アプリコット プリンセス

チューリップ城には
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赤穂事件 片岡源五右衛門 見参

2023-02-28 10:25:20 | 漫画

    赤穂事件 片岡源五右衛門 見参



大高源吾 (過去20石5人扶持)
「赤穂の家老は腰抜けばかり」
「源五右衛門殿も同じですかな」

片岡源五右衛門 (旧赤穂藩児小姓頭350石)
「儂が皆と別行動を取るのは
逃げているからではない」
「主の意思を引き継ぐためじゃ」

大高源吾
「おおォオ」
「では、我らと同じ志で御座るな」
「主の仇を取る事が
主の無念を晴らす事」
「共に、吉良を討ち取ろうぞ!」

片岡源五右衛門
「儂の仇は、主の仇」
「主の仇は、吉良ではない」

大高源吾
「馬鹿を申せ!」
「主は、殿中で刃傷沙汰に及び
吉良を討ち取らんとしたのですぞ」
「その吉良を討ち損じた無念を晴らすのが
我ら、忠義の者の使命じゃ!」
「主の恩を一番に受けておったのが其方じゃ!」
「格別なる信任を受けておりながら
逃げるようにしての別行動は、納得ならぬ」

片岡源五右衛門
「お前は、何も分かってはおらぬ」
「主は吉良を憎んではおらぬ」
「主の遺書は無いが
遺言は、儂が直接口頭で聞き遂げた」
「主の思いは、赤穂を守る事であったのだぞ」
「お前の浅はかな衝動で
主の決意有る行動は全て無駄に終わる」
「自重するのだ」

大高源吾
「馬鹿を申せ」
「卑下せらん為に
忠義を果たす覚悟を決めたのじゃ」
「主の恩に報いる為に
吉良を討ち取らねばならぬのじゃ!」
「逃げたければ、逃げれば良い」
「儂は、幕府の沙汰など恐れはしないぞ」
「怖ければ尻尾を巻いて逃げれば良い」

片岡源五右衛門
「大石太傅は、主の遺言を信じなかった」
「主の遺書には肝心の部分が書かれてはおらぬ」
「主は、重要な内容を
口頭で述べられた」
「遺書に残せば、幕府に没収され
焼き捨てられる事を懸念しての事」
「主の遺言を皆共に信じて欲しい」
「主は、吉良を憎んではおらぬ」

大高源吾
「憎んでおらぬのに
吉良に襲い掛かり、傷を負わせたのは何故じゃ!」
「其方の申す事、出鱈目じゃぞ」
「太傅が信用しないのは
其方の、いかれたお頭のせいじゃ」
「憎んでおるからこそ
切り掛かり、
傷を負わせたのじゃぞ」
「そして、討ち損じた事を
無念に、切腹なされた」
「主の無念を晴らす事が
忠義の証じゃ」

片岡源五右衛門
「違う!」
「主は、果し合いを演じたのじゃ」
「全ては、芝居じゃたのだ」
「吉良は、無傷であった」

大高源吾
「また、嘘を付く」
「吉良を何度も切り付けたが
梶川とやらに取り押さえられたと聞く」
「とどめをさしてやりたかった」
「無念じゃ」

片岡源五右衛門
「違うぞ」
「梶川頼照は主の味方じゃ」
「儂は、主から直接聞いたのじゃぞ」

大高源吾
「はぁ・・」
「もう、言い訳は止めて欲しい」
「味方であれば
吉良を取り押さえればよい」
「あ奴が、制した為に
とどめが刺せなかったのじゃ」

片岡源五右衛門
「主は、梶川頼照に頼んで
羽交い絞めにしてもらったのじゃ」
「主は、果し合いを演じて(演技)おったが
吉良は、それを知らない
羽交い絞めにされておれば
年寄りの吉良であっても抵抗はできる
主は、吉良に討たれようとしておったのじゃ!」

大高源吾
「馬鹿な!」
「其方は、いかれておる」
「主は短刀を持ったまま
羽交い絞めにあっていたのじゃ」
「吉良に反撃などできん」

片岡源五右衛門
「本当に殺すつもりであれば
短刀で切り掛かる事はない」
「短刀で突くのが基本じゃぞ」
「何故、突かなかったと思う」

大高源吾
「・・・・・」

片岡源五右衛門
「それから、
主が羽交い絞めになっておった時には
短刀は吉良が握っておった」

大高源吾
「嘘じゃ!」

片岡源五右衛門
「嘘ではない」

大高源吾
「もうよい」
「其方の嘘は聞き飽きた」
「怖ければ逃げれば良い」
「言い訳は、見苦しいぞ」

片岡源五右衛門
「本当の仇は、吉良では無い」

大高源吾
「ふん」
「不忠者が!」
「では、誰が本当の仇なのじゃ!」

片岡源五右衛門
「本当の仇は
将軍綱吉じゃ!」

大高源吾
「はァ?」
「      」
 
「?」
「何を申しておるのか
意味が分からん?」

片岡源五右衛門
「本当の事を話しても
誰も信じてはくれん」
「お主も、信じてはくれん」

大高源吾
「それは、其方が嘘つきの臆病者だからじゃ」
「吉良を仇に討ち入れば
幕府からの咎めにより切腹となる」
「だから、仇を将軍にすり替えたのじゃ」
「将軍が仇であれば
仇討ちなど出来ん」
「巧妙なる逃げ口上じゃな」

片岡源五右衛門
「主は、罠に嵌められたのじゃ」
「せめて、誰かに本当の事を知ってもらいたい」
「主の無念は
本当の事を揉み消されている事なのじゃぞ」
「吉良を討つ事ではない」

大高源吾
「嘘を真のように言いふらしておる」
「命乞いはよせ」
「不忠者が!」

片岡源五右衛門
「主が不憫じゃ」

大高源吾
「其方が、誰からも信用されない理由は
其方の嘘が知れ渡っておるからじゃぞ」
「もう、命乞いはよせ」
「逃げたければ逃げろ」

片岡源五右衛門
「頼む」
「儂の話を信じてくれ!」

大高源吾
「無駄な事」

赤穂事件  前原伊助 参上

2023-02-27 09:21:25 | 漫画

      赤穂事件  前原伊助 参上



前原伊助 (過去10石3人扶持)
「内蔵助は遺領1,500石を引き継ぎ
筆頭家老として大きな権限と扶持をもっていた」
「他の有力者は、ほぼ全て追放され
その資産も内蔵助の思うまま」
「内蔵助は十分に私腹を肥やした」

大高源吾 (過去20石5人扶持)
「内蔵助太傅は、資産を使って
大僧正様よりの温情を賜りたいと考えておるのだ」
「それは、浅はかな考えじゃぞ」

前原伊助
「軽率などと申すな」
主家再興は、我らの利益にはならぬぞ
実際問題、主家再興で喜ぶのは内蔵助だけじゃ」
「ここで主家が再興されれば
内蔵助の権威、権限は高められる」
「それに引きかえ我らは如何じゃ」
「主家再興が叶ったところで
拾石や弐拾石ばかりの下級武士じゃぞ」

大高源吾
「太傅が引き立てて下さる」
「我らを役付きにして下さる」

前原伊助
「あっははは」
「大高家の家督を相続のおり
其方の父が200石であったのだぞ」
しかしな、実際に蓋を開けて見れば
お前は20石5人扶持しか相続を認められなかった」
「悔しくはないのか!」

大高源吾
「これから、引き立てて下さる・・」

前原伊助
「馬鹿をもうすな!」
「もう、内蔵助は筆頭家老ではない」
「我らと同じじゃ
内蔵助も我らと同じ浪人じゃぞ」

大高源吾
「しかし、太傅には高い家柄と格式が御座る」

前原伊助
「大高家も安倍氏一族の出自
大高本家は藩主と同じ姓を名乗ることを認められていた」
「其方の家柄は安倍氏一族の出自
蔑まされておるのが分からんのか」

大高源吾
「忠義に励めば認められる筈」
「努力あるのみで御座る」

前原伊助
「無理じゃぞ」
「儂は、江戸詰めの金奉行として、
江戸屋敷で財政を支えてきた」
「しかしな、儂の努力は報われる事はなかった」
「儂が貢献して蓄えた資金は
全て内蔵助が奪い取った」
「江戸屋敷の資産は
秘密裡に国表に運ばれた
儂は、なすすべも無かったのじゃぞ」

大高源吾
「いやいや」
「それは誤解じゃ」
「太傅は赤穂藩の藩券を買い取っていたのじゃぞ」
「それには、莫大な資金が必要であった」

前原伊助
「あっははは」
「弱小商人の藩券は踏み倒されておる」
「内蔵助は計算高い」

大高源吾
「んんぅ・・・」
「其方は、太傅が嫌いなのか?」

前原伊助
「内蔵助は強欲か臆病者の何方かじゃな」
「内蔵助は、吉良を討ち取るつもりはないようじゃ」
「其方も、臆病者と呼ばれたいのか」
「それとも、内蔵助に媚びたいのかな」

大高源吾
「ううゥウ・・・」
「侮辱は許さんぞ!」

前原伊助
「んんゥ」
「其の粋じゃ」
「吉良を討ち取る覚悟を決めろ!」

大高源吾
「儂は、太傅に誓いを立てて
此処に来ている」
「太傅は臆病者ではないぞ!」

前原伊助
「ああ そうじゃ」
「其方に面白い話を聞かせてやろう」
「安井彦右衛門(旧浅野赤穂家老650石)と
藤井又左衛門宗茂(旧浅野赤穂家老800石)がな
吉良邸で門前払いになって
見物人に笑われ者になったそうじゃぞ」

大高源吾
「うぇ」
「なんという、惨め」
「赤穂藩士の名が廃る」
「不甲斐なき、不忠者じゃ!」

前原伊助
「意気地なしなどではない」
「あの者共は本気で謝罪を申し込んだ」
「それからな
もっと惨めで絶望的な話がある」
「門前払いに会った両名は
大石内蔵助に吉良邸の門前に平伏して
大衆の面前で謝罪せよと申し入れたのじゃぞ」

大高源吾
「なんという、悲劇じゃ」
「許せん!」
「もはや、耐えがたき屈辱」
「我慢の限界じゃ!」

前原伊助
「あっははは」
「やっと分かったか!」
「我らは、主の意思を引き継ぎ
憎っくき吉良の首を取らねばならぬ」
「吉良邸に討ち入るのは今じゃぞ!」

大高源吾
「んんんゥ」
「左様じゃ」
「太傅にも忠義を果たして頂く」
「忠義無き場合は
太傅も又、臆病者じゃ!」

前原伊助
「あっははは」
「左様、左様」

赤穂事件 和解

2023-02-26 10:22:35 | 漫画

        赤穂事件 和解



斎藤 宮内 (150石取りの吉良家筆頭家老)

「安井彦右衛門(旧浅野赤穂家老650石)と
藤井又左衛門宗茂(旧浅野赤穂家老800石)
我らとの和解を求めて来た」
「悪い話ではないぞ」 


山吉 盛侍 (吉良義周の中小姓 30石5人扶持)

「その両名は、主流派では御座らぬ」
「主流派は
江戸を隠れ蓑にしておる堀部安兵衛をはじめとする、無骨者
そして、大石内蔵助をはじめとする、したたか者」
「和解するのであれば
大石内蔵助が謝罪する必要が御座る」


斎藤 宮内
「いきなり、大石内蔵助に謝罪を求めても無理じゃ」
「先ずは、安井彦右衛門と藤井又左衛門宗茂が頭を垂れて
我らの屋敷前で謝罪する事じゃ」
「江戸市中大衆の前で大いに反省する事で
和解の道は開かれる」

山吉 盛侍
「もはや、その者共は爪弾き者
反省などしておっても意味はない」
「門前払いじゃ!」

斎藤 宮内
「何を申しておる?」
「吉良様は御傷心じゃ」
「我らは、和解を受け入れるべきじゃぞ」

山吉 盛侍
「あっははは」
「筆頭殿もいよいよ焼きが回ったとみえる」
「主の面前で逃げる事を勧めておったな」
「其方は、筆頭を降りて
隠居すればよい」

斎藤 宮内
「無礼な!」
「我らは、屋敷替えで無防備になっておるのじゃぞ」
「和解すれば、無益な争いを防ぐ事が出来る」
「戦わずして守るが、山鹿流儀」

山吉 盛侍
「いいえ」
「主を守る為に戦うのが山鹿流儀」

斎藤 宮内
「吉良様は
米沢藩上杉家綱憲様のもとで
安全にお暮し頂く」

山吉 盛侍
「おおおォ 左様な事
幕府のお許しは下りましたのか」

斎藤 宮内
「願い出ておる」

山吉 盛侍
「無駄じゃ」
「何故、この時期に屋敷替えがあったのか
よく御考え願いたい」
「幕府は、この刃傷事件の幕引きを急いでおるのじゃぞ」
「旧赤穂諸共に我らを潰して
何事もなかったように終わらせたいのじゃ!」

斎藤 宮内
「旧赤穂と戦いたいのか!」

山吉 盛侍
「戦いなど望んではおらぬ」

斎藤 宮内
「では、何故、和解を拒む」
「これは、筆頭家老による命令じゃぞ」
「和解を拒む者は、屋敷から追い出す」

山吉 盛侍
「残念じゃが
儂は、吉良義周様の中小姓
其方の命令に従う道理はない」

斎藤 宮内
「んんゥ」
「では、如何しても和解はせんと申すか!」

山吉 盛侍
「和解をしないなどとは申しておらぬ」
「儂は、その者共との和解には意味が無いと思っておる」
「大石内蔵助を門前にて平伏させ
大衆の面前で謝罪させる事で
我らの面目が立つ」

斎藤 宮内
「馬鹿を申せ」
「左様な事をすれば
旧赤穂の面目はなくなるのじゃぞ」
「我らは、大衆からも見放される」
「面子などに拘るな」

山吉 盛侍
「もう、とっくに大衆を敵に回しておる」
「旧赤穂の討ち入りは近い」

斎藤 宮内
「討ち入りが近のであれば
守りを固めなければならぬぞ」
「守備隊を結成して屋敷を改修する」
「塀を強固に高くし
円陣の構えを整える」
「門を頑丈にし
守備の人数は
旧赤穂の倍を確保する事じゃ」

山吉 盛侍
「恐れ過ぎじゃ」

赤穂事件 盟友の進藤俊式 

2023-02-25 10:16:00 | 漫画

       赤穂事件 盟友の進藤俊式



進藤俊式 (改易前 足軽頭400石。通称は源四郎)
「進藤長之は近衛家の家司
親しき親戚として、内蔵助と共に身を寄せておる」
「それ故、上方の勢力図はそれなりに知る事が出来る」

大高源吾 (赤穂浪士四十七士)
「太傅に勝算は御座いますか?」

進藤俊式
「勝ち負けの問題ではないぞ」
「今、近衛家は鷹司家に遠く及ばぬが
状況は変化しつつある」
「焦って、討ち入りなどすれば
近衛家の家司である進藤長之の協力は得られなくなる」
「近衛家と鷹司家の温情を賜れば
主家再興などは容易い事じゃ」

大高源吾
「堀部安兵衛などは
『絵空事じゃ』
『下らぬ』申し
儂の句を罵っておる」

進藤俊式
「日の恩が天子様だと申したか」

大高源吾
「天子様は天皇、上皇さまだと伝えたが
安兵衛は意に介さぬ」
「逆に、儂のことを不忠者だと罵った」
「儂は、悔しい!」

進藤俊式
「天子様の恩をもってすれば
主家再興など叶ったも同然ではないか」
「怯んではならぬぞ」

大高源吾
「しかし、元辰殿も気が変わたと申された」
「惣右衛門殿は太傅を江戸に呼んで
共に討ち入りをする事を強く望んでおる」

進藤俊式
「悔しいのは分かるが
主家再興の道が閉ざされては
本末転倒」

大高源吾
「日の恩は誤解されております」
「しかし、天の恩にしたいが字余りじゃ」
「いっそ
『天の恩 たちまち砕く 厚氷』にすべきか・・」

進藤俊式
「天であれば、天下様になるぞ」
「天子様とも天下様とも受け取られる」
「日であれば、天子様以外はない」

大高源吾
「違うのじゃ!」
「日を天子様と申したら
儂は、不忠者と罵られたのじゃぞ!」
「日の恩を忘れた不忠者だ言われて
罵られたのじゃぞ」
「日である主の禄を食んでおった者が
主の恩を忘れ、天子様を仰ぐのは不忠者だと言われ
罵られたのじゃぞ!」
「儂は、悔しい!」

進藤俊式
「天子様を仰ぐのが不忠と申したか!」

大高源吾
「いや・・」
「そうではない・・」
「主はあくまでも
浅野内匠頭様なんじゃ!」
「だから、日でも天でもないのじゃ」
「我らが句を詠めば
天子様も天下様もない」
「主様以外はないのじゃ」
「だから、如何様な弁解をしても無駄なんじゃ」
「弁解すれば、するほど
儂は不忠者と呼ばれ罵りを受ける」
「もう、句は詠みたくない」

進藤俊式
「では、句は止めておけ」
「正確に本意を知らせる必要があるぞ」

大高源吾
「しかし、変ではないか!」
「我らは、主への忠義の為に
志を一つにしたのじゃぞ」
「血判状をもって
次席家老の大野九郎兵衛を追い出したのじゃぞ!」
「改めて問いたい
今、忠義を貫けぬのであれば
何故、次席家老を追い出したのじゃ!」

進藤俊式
「あの時は、まだ、籠城の構えが解かれてはおらんかった」
「大野九郎兵衛は
籠城を阻止しようと目論んだ不忠者の極悪人じゃ」

大高源吾
「・・・・・・」
「では、儂もそうじゃ」
「主の恩を忘れ
天子様の恩に縋ろうとした・・・」
「やはり、儂は不忠者なんじゃ・・・」

進藤俊式
「んんゥ」
「どうも、江戸の雰囲気が悪いのォ」
「注意する必要があるぞ
江戸市中の庶民は、我らを煽っておるのじゃぞ
庶民は、我らに討ち入りをさせたいのじゃ」
「生類憐みの令の鬱憤を晴らしたいだけなんじゃ」
「庶民は無責任に煽っておる」
「お前が、本当に、不忠者などとは思っておらぬ」
「騙されてはならぬ」

大高源吾
「んんゥ」
「我慢ならん!」
「儂も、討ち入りがしたい!」

進藤俊式
「辛抱じゃ」
「辛抱じゃぞ!」

大高源吾
「辛抱ならん!」

赤穂事件 三つ巴

2023-02-24 08:30:10 | 漫画

     赤穂事件 三つ巴



大高源吾
「討ち入りは御控え願いたい」

原惣右衛門
「儂は、気が変わった」
「江戸庶民は、赤穂浪士の忠義を褒め称えておるぞ」
「儂は、庶民の期待に絆された」

堀部安兵衛
「両国橋に立札を立てたのは
源吾、其方か!」

大高源吾
「んんゥ 左様な事は、儂は知らん!」
「大石太傅の協力がなければ
吉良邸討ち入りなど出来ませんぞ!」

原惣右衛門
「太傅を説得すればよい」

堀部安兵衛
「大石殿は命が惜しいのじゃ」
「大石殿は怯んでおる」

大高源吾
「日の恩や たちまち砕く 厚氷」

「太傅には、儂の決意を申し渡しておる」
「太傅は、日の恩に期待を込めて
精力的に働き掛けをしておる最中なのじゃぞ」
「太傅の努力を水の泡にしては為らぬ」

原惣右衛門
「太傅に、その句を告げてきたのか?」

堀部安兵衛
「やはり、両国橋の立札は其方の仕業じゃ!」

大高源吾
「立札とは何じゃ!」

原惣右衛門
「其方、本当に知らんのか?」

堀部安兵衛
「両国橋に立札が立てられておって
其処には、よく似た俳句が載っておった」
「立札は
直ぐに役人によって撤去されたのじゃぞ」
「幕府は、仇討ちに関する落書きを監視しておる」
「余計な真似をするな!」

大高源吾
「儂は、本当に知らんのじゃ」
「他の者の仕業じゃぞ」
「そもそも、この句の意味は
仇討ちに関するものではない」

原惣右衛門
「日の恩とは
浅野内匠頭様の恩ではないか!」
「仇討ちをやり遂げて恩に報い、
厚い氷も砕け散るとの決意を表しておる」

堀部安兵衛
「いやいや、そうではない」
「この句は、決意の句ではないぞ」
「吉良の首を取った後で
主の無念を晴らした時の句じゃ」
「吉良の首は、貰ったも同然の句じゃ」
「江戸庶民は、左様に噂した」

大高源吾
「儂が作った句を
勝手にいじくっては為らん」

原惣右衛門
「誰も、手など加えてはおらん」

堀部安兵衛
「立札にあった句じゃ」

大高源吾
「日の恩とは天子様じゃぞ!」

原惣右衛門
「んんゥ?」

堀部安兵衛
「将軍様の事か?」

大高源吾
「違う!」
「天子様とは、天皇、上皇様に決まっておるじゃろーが!」

原惣右衛門
「日の恩を受けておるのか?」

堀部安兵衛
「何の句じゃ?」

大高源吾
「西本願寺の大僧正様は上方の御公卿」
「太傅は、大僧正様の加護を受けようとして
強く働き掛けをしておる」
「西本願寺を動かせれば
天皇、上皇さまの聞こえるところとなり
上方から幕府に温情ある裁きが申し渡される」
「これが、太傅の御考えじゃぞ」

堀部安兵衛
「絵空事じゃ」
「下らぬ」