残照日記

晩節を孤芳に生きる。

政治の監視

2011-06-16 20:52:57 | 日記
【近親へのアンケート】次女・ラウラへの「告白」
あなたの性格の特徴………………一貫した目標を追うこと。
あなたが最も赦しがちな欠点………軽信。(軽々しく信ずること)
あなたが最も嫌悪する欠点…………奴隷根性。
あなたの好きな標語…………………すべてを疑え。
(マルクス──P・デュラン著「人間マルクス」岩波新書より)

【辛酸】
≪田中正造が代議士として、足尾銅山の鉱毒問題を帝国議会に提出したのは、明治二十四年である。その時から、これは田中正造の生涯の仕事になった。それは、「純粋で無償の情熱」であり、「無私といっていい純粋」なものであった。彼は鉱毒問題のために、すべてをなげうったのである。代議士の地位も、財産も、名誉も、家族も。「辛酸入佳境」 これは、田中正造が好んで揮毫した文字である。「辛酸」という題名はこれからとったのである。正造の晩年は悲惨だった。大正二年の夏、田中正造が七十三歳で亡くなったとき、「枕もとに残された頭陀袋を開けると、鼻紙と、読み古した新約聖書。それに、いくつかの小石があるだけであった。小石を拾い集めること──それが正造の趣味らしい趣味であった。」≫(城山三郎「辛酸」角川文庫の巻末、常盤新平の解説文より)

∇世の中には色々な分野で“偉人”と称される人々が沢山いる。その中でも、当ブログで問題としている<政治の劣化>に“灸を据える”刺激剤となる人物像といえば、次の二人が脳裏に浮かぶ。経済学者で哲学者、そして革命家でもあったK・マルクスや、衆議院議員として専ら足尾銅山鉱毒問題に取り組み、政府の誠意なさに失望して議員を辞職し、明治天皇に直訴してまで鉱毒対策に身を捧げた田中正造。(「アスパラクラブ」のアンケート「いま、心をひかれる「明治人」の9位に選出された)──この己の使命に文字通り命を賭した“正真正銘の偉人”たちには脱帽・拝礼するのみである。彼らは“社会の不条理”に、一身を顧みず全身全霊かけて闘った。「この人をみよ!」と叫びたいが、老生自身が1億分の1程も彼等の足もとに及ばぬ身ゆえ、それは控える。たゞし、隠居老人とはいえ、政治家を選挙する国民の一人として、「政治や政治家を監視する」役目を放擲するわけにはいかない。<国民全体の質がその国の政治の質を決定する>(「自助論」)責任の一端を果たすべく、あちこち寄り道しながらも、<政治の劣化>対策を考究し続けてみよう。

∇尚、老生は直接政治に参加しているわけではないので、入手できるメディア、殊に新聞情報を丹念に読み解きながら、≪アイデアとは要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない。≫(J・W・ヤング「アイデアのつくりかた」TBSブリタニカ)をフル活用していこう思っている。メディア情報は、将に玉石混淆である。玉を掘り当てるか石屑で終わるかは、読み手の力量次第だ。方針として、マルクスの「告白」に則り、如何に高名なる書き手の論評と雖も、記事をそのまゝ「軽信」しない&「すべてを疑え」の姿勢を貫くこと。又、場合によっては、「へそ曲り」を自認した福沢諭吉が、<一方に曲がっている弓をしばしば反対の方に曲げることを避けなかった>(小泉信三「福沢諭吉」)ように、世論が右に寄リ過ぎているなと思ったら、わざわざ左寄り視点から見てみることを忘れないようにしたい。「“菅降ろし”“延命策”→ん、一寸待てよ?」と。例えば、今朝の毎日新聞の金子秀敏氏「木語(もくご)」の、≪原発事故政局を疑う≫はそんな一例だ。
 
∇曰く、<昨今の菅降ろしが、どうも腑(ふ)に落ちない。菅直人首相では原発事故の処理ができないと野党が退陣を要求している。政権与党の岡田克也幹事長や枝野幸男官房長官まで任命権者である党代表・首相の退陣を口にする。仙谷由人官房副長官などは「月内退陣」を公言し、野党幹部と次の首相を私議したという。まさに乱世だ。だが変だ。菅首相はいつ、どのように事故処理に失敗したのか。だれが首相なら、どのような対策ができるか。だれも言わない。一時、海水注入を中断させたと騒がれたが、事実ではなかった。与野党が論じているのはもっぱら退陣の時期である。菅首相も、事故処理に「一定のめどがつくまで」と、退陣時期をぼかして防戦している。菅降ろしの理由は、ほんとうは原発事故対応の失敗ではないのではないか。……(後略)>。先入観を捨てる。例えば、産経新聞は社説は大方、櫻井女史風の右寄りだが、紙面を満遍なく読んで見ると、チャンとバランスがとれている。今朝の青山学院大学教授・榊原英資氏の「正論」などは、オイ/\と思う点もあるが、参考になる指摘があった。朝日新聞の「耕論」も同様であった。

∇というわけで、ボチ/\思いついた事々から逐次、「政治の監視」論を述べていくことにする。今日はこゝまで。──現在時点の政局は、<首相の月内退陣しぼむ…会期60~90日延長も──民主党は14日、22日に会期末を迎える今国会を大幅に延長する方向で調整に入った。菅首相が東日本大震災の復旧を柱とした小規模な2011年度第2次補正予算案(1・5次補正)の編成を指示し、赤字国債の発行を認める特例公債法案の今国会成立にも意欲を示していることも考慮して、60~90日程度の延長を視野に入れている。自民党は会期延長に反対する方針だが、野党側には容認する意見もあり、菅首相の月内退陣論はしぼみつつある情勢だ。>(6/15読売新聞)「菅さん、粘り腰でやるじゃん」なのか、「呆れてものが言えない終末劇」なのか、どちらに転ぶかしれないが、意外とあっけない結末になるような気がする。旧約聖書「箴言」に曰く、<主の目はどこにでもあって、悪人と善人とを見張っている。> 但し、善人が必ずしも勝つとは言っていない。孰れにせよ、神のみぞ知る珍事ではある。では又。