赤穂事件 旗本内田三郎右衛門
内田三郎右衛門 (旗本内田貞親（550石）の長男 高田郡兵衛の伯父)
「郡兵衛を唆すのはやめろ！」
「郡兵衛は脱藩させる」
大石内蔵助
「何を申される」
「もう、旧赤穂藩は改易」
「脱藩などに意味は御座いませんぞ」
原惣右衛門
「何を申される！」
「郡兵衛殿は忠義の義士」
「我らの同志に御座るぞ！」
堀部安兵衛
「郡兵衛の伯父か？」
「出しゃばるでないぞ！」
「其方には、関係無き事じゃ」
内田三郎右衛門
「儂を見くびるではないぞ
儂は上様に拝謁を許され
切米150俵の支給を受けた」
「これは、上様よりの褒美じゃ」
「昨今、斯様な褒美を賜った者はおらぬ」
「特別なる配慮じゃ」
「それほど、儂は上様から期待されておるのじゃぞ」
「それは、郡兵衛がおるからじゃ」
「儂は、郡兵衛を娘婿として養子に迎える」
「儂は、郡兵衛を脱藩させる」
大石内蔵助
「郡兵衛殿も了解しておるのかな？」
原惣右衛門
「郡兵衛は忠臣じゃ！」
「我らの同志じゃ！」
堀部安兵衛
「伯父殿は口出し無用ですぞ」
「郡兵衛を唆しておるのは、其方じゃ」
内田三郎右衛門
「では、其方達は
本当に討ち入りを企んでおるのかな？」
大石内蔵助
「いやいや」
「我らは、吉良殿との和解を目指しておりますのだ」
「左様な心配を為さいますな」
原惣右衛門
「いや・・」
「んんゥ・・・」
「左様じゃ」
堀部安兵衛
「・・・・・」
内田三郎右衛門
「太傅は、消極的のようじゃが
其の方お二方は、不満のようじゃ」
「やはり、お二方は討ち入りを企んでおる」
大石内蔵助
「威勢ばかりじゃ」
「討ち入りなどない」
原惣右衛門
「・・・・・」
「左様・・」
堀部安兵衛
「ないない」
内田三郎右衛門
「討ち入りがないのであれば
脱藩してもよい筈ではないのかな」
大石内蔵助
「それは、主家再興の為」
「郡兵衛殿に
200石15人扶持を取り戻さんが為」
原惣右衛門
「我らは、浪人じゃ」
「このままでは為らん」
堀部安兵衛
「つべこべ申しておったら
承知せんぞ」
「つまみ出してやる！」
内田三郎右衛門
「やはり、無骨者とは其方の事じゃな」
「これで、確信を持った」
「其方達の計画を御上に訴える」
大石内蔵助
「おおォ」
「安兵衛は無骨、無作法」
「許して下され」
「あの者は威勢ばかり
我らの本意では御座らぬ」
「我らは、吉良殿と和解したいのじゃ」
原惣右衛門
「はァ・・」
「和解などせんぞ」
堀部安兵衛
「太傅」
「そ奴を、切っても良いか！」
内田三郎右衛門
「安兵衛殿」
「儂を切ると申すか！」
「やはり、変じゃ」
「やはり、郡兵衛は脱藩せねばならぬ」
大石内蔵助
「おい！安兵衛！」
「其方は、口を出すな！」
原惣右衛門
「・・・・」
堀部安兵衛
「郡兵衛に直接、申し渡せばよいじゃろーが」
「郡兵衛に決めさせればよいじゃろーが」
内田三郎右衛門
「ほォ」
「では、そうさせてもらう」
「しかしな、其方の粗暴な言動は許さん」
「疑わしき事も、含めて
御上に申し渡すぞ」
「よいか！」
大石内蔵助
「いやいや」
「こら、安兵衛」
「謝罪しろ」
原惣右衛門
「・・・・・」
堀部安兵衛
「・・・・・・」
内田三郎右衛門
「これで確信した」
「郡兵衛を脱藩させる！」
大石内蔵助
「郡兵衛が脱藩したいと申せば止めはせぬ」
原惣右衛門
「郡兵衛は同志じゃ
忠臣じゃ！」
堀部安兵衛
「我らは、同士じゃ」
「裏切りはない」
内田三郎右衛門
「では、太傅殿」
「郡兵衛の意思に従う事に同意為さいませ」
大石内蔵助
「承知した」
原惣右衛門
「郡兵衛が裏切るとは思えん」
堀部安兵衛
「郡兵衛は武士じゃ」
「武士は、逃げたりはせん」
内田三郎右衛門
「儂が、逃がす」
大石内蔵助
「ぞうぞ、穏便に・・」
原惣右衛門
「ふん」
堀部安兵衛
「去れ！」
内田三郎右衛門
「はァ・・」
「やれやれ・・・・」
大石内蔵助
「申し訳ない・・」
原惣右衛門
「何で謝る・・」
堀部安兵衛
「二度と来るな！」