残照日記

晩節を孤芳に生きる。

花鳥の美

2011-06-17 19:45:36 | 日記

∇小雨が蕭蕭と降る中、千代田区帝劇ビル九階にある「出光美術館」に行って来た。19日まで開催されている「花鳥の美」と題する、美術展示会参観のためであった。出光興産に縁の深い友人が、定期的に招待券を恵贈してくれるので、家内存命中は、よく二人で拝観した。過去帳をめくってみたら、前回拝観したのが何と偶然にも梅雨時、06年6月18日(日)だった。当日、古筆手鑑類展示場所は書道に関係した方々であろうか、身動きもできない人だかりだった。紀貫之、小野道風、藤原公任等の古筆切や、藤原定家、明恵上人の書状が整然と並ぶ中、手で空を切ってくずし字を確かめている姿が三々五々。老生は一休禅師の雄筆、「七佛通戒偈」の<諸悪莫作衆善奉行>(諸々の悪を作(な)すこと莫(な)かれ。衆善(諸々の善)を奉行せよ。)に目を止めていたのを思い出す。──今回は、<花や鳥たちが戯れる姿>をモチーフに、膨大にある出光コレクションの中から、絵画・工芸の優品、約80件を厳選して特集展示したものだという。

∇中国・元・明時代の景徳鎮窒大皿や壺、瓶、鉢等の陶磁器はじめ、我が国の作家たちによる花鳥屏風がゆったりとした間を置いて並んでいた。雪舟作と伝えられる「四季花鳥図屏風」をはじめ、谷文晁の「古木山鳩図」、殊に、立林某の活写した「鶏図」、山本梅逸の「四季花鳥図屏風」、喜田川相説の「四季草花図屏風」等々、初めて聞く名の画人が描いた花草鳥類の、構図・色彩・筆致そして鳥類の表情・仕草に至る数々の工夫の跡。鳳凰、孔雀、鸚鵡(おうむ)、金鶏、鴛鴦(おしどり)、鶴、雉(きじ)、山鳩が燦然と描かれ、異国情緒を醸し出している。又、草花や梅の枝を背景に軍鶏、鶏そして鶯、燕、雀類等の小鳥が躍動している。花は何といっても牡丹花。人々の幸せを迎える瑞兆の花として「富貴草」「富貴花」と呼ばれ、絵画に陶磁器に華やかな文様として多用されている。いつもながら作家たちの想像力と描写力の凄さには驚嘆する。冒頭の写真は柿右衛門作「色絵鸚鵡図」。何とも微笑ましいではないか。ズブの素人ながらも楽しく拝観してきた。友人に謝意を表する次第である。今日はほのぼの気分。コックリ/\し出した。暫く桃源郷を彷徨ってくることとしよう。故にこゝまで。