鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

アイスランド産アヒルの失踪

2007-11-10 17:05:11 | WOC2005
久しぶりのブログ更新です。先週末は伊勢志摩スペイン村に家族旅行に行ったので、ネットオセロもブログ更新も出来なかったのでした。さて、今日は最近、私がショックを受けた事件について書いてみたいと思います。

2005年の世界選手権はアイスランドで開催されました。その年の日本代表は、マミさん、サギリさん、たまちゃん、それに私というメンバーでした。アイスランド・レイキャビックのホテルに6泊したわけですが、不思議なことに、各部屋のお風呂場にはアヒルの子供のゴム製人形が置いてあったのでした。正確な目的は分かっておりませんが、おそらくアヒルの人形と一緒に入浴して疲れを癒しましょう!とのホテル側の配慮ではないかと推測しています。

もっと正確に言うと、上述の4人の内、なぜかマミさんの部屋にアヒルの人形が置いて無かったため、私の部屋のアヒルをマミさんに献上したのでした。その後、代表選手団の間で私の子供達のお土産にアヒルは必要ではなかったか!との意見が出たため、当時独身だった、たまちゃんが自室のアヒルを私に譲ってくれたのでした。

こうして、約2年前にアイスランド産アヒルのゴム人形が我が家の風呂場にやってきたのでした。我が家にアヒルがデビューした直後は、子供達の間で大人気で取り合いが起こったほどでした。しかし、月日が流れて、子供達はアヒルで遊ばなくなり、アヒルは風呂場で放置される状態が続いたのでした。

つい最近、私が子供達と入浴中に、ふとアヒルの存在を思い出したので、アヒルを探したところ、どこにもアヒルはいないのです。風呂場での会話です。
鬼神 「アヒルがどこに行ったのか知らない?」
長男 「あのアヒルはカビだらけになったので、お母さんに回収された。」
そうか~妻の仕業か~ 私は風呂から上がるとすぐに妻に尋ねました。

鬼神 「風呂場のアヒルがどこに行ったか知らない?」
妻  「知らんでェ~ アイスランドに帰ったんとちゃうか!」
鬼神 「・・・(絶句)」

その後、妻に3回ほどアヒルの所在を質問しましたが、いずれも上記の会話が繰り返されるだけでした。オセロ川柳が流行ったのは数週間前だったと思いますが、時代遅れながらも、もう一句だけ詠ませてください。

鬼神のオセロ川柳その3
「気がつけば オセロの思い出 ゴミバコへ」

この三年間を振り返ると4

2007-09-27 00:18:33 | WOC2005
以前ブログで取り上げたように、WOC2005で最も印象に残っている局面を選ぶとすると、Lee選手(韓国)との決勝第1試合・49手目の局面となります。中盤までずっとLee選手にリードされていましたが、相手のミス(42手目)を誘って互角の形勢まで持ってきた試合でした。

この局面で私(黒番)はF8にするかA8にするか迷ったため、長考しました。その結果、A8の隅を取ることに決めたのですが、A8に決めた理由は、白が50手目をA7に打った場合、黒には好手B2があることに気付いたからでした。

1図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2●+○●●●●+
3+●○○○●●●
4+●●○○○○●
5●●○○○○●●
6●●○●●○○●
7+○○○○○◇●
8+○++++●●
次、黒番(49手目)

1図の左辺の形の場合、黒がA8の隅を取った後、白がうかつにA7に割り込んだとすると、黒がB2に打ってホワイトラインを通しにすることで、左辺を守ることができるのです。

49手目A8,50手目A7,51手目B2の後、盤面は2図となります。2図で白がA3に当てたとするなら、B2の黒石が白に変わってしまうため、白がA3に当てる手が悪手となっています。

この手筋(黒A8→白A7→黒B2)は以前Zebraを使って終盤研究を行なったときに、Zebraから教えてもらった手筋でした。この手筋を避けるためには、白はA7に割り込む前に、A3に当てておく必要があるのです。おそらく、白のLee選手はこの手筋の経験が無かったため、黒の好手B2を見落として、A7に打ってしまったのだと推測します。

2図
/ A B C D E F G H
1+○○○○○○+
2●◆●●●●●+
3+●●○○●●●
4+●●●●○○●
5●●○●●○●●
6●○●●●●○●
7○○○○○○●●
8●○++++●●
次、白番(52手目)

この三年間を振り返ると3

2007-09-25 23:37:42 | WOC2005
2005年のWOCレイキャビック大会までに、私はkurnik、Yahoo Japan、Yahoo USAで約2000試合の練習試合を行いました。その上、ほぼ毎日、HappyEnd、Icareを使って、終盤のトレーニングに取り組みました。これも打倒ベン・シーリーに燃えていたから出来たのでした。

その成果はWOCレイキャビック大会で如実に現れました。予選・決勝トーナメント18戦の結果、16勝1敗1分けで優勝しましたし、予選2ラウンドでベン・シーリー氏に勝つことが出来ました。何よりもうれしかったのは、終盤の平均石損が著しく改善されていたことでした。井端君の「数字で見るオセロ」からデータを引用させてもらいますと、WOC2004とWC2005では私の終盤力が著しく改善されたことがよく分かります。

        終盤20手平均石損 黒番の終盤20手平均石損
WOC2004     9.85石         11.00石 
WOC2005     5.11石          3.40石

アンドレアス・ヘーネ戦で悪夢の逆転負けを喫した通り、WC2004では黒番の終盤が弱点になっていましたが、WOC2005では逆に強みに変わっていることが分かります。あくまで私の考えですが、白番の終盤は偶数理論に基づいて打っていけば何とかなる場合もあるので終盤力の差が現れにくい傾向がありますが、黒番では終盤力の差が顕著に現れると思います。(続く)

この三年間を振り返ると2

2007-09-24 08:56:07 | WOC2005
2004年のWOCロンドン大会での私の経験をまとめると下記三点となります。
①ベン・シーリー氏の強さに驚愕し、彼に勝つことが目標になった。
②自分の弱点は終盤力であることが明らかになった。
③Sagiriさんのアドバイスにより、私のオセロ練習方法が劇的に改善された。

②終盤の弱さについては、予選12ラウンドのアンドレアス・ヘーネ(ドイツ)戦での終盤にも現れました。この試合を落としたことにより、私は予選落ちしたのでした。実はロンドンから帰国した後も、この局面が何度も夢に出てきて苦しめられたのでした。

/ A B C D E F G H
1+++●●○++
2++●●○○++
3+●●○●●○●
4●●○○○●○●
5+○○●○○●●
6++○○●○○●
7++○○○○◇●
8+++●●●●●
次、黒番(43手目)

42手目まで黒優勢の局面です。今の私がこの盤面に遭遇したならこう考えます。確かに左下と右上では偶数理論からは逃れられません。しかし、左上に黒から打てない偶数空き(6個)があるので、左下と右上で白に手止まりを打たれても、左上は白から手を付けることになるので、確定石の差で黒が勝つはずである。(正解はA5で黒+14) しかし、当時の私は偶数理論から逃れられないことに動揺してしまい、悪手を連発して逆転負けを喫しました。

2004年11月末にロンドンから帰国した後、すぐに量販店に行って最新のPC(東芝製dynabook)を購入した後、Sagiriさんから教わった通りにYahooBBに加入しました。そして、Icare, HappyEnd,Zebra等のオセロソフトを次々とダウンロードしましたし、連日、ネットでオセロを数十局打つようになったのでした。

この三年間を振り返ると1

2007-09-23 12:01:00 | WOC2005
先週の王座戦で9位に終わったため、今年は日本代表として世界選手権に出場できなくなりました。つまり、WOC三連覇の可能性が無くなったわけですが、私なりに区切りをつけるという意味で、過去三年間を振り返ってみることにしました。

1997~2001年までの5年間は、ほとんど公式戦に出場していませんでした。2002年に6年ぶりに全日本選手権にチャレンジしたものの、予選0勝2敗で惨敗しました。翌年2003年の全日本では予選2勝1敗で、またしても予選落ちに終わりました。そして、2004年の全日本では三度目の正直で優勝したので、世界選手権への切符を手にしました。この当時はネットでオセロを打つこともほとんど無く、Zebraを使って序盤、終盤を研究することもありませんでした。(今から考えると、この状態でよく勝てたと思います。)

2004年にWOCロンドン大会に出場し、結果は5位に終わりましたが、この大会に参加したことにより、もう一度世界チャンピオンになりたいという強い思いを持つようになりました。5位に終わったことは大変悔しかったのですが、それよりも、ベン・シーリー氏の強さに強い衝撃を受けました。私は予選でベンと対戦しましたが、一度も優勢になることなく一方的な展開で負けました。決勝でもベンは末国九段相手に全く危なげない試合運びで二連勝しました。私の中では来年こそはベン・シーリー氏に勝てる実力をつけて、ベンの三連覇を阻止したいという強い思いが沸いてきたのでした。(続く)

WOC2005予選編(第10ラウンド)

2006-07-09 09:41:24 | WOC2005
予選第9ラウンドまで9連勝で準決勝進出まであと一勝となった私は、予選第10ラウンドでドイツ代表のマティアス・ベルグ氏と対戦することになりました。ベルグ氏とはKurnik(ポーランドのオセロ対戦サイト)で数十ゲーム対戦したことがあり、ベルグ氏に対する私の勝率は8割以上でしたので、自信を持って対戦できました。対するベルグ氏は私との対戦に不安があったのでしょうか、試合開始時間になっても姿を現しませんでした。直前までZebraでの研究に没頭していたのかもしれませんね。

さて、試合は20手目まで進んで下記の局面を迎えました。21手目がC2ならまだ互角だったと思いますが、ここでベルグ氏は悪手C1を打ちます。当然、白は22でD1に付けます。

D3C5F6F5E6E3C3F3E2F2C4F7G5D6C6F4G3E1G4D2
/ A B C D E F G H
1++++○+++
2+++◇○○++
3++●○○●●+
4++●○●●●+
5++●○○○●+
6++●○○○++
7+++++○++
8++++++++
次、黒番 (21手目)

白は24で上辺を取りましたが、白石が中央に固まる私好みの形になりました。25は私ならG1に打つところですが、ベルグ氏は大胆にもF8に打ちました。F8に打つことで、黒からG6に打てなくなるので私なら打てない手です。

D3C5F6F5E6E3C3F3E2F2C4F7G5D6C6F4G3E1G4D2C1D1C2B1F8
/ A B C D E F G H
1+◇○○○+++
2++○○○○++
3++●○●●●+
4++●○○●●+
5++●○○○●+
6++●○○○++
7+++++○++
8+++++25++
次、黒番 (25手目)

白優勢のまま29手目まで進行しましたが、ここで白が優勢を拡大する好手順があります。ヒントはE列を白一色にして黒がE7に打てないようにする方法を考えてください。

D3C5F6F5E6E3C3F3E2F2C4F7G5D6C6F4G3E1G4D2C1D1C2B1F8B5G1B6B4
/ A B C D E F G H
1+○○○○+●+
2++○○○●++
3++●○●●●+
4+◆●●●●●+
5+○○○○●●+
6+○○○○●++
7+++++●++
8+++++●++
次、白番 (30手目)

私は30手目をH6にA打ちし、31で黒にH5に当てさせ、32でA4に打って中央の黒石を一掃しました。下記盤面は黒にとっては厄介な形です。白はG6に余裕手がある上、右上にも一手(B2orB3)残っているので大優勢です。

/ A B C D E F G H
1+○○○○+●+
2++○○○●++
3++●○○●●+
4◇○○○○○●+
5+○○○○●●●
6+○○○○●+○
7+++++●++
8+++++●++
次、黒番 (33手目)

結局、白の私が優勢を維持して44-20で勝利し、予選10連勝で準決勝進出を決めましたので、予選11~13ラウンドの解説は割愛することにします。実は予選11~13ラウンドは対戦相手だけでなく、猛烈な睡魔との闘いとなりました。予選2日間の疲れがドッと押し寄せてきた感じでした。しかし、私が不用意に負けるようなことがあると準決勝進出を目指している他の選手に影響を与える恐れがあったので、ベストを尽くしたつもりです。(その結果、1991年のデビッド・シェイマン氏以来の予選13連勝を達成することができました。)

D3C5F6F5E6E3C3F3E2F2C4F7G5D6C6F4G3E1G4D2C1D1C2B1F8B5G1B6B4H6H5A4D7B3A6C7D8C8A5A7H7E8B8E7A2G6
/ A B C D E F G H
1+○○○○+●+
2●+○○○●++
3+●○○○●●+
4○○●○○○●+
5○●○●○○●●
6○○○○○○◇●
7○+●○○●+●
8+●●●●●++
次、黒番 (万事休す)

WOC2005予選編(第9ラウンド)

2006-07-07 20:57:56 | WOC2005
夏風邪をひいてしまい体調が悪かったのでブログの更新が滞っておりましたが、また今日から頑張ります。ところで、いよいよ明日の京都放送「谷口な夜」(11:30PM~)の中で”オセロの達人”が放送されますので、京都放送が受信できる方は是非ご覧になってください。

WOC2005の予選第9ラウンドの対戦相手はフランス代表のタクジ・カシワバラ氏でした。タクジの試合で一番印象に残っているのは、WOC2002で北島秀樹七段との間で行われたプレイオフ(4位決定戦)です。一番勝負で、勝ったほうが準決勝に進出するという非常に過酷な条件です。大激戦の末に北島七段を2石差で破りましたが、タクジの終盤の驚異的な粘りには本当に驚きました。私もWOC2005の準決勝第2局で、優勢に進めながらも、タクジの終盤の粘りに逆転負けを喫してしまい、あやうく決勝進出を逃すところでした。

さて、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、タクジとの予選の試合は準決勝第一局と同じ定石で始まり、32手目でタクジが手を変えるまでは全く同じ進行でした。さて、35手目で黒はどう打つべきでしょうか?

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6D8C5C6C7C8F7G8B5B6B4A3A4E3A6B3F2G5E2C2D2G4H4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++●○○○++
3●●○○○○++
4○○○○○○○◇
5+○○●●●●+
6○○○○●●○+
7++●●●●++
8++●●++●+
次、黒番 (35手目)

私は35をB2に打ちましたが、ここは先にD1に打って白にE1に当てさせてからB2に打つべきでした。36で白にC1に打たれた場合、黒はB1に割り込みますが、白にD1と切り返す手が生じてしまうため、35手目では先にD1に打つべきでした。

39手目まで進行して下記盤面を迎えましたが、40手目の白はどこが最善でしょうか?  

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6D8C5C6C7C8F7G8B5B6B4A3A4E3A6B3F2G5E2C2D2G4H4B2H5G3C1B1
/ A B C D E F G H
1+◆○+++++
2+●●○○○++
3●●○●●●●+
4○○○●○●○○
5+○○○●○○○
6○○○●●●○+
7++●●●●++
8++●●++●+
次、白番 (40手目)

タクジは40をH3に打ちましたが、これが敗着となりました。A1もしくはF8で引き分けの形勢でした。40が悪手なのは、右上に白から打てない奇数(7個)空きをつくったことです。41以降、黒は逆偶数理論にはめることだけを考えれば勝てる形になったのです。41手目で白の悪手を咎めて下さい。

/ A B C D E F G H
1+●○+++++
2+●●○○○++
3●●○○○○○◇
4○○○●○●○○
5+○○○●○○○
6○○○●●●○+
7++●●●●++
8++●●++●+
次、黒番 (41手目)

41手目はA5と打って、白がD1に切り返す手を消すことで黒は勝勢となります。42以降、白がどう打とうと偶数理論を取り戻すことができません。

/ A B C D E F G H
1+●○+++++
2+●●○○○++
3●●○○○○○○
4●○○●○●○○
5◆●●●●○○○
6○●○●●●○+
7++●●●●++
8++●●++●+
次、白番 (42手目)

私は強敵タクジを破って予選9連勝となりました。あと一勝で準決勝進出が確実になります。予選最後の試合という位気合を入れて、予選第10ラウンドの相手であるドイツ代表のマティアス・ベルグ氏を迎えたのでした。

WOC2005予選編(第8ラウンド)

2006-07-01 16:46:43 | WOC2005
予選2日目の初戦でスウェーデン代表のマルティン・エング氏と対戦することになりました。エング氏は身長が2m位ある筋肉隆々とした大男です。それに、スキンヘッドで、口髭を生やしていて、しかも振る舞いがとても力強いのです。一昨年にロンドンでお会いして以来、私の中では「外国選手の中で怖い人No.1」となっていました。

そんなエング氏から前日の帰り際に「タメノリ、明日は覚悟しときな!」と言われて、身も心も縮み上がってしまいました。しかし、予選を通過するためには怖い怖いエング氏からも勝ち点を上げなければなりません。私はホテルの自室でエング氏の対策を立てました。

私は予選第7ラウンド(リー戦)の石の色が黒だったので、第8ラウンドのエング戦は白を持つ可能性が非常に高いと考えていました。OthBaseでエング氏の棋譜を調べた結果、前日のSagiri戦でも同じ進行になったように、エング氏が黒を持って縦取りとなった場合は、虎定石から11手目でF2に打つことが多いことが分かりました。私は11F2以降の応手を中心に対策を練りました。

D3C5F6F5E6E3C3D2F4F3F2
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++○+◆++
3++●○○●++
4+++○○●++
5++○○●●++
6++++●●++
7++++++++
8++++++++
次、白番 (12手目)

D3C5F6F5E6E3C3D2F4F3F2G4E2G3C6D6B5E7C4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2+++○●●++
3++●●○○○+
4++◆○○○○+
5+●●●○●++
6++●○○●++
7++++○+++
8++++++++
次、白番 (20手目)

19まで進行した後、20手目のD1が私の研究の手です。20でD1の打たずにC2に打つと21でC1と打たれた後、黒にG5を狙われる進行を避けたかったのです。

研究の手20手目D1
/ A B C D E F G H
1+++◇++++
2+++○○●++
3++●●○○○+
4++●○○○○+
5+●●●○●++
6++●○○●++
7++++○+++
8++++++++
次、黒番 (21手目)

20手目D1以降、両者ほぼ必然の手が続くのですが、25手目までで黒に上辺にウイング(悪形)を作らせることができました。ここまでは私の研究の範囲で26手目でG5に打って黒に手を渡して、下と右の白壁を破らせる作戦でした。G列に黒石が乗った時点で白はG2にX打ちして上辺のウイング攻撃を行うことが可能ですし、黒D7なら白はC8に打って引っ張りきれると考えていました。いずれにせよ、私の研究では26手目までで白が勝てる形勢であると踏んでいました。

D3C5F6F5E6E3C3D2F4F3F2G4E2G3C6D6B5E7C4D1F1C2E1C1B1
/ A B C D E F G H
1+◆●●●●++
2++●○●●++
3++●●○○○+
4++●○●○○+
5+●●●○●++
6++●○○●++
7++++○+++
8++++++++
次、白番 (26手目)

白優勢のまま38手目まで進み、エング氏は「トラ~イ!」と叫びながら39手目でG7にX打ちしました。白は一手間違えると種石が壊滅してしまう危険な形になりましたが、冷静に対処すれば全く問題ありません。黒は43で再びG2にX打ちの勝負手を放ちますが、44でH8の隅を取られて万事休すです。

D3C5F6F5E6E3C3D2F4F3F2G4E2G3C6D6B5E7C4D1F1C2E1C1B1G5E8D7D8C8B8F7H6C7G6F8G8H5G7A5H2B4G2
/ A B C D E F G H
1+●●●●●++
2++●●●●4341
3++●●●○○+
4+42●●●○○+
540●●●●○○○
6++●●●●●●
7++○○○●◆+
8+●●●●●●44

WOC2005予選編(初日終了)

2006-06-24 09:37:37 | WOC2005
WOC2005の予選1日目を終えて、私が7戦全勝でトップ、6勝1敗でマルティン・エング氏、タクジ・カシワバラ氏等が続きました。一方、ベン・シーリー氏は初日で4勝3敗となり、予選を通過するには2日目に1敗もできないところまで追い込まれていました。第2ラウンドで私に負けた後、第6ラウンドで宮岡七段に、第7ラウンドでマティアス・ベルグに連敗したためです。特に第6ラウンドでベンが宮岡君に負けた試合は一方的な試合で、棋譜を並べてもベンらしくない手が数多く見られました。

まず、ベンが公式戦で8手目をB4に打ったのを初めて見ました。WOC2004の決勝第1試合でも、7手目C4に対してベンは8手目をB3に打ち、9C2 10E3というベン得意の進行で末国九段に勝っています。8手目B4は宮岡君の裏をかく作戦だったのでしょうか?

白 ベン 黒 宮岡七段
F5D6C3D3C4F4C5B4
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○++++
4+◇○○○○++
5++○●●●++
6+++○++++
7++++++++
8++++++++
次、黒番(9手目)

ベンの12手目G5も私にとっては意外な手です。こういうBookもあると聞いたことがありますが、12はC1で白十分ではないでしょうか?

F5D6C3D3C4F4C5B4B3C6C2G5
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++●+++++
3+●●●++++
4+○●○●○++
5++○○○○◇+
6++○○++++
7++++++++
8++++++++
次、黒番(13手目)

13手目A4の後、いつものベンであれば14をF3に打ったと思います。14をE3に打ってしまうと、実戦のように黒F2、白E2、黒F1、白?? 黒F3と打たれて、黒に上辺に引っ張られることで、白の手が詰まってしまいます。

/ A B C D E F G H
1++++++++
2++●+++++
3+●●●+14++
4◆●●○●○++
5++○○○○○+
6++○○++++
7++++++++
8++++++++
次、白番(14手目)

実戦(白、大苦戦)
F5D6C3D3C4F4C5B4B3C6C2G5A4E3E6D2D1F6F2E2B5B6F1A3A5A6F3
/ A B C D E F G H
1+++●+●++
2++●●●●++
3○○●●●◆++
4○●○○●○++
5○○○●○○○+
6○○○○○○++
7++++++++
8++++++++
次、白番(28手目)

WOC2005予選編(第7R終盤)

2006-06-21 21:49:08 | WOC2005
30手目でリー選手はB3に打ちました。黒の私は31手目で満を持してH5の余裕手を放出し、大優勢を確信しました。32で白A6でもC8でも、33はH6に打つつもりでした。

F5D6C3D3C4F4F6G5E6D7E3E7G3C5B6F3G4E2F2H3C6C2C7B5D2C1D1F1E1B3
/ A B C D E F G H
1++○●●○++
2++○●○●++
3+◇○○○○●○
4++○●○○○+
5+○○○○○○+
6+●○●○○++
7++●○○+++
8++++++++
次、黒番(31手目)

ここで、リー選手は最後の粘りを見せます。32手目でH4に当てて、33で黒にH2と右辺を取らせた後、34でG2にX打ちの勝負手を放ちます。35手目は第一感でもA3でした。私の構想は、H1の隅を取って白にG1に割り込ませた後、B2にX打ちして2筋の石を根こそぎ黒石に変えて確定石を稼ぎたいと考えました。そのためには、2筋の白石をそのままにした状態で、ブラックラインを切る必要がありました。

/ A B C D E F G H
1++○●●○++
2++○○○○◇●
3+○○○○○○●
4++○●○○○●
5+○○○○○○●
6+●○●○○++
7++●○○+++
8++++++++
次、黒番(35手目)

35手目A3の後、36B4 37A6 38C8 39A4 40A5の進行で下記の局面を迎えました。黒が最も簡明に勝ちきる手順を見つけてください。

/ A B C D E F G H
1++○●●○++
2++○○○○○●
3●●○●●●●●
4●○●●○○○●
5◇○○○○○○●
6●○○●○○++
7++○○○+++
8++○+++++
次、黒番(41手目)

私が選んだ手順は当初の構想通りです。41手目でH1の隅を取り、42G1の後、43でB2にX打ちして2筋を根元(G2)から黒石に変えました。そして、44手目A1 45B1 46A2の後、47手目でB7にX打ちすることで、ブラックラインが黒の通しになるので勝負が決まりました。

黒勝勢
/ A B C D E F G H
1○●●●●○○●
2○●●●●●●●
3○●○●●●○●
4○●○○●○○●
5○●○●○○○●
6●●●●○○++
7+◆○○○+++
8++○+++++
次、白番(48手目)

試合の結果は47-17で黒の私が大勝しました。難敵リーに快勝した私は、予選1日目を7戦全勝で終えることが出来ました。しかも、既にベン・シーリー、宮岡七段、リー等の強敵に当たっていましたので、気分的には随分楽でした。

しかし、予選1日目の夜と2日目の早朝は、対戦が予想されるマティアス・ベルグ、タクジ等の研究に明け暮れたのでした。