毛利 小平太 (旧大納戸役20石5人扶持)
「某も連名に加えて下さい」
高田 郡兵衛
「急進派は、小者ばかりになったな」
「忠臣は、小者ばかりになった」
「役付きの者共は、保身に逃れる」
毛利 小平太
「某も、お役に立ちとう御座います」
高田 郡兵衛
「儂は、急進派を立ち上げた訳では無い」
「儂の下には、勝手に小者が集まって来る」
「その者を受け入れておったら
いつの間にか、大所帯になっておった」
「来るものは拒まずじゃぞ」
「共に、主の無念を晴らそうではないか」
「急ぎ、決行する」
毛利 小平太
「太傅の許しを得る必要はありますか？」
高田 郡兵衛
「許しは出ぬぞ」
「太傅は、臆病風に吹かれておる」
「主家再興を口実にして逃げておる」
「大石抜きで決行する」
毛利 小平太
「今や、郡兵衛殿が主流派で御座います」
高田 郡兵衛
「軽輩ばかりの寄せ集めに過ぎぬ」
「安兵衛も内蔵助に媚びておる」
「内蔵助が来てから
慎重姿勢に変わってしもうた」
「情けない事じゃ」
毛利 小平太
「郡兵衛殿は伯父様の養子に誘われておるとか・・・」
高田 郡兵衛
「左様」
「伯父は連座を恐れて
儂を脱盟させたいのじゃ」
毛利 小平太
「某も、同じで御座る」
高田 郡兵衛
「おおォオ」
「其方も儂と同じか」
「共に、難儀じゃのォ」
毛利 小平太
「某、大垣新田藩主戸田氏成に仕えている兄が
連座を恐れ、
某に脱盟を求めております」
高田 郡兵衛
「戸田氏成殿は連座で謹慎しておったな」
「戸田氏成殿と主は従兄同士じゃ」
「浅野家の血縁は全て連座となった」
毛利 小平太
「某も悩んでおります故」
「郡兵衛殿にご指導願いたいのです」
高田 郡兵衛
「悩まず、実行する事じゃ」
「何も考えず、実行する事じゃ」
「怯めば、臆病者と罵られる」
毛利 小平太
「はい」
「拙者、臆病者にはなりませぬ」
高田 郡兵衛
「んんゥ」
「其方の得意は何じゃ？」
毛利 小平太
「武芸は、並みで御座る」
「ただ、凡人小者故」
「敵を油断させる事が出来まする」
「顔も名も、知られてはおりませぬ故」
「吉良家の家臣共に怪しまれる心配は御座いませぬ」
高田 郡兵衛
「左様か」
「では、其方は、討ち入りには参加せぬ方がよいな」
「偵察を任務とし
討ち入りには加わらず
討ち入り前に逐電すればよい」
毛利 小平太
「しかし、それでは、名が廃る」
「不忠者と呼ばれる」
高田 郡兵衛
「武芸達者の集まりに
未熟者がおれば足手纏いになる」
「同志討ちは避けねばならん」
「戸田氏成殿は連座で謹慎したのじゃぞ」
「其方の兄を労わってやれ」
毛利 小平太
「しかし・・・」
高田 郡兵衛
「其方は、偵察を任務とする」
「よいな」
毛利 小平太
「・・・・」
「逃げるのは嫌で御座る」
高田 郡兵衛
「逃げでは無い」
「剣の修行が足りなかっただけの事じゃ」
「諦めろ」
毛利 小平太
「きっと、お役に立ちまする」
高田 郡兵衛
「間に合えばよいな」
毛利 小平太
「きっと、腕を上げてご覧に入れて差し上げます」
高田 郡兵衛
「んんゥ」
