ソロス氏:債務で増強の中国経済、07-08年の米国と不気味な類似Bonnie Cao、Ye Xie
2016年4月21日 09:50 JST 更新日時 2016年4月21日 11:25 JST
中国の3月の与信の伸び、警戒警報とみるべきだ-ソロス氏
3月の経済全体のファイナンス規模は予想を大幅に上回った
資産家で著名投資家のジョージ・ソロス氏は20日、債務を増強剤とした中国経済は、クレジット市場が行き詰まり世界的なリセッション(景気後退)に拍車が掛かる前の2007-08年当時の米国に似ているとの認識を示した。
ソロス氏はニューヨークで開催されたアジア・ソサエティーのイベントで、中国の3月の与信の伸びを警戒警報とみるべきだと述べた。中国の3月の経済全体のファイナンス規模は2兆3400億元(約39兆7000億円)と、ブルームバーグがまとめた市場予想の中央値である1兆4000億元を大幅に上回り、中国当局が債務抑制より成長を優先していることを示唆した。
ソロス氏は中国の現状について、「同様に与信の伸びで増強されていた07-08年の米国の金融危機当時と不気味なほど似ている」とし、「皆が予想する時期よりも後に転換点を迎える可能性がある」と語った。
ソロス氏はこのところ、中国当局との間で激しい言葉の応酬を繰り広げている。1月にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの際に同氏は、中国のハードランディングが「事実上不可避」だと述べ、アジア通貨の下落を見込んだ取引を行っていることを明らかにした。中国国営の新華社通信はこれに対して論説で、ソロス氏は過去にも何度か同じ予測をしていると反論した。
ソロス氏はまた20日のイベントで、中国からの資本流出は中国当局の反腐敗運動の結果、人々が神経質になり資金の引き出しが加速したことによって広がった現象だとの認識を示した。中国当局が人民元をドルだけでなく通貨バスケットに連動させる取り組みをしていることについては、健全な動きだと指摘した。
中国経済の持ち直しが金融リスクを覆い隠す-フィッチ -BloombergYe Xie
2016年4月21日 11:03 JST
借り入れ回復による景気浮揚、金融システムに影響も-カフーン氏
政府の成長率目標と改革の同時達成は難しい-カフーン氏
世界の投資家は、中国経済が持ち直す兆しを好感しているが、フィッチ・レーティングスのアジア太平洋ソブリン責任者アンドルー・カフーン氏の評価は芳しくない。
カフーン氏は、借り入れ回復による経済成長の押し上げは金融システムに大混乱を引き起こす恐れがあるとみている。
同氏はニューヨークでインタビューに応じ、「与信に関しては中国が現在よりも伸びが鈍い方がわれわれにとっては心地良い。構造改革に対する中国政府のコミットメントに関し、われわれの信頼は低下しつつある」と説明した。
カフーン氏によると、世界の株式や商品市場は、融資の伸びが中国経済の安定化に寄与している兆しを好感しているが、借り入れの急増は既に持続不可能な債務水準をさらに高める結果となっている。最終的には、景気回復を促している原動力そのものが景気を腰折れさせることになる可能性があるという。
同氏は「これを安定化と呼べるかどうか、分からない」と語った。
1-3月(第1四半期)の人民元建て新規融資は過去最高の4兆6000億元(約78兆円)に達し、世界金融危機が深刻化していた2009年の水準を上回った。ブルームバーグの集計データによると、昨年の企業と政府、家計部門の債務総額は国内総生産(GDP)比247%と、08年の同164%から拡大した。
カフーン氏は、6.5%成長の政府目標の達成と、債務や過剰生産能力の削減を含む改革の実行という「両方の目的を達成することは難しい」と説明。「この1年の政策運営の紆余(うよ)曲折を考えると、どちらの目標に重きが置かれているのか、もはや確信が持てない」と話した。
日銀とは対照的-パワー増大の人民銀、預金準備率引き下げは不要か -BloombergBloomberg News
2016年4月19日 14:46 JST
中国の貨幣乗数は2006年以来の高水準-日本では1990年代に急低下
「準備率を今引き下げるのは、火に油を注ぐようなもの」との声も
中国人民銀行(中央銀行)は、日本銀行など先進国の多くの中央銀行とは極めて対照的だ。マネーサプライ(通貨供給量)拡大を通じて新規融資を生み出すパワーが強まっている。ブルームバーグの集計データによれば、いわゆる貨幣乗数は2006年以来の高水準だ。
日本ではこの比率が1990年代に急低下した。資産バブル崩壊に伴う不良債権に苦しんだ邦銀の間には貸し渋りが広がった。
みずほセキュリティーズアジアの沈建光チーフエコノミスト(香港在勤)は、人民銀が発表した3月の統計に示される新規融資とM2の伸びは人民銀の資金供給が与信拡大に寄与しており、預金準備率引き下げの必要性が低下していることを示唆していると指摘した。
中国国際金融(CICC)の余向栄氏らアナリストは最近のリポートで、人民銀が流動性の供給手段を拡大していることが貨幣乗数を押し上げていると分析。資本流出に直面する中で、大手銀行の預金準備率引き下げペースを落とすことを可能にしそうだとしている。人民銀は預金準備率を昨年の早い時期の20%から5回引き下げ、17%と5年ぶりの低水準に設定している。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの大中華圏チーフエコノミスト、胡志鵬氏(シンガポール在勤)は、「預金準備率を今引き下げるのは、火に油を注ぐようなものだ。人民銀は警戒し、しばらく様子見するだろう。恐らく短期的には引き下げは不要だとみている」と述べた。