鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

3手目に勝負手を打った試合(その2)

2006-05-14 08:58:10 | WOC2005
かくして、第三局は兎定石で始まりローズオープニングへと進んでいきました。
F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3+++●●+++
4+++●●○++
5++●○●○++
6++○○○○++
7+++◇++++
8++++++++
ローズオープニング

黒の私は、次々と白(Takuji)に問題を投げかけたつもりなのですが、序盤、中盤のTakujiの打ちまわしに隙が無く、徐々に形勢を損なっていった感があります。例えば、15をG5と打つのが一般的だと思いますが、私はあえてB6に打ちました。白が16を間違えてB5あるいはA3に打ってくれたら黒がやや有利になるところですが、さすがにTakujiは間違えずにC3と打ちました。

F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7G3C4B4B3B6
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3+○+●●+●+
4+●○●●●++
5++●○●○++
6+◆○○○○++
7+++○++++
8++++++++
次、白番(16手目)

22手目まで進み下記の局面となりました。23はF7と打って白に右側の黒壁を破らせるように打ちたいところですが、23F7の後黒からE7に打てないことに気づき、F7を却下しました。実戦の23D8は苦渋の選択です。

F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7G3C4B4B3B6C3B5A6G5A5A4A3
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3◇○○●●+●+
4○○●○●●++
5○●○●●●●+
6○○○○○○++
7+++○++++
8++++++++
次、黒番(23手目)

37手目はH4に打たないと手が詰まってしまうのでここしかないと思っていましたが、実は4石損の悪手でした。Zebraで分析したところ、37の最善はC2で、38B2 39H3 40H4 41H7 42C1 43B7の進行で黒が一手凌げるので引き分けの形勢とのことでした。実戦では37H4 38G7の進行で黒4石負けの形勢に陥ったのでした。

F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7G3C4B4B3B6C3B5A6G5A5A4A3D8E7C7E8F8C8B8F7G8G4G6H5F3H6H4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3○○○●●●●+
4○○●○●●○37
5○○○○○●○○
6○○○○○○○◇
7++●○○●++
8+●●●●●●+
次、黒番(37手目)

白(Takuji)優勢のまま試合は43手目まで進行し下記の局面を迎え、Takujiは長考に入りました。私は直感で白44F1が浮かびました。44F1 45D1 46D2と打たれると47で黒はB2ぐらいしか打つところが無くなるため、かなりヤバイと思っていました。この進行では、まず勝てないと思いました。Takujiが長考している間、私は様々なことを考えていました。まず、もう一つの準決勝である宮岡七段と韓国代表のLee選手の第三局の勝敗が気になりました。(宮岡七段の準決勝も第二局が終わって1勝1敗で第三局を迎えていました。)「自分は敗北寸前なので、宮岡君だけでも決勝に進出して欲しい。 でも、宮岡君が決勝に進出できたとしてTakujiに勝てるだろうか? 今年も日本代表が優勝できなかったとしたら、かなりまずいことになる・・・」そんなことを考えていました。

F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7G3C4B4B3B6C3B5A6G5A5A4A3D8E7C7E8F8C8B8F7G8G4G6H5F3H6H4G7B7C2C1F2E2
/ A B C D E F G H
1++●+++++
2++●+◆○++
3○○●●●●●+
4○○●○●○●●
5○○○●●○●○
6○○●○●○○○
7+●●○●○○+
8+●●●●●●+
次、白番(44手目)

十分以上の長考の末、TakujiはF1ではなくD2に白石を置きました。逆転の瞬間です。この時、私の全身から力が湧き出てくるのを感じました。私はすぐに、悪手44D2を咎める好手45E1を発見しました。44F1(正解、白4石勝ち)とD2(白10石損)の違いは、上辺の手数の差にあります。実戦の44D2だと45E1 46D1 47H3となり、白からG2の星に打たざるを得なくなります。

48手目まで進んだ局面で私はカウンティングを行いました。49は人間の感覚ではF1だと思います。49F1 50H2 51H8 52H7 53H1 54G1 55B2 56A1 57B1 58A2 59A7 60A8の手順で黒4石勝ちになることを確認しました。しかし、実戦ではTakujiが50手目で2石損のG1に打ったため、私の6石勝ちとなりました。結局、1勝1敗1分+2石という史上まれにみる僅差で、私の決勝進出が決まりました。

F5D6C5F4E3C6D3F6E6D7G3C4B4B3B6C3B5A6G5A5A4A3D8E7C7E8F8C8B8F7G8G4G6H5F3H6H4G7B7C2C1F2E2D2E1D1H3G2F1
/ A B C D E F G H
1++●○●49++
2++○○○○◇+
3○○○○●○○●
4○○●○●○○●
5○○○●●●○○
6○○●○●○○○
7+●●○●○○+
8+●●●●●●+
次、黒番(49手目)

終わってみると、試合前に期待した通りTakujiのミスを誘って勝ちましたが、予想より遥かに苦しい試合内容でした。生涯忘れられない試合になると思います。