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お奨め本 :世界がわかる宗教社会学入門

2012年05月28日 | 読書・映画・ドラマ

 宗教とは何か? 宗教はどのような役割を担い、人々はそこに何を期待し、世界宗教の誕生と成長に人々がどのように関わって来たのか? そのことをキリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教、儒教について書いています。この本の良さは、読みやすいことです。広く扱いながらも要点を押さえ、枝葉末節を切り捨て平易に解説しています。著者は社会学者の橋爪大三郎です。

 この本は大学の講義録が元になっており、各解説が適度な長さで、大胆に要約してくれている。このことは世界の宗教を1冊で知りたい人にはありがたいはずです。ただ面白いかと聞かれれば、引き込まれるようなものではないと言える。面白い場合もあるが個人的見解が長々と述べられていたり、辞書風にあらゆる項目を網羅している本よりは、初心者にはお奨めです。それでも強い興味や疑問がなければ読み終えることは出来ないでしょう。



<イエスによる山上の垂訓/ウィキペディアより転載>

 この本はなぜ、5つの世界宗教だけを扱っているのでしょうか? ヒンドゥー教、神道や先住民の宗教と現代の宗教(オカルトなど)が含まれていない。私達に最も影響を与え続けている宗教は五つのものに限られるからです。それには理由があります。ユダヤ教を除いた四大宗教は、概ね紀元前後に体裁を整えました。それは巨大な国家誕生期と符合し、それら宗教が大きな社会の枠組みとどう関わるかで、その教義が決まったと言えます。つまり、それら宗教は社会(国家)との関わりを強く持って誕生し、そして約2千年をかけて成長し改革されて来たと言えます。それだからこそ、社会学者である著者が取り上げたのです。

 宗教とは何かを語るとき、ある人は哲学や思想史、または神話や古代文献、宗教誕生期や宗祖の人生、心理学的考察などから切り込んで行きます。しかしおそらく多くの人が知りたいのは、古い宗教が我々の現代社会や人にどのように関わっているかでしょう。そうとするなら社会と宗教の関わりのメカニズムを解く宗教社会学が最適でしょう。当然この本を読んでも、癒しや救いは得られません。

 この本を読んで宗教がわかるわけではないが、宗教が社会現象であり、その誕生と伝播した地域の特性を触媒にして発展して来たことを実感出来れば、最良だと思います。

 後日、「宗教を知る本について」を取り上げるつもりです。

 


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