残照日記

晩節を孤芳に生きる。

神意の行方

2011-07-18 18:40:34 | 日記
【旧約聖書の言葉】
≪戦いの日のため馬をそなえる。しかし勝利は主による。≫(「箴言」)≪天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。生るるに時があり、死ぬるに時があり、…泣くに時があり、笑うに時があり、悲しむに時があり、踊るに時があり、…失うに時があり、保つに時があり、…愛するに時があり、憎むに時があり、戦うに時があり、和らぐに時がある。…神のなされることは皆その時にかなって美しい。神はまた人の心に永遠を思う思いを授けられた。それでもなお、人は神のなされるわざを初めから終りまで見きわめることはできない。≫(「伝道の書」)

≪なでしこ、米破り初の世界一 PK戦3-1 沢がMVP──サッカーの女子ワールドカップ決勝で、日本女子代表(なでしこジャパン)は17日(日本時間18日未明)、ドイツで米国代表と対戦し、延長戦を2―2で終えた後のPK戦の末に米国を破り、初優勝を決めた。 日本は後半35分に宮間(岡山湯郷)が同点ゴール。延長前半に勝ち越されたが、同後半に沢(神戸)が得点。PK戦を3―1で制した。沢はMVPと得点王に輝いた。≫(7/18朝日新聞・電子版)≪初優勝した日本を米国の各メディアは17日付の報道で称賛した。スポーツ専門局ESPNは、リードを奪われる度に追い付いた日本について称賛した。スポーツ専門局ESPNは、リードを奪われる度に追い付いた日本について「不屈の姿勢を示し、2度のビハインドをはね返した。米国守備陣にできたわずかな隙を見逃さなかった」とたたえた。ニューヨーク・タイムズ紙は「より背が高く大きい相手に対し、気骨あるところを見せた」と体格で劣る日本選手の奮闘を伝えた。…テレビ局のFOXスポーツは、日本は過去の対戦で米国に未勝利だったことを紹介した上で、「日本チームは大震災の混乱が続く母国に感動をもたらしたいと願って奮起した」と選手の士気の高さを強調した。≫(7/18時事通信)

∇偶然午前3時に目が覚めたので、小用に立ち、そのまゝ女子ワールドカップ決勝戦を見た。あっという間に熱戦に引き込まれた。序盤戦は圧倒的に米国ペースで、大型選手の足から蹴り出される強烈キックが何度もゴールを襲う。日本勢は前面突破が出来ない。こりゃあダメだ、と思っているうちに様子が変わってきた。米国のキックが何度も的を外す。中盤頃になるとジワ/\日本勢のパスが通り、敵陣を襲う形勢が見られてきた。米国が得点する。動ぜず体制を戻し、ほんの一寸の隙を狙って同点ゴールを奪う。もう終盤戦は目が離せない。この粘り強さ。しかも選手たちに気負いは全く見られない。淡々と目前のボールを転がし、パスする。ボールを奪いあい、蹴る。たゞたゞ感心するのみ。そのまゝ延長戦突入だ。前半戦に得点されるが、後半戦、終了時間間際に奪い返す。遂にPK戦に持ち込んだ。それから「奇跡」が起こった。「金縛り」にあったように、米国選手のフリーキックが2度もキーパーに阻止され、又、大きく外れる。結果、PK戦は3-1で、どこか唖然とした状態で試合は幕を閉じた。日本サッカー協会の川淵三郎名誉会長曰く、≪奇跡は起こるんだね。大きな夢を持って一生懸命練習して、最後まであきらめずにフェアプレーでひたむきに頑張ったからこそ、勝利の女神がほほ笑んでくれたんだ。≫(毎日)と。

∇川淵氏が言われるように、まさに、≪大きな夢を持って≫、粘りに粘り、≪ひたむきに頑張った≫ことが、≪勝利の女神≫を微笑ませたようだ。これから数日間は、日本のメディアも競ってそう褒め称えることだろう。上記ニューヨーク・タイムズ紙は、≪試合を優位に進めながら敗れた米国に対しては、「好機を逃したことや守備のミス、2度のリードを守れなかったことを長く悔いるだろう」と論評した。≫という。──さて、興奮も冷めて落ち着いてみると、今回の決勝戦は、人生を考える上で色々なことを考えさせられる。例えば、試合を見る限り、≪ひたむきに頑張った≫のは我が「なでしこジャパン」だけではなかった。世界ランク№1を誇る米国側の≪ひたむき≫さは、決して我がチームに劣ってはいなかった。懸命に好機を作り出し、何度も攻めた。「なでしこ」の何倍もゴールを狙うキックがあった。なのに何故、≪勝利の女神≫は彼らに微笑まなかったのか。自然と「箴言」の言葉が頭脳をよぎる。≪戦いの日のため馬をそなえる。しかし勝利は主による。≫(「箴言」) 誰もが勝利を狙って努力する。しかし、勝敗は神の手にある。即ち、何故か知らぬが、「神意」は日本に勝利を授けるべく向いていた、としか思えない。

∇問:「大きな夢を持ってひたむきに頑張れば、勝利の女神は必ず微笑むか」。どうもそうとは言えないようだ。夕方テレビ朝日のニュースを見ていたら、「被災地 生活保護世帯急増」の実態が取り上げられていた。被災地では若者がリストラと求人難で、働く場所が無い。まして高齢者には。仙台市では毎月生活保護費だけで約20億円の支払いが発生し、かつ、現在尚500人以上の申請があるという。「夢なんか持てないよ。仕事をくれ、仕事を」と苛立つ被災者の声が胸に響いた。「なでしこジャパン」は、それなりに暮らせることができ、何かの理由で滅入っている人には「元気」を与えたことだろう。だが、それも一瞬のこと。特に、現実の生活に困窮している人々には、ある意味で無縁の話だ。メディアは余り騒がぬ方がいゝということになる。又、過去の例を挙げるまでもなく、勝った「なでしこジャパン」の面々が、皆、幸せの切符を手にしたわけではない。実は「優勝─世界一」が、メンバーのそれぞれに、将来の人生の吉凶を分ける新たなターニングポイントになる。≪天が下のすべての事には季節があり、すべてのわざには時がある。…人は神のなされるわざを初めから終りまで見きわめることはできない。≫のである。

∇先日、イギリスで、ここ数年体調を崩して失業していた夫婦が、欧州宝くじ史上最高額203億円を当てたというニュースがあった。こんな話を耳にすると、「幸運の女神」なるものは、どうも「神の気まぐれ」としか解せない。又、チリ北部サンホセ鉱山の落盤事故で地下深く閉じ込められ、69日後の昨年10月に、奇跡的に救出され、世界の人々をテレビに釘付けし、その救出劇が絶賛を浴びた事件があった。現在、≪救出された作業員33人のうち31人が、政府が必要な安全監督責任を怠っていたことが事故を招いたとして、政府を相手取り、約13億2000万円の損害賠償を求める訴えを起こした。地元メディアが16日伝えた。≫(7/17時事通信)という。≪世界的な注目を集めた「奇跡の生還」を果たした作業員だが、多くは救出後に精神面で苦痛を引きずり、仕事に復帰できないなど苦労を強いられている≫のだそうだ。美談も形無しということだ。最後に政治についても同じことが言えると思う。菅首相があらん限りの中傷誹謗を受けながら、粘りに粘って政権にしがみついていることが、日本の政治に大転換を起こす契機になることもあり得る。というのは、民主党の二大病根である鳩山・小沢グループを揺さぶり、どんぐり後継者達を篩にかけ、自民党執行部の無力ぶりを世間に晒し、結果として次代を担おうとする若きグループによる政界再編を促すことに繋がるかもしれないからである。「神意」測り難し!