ぶらりドリブルの旅

ひたすらサッカー観戦がメイン

DAZN観戦 2019年J1リーグ第29節 名古屋グランパスvsベガルタ仙台

2019-10-23 17:05:50 | サッカー視聴記(2020年以前)

9位以下は全く安全圏では無いという具合に、半数以上ものクラブが残留争いに巻き込まれているJ1の状況。
前年はボーダーライン自体の高さ(勝ち点40台でも降格危機に)がカオスでしたが、それとはまた異なったカオスといえるでしょう。
その中で最大のラインが勝ち点35(浦和・清水・神戸、いずれも今節敗戦)なので、その一段下に属するクラブ同士の対決であるこのカード、是が非でも勝利してこのライン以上に上がりたい所。

26節・札幌戦が出色の出来だったように、相手への対策に一日の長がある(と思われる)仙台。
この日もそれは健在で、監督交代で戦術の浸透に不安のある名古屋に対し、速攻を何度も仕掛け揺さぶっていきます。

前半3分、GKヤクブ・スウォヴィクのロングフィード、その跳ね返しを拾った富田からの攻撃。
富田から受けたハモン・ロペスがドリブルで右サイドへ流れ道渕へパス、その道渕がカットインからシュート。
GKランゲラックがセーブして難を逃れますが、そのクリアボールを奪った仙台のターンが続きます。
左サイドバックの永戸が中央でのパス回しに参加、その間に左サイドの関口がフリーになり、永戸のパスを受けた関口がクロス。
そして長沢がドンピシャで合わせてヘディングシュートを放ちますが、これもGKランゲラックの好セーブに阻まれ得点は奪えず。

しかし名古屋の守備に慌ただしさを誘発させるには十分で、6分に名古屋陣内でパスミスをカットした仙台、ハモン→長沢→道渕→長沢と渡ってシュート。
ブロックに入られ左コーナーキックを得ると、キッカー永戸のクロスに平岡が頭で合わせてシュート、GKランゲラックの壁を破りネットに突き刺しました。
一見単純な経過ですが、名古屋のマーカーを引き付けつつボール落下点の前でシマオ・マテが、平岡に競らせないように名古屋選手を体でブロックしていたこの場面。
シマオのセットプレーでの得点力を警戒する相手を逆手に取った先制点で、早々に仙台がリードを奪います。

そして守備を固めてカウンターを狙う仙台に対し、名古屋が攻勢を掛けるという典型的な流れにシフトしていく試合。
実はこの試合のファーストシュートは名古屋で、開始直後の1分に左サイドから攻撃。
太田の縦パスを受けた前田がカットインしてエリア内進入、そこからの彼のパスにジョーがダイレクトでシュート。
仙台・平岡にブロックされたものの、良い流れでの攻め。
それだけに早い時間でリードを奪われたのが痛恨で、以降は守りを固める仙台に対して有効打を与えられない名古屋。

新たに名古屋監督に就任したマッシモ・フィッカデンティ氏は堅守重視の戦術で、前任の風間八宏氏とは完全に対極のサッカー。
基本フォーメーションは4-3-2-1ないしは4-3-1-2という、やや変則的なものを好むのとは対照的です。(鳥栖時代は4-1-3-2というのもあった)
しかし攻撃に関しては行き詰まる場面が多く、鳥栖監督時もそれが主たる要因で昨年は低迷・途中解任の憂き目に。
堅守のサッカーの割には「長身FWにロングボール大作戦」のような古典的な事はあまりやって来ないのも特色ですが、それ故サイドからのクロス一辺倒になりがち。

かくしてこの日も前半は手詰まりのような状況で、途中はフォーメーションを若干弄り4-4-2(ガブリエル・シャビエルがFWにシフト?)に変えたものの、それも前半の最中に再度元の4-3-2-1に戻したりするなど試行錯誤。
(28分~36分の時間帯は完全に仙台ペースになっていたので、機能せず止めたと思われる)
37分の久々のチャンスではシャビエルの縦パスを和泉が右へヒールパス、受けた吉田が低いクロス、クリアされるもそのこぼれ球を前田がボレーシュート。
しかしGKスウォヴィクの好セーブに阻まれます。
39分はジョーのポストプレイから右サイドで攻撃、和泉・吉田のパス回しの後中央に戻し、シャビエルが遠目からグラウンダーのミドルを放つも僅かにゴールの右へ。
結局同点弾は生まれず前半を終えます。

名古屋のクラブとしての迷走は、21世紀に突入してから伝統的なものでありますが(ストイコビッチ監督時代は除外?)、再生の舵が切られたのは2016年。
トヨタ自動車の子会社化という、地域密着の理念とは逆を行くような方策が採られましたが、これにより経営面・強化費で苦しむ事は無くなりました。
この年チームはJ2降格したものの、翌2017年は苦しみながらもJ1復帰を決め、チーム再建の道は形式的には順調。
後は羽ばたくのみ……という思いは、その後のJ1での苦闘で頭打ち状態になっている事でしょう。

サポーターズフェスタの前日に発表された(漏洩した?)のが印象的だった、前任監督・風間氏の解任劇。
風間氏は川崎監督時代から攻撃的サッカーを指標に掲げ、ポゼッションスタイル・パスサッカーを基とし、表舞台にのし上がってきた指導者です。
ただ川崎では戦術浸透に成功させたものの、タイトル獲得はならずという悲運の名将ぶりを発揮していたのも事実。
よって名古屋が監督に招いたは良いものの、「サッカースタイルを固定させる」or「勝利・タイトルを目指す」という二つの思想がその後対立し続ける構造もある意味道理だったと思います。
自身の指標をチームに浸透させたかった風間氏と、チーム低迷を避けたいフロントの思惑。

しかしこの日はビハインド、しかも「ボールを持たされている」状況に陥っていた名古屋。
風間サッカーの悪い時と同じ症状であり、監督交代後もこの状態と向き合わなければならないとは、一向に出口が見えないという危機的状況なのではないか。
傍らから観ていてそんな思いを抱きつつ、後半戦へ。

後半立ち上がりも仙台がペースを掴み、キックオフ直後の攻撃でいきなり長沢がシュート。(GKランゲラックキャッチ)
その直後にも左サイドで関口パス→長沢スルー→ハモンシュート(DFに当たり枠外)というチャンスを作り、名古屋に冷や汗をかかせます。
対する名古屋はボールは握っても攻め手が無いという状態で時間を浪費し、それを打破しようとフィッカデンティ氏が動いたのが後半9分。
シャビエル→赤崎、ジョアン・シミッチ→エドゥアルド・ネットという2人同時交代、所謂2枚代えを敢行します。

ネットは前所属の川崎で(そして名古屋でも)、風間氏の下で主力を張っていたボランチ。
ただボランチにしては守備が軽いという弱点もあり、普通のチームでは使い所が難しいタイプの選手です。
監督交代を境にスタメン落ちしていましたが、この苦境もあり、早い時間帯で交代出場。

風間氏の幻影が舞い降りたかのようなベンチワークでしたが、実際のピッチ上でもそれは同じでした。
ネットが中心となってパスワークで相手を翻弄していくという、風間サッカーの名残が映し出され、しかも試合は一転して名古屋のペースに。
前線で動き回る赤崎の存在もあり、攻撃が活性化して何度も仙台ゴールに迫っていきます。
11分、右サイドでの前田のドリブルから吉田→米本→赤崎とパスが回り、赤崎のシュートが見られたのが号砲でした。(ゴール上に外れる)

しかしそれでもサイド攻撃一辺倒は変わらず、20分前後(18分~24分頃)ではクロスは上がるもののシュートは撃てず。
本格的な攻撃は30分辺りからで、中央からの攻めも交える事で決定機も作っていきます。
31分ネットが右へサイドチェンジのパス、受けた吉田は前田とパス交換してから中央のネットへ戻し、彼から受けた丸山がエリア内へロビング。
ここは赤崎が落とすもシマオのクリアに遭いシュートはならず。
直後の32分、今度は左サイドからのクロスでしたが、中央でのパス回しからネットが左へ→太田のダイレクトクロスという流れる攻撃。
これをジョーが落とし、赤崎がシュートしますがGKスウォヴィクのセーブに阻まれます。
33分には再び中央から丸山がロビング、これをジョーがトラップし反転シュートを狙いましたが、シュートはゴール左へと外れます。(富田に当たったかのように見えたが判定はゴールキックに)

攻勢を止めない名古屋でしたが、GKスウォヴィクの壁を破る事が出来ず(36分には太田のエリア内左からのシュートをキャッチ)に時間を浪費していきます。
すると一瞬の隙が生まれたか、38分の仙台ゴールキックから、ハモンのヘディングで阿部(長沢と交代で出場)が裏に抜け出すというチャンス。
エリア内に進入した所で丸山が倒してしまい、反則・PK獲得。
これをキッカーのハモンが強烈なシュートでGKランゲラックを抜き、仙台が貴重な追加点を獲得しました。

その後仙台はハモン→金正也(キムジョンヤ)に交代、3バック・実質5バックにシフトする逃げ切り体制に。
名古屋はセンターバック・丸山を前線に上げるパワープレイ体制を採るも、最後までゴールを割る事は出来ず、0-2のまま試合終了と相成りました。

これで仙台は勝ち点35に乗せ「下位組のトップ」に並びましたが、次節はその並んでいる神戸との一戦。
その後も同じく現状で並んでいる清水・ガンバと連戦が続くという日程なのが面白いです。
一方窮地に追い込まれた名古屋、編成面では神戸と同様に降格するようなメンバーでは無いだけに、このねじれも趣深い。(他人事かよ)
果たして一致団結し、苦境を跳ね返せるでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする