Daily Bubble

映画や歌舞伎、音楽などのアブクを残すアクアの日記。のんびりモードで更新中。

「歌右衛門の六十年-ひとつの昭和歌舞伎史-」

2004-11-18 21:56:17 | kabuki
 中村歌右衛門さんは、今は、いない。
 私が歌舞伎を見るようになったのは六世歌右衛門さんが亡くなった後だった。なんて残念なことだろう。
 いなくなった猫を探すように、歌右衛門さんを捜してみた。

 この本は、NHKのアナウンサーだった山中静夫さん(黒縁メガネのおじさんね。)との対談で、歌右衛門さんの歌舞伎人生が順を追って記されている。
 なんか、とっても色っぽいのね。ことばが。
 写真で見る歌右衛門さんって、顔が長くて肩が薄いお婆さんのようなお爺さんって感じだけど、すっごく「女」な人なんだと思う。
 対談で、「演じる」ことを「する」って言っているんだけど、これがなんかとても淫靡なの。
 歌右衛門さんにとったら「演じる」ことがすべてなんだろうけど、邪な想像をしてしまう。
 立役者吉右衛門(初代)や鴈治郎(二世)と舞台に立つ女形歌右衛門さんは、その度々にお姫様や遊女としてのすべてを生きたのよねえ。
 それが淫靡じゃないはずがない。

 歌右衛門さんにとって「芸」がすべてで、生活のひとつひとつが「芸」に結びついていた。奥さんを早くに失くしたことも、芸に没頭する一因だったのかも。
 生まれつき足が悪くて、普通に歩くことも大変だった歌右衛門さんを芸の道に駆り立てたのは、なんだったんだろう?
 五世歌右衛門の子であったこと、お兄さんが早世されたこと、戦争を潜り抜け、歌舞伎が移り変わる真っ只中にいたこと、いろんな要因があったけど、歌右衛門さんが昭和期の歌舞伎界にいたってことは、今の歌舞伎があることの重要なファクターだったみたい。

 七世歌右衛門の誕生に立ち会うことができるとしたら、それはとても幸せなことなんだと思う。
 そして、六世歌右衛門さんの分まで七世に期待しちゃうのは、やっぱり私が世俗的な人間だから?

最新の画像もっと見る