残照日記

晩節を孤芳に生きる。

政治改革⑮

2011-07-12 19:43:19 | 日記
【新聞の責任】(終戦直後の朝日新聞の場合)
≪敗戦の責任は決して特定の人々に帰するべきでなく、一億国民の共に負うべきものであらねばならぬ。さりながら、その責任には、自ずから厚薄があり、深浅がある。 特に国民の帰趨、世論、民意などの取り扱いに対して最も密接な関係を持つ言論機関の責任は極めて重いものがあるといわねばならない。吾人自ら如何なる責任も如何なる罪もこれを看過し、これを回避せんとするものではない≫(終戦後8日目の昭和20年8月23日付朝日新聞社説「自らを罪するの弁」)

∇≪首相辞任「8月末までに」7割 朝日新聞世論調査──朝日新聞社が9、10両日に行った全国定例世論調査(電話)によると、菅直人首相の辞任の時期について、8月末までの今国会の会期内にやめるべきだという意見が7割に達した。内閣支持率は鳩山内閣末期(17%)を下回る15%となり、政権交代後の最低となった。 首相の辞任時期を3択で尋ねると、「ただちに」が31%、「いまの国会が終わる8月末までに」が39%だったのに対し、「9月以降でよい」は23%だった。 前回6月調査では内閣支持率22%、不支持率56%。今回の不支持率66%は菅内閣で最悪の数字だ。≫──朝日新聞の最新アンケート結果が出た。当社は、先の第二次世界大戦終戦直後の 社説「自らを罪するの弁」で、≪その(戦争)責任には、自ずから厚薄があり、深浅がある。 特に国民の帰趨、世論、民意などの取り扱いに対して最も密接な関係を持つ言論機関の責任は極めて重いものがあるといわねばならない。≫と、「マスコミ」が≪国民の帰趨、世論、民意≫に大きく影響を与える責任について明言・反省宣言をした。現在の如く大震災直後で政局が昏迷している時も、全く同様の決意を以て、世論を読みほぐす大役があることを自覚せねばならないと思う。

∇しかし、当ブログで再三に亘り指摘したように、アンケートを小まめにとるのは良しとしても、その分析が表面的であっては、「自らを罪するの弁」と齟齬をきたすのではないか。上記オンライン記事も、今日の朝刊も見出しが余りにも拙い。因みに一面の見出しは、≪「今国会で退陣を」7割≫(大見出し)≪菅内閣支持率 最低15%≫(中見出し)、別面分析記事では≪辞任時期「明確に」60%≫(大見出し)≪首相示した条件58%「納得できぬ」≫(中見出し)、≪原発再開「テスト後」66%≫(大見出し)≪慎重姿勢 鮮明≫(中見出し)とあった。別面に質問の詳細と回答状況が逐一載ってはいるが、忙しくて内容まで詳しく読まない読者には、「菅さん、辞任時期を明確にして早く辞めろ!、支持率15%はもう死に体ゾーンだ。たゞ、原発再開は慎重であれ!」としか読めない。実は今回の調査にも、支持政党、原発利用の是非等貴重な質問項目が盛られているのに、記事そのものには何も触れられず、「民意」が店晒しになっている。幾つか拾ってみよう。先ずは政党支持率。民主17、自民17、公明3、共産2、社民1、みんな2、国民新0、たちあがれ日本0、減税日本0、新党日本0、新党改革0、その他の政党0、支持政党なし53。

∇支持政党なしが53%、民主・自民が共に17%、支持率0%の政党が国民新、たちあがれ日本、減税日本、新党日本、新党改革、その他の政党とあるのをどう読むのか。何度も言うように、菅首相はもう退任するのだ。死に体内閣なのは自明の理だ。なのに朝日新聞ともあろうものが、未だに「菅降ろし」しか読めていないのか。何故「菅降ろし」後を問わず、又、支持政党なし5割強にして野党第一党である自民党への支持率の低さを問題視しないのか。不思議なくらいだ。又、原発関連に次の質問・回答があった。①原子力発電を利用することに、賛成ですか。反対ですか。→ 賛成34、反対46。 ②原子力発電を段階的に減らし、将来は、やめることに賛成ですか。反対ですか。→ 賛成77、反対12。 ③原子炉の寿命は30年から40年程度と考えられてきました。これに対し、国は安全性が確認できれば、それ以上長く運転できるとしています。こうした古くなった原子炉は廃止した方がよいと思いますか。運転を延長して構わないと思いますか。→ 廃止した方がよい86 。運転を延長して構わない8 。etc etc これらから「民意」の何を引き出し、朝日新聞としてはどう論評するのか。殆ど何も記述されていない。

∇朝日新聞は先の「自らを罪するの弁」に続き、昭和20年11月7日付紙面で「国民と共に立たん 本社、新陣容で「建設」へ」と題して、≪開戦より戦時中を通じ、幾多の制約があったとはいへ、真実の報道、厳正なる批判の重責を十分に果たし得ず、またこの制約打破に微力、ついに敗戦にいたり国民をして事態の進展に無知なるまま今日の窮境に陥らしめた罪を天下に謝せんがため≫、≪村山社長、上野取締役会長以下全重役、および編集総長、同局長、論説両主幹が総辞職するに至った≫。≪今後の朝日新聞は全従業員の総意を基調として運営されるべく、常に国民とともに立ち、その声を声とするであらう、いまや狂瀾怒涛の秋、日本民主主義の確立途上来るべき諸々の困難に対し、朝日新聞はあくまで国民の機関たることをここに宣言するものである≫と高らかに謳った。そして27年に「新」朝日新聞綱領が策定された。曰く、≪一、不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す。一、正義人道に基いて国民の幸福に献身し、一切の不法と暴力を排して腐敗と闘う。一、真実を公正敏速に報道し、評論は進歩的精神を持してその中正を期す。一、常に寛容の心を忘れず、品位と責任を重んじ、清新にして重厚の風をたっとぶ。≫と。──国民参加の政治改革を述べるに当たり、くどいようだが、国民に正しい情報を供与すべく、見出し一つに、深意を表現する工夫をしてもらいたい。朝日新聞を代表として「マスコミ」に苦言を申す次第である。