鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

WOC2005予選編(その2)

2006-05-19 22:38:40 | WOC2005
世界選手権の予選1回戦のペアリングは前夜祭の中で行われますが、私の1回戦の相手はオーストラリア代表のジェフ・ハバード選手に決まりました。石の色も既に決まっており、私が黒番でハバード選手が白番になりました。ハバード選手は日本ではあまり名前が売れていませんが、WOC2003の1回戦で後藤宏七段に大勝したこともある実力者です。私は十年前のW0C1995でハバード選手と対戦したことがありますが、当時とは比べものにならない程実力をつけているはずだと思っていました。

ペアリングが終わった後、宮岡七段が目をキラキラさせながら私に近づいてきて、「ハバードさんって確か2年前に後藤さんに大勝した選手ですよね。為則さん、大丈夫ですか?」と聞いてきました。私は内心「嫌な相手に当たったよな~今年もついていないよな~」と思っていましたが、「楽勝だよ」と精一杯強がってみました。とは言ったものの、一刻も早くハバード対策を練りたかったので、パーティーの途中で会場から抜け出して、ホテルの自室へと戻ったのでした。

私は自室でPCに電源を入れてOthBaseを起動し、White playerの名前をジェフ・ハバードと入力して、OtheBaseに収録されているハバード選手の棋譜を呼び出しました。まず分かったことは、ハバード選手が白を持った時は必ず縦取りを打つということです。次にWOC2003で後藤七段に大勝したときもハバード選手は白番であったこと、そして、その試合は、虎定石からF.A.T drawと呼ばれる定石に進みましたが、後藤七段はこの定石に明るくなかったのか中盤の初めで悪手を放ち、ハバード選手がそのまま優勢を維持して大勝したことが分かりました。ハバード選手は白を持って優勢になると、かなり手強いということです。

OtheBaseには、後藤七段戦以外にもハバード選手が白番でF.A.T drawを打った試合が何局か収録されていましたが、ここで大きな発見をしました。それは、ハバード選手はこの定石になると26手目でA4に変化するケースが多いと言う事です。通常、白は26手目でB5に打ちますが、26でA4に打つと白からE3を狙えなくなるので、あまり上手い変化だとは思いません。


F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6F8F7G5H6H4G4H3H5H7C5B4E8D8
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++++++++
3++●○+○+●
4+●●●○○○●
5++●○○○○●
6+++●○●●●
7+++●●○+●
8+++◆●●++
次、白番(26手目)

以上の検討の結果、私はハバード戦ではF.A.T drawを使うことに決めました。しかし、実戦ではハバード選手は26を普通にB5に打ったので、私は一瞬青くなりましたが、続く28手目でC2、30手目でG2と連続して悪手を打ってくれたので、徐々に優勢を拡大することができました。結局のところ、ハバード選手はこの定石での変化のポイントが上手くない、つまり、この定石を不得手にしているのだと思います。


F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6F8F7G5H6H4G4H3H5H7C5B4E8D8B5G3C2E3G2
/ A B C D E F G H
1++++++++
2++○+++◇+
3++○○●○●●
4+●○●○●●●
5+○○○●○●●
6+++●○●●●
7+++●●○+●
8+++●●●++
次、黒番(31手目)


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