鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

WOC2005予選編(第4ラウンド前編)

2006-05-30 23:26:17 | WOC2005
予選初日の第4ラウンドでオランダ代表のニッキー・ヴァンデン・ヴィゲラーと対戦しました。ニッキーはまだ十代後半だと思いますが、とても聡明な感じがする好青年です。私はKurnikというポーランドのネットオセロサイトで、ニッキーとは20試合ほど対戦したことありました。ネットオセロでは少し油断をするとニッキーにやられてしまいましたので、気を引き締めて試合にのぞみました。

私が白番で、ニッキーが黒番となりました。ネットでニッキーと対戦した時、私が白番の場合は、縦取り定石から虎定石に進んだ後、ニッキーは7手目はE6に打つことが多かったので、WOC2005での進行も私の研究範囲でした。

/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○++++
4++●●●○++
5+++●●●++
6+++○◆+++
7++++++++
8++++++++
次、白番 (8手目)

15手目まで進んで下記の局面を迎えましたが、私の研究では16はC2ではなく、F2に打つのが正解だと考えていました。16をC2に打った場合、黒が17でB4に打った後、B5が黒の余裕手として残る分、黒の手数に余裕ができるからです。

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++●●+++
3+○○●●◆++
4++○○●○++
5++○●○○++
6+++●●○++
7+++●++++
8++++++++
次、白番 (16手目)

16を研究通りF2に打った後白やや有利と感じていましたが、大事に打とうと深読みしすぎたためか、22(下記局面)で悪手G1を打ってしまいました。私の第一感では22はC2でした。黒に23でD1に当てさせた後、24でH4に付け手を打つつもりでしたが、黒に25でH3と打たれて右辺を取られると手数が足りなくなるのではないかと考えてしまい、22 C2を却下してしまいました。


F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1
/ A B C D E F G H
1++○+◆+++
2+++○●●++
3+○○●○●●+
4++○○○○●+
5++○●●○+●
6+++●●○++
7+++●++++
8++++++++
次、白番 (22手目)

22G1 23C2 24B1となり、白が上辺を取らされては形勢不明です。24まで混戦模様ですが、25手目はどこに打ちますか?

F5D6C3D3C4F4E6B3E2C5D7E3D2F6F3F2G3G4H5C1E1G1C2B1
/ A B C D E F G H
1+◇○+●+○+
2++○●●○++
3+○○○○●●+
4++○○○○●+
5++○●●○+●
6+++●●○++
7+++●++++
8++++++++
次、黒番 (25手目)

私が恐れていたのは、25G6 26C6 27G5という進行です。下記盤面になると、白はC7に打つための種石をつくるために、H4辺りに打つしかありません。仮にこの進行になった場合、かなりの苦戦を強いられることを覚悟していました。

私の予想図
/ A B C D E F G H
1+○○+●+○+
2++○●●○++
3+○○○●●●+
4++○○○●●+
5++○○●●◆●
6++○●●●●+
7+++●++++
8++++++++
次、白番 (28手目)

幸いにもニッキーは25をF1と打ったので26D1 27B6となり、私が恐れていた展開を回避することができました。しかし、喜んだのも束の間で、この後、形勢は二転三転して、最後までどちらが勝つか分からない非常にスリリングな(私が肝を冷やした)展開が待ち受けていたのでした。

実戦
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2++○○●●++
3+○○○●●●+
4++○●○○●+
5++●●●○+●
6+◆+●●○++
7+++●++++
8++++++++
次、白番(28手目)

ベンと連戦しました(@Yahoo)

2006-05-29 22:54:33 | Yahoo Japan
昨日、久々に村上九段とオセロが打ちたくなったので、村上九段を追いかけてYahoo!オセロの初級者ラウンジ1に入りました。案の定、村上さんは連戦していたのですが、村上さんの対戦相手は何とベン・シーリー氏(WOC2003,2004で2年連続優勝した鉄人)でした。そして、村上九段に促されるままベンと打つことになってしまいましたが、最近得意になった黒で8試合して5勝3敗とまずまずの結果でした。

ベンとの試合中、終盤で面白い局面に遭遇しましたので紹介しておきます。
さて、最善手はどこでしょうか?

F5F6E6D6C5E3F3F4G5G6G3C6D3H5C4B5D7B3E7C3G4F7H4D2C1C8D8E8C2C7A4E1D1B1B4A5A6B6A7A3A2B7A8B8F8G8
/ A B C D E F G H
1+○○○○+++
2●+○○++++
3●●○○●●●+
4●○●●●●●●
5●○●●○○●○
6●○●●○●○+
7●○○○●○++
8●●●●●●◇+
次、黒番(47手目)

ホワイトラインを黒の通しにすることを意識しつつ、右下の4個空きの処理の仕方を考えると答えが分かると思います。

47手目の正解はH7です。実戦では47H7、48G7、49H8の後、50で白(ベン)にH3に打たれました。黒(私)からH6に入れないため一瞬慌てふためきましたが、よく考えてみると51でB2に打つと白はH6の指定打ちになることに気づきました。(ホワイトラインを黒の通しにしたことが生きています。) この試合は黒の私が勝ちました。

/ A B C D E F G H
1+○○○○+++
2●+○○++++
3●●○○○○○◇
4●○●●●●○○
5●○●●●○●○
6●○●●○●●+
7●○○○●○●●
8●●●●●●●●
次、黒番(51手目)

WOC2005予選編(その5)

2006-05-28 14:16:13 | WOC2005
世界選手権(WOC)は3日間かけて行われますが、最初の2日間で予選リーグを13試合行い、予選上位4名のみが最終日の決勝トーナメントに進出できます。その3日間の中でも初日が一番ハードで、予選7試合を行います。

近年、WOCの参加者が増加する傾向にあり、昨年の世界選手権(WOC2005)は25ヶ国から62名の代表選手が参加しました。従い、予選通過(上位4名)のボーダーラインは13試合中9.5勝~10勝になることを予想していました。私は初日の7試合を出来れば全勝したいと考えていました。初日に7勝できれば、仮に予選2日目の成績が3勝3敗に終わったとしても2日間合計で10勝に到達するので予選通過は間違いないと考えたからです。


初日午前中に3試合行ったところで昼食休憩に入りました。私は午前中に3勝していましたが午後の4試合に備えて、出来るだけ昼食を手短にすませてホテルの自室に戻りたいと考えていました。もちろん、午後に対戦が予想される選手についての対策を最終チェックするためです。おそらく初日の昼食にはアイスランドの名物料理が並んだのだと思いますが、私は初日の昼食に関してはメニューや味をほとんど覚えていません。第4ラウンドで対戦したニッキー・ヴァンデン・ヴィゲラー選手(オランダ代表)への対策内容については鮮明に覚えていますが・・・。

WOC2005予選編(その4)

2006-05-27 12:57:04 | WOC2005
予選第2ラウンドで世界選手権連覇中だった王者ベン・シーリー氏(米国代表)を撃破しましたが、予選リーグはまだ11試合も残っていました。私の予選第3ラウンドの対戦相手はイギリス代表のグレアム・ブライトウェル氏に決まりました。ブライトウェル氏は1988,89,97年の世界選手権(WOC)で2位になったこともある強豪です。WOC1988,1989では決勝(3番勝負)で全盛期の私と対戦し、2年連続で2連敗して優勝を逃しましたが、この頃がブライトウェル氏にとっても全盛期であったと思います。当時のブライトウェル氏はケンブリッジ大学・数学科の学生でしたが、大学を卒業後、ロンドンの大学で教授として教鞭を揮っているそうです。

実を言いますと、私はブライトウェル氏に対する対策については、ほとんど何も考えていませんでした。彼に過去8戦して一度も負けていなかったため、何となく勝てそうな気がしていたからだと思います。しかし、試合が進むにつれて、私の自信は単なる過信であったことが分かりました。序盤~中盤の白(ブライトウェル氏)の打ち方は実に巧みで、37手目まで進行した時点(下記局面)では「黒(私)若干不利」との形勢判断をせざるをえませんでした。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6D8C5C6C7C8F7G8B3E3D2G5H6G4G3C2B5B4E2D1A4F1E1A6A5B6
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●○○+++
3+○○●○○○+
4○○●●●○○+
5○○●○○●○+
6●◆●●●●○○
7++●●●●++
8++●●++●+
次、白番(38手目)
Whiteブライトウェル Black私

私は38手目で白がB7にX打ちしてくることを予想していました。38B7に対して、39でA3と打って左辺を取り、白に40でB8と打たせた後、41でF2に打って白に手を渡すつもりでした。ブラックラインが白の通し(白一色)になると、黒はA8とA7に連打できますよ!と白にプレッシャーをかける構想です。黒(私)は不利なので局面を複雑にすることで、白のミスを誘う戦法を取るつもりでした。

私の構想図
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●●●◆++
3●●●●●●○+
4●●●●●●○+
5●○●○○●○+
6●○○○●●○○
7+○○●●●++
8+○●●++●+
次、白番

ブライトウェルは上記進行を嫌ったようで、38手目でA7に打って左辺を取りましたが、私は白の38を悪手であると判断しました。38手目によりD4の石が白に変わったため、39手目で黒がB2にX打ちすると、ストーナートラップが成立するので、形勢は黒に傾いたと考えました。

/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●○○+++
3+○○●○○○+
4○○●○●○○+
5○○○○○●○+
6○○●●●●○○
7◇+●●●●++
8++●●++●+
次、黒番(39手目)

黒がストーナートラップをしかけた局面
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2+◆●○○+++
3+○●●○○○+
4○○●●●○○+
5○○○○●●○+
6○○●●●●○○
7○+●●●●++
8++●●++●+
次、白番(40手目)

ブライトウェルは素直に40手目をB7に打ちましたので、41A3 42C1 43B1 44A1 45A2 46G1 47H4という黒にとって非常に分かり易い手順で黒の勝勢になりました。試合の結果は41-23で私の18石勝ちとなりました。

黒、勝勢
/ A B C D E F G H
1○○○○○○○+
2●●●○○+++
3●●○●○○○+
4○●○●●●●◆
5○○○○●●●+
6○○○●●●○○
7○○●●●●++
8++●●++●+
次、白番(48手目)

しかし、私は39手目をB2にX打ちする段階で、40で白がF8に打ってホワイトラインを切ってきた場合の進行について、かなり時間をかけて読んでいました。もちろん、この進行の方が複雑な局面が続くので、有利な黒(私)にとっては嫌でした。

白が40手目でF8に打った局面
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2+●●○○+++
3+○●●○○○+
4○○●●●○○+
5○○○○●○○+
6○○●○●○○○
7○+●●○○++
8++●●+◇●+
次、黒番(41手目)

私は40でF8に当てられても、41ではE8に打たずに下辺を放置した状態で、A3に当てるつもりでした。41A3以降、42H8 43A8 44E8 45F2 46C1 47B1 48A1 49A2 50G1の進行を予想しましたが、51手目でG7の好手が見えたので黒の勝ちだと読みました。51G7で7筋が黒一色になるので白は52手目でH7に打つことができず、B8に指定打ちとなります。

黒の好手G7(51手目)
/ A B C D E F G H
1○○○○○○○+
2●●●○●○++
3●●○●○○○+
4●○○●●○○+
5●○○○●○○+
6●○○○●●○○
7●+●●●●◆+
8●+●●○○○○
次、白番(52手目)

アクセスランキング5位に入りました

2006-05-26 06:25:15 | 京都新聞
おかげさまで「鬼神の秘密」が、本日のgooブログ・アクセスランキングで5位に入りました。(もちろん、初入賞です。)私の記事を大きく取り上げて下さった京都新聞様には本当に感謝しております。

先週木曜日、金曜日は「鬼神の秘密」が大フィーバーしました。メディアの力は凄すぎます。

     アクセス件数    ランキング
5/26(金)  6977ip    4位(555829 BLOG中)
5/25(木)  5328ip    5位(555126 BLOG中)

本日の夕刊に掲載されました

2006-05-25 21:28:17 | 京都新聞
昨日、今日と世間が比較的平和だったため、無事に本日の京都新聞・夕刊にオセロの記事が掲載されました。京都新聞のWeb版にも出ていますので一度ご覧下さいませ。新聞記事の中で、何とこのブログ「鬼神の秘密」が紹介されています。

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2006052500110&genre=K1&area=K20

私のブログを立ち上げるとき、ブログの名前を何にするか?熟慮しました。オセロ界ではご存知の方が多いと思いますが、「鬼神」とは私のニックネームですね。今から15年程前に滝沢雅樹八段が「Royal Road(オセロの季刊誌)」の中で、私の全日本選手権三連覇を「為則九段 鬼神の如く三連覇」と賞賛してくれたのが、このニックネームの由来だと記憶しています。今も私が「鬼神」ほどの強さを維持しているかは疑問ですが、「自分(鬼神)が持っているオセロの技術なり思考方法(秘密)の全てを、ブログに書いて皆さんに公開しよう」との思いをこめて、ブログの名前を「鬼神の秘密」にしました。「鬼神の秘密」とは、私の決意表明のようなものです。
何と京都新聞の記事がYahooニュースにも取り上げられています。
(残念ながら、Yahooニュースの記事は削除されました。)


京都新聞・オセロの記事

2006-05-24 22:19:28 | 京都新聞
二時間ほど前に京都新聞の記者さんから連絡を頂きました。連休明けに取材を受けたオセロの記事ですが、このまま何事も起きず世間が平和であれば、明日の夕刊に記事が掲載されるそうです。

記事がどのような内容になったかは明日のお楽しみです。京都にお住まいのオセラーは、よかったら明日の京都新聞の夕刊をご覧下さい。大きな事件が起きてしまった等予期せぬ理由により記事の掲載が延期になったときは、どうかお許しください。

WOC2005予選編(その3)

2006-05-21 08:35:58 | WOC2005
予選1回戦でハバード選手に55-9で大勝しました。ハバード戦が終わった後、休憩するため廊下に出たところ、先に試合が終わっていたベン・シーリー氏が「Nice game!」と言って労ってくれました。ベンは私の隣で1回戦の対局を行っていましたが、ベンの試合はかなり余裕があったようで、自分の試合より私の試合を見ている時間の方が長いのではないかと思うくらい、私の盤面を眺めていました。

やがて、試合会場のスクリーン上に2回戦のペアリングが映されました。私の対戦相手は何とベン・シーリー氏で、私が白番でベンが黒番となりました。予選2回戦という早い段階でベンに当たったのは私にとっては好都合でした。その理由は、白番を持ってベンに試してみたい定石があったことと、ここでベンに負けるようなことがあったとしても予選はあと11試合も残っているので、残りの試合を大事に戦えば予選を通過できる可能性が高いからです。

世界選手権でベンは縦取りになった場合、虎定石を打ち7手目はF6を選択することが非常に多いと思います。私はベンに対して、8手目をF3(Comp'Oth)でいくか、G5(No-kung)でいくか迷っていました。私の中でベンは8F3(Comp'Oth)の進行を得意としているというイメージがあったので、Comp'Othでベンに通用するかどうかを予選の段階で見極めておきたいと考えました。それゆえに私は8F3を試してみることにしました。

F5D6C3D3C4F4F6F3
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○+◇++
4++●●○○++
5+++○●●++
6+++○+●++
7++++++++
8++++++++
Comp'Oth (次、黒番)

ベンが11手目で使ったC6は私の予想通りで、12~16までベン対策として事前に準備した進行となりました。下記局面では白はB6とC5で二手稼いだ後E3を狙っていけるので、白にとっては悪くない形だと考えていました。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7C6G5G6F7H5C7
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○+○++
4++●●○○++
5+++●○●●●
6++●○●○●+
7++◇+○○++
8++++++++
次、黒番(17手目)

しかし、さすがにベンは手強く19E3 23F2と好手を連発して応戦し、下記の局面を迎えました。白は早く4筋に白石を乗せたいところです。白がH4に当てて黒にH3に打たせて右辺を取らせた後、G4の中辺を埋める構想です。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7C6G5G6F7H5C7E2B6E3H6H7G3F2
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++●◆++
3++●●●●○+
4++●●●●++
5+++●○●●●
6+○○○●○●●
7++○+○○+●
8++++++++
次、白番(24手目)

白(私)が24C5 26D2で4筋に念願の種石(D4)を作ったのですが、黒(ベン)に25F8 27E8と打たれて、白がH4に付ける手を消されてしまいました。この辺りはベン特有の打ち回しだと思いますが、相手の種石を巧みに消していく技に、さすがは王者ベンと感心してしまいました。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7C6G5G6F7H5C7E2B6E3H6H7G3F2C5F8D2E8
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++○●●++
3++●○●●○+
4++●○●●++
5++○○○●●●
6+○○○●●●●
7++○+●●+●
8++++◆●++
次、白番(28手目)

黒やや有利の展開で34手目まで進み下記の局面を迎え、ベンは長考に入りました。私の感覚では黒にB1と打たれて上辺を取られると、白は手数が足りなくなると思っていましたが、ベンはH3に打ったので内心ほっとしました。試合後Zebraで調べたところ、やはり35の最善手はB1でした。白は36でG1位しか手がなく、37H2でトドメを刺されたところでした(黒6石勝ちの進行)。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7C6G5G6F7H5C7E2B6E3H6H7G3F2C5F8D2E8G4B5D7E1C1D1A4
/ A B C D E F G H
1++○●●+++
2+++●●●++
3++●●○●○+
4◇+●●○○○+
5+○●●●○●●
6+○○○○●●●
7++○○●●+●
8++++●●++
次、黒番(35手目)

ベンが35をB1ではなくH3に打ってくれたので私は息を吹き返した心境でした。35H3 36B4の後、以下の問題の局面を迎えました。私は36をB4に打つ段階で、37で黒が間違えてB3に打ってくれたら38F1で必勝形になることに気付いていました。しかし、試合中は何も考えていないふりをして、ほとんどノータイムで36B4を打ちました。驚いたことに、ベンもほぼノータイムで、しかも何も疑っていない様子で37をB3に打ちました。37B3を見た瞬間、私は自分の目を疑ってしまいました。

/ A B C D E F G H
1++○●●+++
2+++●●●++
3++●●○●●●
4○◇○○○○○+
5+○○●●○●●
6+○○○○●●●
7++○○●●+●
8++++●●++
次、黒番(37手目)

私は猛烈に興奮しながら38でF1に白石を置いて、ものすごいスピードで縦、横、それに斜め、合計7つの黒石を白に裏返しました。C4の黒石が白になったため、39で黒はH4に入ることが出来ません。40で白にH4に入られて黒、万事休すとなります。

/ A B C D E F G H
1++○●●38++
2+++●●●++
3+◆●●○●●●
4○○●○○○○+
5+○○●●○●●
6+○○○○●●●
7++○○●●+●
8++++●●++
次、白番(38手目)

実にあっけない幕切れでした。試合後はベンに勝った喜びよりも、あと11試合を頑張らねばという気持ちが強かったことを覚えています。この時は、この試合の結果が賜杯の行方に大きく影響を与えることになるとは到底想像できませんでした。

WOC2005予選編(その2)

2006-05-19 22:38:40 | WOC2005
世界選手権の予選1回戦のペアリングは前夜祭の中で行われますが、私の1回戦の相手はオーストラリア代表のジェフ・ハバード選手に決まりました。石の色も既に決まっており、私が黒番でハバード選手が白番になりました。ハバード選手は日本ではあまり名前が売れていませんが、WOC2003の1回戦で後藤宏七段に大勝したこともある実力者です。私は十年前のW0C1995でハバード選手と対戦したことがありますが、当時とは比べものにならない程実力をつけているはずだと思っていました。

ペアリングが終わった後、宮岡七段が目をキラキラさせながら私に近づいてきて、「ハバードさんって確か2年前に後藤さんに大勝した選手ですよね。為則さん、大丈夫ですか?」と聞いてきました。私は内心「嫌な相手に当たったよな~今年もついていないよな~」と思っていましたが、「楽勝だよ」と精一杯強がってみました。とは言ったものの、一刻も早くハバード対策を練りたかったので、パーティーの途中で会場から抜け出して、ホテルの自室へと戻ったのでした。

私は自室でPCに電源を入れてOthBaseを起動し、White playerの名前をジェフ・ハバードと入力して、OtheBaseに収録されているハバード選手の棋譜を呼び出しました。まず分かったことは、ハバード選手が白を持った時は必ず縦取りを打つということです。次にWOC2003で後藤七段に大勝したときもハバード選手は白番であったこと、そして、その試合は、虎定石からF.A.T drawと呼ばれる定石に進みましたが、後藤七段はこの定石に明るくなかったのか中盤の初めで悪手を放ち、ハバード選手がそのまま優勢を維持して大勝したことが分かりました。ハバード選手は白を持って優勢になると、かなり手強いということです。

OtheBaseには、後藤七段戦以外にもハバード選手が白番でF.A.T drawを打った試合が何局か収録されていましたが、ここで大きな発見をしました。それは、ハバード選手はこの定石になると26手目でA4に変化するケースが多いと言う事です。通常、白は26手目でB5に打ちますが、26でA4に打つと白からE3を狙えなくなるので、あまり上手い変化だとは思いません。


F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6F8F7G5H6H4G4H3H5H7C5B4E8D8
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○+○+●
4+●●●○○○●
5++●○○○○●
6+++●○●●●
7+++●●○+●
8+++◆●●++
次、白番(26手目)

以上の検討の結果、私はハバード戦ではF.A.T drawを使うことに決めました。しかし、実戦ではハバード選手は26を普通にB5に打ったので、私は一瞬青くなりましたが、続く28手目でC2、30手目でG2と連続して悪手を打ってくれたので、徐々に優勢を拡大することができました。結局のところ、ハバード選手はこの定石での変化のポイントが上手くない、つまり、この定石を不得手にしているのだと思います。


F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6F8F7G5H6H4G4H3H5H7C5B4E8D8B5G3C2E3G2
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++○+++◇+
3++○○●○●●
4+●○●○●●●
5+○○○●○●●
6+++●○●●●
7+++●●○+●
8+++●●●++
次、黒番(31手目)

関東出張から戻ってきました

2006-05-17 21:31:35 | Weblog
昨日から仕事で関東方面に出張しておりましたが、いましがた帰宅いたしました。今回の遠征は東京に始まり、山梨県に入った後、埼玉県に進入し、神奈川県で最後の仕事を終えて帰還致しました。関東横断の旅でした。

今日、赤羽駅のホームで湘南新宿ラインの電車を待っていると、人の良さそうなオバサンが「変な質問をするのですけどね~」と言って近づいてきました。私はてっきり宗教関係者の勧誘だと思い、ニラミを利かせながら身構えてしまいました。そのオバサンの質問は「新宿に行くんですけどね~ 埼京線でいくのと、湘南新宿ラインでいくのと、どっちが早いのですかね~?」と、実に期待外れな内容でした。私は心の中で「俺、関西人だよ。このオバサンは聞く人を間違えてるよね~」と思いつつも、言葉では「それは湘南新宿ラインですよ」とバリバリの東京人のような顔付きをして答えていました。オバサンは私に礼を言った後、そそくさと立ち去っていきました。

それから30秒後、今度は人の良さそうな兄ちゃんが私に近づいてきて、おもむろに「湘南新宿ラインは池袋に止まりますか?」と聞いてきました。私は心の中で「俺、駅員さんじゃないんだよ。それに、オセロで言うと黒が先行ですよね?と聞く位、当たり前のことを聞いているよね。」と思いながら、ニッコリと「止まりますよ」と答えました。

妙齢の美女から同じ質問を受けたとすると「お役に立てて光栄です」と少し感激したかもしれませんが、残念ながら本日はそのような感情を持ちませんでした。