太った中年

日本男児たるもの

世界経済の行方

2009-09-26 | weblog

以下、おっそろしく長いコラムなんでタイトルに興味のある人だけドーゾ。

 

世界経済の行方 

~浮かび上がる不吉なパターン~

( 英フィナンシャル・タイムズ紙)

G20の首脳が昨年11月にワシントンに集まった時、彼らは民間銀行システムの残骸を前に、まだショック状態にあった。5カ月後にロンドンに集まった時は、日増しに深刻化する世界的な景気後退と、グローバルな伝染の現実的なリスクに見舞われていた。

G20の首脳が今週、1年間で3度目となる会合のためにピッツバーグに集まろうとしている今、世界経済は再びプラス成長に転じ、株式市場はこれまでの下げをほとんど埋め、迫り来る恐慌について語る向きはほぼ消え去った。参加者たちが、大変な苦難を経験したと感じたとしても無理ないだろう。

信頼感や経済統計は上向いたが、過去1年間の経験に懲りた政策立案者は、是が非でも繰り返しを防ごうという強い願望から、高揚感を味わうどころではない。彼らはまた、驚くほどの明るさを見せた経済の春が、今後数年間の暮らしやすい気候はおろか、かんかん照りの夏を保証するものではないことを承知している。

深刻な景気後退を脱したサインも軽々に喜べない

4月のロンドン・サミットとは、実に好対照である。当時、各国首脳は否応なく寛大なゼスチャーを見せ、想像を絶する巨額の資金を危機対策に投じる方法を編み出した。

今、経済的な国際決定において事実上最も重要な会議となったG20は、この混乱を収拾する方法と、再発防止という面倒なプロセスに焦点を当てている。

4月当時は、各国が結束していた。分裂は危険だったからだ。それが今、各国は再び独自の道を歩み始めている。協調行動を取ることは以前よりも難しくなっており、また、一部の領域においては、その必要性も減じている。

こうした変化の最大の理由は、経済成長が戻ってきたことだ。今年第2四半期には、フランス、ドイツ、そして日本がプラス成長を遂げた。中国では、銀行貸し出しとインフラ投資の急増のおかげで、GDPが前年同期比7.9%も伸びた。

先日は、米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長が、米国の景気後退は「終わった可能性が非常に高い」と発言。イングランド銀行のマーヴィン・キング総裁は、「今、第3四半期に成長が回復した兆しが見えてきた」と宣言した。

こうしたプラスの兆候を見て、国際通貨基金(IMF)のドミニク・ストロスカーン専務理事は、「世界経済はついに、我々の生涯において最悪の景気後退から脱しつつあるように見える」と結論づけた。

ほんの6カ月足らずの出来事にしては、大きな進歩である。信頼感の崩壊は抑えることができた。パニックに取って代わって平時の感覚が戻りつつある。だが、世界経済が1930年代の大恐慌以来初となるマイナス成長から脱却しつつあっても、政策立案者は気を抜けない。

まず、成長への回帰は最も貧しい人々に行き渡っていない。危機の原因とは無関係だったにもかかわらず、他国と同じくらい深刻な影響を受けた国や人々である。

IMFによると、低所得国の2009年の経済情勢は、3月時点の予想よりも悪化する見通しだ。貿易、送金、外国投資、各種援助がすべて予想を下回るからだ。世界銀行の試算では、今回の危機は新たに9000万人を1日1.25ドル未満で暮らす「極貧」に追い込んだ。

慈善団体アクションエイドの政策責任者クレア・メラメド氏は次のように話す。「アフリカ諸国の景気回復について語る議論は、ほぼ間違いなく時期尚早だ。先進国が見舞われている政府予算の逼迫を、アフリカも感じている」

永遠に続かない財政出動と在庫調整

規模が大きな先進国でさえ、立ち向かうべき課題は何ら容易ではない。景気後退は終わったかもしれないが、今の成長ペースが今後数四半期で失業者を減らせるほど速いと考えている人はほとんどいない。また、これまでの世界経済の成長は、活発な民間消費や投資ではなく、政府の景気対策と、減らしてきた在庫を積み増す企業の活動に依存したものだ。

しかし、どちらも永遠に続くものではない。緊急財政出動には期限があり、在庫調整も当然、いずれ終わる。

一部の呼び水的な経済政策は、既に終わっている。ドイツと米国では、自動車の買い替えに対する補助金制度が廃止になった。英国は新年度に、GDP比1%に相当する財政引き締めに動く準備を進めている。いずれも、一時的な支出を経済から引き揚げることで景気回復にブレーキをかける恐れがある要因だ。

だが、政策立案者が何より懸念しているのは、健全な回復を遂げるうえでの長期的な障害である。税収が憂慮すべきほど激減する一方で、景気後退がもたらす被害を抑えるために公共支出を増やした結果、各国政府の予算は経済危機にもろに直撃された。

危機以前、G20諸国の財政赤字は平均してGDP比1.1%にとどまっていた。それが2010年には6.9%に跳ね上がると見られている。

IMFの試算では、G20の先進国の債務総額は2007年のGDP比80%足らずから、2010年には同110%に達する見込みで、世界の貯蓄が生産的な新規投資の財源に回される代わりに、各国政府を破綻させないために使われるのではないかという懸念が浮上している。

完全に失われた生産高

最低でも、各国政府の追加的な資金調達ニーズは、長期金利の上昇を招く恐れがある。実際、政策金利が史上最低水準にあるにもかかわらず、今でも信用状況は厳しくなっている。

これらの要素を総合してみると、エコノミストらはほぼ間違いなく1つの結論に達する。今回の危機で失われた生産高と雇用は、ただ一時的に遊休状態にあって、需要と信頼感が回復するなり戻ってくるようなものではない、ということである。

失業者のスキルは劣化していくし、危機がなければ生き延びたろう企業が破綻し、多くの資本――工場や機械、建物など――が廃棄された。

国際決済銀行(BIS)の元チーフエコノミスト、ウィリアム・ホワイト氏は先週、グローバルな需給パターンのミスマッチが、痛みを伴う調整を悪化させると主張した。「成長戦略として輸出に大きく依存してきた多くの国は今、もはやそれを買う意思も手段も持たない巨額債務を負った国々にモノやサービスを盛んに売ろうとしている」と。

つまり、世界は今、誰も欲しがらず、誰も買う余裕のないほどの大量のモノを作って輸送する能力を持っているのである。

IMFもこの意見に賛同しており、来月、ある証拠を提示する。過去40年間に世界中で起きた88の銀行危機を検証した結果、経済成長は平時の成長率に戻る傾向があるが、景気後退で失われた生産高は二度と戻ってこないことを示唆する報告書である。

二度と戻らない生産高が一体どれくらいなのか測るのが難しいことが、政策立案者を悩ませる。一体どうやって、金融市場に対する異例の介入や、前例のない金融緩和政策と景気刺激策の撤回を命じればいいのか。そして、いつ、それを始めればいいのか――。

G20の財務相は今月、「景気回復が確かなものになるまで」景気刺激策を継続することを誓った。だが、一体何をもってして持続的な回復と呼ぶのかは説明しなかった。

個々の財務相は皆、動くのが早すぎれば、自国経済を再び景気後退に陥れるリスクがあることを知っている。だが、もし彼らが緩和政策を長く続けすぎれば、別の惨事が起きるリスクが高まる。

銀行が今謳歌している様々な政府保証に依存するようになり、再び非合理なリスクを取り始めるかもしれない。大いに痛んだ国家財政が国債市場を揺るがし、投資家が各国政府にカネを貸すことはリスキーなビジネスだと考えるに至り、やるからにはずっと高い利率を求めるようになる恐れもある。

もし一般家計が、当局が自分たちのお金を管理する能力を疑うようになれば、再びインフレが頭をもたげる可能性がある。

世界の貿易不均衡

各国財務相は集団としては、世界経済がいとも簡単に巨大な貿易不均衡のパターンに回帰しかねないことを認識している。つまり、米国と英国の消費と借り入れが、日本、ドイツ、中国の生産と貯蓄、さらにはサウジアラビアやロシアといった産油国によって埋められるという状況だ。

ただし過去10年間と違うのは、米国と英国で借り入れを行うのが、消費するためにお金を借りる家計ではなく、公共部門だという点である。

ちょうど、サブプライムローンという形での米国の民間部門への新規貸し出しが不良化すると、グローバルな貿易不均衡のパターンが持続不能であることがはっきりしたように、際限なく膨らむ公共部門の赤字は永続性のある回復を支えられない。

IMFのチーフエコノミスト、オリビエ・ブランチャード氏は、永続的な景気回復には、世界の需要パターンがシフトし、米国離れする必要があると言う。「もし米国の景気回復が実現するとして、もし景気対策を撤回する必要があって、もし民間の国内需要が弱いままであるとすれば、米国の純輸出が増えないといけない」

このパターンの成長が世界中で起きている兆しは見られる。中国では、輸入の急増を受けて、貿易黒字が劇的に縮小した。ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ジム・オニール氏は「中国が2010年に貿易赤字すれすれになる可能性がある」と考えている。

今回の危機で新興国が学んだ教訓

だが、オニール氏の見解はコンセンサスとはかけ離れている。大半のエコノミストは、世界が再び、不均衡に陥る恐れがあると考えている。比較的規模の小さな新興国は、危機をうまく生き延びた国は巨額の外貨準備を持っており、IMFからカネを借りるという不名誉に甘んじないで済むことを学んだ。

ドイツと日本は依然、輸出に依存して景気回復を遂げている。コーネル大学のエスワル・プラサド教授によれば、中国の第2四半期の経済成長は投資主導だったが、これはただ単に輸出に回す生産能力を高める結果に終わるという。

「遠からず、多くのマクロ経済学者が何より懸念していたような危機が起きる土壌が整うかもしれない――ドルの価値が急落し、痛みを伴うマクロ経済の調整が起きるような事態だ」(プラサド教授)

G20の中では、欧州と米国がこうしたコンセンサスの見解を共有しており、今週のサミットを利用して、もっとバランスの取れた世界経済の成長を目指し、貿易黒字国が国内の支出と需要の拡大に励むような国際的な圧力にさらされる計画をまとめたいと考えている。

これらの国は、それは至極公正なことだと主張する。というのは、赤字国は常に、資金の出し手を失う脅威にさらされているのに対し、貿易黒字を出している国にはそんな脅威がないからだ。

割れるG20

世界最大の資金の出し手である中国は、この目標に強く反対している。中国としてはG20に、保護主義の抑止に専念してほしいと考えている。先週、中国製のタイヤに対する関税引き上げを決めた米国への当てこすりだろう。

恐らくここで望むらくは、G20が何を達成するにせよ、世界経済がまず回復基調を確かなものにし、次にもっとうまくバランスを取るようにすることだ――個々の国や個人の利益を通じて自然に達成されるにせよ、執拗な黒字を防ぐための厳格な国際ルールを課すにせよ。

しかし、安定に向けた道のりには、多くの障害が待ち受けている。G20の首脳は、景気後退の終わりを喝采するかもしれないが、持続可能な世界経済の回復をもたらすための大仕事が始まったばかりであることを知っているのだ。

(以上、JBpressより転載)

長文コラムはティムポの長さに比例するのか、であるなら英国人のティムホは長いのだ。

で、遅ればせながらポイントは

・世界経済が1930年代の大恐慌以来初となるマイナス成長から脱却

・成長への回帰は最も貧しい人々に行き渡っていない

・緊急財政出動には期限があり、在庫調整も当然、いずれ終わる

・誰も欲しがらず、誰も買う余裕のないほどの大量のモノを作って輸送する能力を持っている

・景気後退で失われた生産高は二度と戻ってこない

・世界経済がいとも簡単に巨大な貿易不均衡のパターンに回帰しかねない

・中国が2010年に貿易赤字すれすれになる可能性がある

・赤字国は常に、資金の出し手を失う脅威にさらされている

・持続可能な世界経済の回復をもたらすための大仕事が始まったばかりである

とゆーことだった。日本人のティムホのように短く書けっつーの。