鬼神の秘密

'05~'06オセロ世界チャンピオン 為則英司のブログです。

WOC2005予選編(その4)

2006-05-27 12:57:04 | WOC2005
予選第2ラウンドで世界選手権連覇中だった王者ベン・シーリー氏(米国代表)を撃破しましたが、予選リーグはまだ11試合も残っていました。私の予選第3ラウンドの対戦相手はイギリス代表のグレアム・ブライトウェル氏に決まりました。ブライトウェル氏は1988,89,97年の世界選手権(WOC)で2位になったこともある強豪です。WOC1988,1989では決勝(3番勝負)で全盛期の私と対戦し、2年連続で2連敗して優勝を逃しましたが、この頃がブライトウェル氏にとっても全盛期であったと思います。当時のブライトウェル氏はケンブリッジ大学・数学科の学生でしたが、大学を卒業後、ロンドンの大学で教授として教鞭を揮っているそうです。

実を言いますと、私はブライトウェル氏に対する対策については、ほとんど何も考えていませんでした。彼に過去8戦して一度も負けていなかったため、何となく勝てそうな気がしていたからだと思います。しかし、試合が進むにつれて、私の自信は単なる過信であったことが分かりました。序盤~中盤の白(ブライトウェル氏)の打ち方は実に巧みで、37手目まで進行した時点(下記局面)では「黒(私)若干不利」との形勢判断をせざるをえませんでした。

F5D6C3D3C4F4F6F3E6E7D7G6D8C5C6C7C8F7G8B3E3D2G5H6G4G3C2B5B4E2D1A4F1E1A6A5B6
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●○○+++
3+○○●○○○+
4○○●●●○○+
5○○●○○●○+
6●◆●●●●○○
7++●●●●++
8++●●++●+
次、白番(38手目)
Whiteブライトウェル Black私

私は38手目で白がB7にX打ちしてくることを予想していました。38B7に対して、39でA3と打って左辺を取り、白に40でB8と打たせた後、41でF2に打って白に手を渡すつもりでした。ブラックラインが白の通し(白一色)になると、黒はA8とA7に連打できますよ!と白にプレッシャーをかける構想です。黒(私)は不利なので局面を複雑にすることで、白のミスを誘う戦法を取るつもりでした。

私の構想図
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●●●◆++
3●●●●●●○+
4●●●●●●○+
5●○●○○●○+
6●○○○●●○○
7+○○●●●++
8+○●●++●+
次、白番

ブライトウェルは上記進行を嫌ったようで、38手目でA7に打って左辺を取りましたが、私は白の38を悪手であると判断しました。38手目によりD4の石が白に変わったため、39手目で黒がB2にX打ちすると、ストーナートラップが成立するので、形勢は黒に傾いたと考えました。

/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2++●○○+++
3+○○●○○○+
4○○●○●○○+
5○○○○○●○+
6○○●●●●○○
7◇+●●●●++
8++●●++●+
次、黒番(39手目)

黒がストーナートラップをしかけた局面
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2+◆●○○+++
3+○●●○○○+
4○○●●●○○+
5○○○○●●○+
6○○●●●●○○
7○+●●●●++
8++●●++●+
次、白番(40手目)

ブライトウェルは素直に40手目をB7に打ちましたので、41A3 42C1 43B1 44A1 45A2 46G1 47H4という黒にとって非常に分かり易い手順で黒の勝勢になりました。試合の結果は41-23で私の18石勝ちとなりました。

黒、勝勢
/ A B C D E F G H
1○○○○○○○+
2●●●○○+++
3●●○●○○○+
4○●○●●●●◆
5○○○○●●●+
6○○○●●●○○
7○○●●●●++
8++●●++●+
次、白番(48手目)

しかし、私は39手目をB2にX打ちする段階で、40で白がF8に打ってホワイトラインを切ってきた場合の進行について、かなり時間をかけて読んでいました。もちろん、この進行の方が複雑な局面が続くので、有利な黒(私)にとっては嫌でした。

白が40手目でF8に打った局面
/ A B C D E F G H
1+++●○●++
2+●●○○+++
3+○●●○○○+
4○○●●●○○+
5○○○○●○○+
6○○●○●○○○
7○+●●○○++
8++●●+◇●+
次、黒番(41手目)

私は40でF8に当てられても、41ではE8に打たずに下辺を放置した状態で、A3に当てるつもりでした。41A3以降、42H8 43A8 44E8 45F2 46C1 47B1 48A1 49A2 50G1の進行を予想しましたが、51手目でG7の好手が見えたので黒の勝ちだと読みました。51G7で7筋が黒一色になるので白は52手目でH7に打つことができず、B8に指定打ちとなります。

黒の好手G7(51手目)
/ A B C D E F G H
1○○○○○○○+
2●●●○●○++
3●●○●○○○+
4●○○●●○○+
5●○○○●○○+
6●○○○●●○○
7●+●●●●◆+
8●+●●○○○○
次、白番(52手目)