」(伊藤氏敦夫氏)

(以上、Electronic Journalより転載)


闇将軍の失脚

2010-06-15 | weblog

闇将軍の小沢一郎氏が失脚し、日本はようやく、実行力のある(Kan-do)新首相を迎えることができた。

新たに首相の座に就いた菅直人氏の命運についてよりよく理解するには、政治体制の変革に力を注いだ前首相、鳩山由紀夫氏の在任中の最大の貢献が何だったか少し考えてみるといい。

在任9カ月足らずの間、精彩を欠き、混迷を極めたとはいえ、6月2日の首相辞任という明らかな貢献は、鳩山氏の最大の貢献ではない。

自身の辞任よりもはるかに大きな意味を持つのは、与党民主党の幹事長だった小沢一郎氏も同時に退任させた点だ。小沢氏は現代において日本の裏の政治手法に最も精通した闇将軍である。その小沢氏を退任させただけでも、鳩山氏の名前は最大級の称賛に値する。

小沢氏退任の経緯は今のところはっきりしない。しかし、鳩山氏が必然的な辞任を迎えるまでの数日間、力ある幹事長が首相に辞任を迫れば迫るほど、優柔不断な夢想家の首相は、その内に秘めた頑固な一面を示すようになっていったようだ。鳩山氏は、自分が辞任するのであれば、小沢氏も辞めなければならないと強硬に主張した。

2人とも政治資金に関する不正疑惑が解消されておらず、国民は首相だけでなく小沢氏に対しても反感を抱き、それが政権の支持率を救いようのない低さに押し下げているというのが、鳩山氏の見方だった。

小沢氏の政治生命が終わるとしたら、ことは重大だ。小沢氏は、日本の政治に道筋をつけたという意味では、2001年から2006年まで首相を務め、そのカリスマ性と大胆さで抜きんでていた小泉純一郎氏でさえ及ばないほどの大きな存在だからだ。

1993年に自民党を飛び出した時、小沢氏は恐らく誰よりも早く、冷戦時代から続く自民党支配がその使命を終えたことを見抜いていた。

事実上の一党支配でありながら弱い政府、海外での軍事行動を制限する憲法、戦後に築かれた米国支配に対する文化的な従属――。小沢氏の言葉を借りれば、こうした要素すべてが、日本が「普通の」国になることを阻んできた。ここで言う「普通」とは、候補者の人柄や利益誘導で争う政治ではなく、2大政党が政策で政権を争う仕組みを作ることを意味するはずだった。

2009年8月の総選挙に自民党が敗れたことで、小沢氏が正しかったことがはっきり証明されたように見えた。しかしその時には既に、小沢氏の改革志向は、あまり好ましくない同氏の別の側面に圧倒されてしまっていた。

例えば小沢氏は、権力の行使に際して策略を弄することを好み、これが民主党の表向きの執行体制にダメージを与えた。また、選挙対策および政権運営の戦略として、地方を中心に自民党式の便宜供与や利益誘導を用いた。総選挙では、この戦略が明らかに功を奏した。

しかし、有権者が自民党を政権の座から追いやったのは、民主党が自民党をまねることを期待してのことではない。小沢氏が民主党を牛耳れば牛耳るほど、世論は同氏の失脚を望むようになった。

そもそも小沢氏を民主党に呼び寄せた当人である菅氏は、小沢氏が重荷になっていることに気づくのが遅かった。しかし、ひとたび民意を感じ取ると、菅氏は持ち前の決断力を発揮した。

祖父も首相を務めた鳩山氏は、もともと政治的に与えられる権利に関して時代遅れの感覚を持ち合わせていた。一方、菅氏は厳しい都会の選挙戦を戦い、現在の地位まで上り詰めた人物で、地方で補助金をばらまいて地位を手に入れた歴代の首相の多くとはわけが違う。

小沢氏に何の借りもない菅氏は、既に小沢氏に、政治の場から遠ざかるよう警告している。

8日に発表された新内閣で、菅氏は前内閣の顔触れにいくつか重要な変更を加え、旧来とは違う、反小沢色を鮮明にした体制をつくり上げた。政策に関して首相の窓口を務める新内閣官房長官の仙谷由人氏は、財政赤字とデフレの両方に真剣に取り組むはずだ。財務大臣の野田佳彦氏も選挙公約に謳われた各政策の絞り込みに意欲を燃やしている。

さらに重要なことに、菅氏は小沢氏が嫌う枝野幸男氏を党の幹事長に起用し、党組織の支配権を奪い返した。

しかし、何より重要なのは、首相交代直後の世論調査で政権支持率が大幅に回復していることだ。菅氏のおかげで、惨敗が予想された7月の参議院選挙で、民主党はそれほど悪くない結果を残せるかもしれない。支持率回復により、小沢氏を支持する議員も減るだろう。

政治評論家によると、親小沢派のグループは、小沢氏の周到な支援のおかげで議員の座を得た「小沢チルドレン」と呼ばれる142人の新人議員を含め、一大勢力となるはずだった。しかし、小沢氏がチルドレンへの影響力を振るえるのは、権力というムチを握っている限りにおいてだった。今、党内で出世の道を提供しているのは菅氏だ。

2006年に小泉氏が退任して以来初めて、菅氏は、実権を掌握しているという強い印象を与える首相となった。しかし、それも長続きしないかもしれない。現在68歳の小沢氏はこれまでも数え切れないほどの逆境に直面しながら、いつもそれを跳ね返してきた。

結局のところ、ウェーブのかかった髪型の鳩山氏は、小沢氏の神殿を倒壊させたサムソンではなかったのかもしれない。

元闇将軍は菅氏への挑戦の言葉を口にしている。菅氏の民主党党首の地位(ひいては日本の首相の座)は、秋に行われる党代表選で試されることになるが、「我々の決戦は9月だ」と、傷心の小沢氏は熱心な支持者たちに酒を注ぎながら語ったと伝えられている。

小沢氏にはもう1つ、破壊の手段がある。腹心の議員を連れて離党するという奥の手である。そうなれば、衆参両院で過半数を維持するという民主党の望みは危うくなる。小沢氏は以前にも同様の手段に出ており、15年ほど前、現政権を除くと唯一となる非自民党政権が終わるきっかけを作っている。

リスクは大きいが、見返りも十分

小沢氏が離党すれば、新たな混乱を生むが、政界再編が加速し、プラスに作用するかもしれない。2009年8月の政権交代を機に始まった再編は、いまだ終わりが見えない状況だ。

小沢氏が党を離れれば、民主党は、よりリベラルで市場に理解を示す新党とも手を組みやすくなるだろう。人気が高まっているみんなの党などは、小沢氏の影がちらつく政党と組むのを嫌がっている。

もし小沢氏が、自らが長く支配してきた民主党を捨て、真っ向から対立するつもりなのであれば、それはもう、是非そうしてもらいたい。

(以上、JBpress より転載)


政治のプロ

2010-06-14 | weblog

政治を知らない「政治のプロ」たち

シルクロードから帰国して見たこの国の新聞、テレビ、雑誌の政治解説は、私の見方とことごとく異なる。私がこの政局を「民主党が参議院選挙に勝つための仕掛けで、将来の政界再編を睨んだ小沢シナリオだ」と見ているのに対し、新聞やテレビに登場する「政治のプロ」たちは「民主党内で反小沢派が権力を握り、小沢氏の政治力が無力化された」と見ている。

私の見方が当たっているか、「政治のプロ」たちの見方が当たっているかはいずれ分かるが、困るのは「みんなで渡れば怖くない」で書いたように、日本の新聞やテレビは間違いを犯しても「みんなが間違えたのだから仕方がない」と何の反省もせずにそのままにする事である。だから何度も誤報を繰り返して国民を惑わす。私は間違えたら反省するし、なぜ間違えたかを分析して次の判断に役立てる。

ところでここで問題にしたいのは政局の見方の当否ではない。「政治のプロ」を自称する人たちの解説の中に、まるで政治を知らない「素人」の議論が多々ある事である。それだけは訂正しておかないと国民に誤った認識を与える。

「政治のプロ」たちは、「権力の中枢を反小沢派が占めた事で小沢氏は無力化された」と見ている。官房長官も幹事長も反小沢派の急先鋒で、財務委員長も反小沢派だから、小沢氏は金も動かせないと解説している。「建前」はそうかもしれない。素人ならそう思う。しかし多少でも政治を知る者は、それが「建前」に過ぎない事は分かっている。総理、官房長官、幹事長のポストに権力がある訳ではない。本人の資質と政治力がなければただの「操り人形」になる。

アメリカのレーガン大統領はアメリカ国民から「父親のような存在」として敬愛されたが、彼が真の権力者であったと思う「プロ」はいない。見事に大統領を演じてみせただけで、シナリオを書いたのは別の人間である。中曽根康弘氏も総理在任中は権力者であったとは言い難い。ひたすら田中角栄氏の考えを忖度し、それに逆らわぬ範囲でしか政治を動かせなかった。そして田中氏が病に倒れた後も金丸幹事長の意向に左右された。中曽根氏が政治的に力を持つのは総理を辞めてからである。

田中角栄氏も実は総理在任中より辞めてから、しかもロッキード事件で刑事被告人となってからの方が強い権力を握った。と言うと素人はすぐ「金の力で」と下衆な判断をするが、金の力だけで権力は握れない。田中氏の力の源泉は人を束ねる力、すなわち「数の力」である。それも「参議院議員の数の力」であった。

私は再三に渡って日本政治の特殊性を論じてきた。その時にも説明したが、日本政治の特性の第一は参議院にある。日本国憲法では衆議院から総理大臣が選ばれ、衆議院が参議院より優位にあると思われるが、実は参議院の方が力は強い。参議院で法案が否決されると再議決には衆議院の三分の二の賛成を要する。与党が三分の二の議席を持つ事は滅多にない。従って法案の帰趨を握るのは参議院である。参議院が協力しなければ法案は1本たりとも成立しない。総理はすぐクビになる。参議院には総理、官房長官、幹事長のクビを飛ばす力がある。

そのため昔から参議院の実力者は陰で「天皇」と呼ばれた。総理より偉いという意味が込められている。戦後の総理在任最長期間を誇る佐藤栄作氏は「参議院を制する者が日本政治を制する」と言った。角栄氏は参議院の多数を束ねた。つまり参議院選挙は衆議院選挙よりも重要なのだ。民主党は去年衆議院で政権交代を果たしたが参議院で単独過半数を得ていない。実は本当の意味での政権交代はまだ終わっていないのである。だから小沢氏は何よりも参議院選挙に力を入れている。

今回の政変で総理、官房長官、幹事長は代わったが、参議院執行部は誰一人として代わっていない。つまり民主党の権力構造は底流で変わっていない。「プロ」ならそう見る。人事権は総理にあるから菅総理は参議院執行部を自分に都合良く代える事は出来た。しかし参議院選挙直前に参議院の人事をいじるのは常識的でない。このシナリオはそこを読んでいる。小沢氏が敷いた参議院選挙のレールも取り外して敷き直す余裕はない。

もう一つ総理、官房長官、幹事長の「寝首」をかく事が出来る重要ポストがある。国対委員長と議院運営委員長で、国会運営の全てを取り仕切る。菅総理は総裁選挙で対立候補となった樽床伸二氏を国対委員長に就けた。思わず「えっ!」と思った。国対委員長と議院運営委員長には腹心を配するのが当然で、敵側の人間を配するのは異例だからである。議院運営委員長はそのまま、国対委員長に小沢グループの支援を受けた樽床氏が就任した事は、これも民主党が変わっていない事を示している。

日本政治の特性の第二は、こちらの方が重要なのだが、権力が国民に与えられていない事である。権力は霞ヶ関とアメリカにあって国民の代表である政治家にない。つまり政権与党に権力はなかった。かつての自民党は霞ヶ関やアメリカと戦う時には野党の社会党と水面下で手を結んで抵抗した。しかしここ20年は自民党が戦う事をやめて霞ヶ関やアメリカの言いなりになった。それが国民の信頼を失わせ、去年の政権交代となった。国民が初めて権力を発揮した。

国民が選んだ政権を潰しにかかってきたのは霞ヶ関とアメリカである。霞ヶ関を代表するのは検察権力で鳩山・小沢両氏の「政治とカネ」を追及し、アメリカは普天間問題で鳩山政権を窮地に陥れた。しかし国民が選んだ政権を潰すか潰さないかは国民が決めるのが民主主義である。検察や外国に潰されたのでは「国民主権」が泣く。この政権の是非は国民に判断させるべきである。そこで民主党は参議院選挙で勝つための条件整備をした。

野党自民党が今度の選挙で民主党を攻撃する材料は三点あった。「政治とカネ」と普天間と民主党の経済政策である。「政治とカネ」では小沢・鳩山両氏が、普天間では鳩山氏がターゲットになり、経済政策では「バラマキで財政が破綻する」と批判される筈だった。自民党はそのために消費税導入を選挙マニフェストに掲げる予定でいた。

それが今回の政変で鳩山・小沢の両氏が辞任し、「政治とカネ」と普天間が攻撃材料になりにくくなった。次に菅政権は「財政健全化」に政策の力点を置いた。さらに将来の消費税導入に積極的な玄蕃氏が政調会長に就いた。これで三点への防御態勢を固めた。自民党の谷垣総裁は民主党の路線転換を「クリンチ作戦」と批判したが、その通りである。しかしそう言って批判しても始まらない。これから選挙までの短い間に違う攻撃ポイントを見つけなければならない。困っているのは自民党である。

選挙の公示まであと1週間余りしかない。もはや選挙戦は事実上の後半戦である。政治を知らない「政治のプロ」たちが解説をすればするほど、また素人にも分かるように「建前」に終始した話をすればするほど、民主党は「変わった」という話になり、参議院選挙は民主党に有利になる。2人擁立が批判されていた2人区で小沢・反小沢がしのぎを削れば2人当選する可能性もある。そして選挙後に「多くの参議院議員を束ねた者が日本政治を制する」のである。

(以上、The Journal 田中良紹の国会探検より転載)


闇の声、政界予測

2010-06-13 | weblog

以下、2ちゃんねる闇の声の政界予測を転載。大方予測は外れるが分析は面白い。

*

消える前に予言して消える(選挙の開票速報が終わるまで。劇的に状況が変化すれば その訂正の為にだけ書き込む)事にした。 せいぜいけなすなり何なりして欲い。

 

**参院選はどうなるか**

結果的に民主党が勝つのは当たり前の情勢であり、しかも比例区で相当票を伸ばすだろう。

特に都市部での好感度はかなりのモノで、殆ど根拠のない持て囃され振りだ。

期待の星とか、真打ち登場とか言われて、その勢いはそのまま選挙に持ち込まれる。

都市部で、民主か自民かと言う選択肢は有り得ない。

民主かみんなか・・・と言う選択肢であり、自民では石破や大島が口を開けばますます数字が悪くなっていく。

会期延長は避けてくれと参院民主は考えているらしいが、思い切って延長して自民党に言わせるだけ言わせた方が結果は民主大勝利となる。

衆院でも参院でも安定多数を占める結果となるが、しかしこの安定は国民にとっては極めて不幸な安定となり、かつてのヒース労働党政権の様な極めて不活性な状態に陥っていくだろう。

 

**菅内閣はどうなるか**

菅直人は参院選後に小規模な内閣改造を考えている。

その対象者は中井・北沢・川端・直嶋だ・・・

そして、全く実力がないにも関わらず前原を重用しようとしている。

荒井と蓮舫は菅直人の足を引っ張るだろう。

しかし、玄葉と・・・恐らく民主党に合流するだろう辻元が新たな顔になり 結果菅直人内閣は半年くらいは保つ。

半年と区切ったのは、所詮経済には素人であり、しかも沖縄問題で岡田と菅直人との対立が起き、経済と外交で行き詰まりを見せると思うからだ。

菅直人の欠点は舌禍事件を起こす危険性がある事であり、同時に経済には素人だが それを認めず唯我独尊である事が挙げられる。

株価は下落し、円は円高に振れる・・・何よりも行き過ぎた福祉重視は、若年層の不満を招く事になり、徐々に民主党の支持率は下がり始めるだろう。

福祉は最終消費に近い位置づけであり、そこから何かを産む訳ではない。

老人が死んでしまえば・・・それも何十年も生きる訳ではない・・・せいぜい五年程度の先行き短い人にお金を掛けようとするだろうか?

福祉にお金を掛ければ雇用は増えるだろう・・・しかし、付加価値のある経済効果ではない。

新技術開発にお金を掛けて、もしかすると十倍にも二十倍にもなって帰ってくる投資とは違う。

先行きの見えた経済社会に、お金を投下する奇特な人はいるだろうか??

自分はいないと思う・・・菅直人はそれは皆さんがきっと投資してくれますよと、それを先鞭を付ける意味で増税してパイを大きくして投資を呼び込もうとするんだろうが上にも書いたが死に往く人間には無駄なお金を使わない様にするだろう・・・

だから行き過ぎた福祉重視は危険極まりない。

 

**小沢はどうなるか**

小沢にとって北朝鮮の魚雷はまさに運命の一弾だったのかも知れない。

あれで風向きががらっと変わってしまった。

外国人参政権のことだ・・・

今回の選挙で外国人参政権の事は触れずに済む。

これは小沢の思う壺で・・・民主党が安定勢力になり、陰から党中央を使って菅直人をコントロールして一気に外国人参政権を可決成立に持っていくだろう。

中途半端な状態で外国人参政権に触れるのではなく、国民全体がその問題を 民主党への追い風の中で忘れている間に選挙を終わらせられる・・・理想的な推移だ。

小沢は菅直人が追い詰められるまで沈黙を保つだろう。

それは年末か・・・年明け二月くらいまでだと見ている。



**自民党はどうなるか**

恐らく、参院選の敗北を受けて・・・と言うか、選挙期間中に事実上解党状態になると思われる。

安倍晋三をトップとする右派と少数グループに分裂する各派閥の離合集散でどんどん勢力を縮小し 同時にお金の問題もあって清和会が自由民主党を名乗る・・・せいぜい40名程度の政党になると思われる。

各派閥の有力議員達はこぞって引退に追い込まれ、その借金返済で民事訴訟を起こされる羽目になるだろう。

コレは極めて不幸なことだ。

結果的に自民党を潰したのは安倍晋三だ。

 

**沖縄はどうなるか**

菅直人が年末にピンチを迎えるのは、一つには外交で一つには経済だろう。

それまでには強圧的な官僚統制と国会答弁に関する法案を決め、外国人参政権も通してしまうから国民の反発も限られた範囲になる。

官製メディアの傾向が強くなり、事件性がないとメディアは取り上げなくなる。

その一つが沖縄だが、政権の延命を図る意味で、普天間問題を一旦白紙にして左派的な傾向を徐々に出して来ると思われる。

岡田外相はその時点で更迭し、小沢が前面に出てくる形で社民党の連立復帰が為されるだろう。

アメリカとは本格的に距離を置き、鳩山政権の延長状態的な外交が展開される。

沖縄の基地問題はその中で、日米関係の見直しと言う手土産付きで段階的に縮小され 国民はそれを支持してしまうだろう・・・その時点で再び民主党の支持率は上がる。

 

**メディアはどうなるか**

蓮舫の入閣は民主党が直接メディアをコントロールする結果となる。

今までも間接的には行ってきたが、これからは遠慮会釈無く自らに不都合な情報は刑事罰まで 使ってでも潰す格好になって来る。

蓮舫は台湾の血を引くとは言えど、元々南京系だと聞いた。

だから北京に行った時に南京虐殺の情報流布で協力するなら幾らでも便宜を図ると共産党筋から言われ しかも台湾のパン(組織)にも顔が利く。

表にも裏にも顔が利くことで、組織もすり寄っている。

中国と台湾のエージェントとして、Xの代わりをする様になってくると思われる。

Xが台湾で雑誌の海賊版を全て束ねている事は有名であるが、それを取って代われる可能性が出て来た。

小沢がなぜ蓮舫を仕分け人にしてやったか・・・それは勲章を付けて右系の組織に代替わりを宣して利権の異動を図ろうとしたからだ。

そう言う人間が閣僚として原口とタッグを組むことは恐怖政治をメディア界で展開する事の証でありすり寄る者以外は全て排除の形さえ見えている。

今多くの映画が金詰まりでストップしているし、テレビの制作会社には金が支払われていない・・・ 銀行は制作会社には一切金を出さず、納品出来ないまま夜逃げする関係者も多い。

まして芸プロは組織依存の傾向が強くなり、組織に上納金を積み増しするか或いは民主党に全面協力してイエスマンばかりをテレビに出すか・・・ その選択を迫られる。

児ポ法は拡大解釈されて出版社から表現の自由を奪うだろう。

ここで問題になるのは、社会にこれから出る学生連中はゆとり教育世代で明らかに勉強をしてない連中が多く、需要と供給の関係で言えばますます コンテンツは低俗な悪質な物が多くなる。

その分政府や民主党にとっては自分達の主張だけを通しやすくなり、官製メディア以外は バカ番組や記事のオンパレードになる。

福祉や環境を手懸けるタレントは重宝し・・・だから、組織と繋がっているFがNHKの番組で威張り腐っていられる。 それが象徴的な出来事だと思う。

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孫子の兵法

2010-06-12 | weblog

「動かざること山の如く、動くこと雷霆の如し」 ── 孫子の兵法

鳩山総理の辞任を後世の政党・政治家は反面教師にしたほうがいい。鳩山辞任の本源的原因・理由は、日本の政治家に共通する、利権獲得など、自分の利害に絡む低次元なものには知恵を働かせることはあっても、国益に関わる大きな目的を達成するための論理・戦略・戦術が欠如していたことである。(鳩山には利権など低次元の問題はない)。

政治を動かすのは「情」、言葉を換えれば「天をも焦がす大情熱」である。鳩山には「国外、県外」という思いはあった。しかし、「大情熱」はなかった。「大情熱」を支える強靭な論理も、戦略、戦術もなかった。だから、「綸言汗のごとし」を理解できず、発言が二転三転し、沖縄県民の不信を買った。国民、なかんずく沖縄県民は「国外、県外」が尋常ではない難題であることは、百も承知だった。それだけに、「戦略、戦術もないこと」に、国民は失望した。

昨年2月17日のクリントン米国務長官との会談で、小沢一郎代表(当時)は日米同盟の重要性を十分認識した上で、「一方が従属する関係ではなく、互いに主張し合い、議論して良い結果を得て初めて成り立つ。まず両国の間で世界戦略をきちんと話し合った上で、個別問題に取り組むべきだ。これまでそうしたことはなされてこなかった」と、自民党との根本的な違いを述べた。また、数日後、記者会見で「今の時代に米国が前線に部隊を駐留させるのは意味のないことではないか。極東地域における米軍のプレゼンスは(神奈川県横須賀基地を拠点とする)第七艦隊だけで十分ではないか」と発言した。これは、「日米同盟」の名のもとに、カレル・V・ウォルフレンに「例を見ない"宗主国と属国"の関係」と厳しく指摘された日米関係を「真の対等関係」に革命的に見直すものであり、「第七艦隊」発言は、「普天間移設・沖縄問題」解決のための、基本的な提言であった。このため、オバマ政権は小沢を「扱いにくいパートナー」と警戒したが、アメリカでは小沢評価が急上昇した。日本では、河村官房長官(当時)が「政権交代を目指す政党がこんなことで良いのか」と、外交・防衛問題音痴丸出しの的外れなコメントをしただけで、論議を深める動きは、ほとんどなかった。「普天間移設」を抱えていながら、鳩山も、また、総理を支えるべき副総理の菅直人、仙石由人国家戦略担当相も小沢発言の重大性をほとんど理解していなかった。鳩山は、「普天間」について、小沢に一言の相談もしなかった。岡田外相、北沢防衛相、平野官房長官、前原沖縄担当相にいたっては、当初から、「辺野古」論者だった。谷垣自民党総裁にとっては「小沢理論」は想像も及ばない「論外」だろう。「安保五十年」はアメリカ従属を「空気」のように当たり前に受け入れる政治家や官僚を生みだした。鳩山辞任は当然の帰結であるが、これを期に、「国を守る」ことや「日米同盟のあり方」について、真剣な議論が巻き起こることを期待したい。菅総理はその力量と見識が問われるだろう。

私は鳩山総理の辞任の弁を七十三歳の老嬢が営む理髪店で聞いた。彼女は髭を剃りながら「なぜ、鳩山さんは日本のすること、アメリカのすることを話し合ってから沖縄問題を解決しようとしなかったのでしょうか。順番を間違ったみたいです」と話しかけてきた。

鳩山が「『私も辞めるから、幹事長も辞めてもらいたい』と言って『わかった』と了解していただいた」と言ったとき、私は、これは違う、小沢が「普天間の責任を取って私も辞めるから、総理も辞めてもらいたい」と言ったのではないかと思った。鳩山は、小沢を「政治とカネ」で悪人に仕立て上げ、自分を美化しようとしているのではないか、と直感した。老嬢も「新聞、テレビを見ていると、鳩山さんは続投したかったのではないでしょうか」と、怪訝そうだった。「世論調査絶対思想」に毒されない無名の庶民の感性は鋭い。日本人も捨てたものではない、と感じた。

民主党を救った男

鳩山総理誕生の原点は、民主党と自由党の合併である。2002年暮れ、鳩山民主党代表は経団連に年末の挨拶に行ったとき、財界首脳から「総理になりたかったら、小沢さんに弟子入りしなさい」とアドバイスされた。その後、政界の御意見番、松野頼三氏からも同じ趣旨のアドバイスを受けた。鳩山は、父・威一郎の大蔵省(現財務省)主計局長時代の部下・藤井裕久自由党幹事長に、民・由合併の仲介の労を頼んだ。当初、鳩山の真意を測りかねていた小沢も鳩山の熱意にほだされ、合併に踏み切った。しかし、それがマスコミを通して知られ、党内に「小沢怖し」の大合唱が起こって、鳩山が代表を辞任し、菅直人が、小沢自由党との合併を否定して代表になった。しかし、したたかな現実主義者・菅は、「小沢の力なくして、政権奪取は不可能」という現実を知り、あらためて、小沢との合併を模索し、03年夏に合併した。

民・由合併の際、両党の理念・基本政策を調整した自由党側の代表・藤井裕久・中塚一宏(現衆議院議員)両氏から私に「民主党側の代表、枝野さんは『自由党の理念・基本政策には全く異論はなく、完璧です。民主党の理念・政策として採り入れさせていただきます』と連絡があった」との報告があった。(私は、自由党の基本政策「日本再生への道」「日本再構築への道」を作成した責任者であった)。小沢は「改革実現のため」、党運営に全く影響を及ぼさない「一兵卒」として、「喜んで働く」ことを表明した。これがその後の民主党を救うことになる。

民主党は、「年金未納問題」で辞任した菅直人から代わった岡田克也代表の下で、小泉純一郎総理の策謀にのせられて政局を読み誤り、郵政選挙の「大義」を与えて、惨敗した。岡田の後継の前原誠司も、野田佳彦国対委員長(当時、現財務相)と共同して指揮した「偽メール事件」で、「無能ぶり」をさらけ出し、解党の危機に直面した。それを救ったのは、小沢一郎だった。

小沢は、衆議院千葉7区補選で、圧倒的優勢といわれていた自民党候補を打ち倒して民主党を上昇気流に乗せ、参院選、衆院選を大勝利に導いた。その間、おしゃべり好きの、しかも、誰も最終責任を取る気のない「座談会政党」(これが「民主党らしさ」の本質だ)を、本気になって政権を取りに行く、ノーマル(正常)な政党に体質改善したのも小沢であった。

「普天間移設」について、「世論」の批判は頂点に達し、改選期の参院議員は震え上がった。菅副総理、総理の御意見番を自認する仙谷国家戦略相をはじめ、全閣僚が鳩山総理の続投を支持し、本人もその気でいて、参院選惨敗が濃厚になった。「誰も鳩山の首に鈴をつけられない」と絶望したときに、動いたのは小沢だった。断崖絶壁から飛び込み、民主党を救い、死の淵でおののいている改選組を引っ張り上げ、鳩山に有終の美を飾らせたのは小沢である。東京新聞は6月2日の朝刊一面で「5月31日、小沢幹事長が総理に『いっしょに辞めよう』といったが、鳩山は首を横にふった」と報じた。読売はもっと露骨で、3日の一面に「小沢氏が引導電話『政権持たぬ』」という大きな見出しで、「鳩山、小沢、興石との2度目の三者会談から3時間余り過ぎていた1日午後10時ごろ、小沢が鳩山に電話し『参院が止まれば、法案が1本も通らなくなる。政権運営なんて、出来ないんだよ』。小沢は、鳩山が招いた社民党の連立政権離脱を、丁寧に説明した。小沢からの事実上の最後通牒だった」と書いた。

マスコミは自分たちではじきだした「世論」の数字を武器に、露骨に小沢の辞任を求めながら、他方、昨年の二の舞を恐れて「柳に下に二匹目のどじょうはいない」と「世論」をけしかけた。小沢は全ての状況を把握していた。小沢は「辞任カード」を切る機会を狙っていたのかもしれない。「二匹目のどじょう」はいたのだ。小沢は「悪役」になることを決意し、それに徹した。支持率は戻った。

平成の日本の政治は、常に、小沢を軸にして動いてきた。小沢は不思議な男である。どんなに逆境に立たされても、「改革の階段」を、一歩一歩、着実に上って来たのだ。不遇だった自由党時代、わずか47人の仲間だけで、自公勢力に真正面から向き合い、「衆議院の定数削減」「副大臣、政務官制度」、「官僚の国会答弁の禁止」「党首討論」を実現した。「わが世の春を楽しんでいた官僚」は、「霞が関城」にひたひたと忍び寄る小沢軍団の足音に震え上がり、旧体制下で甘い汁を吸っていた評論家や一部マスコミなど守旧派は、ギャアギャアと騒ぎ立てた。今回の政変で彼らは「これで、小沢の息の根を止められる」と、一息ついていることだろう!

参院選は小沢にとっても、「政治主導」を願う人たちにとっても正念場である。鳩山、小沢を踏み台にして総理の座を射止めた菅は、「小沢排除」を画策するだろう。それは「霞が関」にとっては、願ったり、叶ったりの展開だ。菅は「現役必勝」を大義名分に、小沢が擁立した複数区の新人の落選を目論むかもしれない。しかし、選挙という修羅場を経験したことのない枝野幹事長と選挙の事務屋でしかない安住選対委員長にそんな芸当ができるとは思えないし、小手先の小細工は、一歩間違えると、情勢を激変させ、惨敗する危険もともなう。いずれにせよ、党内の常識では「よほどのぼんくらが指揮を執らないかぎり、小沢が敷いた路線を走れば、そこそこの議席は獲れる」はずなのである。小沢軍団は新人の当選に全力を傾注すべきだ。

「世論ファシズム」の危険

新執行部は、鳩山が両院議員総会で要請した「クリーンな民主党」を、「小沢排除」のキーワードにするつもりなのだろうが、多少でも歴史を学んでいれば、昭和初年のように、「世論ファシズム・官僚ファシズム」が形成され、日本を、国民生活に責任を感じない「牢固とした官僚主導国家」にする危険を感じただろう。力のある、優秀な政治家は、抜群の情報収集能力を持っている。そのために、豊かな政治資金で数多くのブレーン、スタッフを雇っている。だから、官僚にごまかされることはない。一方、議員の歳費、政党助成金(注:これは、政党の調査、研究活動、政党職員の給与などに使われ、議員に配分されるのは、党によって異なるが、小沢自由党では月額50万円で、地元事務所の維持がやっとだった)と、わずかばかりの政治献金しかない「清廉潔白」な議員は、官僚が提供してくれる無料の情報に頼らざるを得ず、知らず知らずのうちに、官僚の意のままに動く政治家に成り下がるのだ。作家の佐藤優によれば「高給国家公務員」である。「霞が関」の世界では、官僚の言うことを理解し、行動してくれる「清廉潔白」な政治家が「良い政治家」で、小沢のように、情報収集能力が抜群で、官僚を使いこなそうとする政治家は「傲慢不遜な悪い政治家」なのである。

ところで、玄葉光一郎を政調会長に任命し、公務員制度改革・少子化担当相として入閣させた菅の狙いは何か。鳩山内閣の時は、内閣・党を一体化し、政策を内閣に一元化するために、小沢を幹事長のまま、副総理、無任所大臣として入閣させるはずだった。ところが、小沢が大きな力を持つことを恐れた鳩山、菅、仙石らは、小沢を政策決定に関与させず、党務に専念させ、菅を副総理兼国家戦略担当のまま、政調会長に任命しようとした。しかし、「(無任所でない大臣は)政調会長を兼務出来るほど暇なのか」と言われて断念した経緯がある。玄葉は大丈夫なのか。また、政策決定に関与しない枝野幹事長と、政策を一手に引き受ける玄葉との間に、権限をめぐる確執が生じる可能性も高い。菅は政調会を、玄葉を通して抑え、幹事長を棚の上に祭り上げて、「菅独裁体制」を画策しているのではないだろうか。今回の組閣、党人事を見ながら、「官僚主導派」と「政治主導派」の闘いが始まっている気配を感じる。「官僚」は菅の手助けをして「小沢」を追い落とし、返す刀で菅の首も獲ろうと考えているのではないだろうか。官僚の悪知恵は恐ろしい。「官僚支配を打破出来るのは小沢だけだ」と喝破した、官僚中の官僚、財務省主計官出身の藤井裕久衆議院議員の言は正鵠である。 

菅直人は、6月4日に総理大臣に指名され、8日に組閣を終えた。総理の所信表明は11日の予定である。なぜ、こんなに時間がかかったのか。「慎重に検討したい」とのことではあるが、マスコミ情報によれば、代表選も始まっていない4日の午前に、すでに、仙石、枝野らと組閣、党人事を検討していたとのことで、彼の発言は、額面通りには受け取れない。「小沢グループの切り崩し」「約束手形を乱発したので、その調整のためだ」とのうがった見方も出ている。

9日の幹事長職の引き継ぎの際、小沢は「微力だが、民主党勝利に、一兵卒として出来うる限り、協力する」と枝野に約束をした。7日には原口総務相に「民主党と内閣を一生懸命支えなさい」と語ったという(朝日9日夕刊)。

民・由合併の直後、菅に「小沢との付き合い方」について質問された私は、「小沢は約束したことは、命がけで守ろうとする男だ。だから、『誰でも、約束は守るもの』だと信じている。だから、彼との約束は、絶対に守れ。守れない約束はするな」と答えた。菅が小沢に「官僚支配の打破」を約束しているのであれば、命を賭けてそれを守るべきだ。どうも、鳩山政権8ヵ月の間に、「官僚」にたぶらかされた輩が、かなり、出てきたようだ。

6月3日、東京・錦糸町で、党内屈指の骨太の論客、小沢グループの実力者、東祥三衆議院議員の後援会の大会があった。東がコツコツと集めた千人を超える猛者が、2万円の会費を払って結集した。参院選の候補者である蓮舫、小川敏夫両参議院議員も壇上に並び、物凄い熱気だった。参加者の一人が息巻いていた。「黒だ? 灰色だ? ふざけんじゃねえ。どんな魂胆があるんだか知らねえが、そんなデマなんか、け殺してやらあ。あたぼーよ。小沢は真っ白さ。俺たちと同じ、真っ赤な、熱い血が体の中を駆けめぐっているのさ。昨日の辞任劇、見たかい。小沢には侠気がある。江戸っ子が惚れ直すねえ」

「小沢はしあわせな奴さ。俺だって、十年若けりゃ、錆びた刀を振りかざし、痩せ馬の尻を引っ叩いて、駆け付けるんだが。口惜しいねえ」――二見独白。

(以上、The Journalより転載)


政界再編

2010-06-11 | weblog

政界再編が準備されつつある

菅政権がスタートして「脱小沢」ばかりが注目されているが、私には「政界再編」の準備が進行しつつあると思えて仕方がない。それが成功するかどうかは不明だが、政局の雰囲気が3年前の「大連立」の時と似ているのである。

前回の記事は外国でインターネットで見た日本の新聞情報を元に書いたが、今回は帰国して日本の空気を吸いながら書いている。その事で考えの前提が変わった。前回は「小沢氏が鳩山氏に辞任を迫り、それに抵抗した鳩山氏が小沢氏を道連れにした」との新聞情報をそのまま判断材料にした。

ところが帰国して日本の空気の中にいると考えが変わった。小沢氏が鳩山氏に辞任を迫ったのは事実だろうが、「道連れ」にされたのではなく、小沢氏の方から「自分も辞める」と言って鳩山氏に辞任を迫ったのではないかと思うのである。何のために。参議院選挙に勝つためにである。

考えてみれば鳩山氏一人が辞めて小沢氏が辞めないのは最悪の判断である。メディアに洗脳された国民は小沢氏をここぞとばかり叩くだろう。大衆は判官贔屓で下衆だから、辞めた人間には同情するが辞めない人間は叩きまくる。正しいかどうかなど考えない。理屈もへちまもない。仮に小沢氏が辞めないつもりだったら二人揃って強行突破するしかなかった。しかし普天間問題を見て小沢氏は鳩山氏に辞任を迫った。それなら自分の辞任を条件に迫るのが政治家らしいやり方である。

では何故「俺も辞めるから」という話ではなく「道連れ」にされた話が表に出たのか。そこに今回の政局のカギがある。一つは小沢氏に自分から辞める理由はないからである。検察と戦っている人間が非を認める訳にはいかない。だから他人から辞めさせられる形にした。しかし辞任を迫ったら逆に辞任させられたというのは実に「しまらない」話である。そして「道連れ」は小沢氏を決定的に悪役にする。それが狙いだったのではないか。

普通の人間は自分の正当性を主張する事だけを考える。しかし政治家は自分のことより政治的成果を考える。感情や名誉欲に捕らわれたら政治家など出来ない。政治的な勝利を得るためには不名誉や屈辱も厭わない。それが政治家である。目的さえ達すれば不名誉や屈辱などいつでも回復出来る。

そこで目的の参議院選挙である。二人とも辞めずに強行突破したならどうなるか。私は実はメディアの言うほど「民主党惨敗」になるとは思っていなかった。投票率は下がるから組織選挙となり、無党派の票は大きな影響力を持たない。すると小沢氏の力で業界団体を味方につけた民主党がそこそこの票を取る。ただ影響力は小さいと言っても無党派層は民主党ではなく第三極に向かう。第三極が伸びる可能性はある。創価学会と業界団体の支援がなくなった自民党はやはり厳しいが、それでも強行突破してくれれば戦いは有利になる。民主党単独過半数は無理で、選挙後は第三極と公明党が自民党につくか民主党につくかの政局になる。自民党につけば「ねじれ」が起きて民主党は解散に追い込まれる可能性がある。しんどい政権運営が続く。

一方、鳩山・小沢の二人が辞めれば野党は攻めの材料を一気に失う。参議院選挙は民主党に有利になるが、さらに単独過半数を確実にする方法がある。かつて自民党の小泉氏が使った手である。党内を分裂模様にして国民の目を引きつけ、野党の存在を見えなくするのである。そのため小沢氏が悪役になった。小泉時代の「抵抗勢力」の役回りである。「道連れ」は実は小沢氏が考えた知恵ではないかと私は思う。鳩山氏の意向を受けた菅氏が「脱小沢」の姿勢を見せると、民主党内反小沢派が一気に活気づいて「脱小沢」の流れが固まった。

「脱小沢」をやっている人たちは本気で「脱小沢」を図っているかも知れない。小沢氏が追い込まれる可能性もある。しかし本当にそう思われないとこの仕掛けはうまくいかない。窮地に陥っても参議院選挙の目的さえ達すれば、そこから先はまた新たなステージが生まれる。そこで別のシナリオを用意すれば良い。

民主党が「脱小沢」に衣替えしたことで、国民の目は民主党だけに注がれている。昨日までの「新党」など目に入らなくなった。国民には「ニュー民主党」の方が新党よりも新鮮に見える。こうなると無党派層は「ニュー民主党」に向かう可能性が高い。

小沢氏の力で組織票を固めた民主党がさらに「ニュー民主党」の力で無党派層も引きつければ民主党の単独過半数獲得が現実的になる。そこで何が起きるか。次の衆議院選挙で自民党が政権を奪っても、参議院の過半数を民主党に握られている限り全く無力の政権になる。それが参議院選挙の時点で分かってしまう。自民党に政権交代を実現しようとする意欲が失せる。

自民党から離れる政治家がまた出て、イデオロギー的に民主党と相容れない政治家だけが自民党に残る。自民党にイデオロギー色が強まるとかつての「国民政党」的性格は弱まり、政権交代の可能性が遠ざかる。二大政党の一方の軸が消滅していく。

かつての万年与党と万年野党の時代が再来する。社会党が政権政党になり得なかった時代の自民党は党内で政権交代を繰り返した。党内には官僚出身VS党人派、成長・緊縮財政路線VS分配・積極財政路線、反共親米イデオロギーVS経済中心の現実主義という色分けで概ね二つの勢力が存在した。「角福戦争」は有名だが、福田派と田中派はこの二つの流れを代表していた。そしてこの党内対立こそが自民党の活力の源泉だった。

今、見えてきたのはそれに近い状況である。民主党の中が「政治は生活が第一」を掲げた分配・積極財政路線と「最小不幸社会」を掲げた成長・緊縮財政路線になんとなく別れている。これで政権交代を繰り返せば、自民党は万年野党のままか、或いはどちらかの側に吸収されていく。そこで民主党を二つに割れば「政界再編」である。自民党対民主党ではない新たな二大政党が生まれる。

そう考えると3年前の「大連立」を思い出す。あれは読売新聞社の会長が仕掛けたと世間は思っているが、そう思わせておいて仕掛けたのは小沢氏である。新聞社の会長は自民党の延命のために「大連立」を考えたが、小沢氏は「政界再編」が目的だった。

現在の自民党と民主党には考えの異なる政治家が混在し、何をやるにも党内で足の引っ張り合いになる。それが日本の政治を著しく停滞させている。これを解消してすっきりさせないとイギリスのような二大政党制は生まれない。そこで一時的に自民党と民主党を合体させて巨大与党を作り、次にその中の政治家を二つの路線に収斂させ、それが分裂するテーマを選んで選挙をやれば、国民の手によって新たな二大政党の勢力分布が決まる。

ところが「大連立」は「大政翼賛会的で民主主義を冒涜する」と轟々たる非難を浴びた。一時は小沢氏の辞任騒ぎになった。そこで違う方法での「政界再編」を小沢氏は考えたのではないか。選挙に勝つ事によって民主党を肥大化させ、自民党を二大政党の軸ではなくなるほど追いつめる。一方で肥大化した民主党に分裂の芽を作り「政界再編」に持ち込む。そのためには何としても参議院選挙で民主党は単独過半数を獲得しなければならない。

小沢氏は「大連立」の時も非難轟々だったが、現在はそれ以上の悪役である。しかし私の想像通りなら、成功すれば政治史に残る大事業を成し遂げた事になる。どんなに非難されようとも本望であるに違いない。

思い起こせばかつて小泉純一郎氏も「政界再編」を仕掛けようとした事がある。郵政選挙で自民党が大勝した後、盟友の山崎拓氏を小泉氏とは対極の路線に向かわせた。山崎氏は靖国問題で小泉氏と距離のある議員を集め、民主党も巻き込んでグループを作った。一方で小泉氏は公明党と連携し小選挙区制を中選挙区に戻す作業を始めた。1993年に小沢氏が実現させた小選挙区制を葬り去ろうとしたのである。しかし小泉氏は総理の座を安倍氏に譲り、裏から操ろうとしたがために失敗した。安倍氏が小泉氏の思い通りにならなかったからである。

小泉主導の「政界再編」が潰えた後、小沢氏が取り組んでいるのも「政界再編」だと私は思う。他の政治家は目の前の課題だけしか見ていないが、小沢氏はその先を見ているためになかなか他人に理解されない。あえて民主党に分裂の芽を作るのも、強気の候補者擁立を図るのも、全て「政界再編」を考えた上での事だと私は想像する。その小沢主導の「政界再編」が成功するかどうか、まずは参議院選挙の結果が第一条件となる。


小沢新党

2010-06-10 | weblog

田中康夫と亀井静香と鈴木宗男と加藤紘一と小沢一郎の新党の試論(世に倦む日日)

空しい言い訳になるが、今日(6/8)、その提案を書こうと思ったら、現実政治の動きの方に先を越された。小沢一郎が民主党を離党し、亀井静香と組み、新しい政党を立ち上げた場合は、党首には田中康夫を据えるのがベストな布陣だろうという記事を書くつもりだった。以下の内容は、私自身のコミットメントと言うよりも、政治のシミュレーションとしての試論であり、言わばクライアントに代理店が提案するマーケティング戦略の企画書のようなものとしてお考えいただきたい。

まず、その新党を構成する主要メンバーを並べると、田中康夫、亀井静香、鈴木宗男、加藤紘一、田中真紀子、小沢一郎である。そして、政党の理念と戦略を一言で表現すると、カントリー・パーティーあるいはナショナル・パーティーであり、地方主義を掲げる。地方に重点を置く。地方の票を狙い、地方の選挙区を制する。仮に党名を国民党としよう。現在、ローカル・パーティーとして新党大地があるが、同じ論理の政策主張を全国の地方に拡大した政党、それが国民党である。

その新党は、新自由主義に対抗し、必然的に脱マスコミあるいは反マスコミの性格を帯びる。25条系の政策軸で左側にポジションし、9条系の政策軸では右側に位置を取る。保守で反新自由主義。戦略として、衆院300小選挙区の過半数を取ることを目標とし、特にこれまで自民党に投票してきた農村の保守票を狙う。政策標語は、もし、菅直人が民主党の標語を新しいコピーに切り換えたら、「国民の生活が第一」を奪い取って使う。
 
ラディカルに「格差をなくす」でもいいかもしれない。「国民の生活が第一」の政策の正統な後継者であることを宣言し、民主党が捨てたそのキャッチコピーを掲げる。国土の均等的発展を目指し、地方経済の再建と農林水産業の再生に注力し、都市と農村の格差の是正を訴える。所得の再配分に政策の焦点を当て、消費税増税に反対し、所得税・資産税の累進課税強化と証券課税、および海外現地法人の内部留保課税によって税収増を図る。

労働者派遣法を再改正し、製造業の派遣労働を例外なく即刻に全面禁止する。道州制に反対し、ナショナル・ミニマムの権利の保全を全面に打ち出す。等々を政策の柱とする。これらは、基本的に国民新党の亀井静香が主張してきたものと同じだ。本来、こうした政策は、社民党や共産党など左派のセグメントに所属する勢力が拡大して、立法府で強く要求する中で政府の政策に反映されるものだが、現状は左派の政治勢力が全く脆弱かつ不活発で、カリスマの出現もなく、国民の支持を集められない。右側ばかりが活発に動いて政界再編のエネルギーを噴出している。これらの政策の実現を求めている国民は多い。

特に、都市と農村の格差の是正の問題については、きわめて国民的要求の強い問題であるにもかかわらず、政党が重要問題として取り上げず、マスコミは全く無視をしている現状がある。不思議なことだが、農村で票を取ってきた自民党が、小泉改革以来すっかり変貌して、地方経済を破壊する新自由主義の政策を固守している。

マスコミの報道や解説の論調は、完全に東京と大都会の住民の利害にシフトしたもので、外資系企業や金融機関の論理で凝り固まっている。外資系というのは、基本的に東京にしか事業所を置いていない。外資系にとって日本とは東京のことである。東京はこの10年間に本当に変わった。高層ビルがそこら中に無闇に林立し、ランドマークの景観が次々と変わり、もう、目の前の背の高いビルが何のビルだか分からないほどの状態になっている。

品川駅の東口(港南口)が変わり、新橋駅の東口(汐留)が変わり、丸の内がすっかり変わり、六本木が変わり、東京駅の東口(八重洲)も変わった。しかし、地方には高いビルは建設されない。名古屋で、トヨタのバブル景気の影響で、ようやく三つか四つほど背の高いビルが建ったが、他の地方都市はどうだろうか。どこも景気が悪く、次々と百貨店が潰れている。龍馬の高知では、はりまや橋交差点の土佐電鉄デパートが潰れた。

東京で言えば、銀座四丁目交差点の一角に建っていなければいけない百巻店が忽然と消滅し、その空間が惨めな更地になっている。高知の人は心を傷つけられているだろう。地方では、昔から繁盛していたアーケード商店街がシャッター商店街に変わっている。儲かっているのは、地元の商店街から客を奪った岡田克也のイオンと、中国製低価格衣料品のユニクロだけだ。

地方に住む人も働いている。税金を納め、子供を育て、老いた親を介護している。地方に住む日本人は働いても豊かになれない。カネは東京に吸い上げられ、外資に吸い上げられている。労働をして価値を生産しているのは、東京の人間だけではない。けれども、東京にばかり高層ビルが建つ。東京の各所でビル建設の工事をしている。資本は東京にだけ投下されている。

地方には高層ビルは建たない。逆に県都の商店街が廃れ、地方紙の経営も厳しくなり、地銀が隣の県の地銀と合併を余儀なくさせられている。土建会社が人員削減し、県内の就職先がなくなっている。町から離れた農山村からは郵便局が消え、学校が統廃合されてなくなり、保育所がなくなり、医師がいなくなって病院や診療所が閉鎖され、自治体の合併で役場までなくなっている。さらに山奥に入ると、もはや日常の買い物もできない買い物難民の限界集落の状態になっている。人が住めなくなっている。

だが、そうした地方の現状や要求が政治に反映されない。地方で生きる人々は、それでも何とか町おこし村おこしをしようと懸命で、そのためには高速道路がどうしても必要だと必死で陳情しているのに、マスコミはそれは無駄だと言い、不要だと言い、それに答える政治は「旧来型の自民党の利益誘導の政治」だと言い、悪性表象で塗り固めて攻撃し排除する。

最近、気づくのは、NHKまでが民放と同じ新自由主義的な報道の傾向になっていることだ。地方を重視した視線が消えている。9時のニュースの青山祐子と大越健介に親米新自由主義が顕著で、クローズアップ現代も以前のような企画が途絶えている。あの鎌田靖までが、すっかりサラリーマン・キャスターに転向した。NHKの報道から反新自由主義の問題意識が消えた。NHKに異変が起きている。NHKが地方を捨てた。

今、日本の社会から格差を是正する政策が求められているはずだ。そして、格差の是正こそが、本来の内需を生み出し、奪われ失われフリーズさせられていた消費を立ち起こし、地域経済と国内経済を活発化させ、日本経済を回復軌道に乗せるのだと、私はそう確信している。

多くの地方の人々が、自信と希望を失いながらも心の中でそう思っているに違いない。自分の暮らす地域に元の豊かさを取り戻したいと願っているはずだ。そうした政策を正面から掲げて国民の支持を受ける政治勢力の出現を求めているに違いない。そうした地方の要求の受け皿になる保守新党を上に挙げたメンバーで作るとき、田中康夫が党首に収まるのが、最も安定的でかつ効果的な組織となるだろう。

党首は若くないといけない。そして、党首はテレビに出演して華麗な弁舌をパフォーマンスできないといけない。小沢一郎にはその能力がない。小沢一郎は幹事長で党務を仕切り、テレビには幹事長代理を出せばいい。もう2人か3人、50代とか40代の人間が必要だが、公募をかければ、必ず有能な人材を集められるだろう。政治を志している人間は多いし、地方の再生のために政治を変えようと思っている人間も少なくない。

田中真紀子が言っていたが、民主党の議員には都会出身のエリートが多い。元官僚とか、外資系の証券会社とか、弁護士とか、マスコミ出身とか、そういう人間が集まっている。彼らは政策志向だが、その政策主義の中身は、現在の新自由主義的な大枠を前提にした専門知識の世界での政策志向であって、路線を大きく転換させる政策のデザインはできない。重箱に隅をつつく官僚の「政策」と同じだ。

つまり、民主党の政治家たちの「政策」と言うのは、単に大臣になるため、出世するための知識と道具の話でしかない。その最も典型的な像は、小僧の古川元久が提供している。民主党でも自民党でも、どっちでもいい政治家であり、霞ヶ関の官僚が閣僚のお面をかぶってテレビで舌を回している政治家である。国民が希求しているところの「政治を変える」方向に寄与する能力ではない。

喩えて言えば、幕末における幕吏の政策能力である。国民が求めている政治家は、西郷隆盛や大久保利通のような大型の政治家であり、国民が待望している政策は、坂本龍馬の戦中八策のような革命的な政策である。政策の意味が違う。国民が要求する政策はスケールが大きくラディカルなものだ。この政党は、もし結成された場合は、マスコミと距離を置く政党になる。マスコミからは常に悪罵される政党になる。

しかし、政党が国民に向かって政策を説明して支持を訴える場は、基本的にはテレビであり、したがって、この政党の代表としてテレビに出る者は、きわめてハイレベルなディベートの能力を持っていなければならず、キャスターやコメンテーターが繰り出す批判をクイックに切り返して論破し、テレビ論戦を制圧しなくてはならないことになる。

この政党はテレビでは常に異端席に座らされ、非難の集中砲火を浴びる宿命を持つ。だが、われわれは、その不利な論陣を実力で突破し、マスコミ側を圧倒して沈黙させるカリスマの出現を待望しているのだ。テレビ討論の場で、新自由主義の「正論」で攻めるマスコミ側を粉砕する英雄の姿を見たいのである。一色清や与良正男を論難し、面罵し、恥を掻かせて俯かせるタフな政治家に登場して欲しいのだ。

(以上、阿修羅より転載)