※前回の山口の記事はこちら(31節・ヴェルディ戦)
※前回の千葉の記事はこちら(36節・長崎戦)
長かったリーグ戦も残り5試合。
目標を失いつつあるクラブは、既にストーブリーグモード一直線な時期でもあり。
昇格争いどころか、J3降格の危機にも脅かされてきた今シーズンの千葉。
早くも来季の監督について、過去に鳥栖・セレッソで監督を務めた尹晶煥(ユンジョンファン)氏が就任するという、真偽不明のニュースが流れています。
ここでも述べましたが、尹氏は徹底した厳しいトレーニングを下地とする指導者。
現在の平均年齢が高い千葉は、果たしてその厳しさに耐えうる事が出来るのかなどという危惧も考えられます。
まあそれは過去にオシム氏就任の際にも言われた事でしょうが、当時からクラブ力の低下が著しい現状で、再び乗り越える事が出来るのか。
千葉の監督といえば、今季は開幕から4試合消化した所でフアン・エスナイデル氏を解任。
その決断に踏み切った切欠が3節での大敗(2-5)なのでしょうが、その相手だった山口がこの日の対戦相手。
最近の選手起用を見ると、アラン・ピニェイロやエベルトの助っ人組がスタメンに返り咲いていたりと、今一つ狙いが解らないものになっています。
その中で千葉ユース出身である鳥海のボランチ起用が目立っており、先日引退発表した佐藤勇人の後釜を育てたいという意図は見えています。
それでも鳥海はユース→大学という経歴なので、既に若手とはいえない年齢(24歳)なのですが。
試合は、前半はシーソーゲームの様相に。
前半7分、千葉がクリアしたボールを佐藤健太郎が拾って川井→高井と渡り、左サイドから高井がゴールに向かったクロスボールを入れます。
これにスライディングで三幸が合わせにいき、触れなかったもののGK佐藤優也もセーブ出来ず、そのままゴールイン。(高井の得点)
半ばラッキーな形で山口が先制します。
しかしリードも束の間の11分でした。
千葉の右サイドからの攻撃、米倉スルーパス→アランクロスという素早い攻撃で、中央の守備が薄い状況を作ったうえでFWクレーベがヘディングシュート。
ボールはワンバウンドでネットを突き刺し、同点に追い付いた千葉。
その後は千葉が、クレーベのポストプレイも交えつつサイド攻撃を展開、ペースを掴みかけます。
15分にはコーナーキックから二次攻撃、下平の左からのクロスを工藤がヘディングシュートしますが、GK吉満がキャッチ。
しかし千葉のターンはすぐに終わり、以降はどちらともつかない試合展開。
両チームともハッキリしたスタイルとは無縁で、ポゼッションサッカーでも堅守速攻スタイルでも無く。
それがバタバタとした内容になっていた一因だったと思います。
23分、山口は左サイドで川井がロングパス、走り込んで受けた高井がグラウンダーでクロスを供給します。
これを三幸がスルーし、受けた宮代がポストプレイで落とすと、高がミドルシュートを放ちますがGK佐藤優がセーブ。
流れるような攻めでしたが、ゴールまでは結び付きませんでした。
攻防が入れ替わる中、再び得点に近いシュートを放ったのは山口。
38分、スローインからの攻めで、左サイドから中央の池上が受けるとエリア手前からシュート。
これもGK佐藤優のセーブに阻まれ、こぼれ球を右サイドで石田が拾い、高がクロスを上げますが高井のヘディングは上に上がっただけとなりGK佐藤優がキャッチ。
逆に千葉は41分、右サイドから攻めると見せかけて中央へパス、為田のパスをクレーベがポストプレイで左サイドへ送ってから攻撃。
為田・下平・工藤でパスを回し、最後は為田のクロスに走り込んだ下平がニアサイドでヘディングシュート。(枠外)
お互い良い形はそこそこ作るものの、決定打に欠けて前半は1-1のまま終えました。
千葉程のクラブとしての混乱は見せていないものの、中々スタイルを確立できずに日程を消化している今季の山口。
それもクラブの規模の小ささ故か選手の入れ替えが激しい事に起因しており、夏の移籍でも常にJ1クラブの標的にされているとあっては仕方の無い事なのでしょう。
ウイングバック・瀬川(現栃木)の移籍を機に、以降4バックのスタメンが基本線となります。
それでも不安定な戦いぶりは変わらず、25節(横浜FC戦)・27節(大宮戦)・29節(長崎戦)・31節(ヴェルディ戦)と、1戦おきに4失点で敗戦。
以降は守備に比重を置いての戦いを進め、勝ち点を稼ぐ事には成功しています。
その際に3トップは封印され、4-2-3-1というフォーメーションが基調に。
起用法としては、ヴェルディ戦を境にスタメン定着しているのは池上・高・宮代辺り。
田中パウロ淳一・工藤・佐々木は完全にサブ要員となり、チームにフィットしきれない新戦力は脇に置き、チームの地盤を固めるような起用にシフトしていっていると思われます。
途中加入の宮代・石田・高がフィットしつつあるのに何故あの3人は……という思いは拭えませんが。
後は大卒の菊池(新人)・山下(2年目)・池上(3年目)がどれだけ成長するのか、というのが楽しみな要素でもあり、ないしはまた引き抜かれないかという心配要素でもあり。
後半が始まると、その山口が攻め上がりを見せます。
それも前半とは異なるややポゼッション気味の攻撃を展開したのが後半3分で、自陣左サイドでのパス回しから、センターバック・菊池が左へロングフィード。
これを受け取った高井がドリブルを仕掛けた後中央へパスを送り、佐藤健が右へサイドチェンジ。
受けた石田が中央の三幸にパスを送りシュートレンジに迫ったものの、三幸はリターンパスを選択し、これが繋がらず攻撃終了。
しかしその直後に敵陣でボールを奪っての攻撃、右サイドで石田スルーパス→三幸クロス。
このクリアが小さくエリア内で高井が拾いチャンスが到来しますが、戻ってきた千葉・アランのディフェンスで奪われ、倒されるも笛は鳴らず。
長短使い分けた攻撃で、本来の山口・霜田正浩監督の理想だと思われる攻撃サッカーが顔を見せ始めました。
10分にも三幸の右への展開から好機、石田が池上とワンツーの後中央へパスを送ります。
受けた三幸が突破を図りエリア内に進入しかけますが、鳥海のチャージを受けて止められ、倒れますが反則は無し。
山口の絶好機を反則PKスレスレで止める千葉、という図式だった後半立ち上がり。
千葉を押し込んでいく山口、その流れに乗るべくベンチもアタッカー・山下を準備させます。
しかしその途中に落とし穴。
20分の千葉の攻撃、右サイドから米倉がクロス、これをファーでクレーベが落とします。
これに走り込んだアランがゴールに叩き込み、劣勢だった千葉が勝ち越しに成功しました。
直後に山下が出場。(佐藤と交代、右サイドハーフへ・三幸がボランチに下がり池上がトップ下へ)
しかし良い流れは生まれずに時間が進みます。
その間に千葉はクレーベ→佐藤寿人に交代。(24分)
27分には千葉の攻撃、アランのクロスに鳥海がヘディングで合わせますが、威力無くGK吉満がキャッチ。
そして山口は2枚目のカードを切り、アタッカーのパウロが登場。(高井と交代)
これでようやく山口はペースを取り戻し、反対にクレーベという攻撃の橋頭堡を下げた千葉は全く形を作れず。
30分、三幸の縦パスを池上がワンタッチでエリア内へ送り、山下のポストプレイで落とされたボールを石田がダイレクトで巻くシュートに持っていきましたが惜しくもゴール左に外れます。
33分にも左から中→右へと展開する重厚な攻撃(左サイドで川井ドリブル→宮代中へパス→池上右へパス)から、石田のグラウンダーのクロスを山下が合わせますが枠に行かず。
何が何でも追い付きたい山口、34分には工藤も投入し(石田と交代)、システムも3バックへとシフト(3-4-2-1)。
すると直後にその姿勢が吉と出ます。
35分、左サイドからの攻めで高→パウロ→川井→三幸とボールが繋がり、三幸がエリア内へ浮き球を供給。
高がヘディングで落としたボールが山下に渡り、ワントラップから山下がシュート、ゴール右隅へと突き刺す同点弾。
流れがようやく得点に結び付き、安堵とともにさらに攻め立てる山口。
全く攻撃の流れを掴めない千葉を尻目に、ついに勝ち越しに辿り着いたのが43分でした。
ここでも山下のワントラップからのシュート(千葉・エベルトがブロック)で得たコーナーキック、キッカー池上のクロスを、中央で落下点に入った宮代がヘディングシュート。
これをコース上に居たパウロがフリックして軌道を変え、ボールはバーに当たったのちGK佐藤優の体に当たってゴールイン。(パウロの得点)
攻めの執念がついに大団円となりました。
その後も、DFエベルトを前線に上げてのパワープレー体制に入る千葉に対し、逆にボールキープし形を作らせない山口。
何度も左コーナーでボールキープし時間を稼ぐパウロ、ボールを奪う事すらままならない千葉。
結局攻め込めたのは最後のワンプレーだけで、3-2のまま試合終了、山口が逆転勝ち。
新監督の真偽不明の情報が頼み(?)の千葉に対し、おぼろげながらも将来への期待感が窺えるメンバー構成で挑んだ山口。
最後はその差が結果に表れたという印象を残した試合でした。