残照日記

晩節を孤芳に生きる。

窮鼠猫を噛む

2011-06-22 19:21:46 | 日記
<国会会期70日間延長を議決──22日夕方開かれた衆議院本会議で、この日が会期末の今の国会を8月31日まで70日間延長することが、与党などの賛成多数で議決された。>(6/22 午後5時2分 NHKオンライン)

∇<午後4時から衆議院本会議が開かれ、各党が、会期の延長に賛成と反対の立場から討論を行った。このうち、民主党の高山智司氏は「被災者のみならず、すべての国民が、与野党が協力して取り組むことを期待しており、今後もオールジャパンで震災対応に取り組むことが必要だ。野党側は、政局優先で会期の延長に反対すべきでない。震災復興には夏休みはなく、与野党は全力で働くべきだ」と述べた。これに対し、自民党の木村太郎氏は「菅総理大臣は自分の地位を守るために公党間の信頼関係を壊した。『熟議の国会』と言っていたが、全くのうそだった。民主党も政党の体をなしておらず、菅総理大臣の下では被災地の復旧・復興は進まない。菅総理大臣は一刻も早く退陣すべきだ」と述べ、70日間の会期の延長に反対する考えを示した。そして、採決が行われた結果、与党と、共産党、社民党、みんなの党などが賛成、自民党と公明党、たちあがれ日本などが反対し、賛成多数で70日間の会期延長が議決された。>(同上)

∇尚、午後7時のNHKニュースでは、菅首相の下で、2次補正と特例公債法案を成立させる、再生可能エネルギー促進法案を実質審議入りさせる、3次補正は「新体制の下で対応」するとしている。首相退陣の時期に加え、会期延長日数でも二転三転したギクシャク決議は、残る70日にもつれ込むことになった。特に、「新体制の下」の「新体制」が何を意味するのかが不明で、今後の論議の的になる。この「国会会期70日間延長」が、大震災復旧速度、復興諸政策、そして与野党、ひいては日本の将来にどのような影響を与えるかは、現在のところ全く予測できない。要するに今後70日間の首相・与野党の姿勢次第である。我々は事態の推移を注視し、百出する筈のマスコミや評論家の言い分を冷静に自分の頭で咀嚼し、かつ彼らを監視することが大切であろう。「政治の質は、国民の質に左右される」のだから。どう監視し、政治の質をどうレベルアップしていくべきかは、現在当ブログの課題でもあるので、次回以降順次述べていこうと思う。今回は、菅首相がこゝまで粘り腰で退陣拒否し続けている理由と、「菅降ろし」失敗の原因を探ってみたい。

∇辞めない理由のヒントは次の6月12日付け読売新聞の記事にある。<「四面楚歌」の菅首相、被災地で励まされる──菅首相は11日、東日本大震災の発生から3か月を迎えたのに合わせ、津波などで大きな被害を受けた岩手県釜石市を訪問した。首相の被災地視察は、2日の退陣表明後は初めて。同市の魚市場を訪れた際、漁業関係者から「辞めないで頑張ってください。ここに来る時間があるなら、早く予算を付けてください」と迫られた首相は、「必ず付けます」と応じた。また、同市内のボランティアセンターでは、同行していた辻元清美首相補佐官に勧められ、被災者に向けた寄せ書きに「決然と生きる 菅直人」とメッセージを書き込んだ。政府・与党内からも早期退陣を迫られるなど「四面楚歌」の首相だが、その後に訪れた避難所では、被災者から「いつもテレビで見て応援してるから」「頑張って」と励まされると、しみじみと「ありがとうございます」と繰り返していた。> 又、「再生エネルギー法案が成立するまで、辞任しない、私の顔を見たくなければ、この法案を早く通した方がいい」と述べ、 ソフトバンクの孫正義社長に「驚異の粘り腰」を称賛された。出席者の「辞めないで」の声には、ピースサインで 応えていた事などに……。

∇もと/\2日の退陣表明の翌日、朝日新聞や毎日新聞は、一面トップに、<今年の秋前後に退陣を示唆>と理解した。即刻に辞任だと騒いだのは産経新聞であり、読売がやゝ近い表現をした。そして野党は勿論のこと、身内も読み違えた。<内閣不信任決議案否決後、岡田氏らが「長く居座ることはない」などと一斉に早期退陣への道筋を付けようとしたことに、首相は「手のひらを返されたと思い、相当びっくりした」(政府関係者)という。その後も仙谷由人代表代行(官房副長官)が特例公債法案の成立と引き換えの早期退陣に繰り返し言及し、首相は反発を強めているとみられる。首相が耳を傾ける相手は、今や北沢俊美防衛相と亀井静香国民新党代表ぐらいだ。>(6/22時事通信) 振り返れば、対中国・ロシア・普天間等外交問題での野党からの追求、菅─鳩山─小沢の「トロイカ体制」の分裂、更に未曾有の大震災に於ける菅首相の初動の言動が原発事故の元凶であり、総てが「後手だ、後手だ」の非難続き。そして就任から今日まで、「イラ菅」「ダメ菅」「スッカラ菅」「史上最低の首相」等あらゆる罵倒を身に浴び続けた首相。挙句の果て「辞めろ/\」コールのみ。──まさに“四面楚歌”敵・味方の声あれども、首相として、一つくらい実績は残しておきたい、と考えるのは寧ろ当然ではなかろうか。

∇首相が「依怙地」になっている一番の理由は、やはり身内からの不信任であろう。鳩山氏の「ペテン師」、小沢氏の再三の「菅ではもうダメだ」、言われる筋合いのない参院の西岡氏の「急流での馬替え」発言、そして側近らの野党に媚びた早期退陣要求、その他側近たちの発言ミスや献金疑惑。etc etc 今まさに“窮鼠猫を噛む”心境なのだろう。そうあってはならぬのが「宰相」たるものの資格であることは重々承知の上で“切れた”のだろう。老生は何度も書いたように、決して菅首相を弁護しようとする者ではない。たゞ、「菅降ろし」が余りにも下手過ぎる。その政治的技術が未熟なために、国会が混乱し、ひいては与野党共々国民の「信」を失い、遂には最近、香港のある筋から、「国民一流、官僚二流、政治家三流」の汚名を頂く羽目になっている。菅首相も普通の人間だ。褒めてもらいたいのだ。頑張れと励ましてもらいたいのだ。花道を上手く演出すべきなのである。それが結局は国民のためでもある。「菅降ろし」には、今後次の鉄則を守るべし。≪孫子曰く、囲師には必ず闕(欠)き、窮寇には迫ること勿れ、と。(九変篇)──孫子が言うには、包囲した相手には、必ず逃げ口を開けておけ。進退極まった相手を追詰め過ぎてはならない、と。≫