赤穂事件 分断
大石内蔵助
「皆々に申し伝える」
「軽率な行動により
大学様及び広島宗家に多大なる迷惑を及ぼす事
明白なり」
「討ち入りは禁止致す」
奥野将監
「我らは一丸となり
主家再興の為に尽力する事」
堀部安兵衛
「いきなり、飛び込んで来て
決めつけられたも承知出来んぞ」
「我らは、内匠頭様の意志を継いで
吉良邸討ち入りを果たすことを誓い
討ち入りの決意を認めた」
「もう、太傅の説得などに
応じる事はない」
「我らの決意は固いのじゃぞ！」
原惣右衛門
「吉良は本来、父の仇でもある」
「吉良を討つことは、儂の使命じゃ」
「主の無念を晴らすと共に
儂の本望を成し遂げたい」
「太傅は、籠城を嫌って
切腹も出来なかった」
「儂は、情けないぞ！」
大石内蔵助
「惣右衛門殿は承知しておると思っておったが」
「主の本望は、主家再興にあるのだぞ」
「主は、自らを犠牲にして
我らを守ろうと為されたのじゃぞ！」
「討ち入りは、最終手段じゃぞ」
大高源五
「太傅は集めた金で遊んでおるとの噂」
「真で御座るか？」
前原伊助
「江戸では、太夫(遊女)と呼ばれておる」
奥野将監
「戯れ言は不謹慎と心得よ」
「太傅に無礼は許しませんぞ！」
大石内蔵助
「済まぬが、両名は席を外して欲しい」
「神聖なる会議に
下級武士が混じるのは
宜しくない」
前原伊助
「そりゃありませんぜ」
「忠義に、下級も上級も関係ない」
「儂は、忠義の義士じゃ」
「忠義の為に、吉良を討つ」
奥野将監
「ほれ見ろ」
「太夫は、儂らを馬鹿にしておる」
「主家再興は、主の為に非ず
主家再興は、太夫の為にあり」
原惣右衛門
「おい」
「大概にしろ」
「太傅は、忠義を果たそうと為されておる」
「なァ」
「そうであろう」
大石内蔵助
「当然じゃ」
「主の恩に報いる事が本望じゃ」
堀部安兵衛
「だっははは」
「ならば、話は早い」
「明日にでも、今日でもよい」
「吉良邸に討ち入りじゃ！」
大石内蔵助
「主は、主家再興を望んで
自らの命を捧げたのじゃぞ」
「慎み、自重して欲しい」
堀部安兵衛
「主の恩を感じており
忠義を果たしたければ
吉良を討つのが正義じゃ」
「逃げるのは、臆病者じゃぞ」
「後世に、臆病者として名を残すか」
「それとも、誉れの忠臣として名を残すか」
「よく考えてみなされ」
原惣右衛門
「江戸市中の者共は
皆々が、仇討ちを期待しておる」
「吉良と和解などすれば
笑われ者じゃ」
「情けない笑いものになるくらいならば
切腹して果てたいものじゃ」
「これが、潔き武士の定め、掟、決まり事じゃ」
大石内蔵助
「大学様を危険に晒す事になるのだぞ」
「軽率な行動は止めるのじゃ」
「確と、申し付ける」
堀部安兵衛
「太傅の考えは、よく分かった」
「だからな、太傅の協力は不要じゃぞ」
「儂は、同士を集めて
討ち入りを決行する」
「もう、決めたのじゃ！」
大石内蔵助
「待ってくれ」
「同士を集めてから江戸会議を開きたい」
堀部安兵衛
「太傅は下級武士を排除したいらしい」
