今年の全仏オープンで話題になっていることの一つに、いくつかの試合で見られたアンダーサーブの是非があります。
「相手が諦めた リターン困難な“必殺アンダーサーブ”に海外称賛「これは絶対流行る」」(THE ANSWER)
何年も前から度々取り上げられるこの問題については、すでに結論が出ていると言ってもいいでしょう。
「自分にとっては議論の余地はない。ルール上問題ないのであればやればいい。選手自身が(自身がそれをやるかどうかについて)どう思うかはその選手次第だね」
「物議の“不意打ちアンダーサーブ” ナダルは完全支持「自分にとっては議論の余地はない」」(THE ANSWER)
このナダルのコメントに尽きると思います。
かつてナダルはキリオスにアンダーサーブをやられた時に苦言を呈しましたが、それは彼の試合中の振る舞い全般に対してのもので、アンダーサーブそのものを否定している訳ではありません。
「悪童キリオス、ナダルへの_下からサーブ_が波紋 「敬意なし」「物議醸す挙動」」(THE ANSWER)
その際にはフェデラーもアンダーサーブを認める発言をしています。
「アンダーサーブは良い戦略だと思うよ。特に対戦相手が後ろのフェンス際まで下がっている場合はね。その部分で言えば、(下からのサーブを)やることを恥じるべきではないんだ。失敗した時には愚かに見えてしまうけれど、挑戦してもいいじゃないか」
「波紋呼ぶキリオスの“下からサーブ”をフェデラーは擁護 「恥じるべきではない」 」(THE ANSWER)
最も有名なアンダーサーブとして往年のテニスファンに記憶されているのが、1989年の全仏4回戦の第5セットで当時17歳だったマイケル・チャンがイワン・レンドルに放ったものです。(当時の動画)
チャンはレンドルをフルセットで破り、その後も勝ち上がってグランドスラム男子シングルスで最年少優勝を果たしました。
今回の騒動について聞かれたレンドルは次のようにコメントしています。
レンドルが言うように、アンダーサーブは確立されたテクニックで、ルールとして認められているプレーです。
速いサーブをリターンするために相手もベースラインから離れているのですから、その対策としてネット際にサービスを落とすのは戦術として当然選択肢の一つになりうる。
もしリターンする側の準備ができていなかったとすれば、審判がノットレディを取るでしょう。
能動的にポイントを取るための戦術を批判するのは筋違いですし、対戦相手に対する敬意があるかないかはアンダーサーブとは別の問題でしかありません。
アンダーサーブよりも試合中にラケットを投げて破壊したり、ボールを観客席や壁に打ち込んだりする方が、危険かつ見ている者を不快にさせるという意味で、プロのアスリートとしてよっぽど相手や観客、審判、運営スタッフ、用具スポンサーなど多くの関係者に対する敬意に欠ける行為ではないでしょうか。
※11/19追記
「Nitto ATPファイナルズ」グループリーグで、ズベレフに対し、メドベデフがアンダーサーブを使ったことに対するマアンディ・マレー(イギリス)のコメント
「選手がサーブを返すためにベースラインの後ろ6、7メートルに立っている場合じゃないか。なぜそれが失礼にあたるのか理解できないね。僕はそれが完全に合法的なプレーだと思うし、僕らが見てきたように、実際にはかなり成功していることがあると思う」
「選手がただふざけたり、相手をからかったりするためにやっているようなものではない。選手がベースラインの後ろに立っているときには、正当な戦術として使われているんだ」
(「マレー、アンダーサーブに理解」テニス365)
※2022/1/20追記
2022年全豪オープン男子シングルス1回戦でキリオスが披露した、進化系アンダーサーブ
敗れた対戦相手のリアム・ブローディ(イギリス)のコメント
「これは彼の大きな武器だ。もしニックにショーマンシップをやめろと言ったら、彼の強みを奪うことになる。それが僕に対してでも、大賛成だよ」
(「キリオスが地元ファンの熱い声援受けて2回戦進出。股抜きアンダーサーブも披露」テニスクラシック公式サイト)
※2022/6/28追記
2022ウィンブルドン男子シングルス1回戦でアンダーサーブを使ったアンディ・マレー(イギリス)のコメント
「彼がリターンのポジションを変えたから打ったんだ。ファーストサーブのリターンで苦戦していたから、2mくらい下がったと思う。アンダーサーブを打つ選手について、僕は特に意見はない。最近は多くの選手がベースラインのかなり後ろで構えるようになってきた。“そんなに後ろで構えるなら、浅くも打つよ!”というメッセージだよ。アンダーサーブが敬意を欠くという考えは理解できない。一つのサービスの打ち方だ。相手がベースライン上にいるのに、打ったりはしないさ。簡単に拾えるから。でも、4~5m後ろにいるなら、打つよ。相手が心地よい場所から、前に出るように仕向けるのは戦術的なやり方でもある。それをやっていけない理由などない。逆にリターンのときに6m後方で構えることに対しては、誰も敬意を欠くとは言わないじゃないか。僕は相手に敬意を欠くからやったんじゃない。相手に、そんなに後ろに構えたら、こういうやり方もあるんだと見せただけだ」
「「戦術の一部で敬意を欠いていない!」1回戦突破のマレーがアンダーサーブを語る」(テニスマガジンONLINE)