アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

赤穂事件 覚書

2023-03-15 10:11:44 | 漫画


畠山 基玄 (高家肝煎)
「其方は、松平定直殿の身代わりとなり
伊予守と証しておったな!
覚えておるか?」
「旗本村越伊代守は高田郡兵衛の覚書を
伊予守松平定直に渡す筈のところ
其方が受け取る手筈となった」


品川 伊氏 (高家肝煎)
「覚書で御座いますか?」

畠山 基玄
「其方の務めは、吉良家を説得して
旧赤穂藩士と和睦を勧める事」
「江戸市中の祭り事が
大火事に為る前に、鎮静化する事じゃぞ」
「江戸市中が異常な昂りとなっておる」
「吉良邸への討ち入りを阻止する為には
旧赤穂藩士急進派の頭を説得する必要があるのじゃ」

品川 伊氏
「左様で御座る」
「・・・・・」
「はて?」
「高田郡兵衛の覚書とは?」

畠山 基玄
「旧赤穂強硬派の頭は高田郡兵衛」
「高田郡兵衛は組頭の村越伊代守に
覚書を返信しておる」
「本来、その覚書は
伊予守松平定直に渡す筈のところ
其方が受け取る手筈となったのじゃ」

品川 伊氏
「やはり、訳が分かりませぬ」

畠山 基玄
「高田郡兵衛は強硬派の頭」
「この者を落とせば、
旧赤穂強硬派は総崩れになり
討ち入りは断念せざる得ない」
「和睦させる為の罠じゃぞ」

品川 伊氏
「んんゥ」
「身代わりと申されたのは・・」

「某が名が伊氏」
「組頭が伊代守」
「身代わりの相手が伊予守」
「全て、覚書の名義が伊で御座る」

畠山 基玄
「左様じゃ」
「其方が間違って受け取ったのじゃ」

品川 伊氏
「んんゥ」
「詳しくお教え下され」

畠山 基玄
「旗本組頭の伊代守は
高田郡兵衛の無謀な討ち入りを戒めた」
「そして」
「その返事が、その覚書じゃ」

品川 伊氏
「左様か・・」
「して、覚書の内容とは?」

畠山 基玄
「高田郡兵衛は討ち入りの妨害を防ぐ為に
嘘の覚書を返した」
「その覚書の名義は郡兵衛」
「そして、受取人は其方じゃ」

品川 伊氏
「では、郡兵衛は和睦を求めていると・・」

畠山 基玄
「左様じゃ」
「郡兵衛は討ち入りを妨害されぬように
嘘を付いたのじゃ」

品川 伊氏
「・・・・・」
「しかし、嘘と分かっておっては
和睦は為りませんぞ」

畠山 基玄
「いやいや」
「その覚書を其方が受け取った事に意味がある」

品川 伊氏
「・・・・」
「某は、吉良家の補佐役」
「その補佐役に、和睦を申し入れた事になりますな」

畠山 基玄
「左様じゃ」
「これは、郡兵衛の裏切り行為じゃぞ」

品川 伊氏
「急進派の頭が裏切ったと・・」

畠山 基玄
「左様じゃ」
「郡兵衛の嘘は、自らを戒める」
「嘘が真となるのじゃ!」

品川 伊氏
「郡兵衛一人に大袈裟な猿芝居ですな」
「直ぐに見破られそうじゃ・・」

畠山 基玄
「見破られても構わぬ」
「急進派が動揺すればよい」
「討ち入りを回避できればよい」
「江戸市中の興奮を抑え込む事が肝要」
「鎮静化させ、それから、和睦を勧める」

品川 伊氏
「・・・」
「郡兵衛とは何者ですか?」

畠山 基玄
「その者は、
戸田忠昌の推挙で浅野長矩に200石15人扶持で仕えた」
「善人の良将である戸田忠昌の推挙を受けた身」
「幕府の許しを受けず
討ち入りなどをする者を推挙したとあれば
善人の良将は評判を落とす」
「善人の良将と呼ばれるのには訳が有る」
「誰が、そう呼んでいる?」
「そう呼んでいるのは、上様じゃぞ」
「では、何で上様はそう呼んでいると思う」
「それは、上様がお決めに為った事なのだ」
「あの者達は、善人の良将で有り続ける必要が御座る」
「些細な怠りも有っては為らぬのじゃ」
「全ては、上様の御意向じゃぞ」

品川 伊氏
「郡兵衛を取り込む必要が御座いますか?」

畠山 基玄
「いいや」
「取り込むことは出来ない」
「あの者は真の武士じゃ」
「忠義の為に自らを犠牲にする事を憚らぬ」

品川 伊氏
「では、猿芝居では無理では御座らぬか?」

畠山 基玄
「左様じゃ・・しかしな」
「いずれ、老中共々で説得することに為ろう」
「あの者は、忠義の義士」
「あの者は、戸田忠昌の推挙を受けた身」
「その恩義を忘れ、
恩ある老中の顔に泥を塗る真似は出来ぬ筈」

品川 伊氏
「んんゥ」
「左様か・・」

畠山 基玄
「引き続き、和睦の勧めをお願い致す」

品川 伊氏
「承知した」