残照日記

晩節を孤芳に生きる。

政治改革⑬

2011-07-08 19:50:41 | 日記
【国民投票】
≪「日本国憲法」第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。≫
注:「国民投票制度」は、上記第96条に定める日本国憲法の改正に関する手続を内容とする「日本国憲法の改正手続に関する法律(憲法改正国民投票法)」に則り実施される。平成22年5月18日に施行された。

∇<首相 原発再稼働の混乱を陳謝──8日の閣僚懇談会で、菅総理大臣は、原子力発電所の再稼働を巡り「ストレステスト」と呼ばれる追加的な安全確認の実施を決めたことで、地方自治体が混乱していることについて「私の指示の遅れと不十分さがあったことに責任を感じている。おわびしたい」と述べ、陳謝した。これに関連して、中野国家公安委員長は「菅総理大臣と海江田経済産業大臣の発言がいろいろ取り沙汰されているが、この際、意思の統一を明確に図ってもらいたい」と求めた。枝野官房長官は、このあとの記者会見で「九州電力玄海原子力発電所がある佐賀県玄海町や佐賀県民を始め国民の皆さんには、大変心配や迷惑をかけている。できるだけ早く、分かりやすく説明しないといけないと考えており、詰めの作業をしている」と述べ、原発の再稼働に関する国の統一見解を速やかに示す考えを明らかにした。>(7/8NHK午後のニュース)

∇昨日、海江田経産相が、午前の参院予算委員会で、菅政権が全国の原発で行う「ストレステスト」に、九州電力玄海原発の地元などが反発していると指摘され、「時期が来たら責任を取らせていただく」と、辞意表明して物議を醸している。停止中の原発の運転再開をめぐる菅直人首相の方針が二転三転していることに不満を募らせたもの。今朝の6大新聞は、菅首相が原発方針あいまいにしたまゝ、思いつき発言すること、そのため閣僚・与党内で混乱が起き、「内閣崩壊」の危機に瀕している異常さを痛烈に批判した。<そもそも方針のあいまいさが問題だ。国民の不安と疑問の根底には、政府が、自然エネルギーの普及や発送電の分離といったエネルギー政策の未来図を、いつまでたっても示せないことがある。>との東京新聞の主張には誰しも同感であろう。たゞ、異口同音に批判の矛先を総て「菅首相」に向けた以外、各紙の主張内容は、微妙に異なっている点に注意したい。先ず、<原発再稼働混乱 首相は電力「危機」を直視せよ>(読売)<電力危機回避にだれが責任を持つのか>(日経)<原発検査 再稼働問題もてあそぶな>(産経)として、国内電力需給の逼迫を懸念するのが、読売・日経・産経3紙であるが──

∇読売は、<自然エネルギーの普及を目指す「再生可能エネルギー特別措置法案」への執着もいいが、目の前の問題解決が先だろう。>と、将来の自然エネルギー普及論より、目前の原発維持に力点を置き、産経は、<玄海原発は、東日本大震災後に止まったままとなっている他原発の再稼働に先導的な役割を果たすと期待されていた。>と「原発再稼動擁護論」に立った<国民生活や産業経済活動への負の作用>批判を連綿と述べた。日経は、この問題に至急手を打たねば、玄海原発→福井県→西日本へと電力危機がドミノ倒しに拡がる可能性を重視し、<原発再稼動ができない場合の電力の供給能力を包み隠さず国民に明らかにすることが出発点だ。>と提案している。国内電力需給の逼迫を懸念する主張3紙の中では、日経が最も冷静で説得力を持っている。一方、東京新聞は、政府の方針欠如を糾弾しながらも、<玄海原発の地元、玄海町や佐賀県は再開容認へ動きだしていた。しかし、隣県の長崎や周辺自治体の首長、住民には、拙速な再稼働を不安視する声が強まっている。ストレステストは、こうした不安や疑問を真摯に受け止め、それらを解消するために実施されるべきである。…「再稼働」優先が過ぎる。>と拙速な再稼働動向にクギをさした。

∇毎日も <原発耐性試験 欧州以上に徹底せよ>と題して、「原発再稼動慎重論」を強く主張している。<政府は全国の原発施設に「ストレステスト」を課すことを決めた。本来、もっと早く実施すべき施策であり、ここに至った経過にも疑問は残るが、各原発の安全性を評価する上で一歩前進だ。…テストの手法と実施計画は初めから「合格ありき」にならないよう、時間をかけて緻密に作ってほしい。テスト終了まで再稼働を見合わせるのは当然だ。中途半端なテストに終わらせず、欧州以上に徹底した試験を実施してほしい。…国民は単なる安心を求めているのではない。実質的な安全評価にこそテストを役立ててほしい。>と。「原発再稼動擁護論」でも「原発再稼動慎重論」でもないのが朝日で、<あの事故のあと、早々と安全を宣言することに無理があった。海江田氏がもし、メンツをつぶされたことに腹を立てているなら、情けないの一言だ。 だが、原発再稼働という喫緊の課題すら、閣内の意思疎通が欠けていた現実の方が驚きだ。 責任は首相にある。安全宣言の前に海江田氏を押しとどめ、ストレステストを指示していれば、混乱は起こらなかった。… せっかく良い方向性を示しても、進め方が下手でチームが壊れれば、政治は動かない。それは政権の終わりを意味する。>と、「組織責任論」に終始している。

∇そして、<(首相は)「退陣3条件」を掲げている。いずれも必要だと私たちも考える。だから、速やかに3条件を満たすことを与野党に求めてきた。 しかし、自壊していく内閣にやりきる力が残っているのか。ここまでくると、強く危惧せざるをえない。>と菅首相の「不信任」で締めている。次の二紙と同様に。<この首相の下では、日本経済は沈んでいくばかりだ。菅政権に一刻も早く終止符を打つ手立てを政界全体で考えるべきである。>(読売)<最近の首相は、「脱原発解散」をちらつかせている。ストレステストが解散の布石であるなら、言語道断である。>(産経)──さて、枝野官房長官は、今日、九州電力玄海原子力発電所がある佐賀県玄海町や佐賀県民に謝罪し、原発の再開に関する国の統一見解を速やかに示す考えを明らかにした。老生思うに、朝日・読売・産経の如く、今更、週刊誌的興味本位で、菅首相と海江田経産相の亀裂がどうの、閣僚からの苦言がこうのを書き立てるのは、次元の低い話でどうでもよい。今からこそ、「原発再稼動」「原発慎重再稼動」に止まらず、「脱原発」まで含めた<エネルギー政策の未来図>を、内閣・与党、そして野党各党がそれぞれ「熟議」して、それを元に喧々諤々徹夜の討論・統一見解を練り上げてもらいたい。何故ならいつまでも菅首相の悪口雑言で問題をすり替えていると、孰れにせよ、眼前に迫った次の政権(民主党或は野党)、ひいては我々国民に、そのツケ、そしてしっぺ返しが跳ね返ってくるのだから。今回「国民投票」を論じるつもりであったが、政局“火宅”状況につき、次回に延期することにした。悪しからず。今日はこゝまで。