アプリコット プリンセス

チューリップ城には
とてもチャーミングなアプリコット姫がおりました

第十二章 アプリコットプリンセス 非情なる命令

2016-06-19 09:32:04 | 漫画


日出吉
「おい! チビ助!
儂が分かるか?」

アプリコット
「マァ・・・怖い・・・」

日出吉
「そうじゃろー
怖かろーが!
これからは、
儂は皆の者から恐れられるのじゃ!」

アプリコット
「皆から恐れられたいの?」

日出吉
「ははは・・・
恐れられたくなくとも
恐れよるぞ!」

アプリコット
「きっと、そうなりますわ」

日出吉
「儂はこれから歴史に偉大な名を残す
天下人として、君臨することになるのじゃ」

アプリコット
「そうなのね・・・
でも、私は興味ないわ・・」

日出吉
「いや、是非とも興味を持ってもらいたい」

アプリコット
「日出吉様が天下を納めれば
戦国の世に終わりがくるのね!」

日出吉
「いや、儂は戦をやめるつもりはないぞ!
儂は戦が好きで好きでしかたないのじゃ
儂の戦は口先のはったりで勝敗がつくものじゃて、
策略で天下を取るのじゃ!」

アプリコット
「私、境に行くのよ!」

日出吉
「ほー・・・
東の方に会いに行くのかな?」

アプリコット
「冒険なの」

日出吉
「なァ チビ助、
本当のことを知りたくないか?」

アプリコット
「知ってるわ」

日出吉
「嘘をつけ」

アプリコット
「私は何でも知ってるのよ
だけど誰にも言わないわ」

日出吉
「そうか・・・
光日出のことかな?

儂はのォ 光日出をたぶらかして
厄介者を始末したのじゃよ」

アプリコット
「酷いお方」

日出吉
「歴史は権力者がねつ造して
時の権力者の都合のよいものとなるものじゃ」

「儂が天下人になれば
儂が英雄のように歴史を作り変えることも
できるのじゃぞ」

アプリコット
「作り変えなくても、日出吉様は英雄ですわ」

日出吉
「しかし、面白くないのじゃ
本当のことを誰かに話したいのじゃ!」

アプリコット
「話さないても、私は知ってますわ」

日出吉
「知っておるなら都合がいい
儂が最も恐れていた厄介者とは信長どのじゃった
信長どのの配下をおっては天下人にはなれんからのォ」

「その目の上のたんこぶを自分で片付けると
裏切者となり恰好が悪いからのォ」

「そこで、光日出を追い詰めて謀反をそそのかしたのじゃ」

アプリコット
「面白い話ではないわ」

日出吉
「チビ助!
面白くなくても聞いておけ!」

「光日出は信長どのによく似た性格の持ち主でのォ
本当は我慢など出来ぬ気性なんじゃが
信長どのには立ち行きならなかたのじゃ
そこで、徹底的に光日出殿を追い詰めたのじゃよ!」

「そして、ついにやってくれたのじゃ」

「儂は、これから裏切者の光日出を捕らえに行くことろじゃ」
「どうじゃ、面白かろーが」
「これが策略なんじゃ」

アプリコット
「日出吉様は天下を取って戦を続けて、
時の権力者になりたいのですね」

日出吉
「儂だけではないぞ!
あの光日出も、
天下を狙ったのじゃ!」
「ただ、儂の方が一枚も二枚も上手なんじゃよ」

「歴史は、光日出を裏切者として記録するじゃろーし、
儂を天下人として褒め称えようのォ」

「本当は、儂の策略なんじゃよ」

アプリコット
「何で、話しておきたかったの?」

日出吉
「本当の事は隠すことはできんからのォ」

アプリコット
「歴史は権力者が作り変えることもできるけど、
真実は変えられないものね、
このお話は日出吉様の懺悔なのかしら?」

日出吉
「いや、儂には怖いものなど無いのじゃ
あの魔王信長どのも儂の策略にはまったのじゃ」

「しかし、儂は秘密を持ち過ぎたようじゃ
誰かに喋らんと苦しゅうなってきたんじゃ」

アプリコット
「そう、
話は聞いてあげますけど
約束してね」

「これからは、日の出国の人々の為に
皆が平安で、安心できる世の中にして下さいね」

日出吉
「ははは・・・
約束はできんが!
先ずは、日の出国を手に入れてからじゃ」



日出吉
「これは! 驚いた!」
「光日出殿が、儂なんぞに
のこのこと捕まるとは予想もできなんだ!」

光日出
「それを言うのであれば、
光日出の方が驚いておりまする!
日出吉殿は我らが援軍に来るを待っていた
何故、こんなに早く引き返すことが出来たのか?」

日出吉
「すべての手柄を開間臣殿に譲ったのじゃよ
全てを放り出して帰ってきたのじゃぞ」

光日出
「してやられましたぞ」

日出吉
「光日出殿! 何故、我らに捕らえられる前に
切腹しなかったのじゃ!」

光日出
「チビちゃんに会ったからかのぉ」

日出吉
「ほーぉ アプリコットの
チビ助めが何か言ったのか?」

光日出
「生きる道を説いておった・・・・」

日出吉
「儂はのぉ お主を高く買っとるのじゃぞ
だから、切腹などしなくて良かったと思っとる」

「どうじゃ、観念して儂に従わぬか?」

光日出
「日出吉殿の好意をありがたく頂いたとしても
遺恨が残りますぞ」

日出吉
「遺恨など有るものか、
有るのは儂への忠誠だけじゃぞ」

光日出
「切腹も許されず、忠誠心で生きよと・・・・」

日出吉
「生き恥をさらして生きる道も有りじゃ!
切腹は許さんぞ!」

「儂はのぉ お主を開放しようと思うとる
領地に帰って反攻に転じるも良し、
儂に従い、奉公するも良し、
良くお考えなされ」

光日出
「それでは、
この光日出を許されるのでございますか?」

日出吉
「許すも、許さないも無かろーぞ」
「さあ、お行きなされ!」

光日出
「かたじけない」
「この御恩は一生忘れませんぞ!
では、取り急ぎ失礼する! 
御免!」



日出吉
「武智世様!
お父上様の弔い合戦終わりましてございます」

武智世
「本来であれば、
この武智世が出陣せねばならぬところ
無念であった」

日出吉
「無理はござらん!
今はまだ武田の残党があり、
武智世様も武田の人質に変わりませぬ」

「しかし、不幸中の幸い」

「お父上様、信長公が遣わされた
切腹の件は無効にございます」

武智世
「武智世は死ぬことを恐れはせぬ」

日出吉
「信長公は武田の残党を根こそぎに
打ち滅ぼそうとしていたのじゃ!
武智世様は嫡男でありますが、
武田と親戚縁組なされたことにより
災難が避けられなくなったのでござる」

武智世
「武智世は父上の意思を受け継いで、
天下に号令したいと思うておるが
日出吉殿の助言を賜りたい」

日出吉
「助言などとは畏れ多き事にございますぞ」

「武智世様は信長公の嫡男でござりますから
天下人でございます。
日出吉は大きな力を授かりましてございますから
存分に奉仕させていただきますぞ」

武智世
「心強いことじゃ
日出吉殿がおれば
安心して、この日の出国を統治できそうだ」

日出吉
「そうですぞ!
武智世様は安心して、
この日出吉に全て任せておけばよいのですぞ」

武智世
「日出吉殿にお願いがあるのじゃが
武田に残された家族を守ってもらえないだろうか?」

日出吉
「ほー
では、嫁とりなされたのですかな?
それはめでたい!
守りますぞ!守りますとも!」

武智世
「それから、
光日出と武田が通じているとの噂があるが、
日出吉殿の知るところなのか?」

日出吉
「さー 知らぬことじゃ」

武智世
「敵の光日出と親類の武田が通じていると
武智世の立場が無いのじゃ」

日出吉
「心配無用にございますぞ、
光日出は亡き者となっておりますぞ。
そして、武田の残党も
儂に逆らう力を持ち合わせてはおらぬからのぉ」

武智世
「武智世は東のお方と通じて
東方に拠点を築こうと思うが
日出吉殿のお考えを聞いておきたい」

日出吉
「それは成りませんぞ!
東のお方に近づいては成りませんぞ!」

武智世
「どうしてですか?」

日出吉
「天下に二人の王は必要ないのじゃ」

「武智世様は天下人になるのですぞ
東のお方を近づければ禍になりますぞ!」

武智世
「武智世は東のお方が好きじゃがのぉ・・・・」
「父上も東のお方を兄弟と呼んでいたぞ」

日出吉
「信長公は東のお方よりも儂の事を信頼しておったぞ
お父上の弔い合戦でも
儂は一番乗りでがむしゃらで奮闘したのじゃぞ
儂は、武智世様に天下人になって欲しいのじゃ!
東のお方には絶対に近づいてはならんぞ!」

武智世
「日出吉殿がそう考えるのであれば
いたし方あるまい」




そのころアプリコットは東のお方に合っていた。

アプリコット
「大納言様 はじめまして、わたしチューリップ国のアプリコットです。

家康
「おお! 噂は聞いておるぞ!」
「堺で入れ違いになってしまったようで済まなかったのぉ」

アプリコット
「お会いできて光栄ですわ!」

家康
「あの魔王と呼ばれた信長様に
説教をした跳ね返りだと聞いていたが、
なんと、可愛らしいおチビちゃんじゃ!!」

アプリコット
「やだわ! 変な噂が広がってるのね・・・・」

家康
「しかし、大変なことになってしまったわい」

アプリコット
「戦国時代に逆戻りしてしまったのね」

家康
「右府様亡き後の戦乱を納めるには
武智世様に号令をかけてもらわねばならぬが、
あまりに幼すぎる、
日出吉は武智世様を利用して天下人になろうとしておる」

アプリコット
「武智世さまはエゾンベラで人質になり、
帰国後は勝余里さまの人質になりました」
「そして、武田軍の残党とともに
皆殺しにされようとして
切腹の命令を受けていたのです」

家康
「なんと、右府様は嫡男坊に切腹の使者を送っていたのか!」

アプリコット
「私はエゾンベラの強制収容所で武智世さまとお友達になったのよ」
「だから、また武智世さまにお会いしてお話がしたいわ」

家康
「アプリコット王女!
武智世様と友達と申されたな!」

アプリコット
「そうよ、武智世さまは私の大切なお友達なのよ」

家康
「日出吉は天下人気取りじゃ
いずれ徳川家を滅ぼしに掛かろーのぉ」

アプリコット
「日出吉さまは大納言さまに国の半分を下さると申しておりました」

家康
「はははは・・・・・
王女様
それは罠じゃ!」

アプリコット
「罠?

家康さまは賢人ですわ
これが罠だと気が付くのですから
家康さまが領土半分で和解すれば、
謀反の疑いをもたせて、
賊軍として成敗しようとしていたのですね」

家康
「その通りじゃ」

アプリコット
「太閤さまは恐ろしいお方です」

家康
「しかしのぉ
天下泰平には天下人が必要なんじゃ
そして、今、一番天下人に近いのが日出吉様じゃ
戦乱の世を終わらせるには日出吉様に
天下人になってもらうしかないのじゃ」

アプリコット
「きっと、本当の天下泰平は
徳川さまによって成されるような気がします」


家康
「もうよい、
何も申すな!」




日出吉
「大納言! チビ助に合ったそうじゃな」

家康
「アプリコットの事ですかな?」
「いかにも、お会い致した」

日出吉
「チビ助め 何か要らぬことを申しておらなんだか?」

家康
「太閤殿に都合の悪いことでもお有かな?」

日出吉
「ははは・・・・
いかにも、多有じゃ」

家康
「ははは・・・・
では、何も聞きますまい」

日出吉
「いや、聞いてくれねば困る」

家康
「そうですか! では、聞きましょう」

日出吉
「チビ助から聞いておると思うが
この日の出国を大納言と
半分こしようと思もーてのぉ」

家康
「それならば、太閤様も聞いておられようが、
天下を二分すれば禍のもとにございますから、
身を引きたいと申しました。

日出吉
「そうか!
大納言!
儂はのーぉ 大納言ならば半分こでも良いと思もーておった」

「しかし、大納言が身を引きたいと申しておるのを
引き留める訳にもいかぬのぉ」

家康
「この戦乱の世を鎮めて
天下泰平を求めるに
禍のもとを残す必要がございましょうか?」

日出吉
「大納言!
儂は大納言が何と言おうが
お主を家来だとは思もーてはおらんぞ」

家康
「・・・・・」

日出吉
「これからは、徳川と豊臣は家族となる」

「儂の妹を貰ってくれぬか?」

家康
「しかし、妹様には家族が有りましょうに?」

日出吉
「別れさせる」

家康
「年齢が・・・・」

日出吉
「確かに、もう適齢期を過ぎておるが
家族じゃ!」

家康
「・・・・・」

日出吉
「よし! 決まったぞ」
「大納言は家族じゃ」

日出吉
「田舎育ちで美人ではないし
歳もいっているが、
儂の可愛い妹じゃ、可愛がってくれ」


家康は我慢の限界にあったが、
日出吉の申し出を快く受け入れた。

日出吉
「良し! 快諾じゃのー」
「では、家族の家康殿に協力してほしい!」

家康
「どのような事でございましょうか?」

日出吉
「他愛のない、些細なことじゃ」

「あの生意気なチビ助を殺して欲しいのじゃ」

家康
「むぅ・・・」

日出吉
「それも、できるだけ惨たらしく
見せしめになるように殺すのじゃ」

家康
「して、どのような罪でございましょうか?」

日出吉
「エスパニアの商船が難破して
我が国に漂流して来た時に
その船員に聞いたんじゃが、
奴らは、
この国を占領するために布教をしているそうな」

「儂は、布教をするものを侵略者とみなすのじゃ」

家康
「いかにも、生かしておくことは出来ませんな・・・・」

日出吉
「そうか!
これも了承じゃのぉ」

「あの生意気なチビ助めが
泣き叫んで命乞いをするのじゃ
おもろいのー」

家康は恐ろしいほど悲しく苦しかった、
アプリコットが布教を目的に
日の出国に来たのではないことは明らかであり
武智世を救ってくれた恩人なのである。

しかし、日出吉の命令に背けば
敵対関係になってしまうことは分かっていたので、
断ることは叶わなかった。




家康
「悪いことは言わぬ。早くこの国から出て行ってくれ」

アプリコット
「家康様! 何かありましたか?」

家康
「大有りじゃよ・・・・」
「あの猿めが忌々しい奴じゃ・・・・」

アプリコット
「猿・・?」
「秀吉様のことですか?」

家康
「そうじゃ!
その猿めが、お主を殺せと言いおった!」

アプリコット
「マァ・・・
それでわ、家康様は秀吉様の家来なんですね?」

家康
「馬鹿を言うな!
猿の家来になるくらいなら死んだほうがましだ!」

アプリコット
「では、秀吉様にこうおっしゃたらいいわ」

「儂はお主の家来ではないぞ!
アプリコットを殺したければ、ご自分でなさってください」

「やりたくなければ、断ればいいのよ」

家康
「それが出来れば苦労はせんわ・・・・」

アプリコット
「秀吉様を止められるのは家康様だけよ
理不尽なことや国民を苦しめる政策は断ってもいいのよ」

家康
「たとえ儂が断っても姫は殺されるぞ」
「とにかく、早くこの国から出て行ってくれ」

アプリコット
「そうね、出ていくわ」
「でも、もう一度、秀吉様にお会いしたいわ」

家康
「悪いことは言わぬ、もう猿に構うな!
早く出ていけ!」




秀吉
「ちび助!」

アプリコット
「王女様に対して、ちび助は失礼ですよ」

秀吉
「まだ生意気な口が直らんようじゃのお」
「まぁ良いわ 今に泣き面を晒して許しを請うことになる」

アプリコット
「私の涙が見たいのね・・・」

秀吉
「儂わのぉ お主の涙など見たくわない
儂が見たいのはのぉ、お主の服従心じゃ
あの魔王と呼ばれた信長殿にも従わぬ
お主の服従心が欲しいのじゃ!」

アプリコット
「前にもお話したわよ」
「私はそんなことには興味が無いわ」
「私はすべての人々が
幸せに暮らせるようにして欲しいだけなのよ」

秀吉
「それなら、手は打っとるぞ!」
「儂わのぉ、この大阪の町を大商業地域に発展させたのじゃ」
「儂わ太っ腹じゃ 
この町で商売するものから場所代を免除してやったわ」
「場所代が要らぬと分かった商売人がワンサカ集まってきよったわい」
「儂わのぉ 場所代を免除して代わりに売り上げからの納税をしたのじゃ」
「商売人が集まると物が大阪の地の溢れ返る
すると、その物を目当てにして人々が集まる。
人々が集まれば住居が必要になり大工が儲かる。
大工が増えれば木材が売れる。
木材は遠方から安く仕入れて大阪で高く売るのじゃ」
大工だけではないぞ!
歌舞伎や芝居小屋も大盛況じゃ」
「みんなが儲かっとる」
「儲かったら、みんなが幸せになっとる」
「どうじゃ これなら文句はなかろーが」

アプリコット
「秀吉様は立派ですわ」

秀吉
「なんじゃ それだけか?」
「儂が立派なのは当たり前じゃ」
「そんなお世辞を聞いて喜ぶ秀吉ではないぞ」
「どうじゃ、儂を尊敬して敬服せんか?」

アプリコット
「では、海を隔てた隣の国と戦をするのは、如何してですか?」

秀吉
「ちび助よ!
口を慎め!
今回の戦を咎めたものが如何なったか知っとるじゃろーが」
奴らはその場で首が胴体から離れて飛んで行ったわ」
「即刻、打ち首じゃ」

アプリコット
「では、私も打ち首ですか?」

秀吉
「そんなことは聞かんでも決まっとる」
「お主の命は無いものと思え!」

アプリコット
「人々が豊かに幸せになったのに
戦を続けるのは、不幸の始まりですよ」
「この神聖世界では勝ち逃げは許されていないのです」
「秀吉様は多くの人々を幸せにしたと言いますが、
それ以上の不幸を招き寄せたのです」
「秀吉様は常勝、負け知らずで天下人になりましたから
これからは負け続けることになります」
「これは、天命ですよ」

秀吉
「儂を本気で怒らせたようじゃのぉ」
「後で泣き言を言うなよ」
「いや、泣いても許さんぞ」
「おもろいのぉ」
「おもろい」
「いや、腹が立つ」
「儂は頭が壊れてしもーたようじゃ」
「おもろいのか、腹立たしいのか
分からんようになってしもーた」














第十一章 アプリコットプリンセス 大きな獲物

2016-06-09 08:02:44 | 漫画


開間臣
「右府様の落雷何事もなく、今は晴天なるぞ」

光日出
「接待役のことでございましょうか?」

開間臣
「其方は右府様の代からじゃが
儂などは先代からのお勤めじゃ
驚くのも無理はないが
安心召され!」

光日出
「では、引き続き東の客人を我らがもてなせよと?」

開間臣
「さよう」

光日出
「分かり申した、仰せの通り仕りますと申し上げ下さいませ」

開間臣
「おう快諾じゃの、ここで、へそを曲げられたら
また、雷が落ちるところじゃ
いやー良かったわい」

光日出
「滅相もございません。
喜んでお役目 務めさせていただきまする」

開間臣
「右府様のお戯れはお主を高く買っているからじゃ
中国地方、四国への遠征では何かあろうなぁ」

光日出
「何か?」

開間臣
「そうじゃ右府様は天才的な策略家じゃからぉ
意味ないお戯れはござらん」

光日出
「我らを叱るは策略と申すか?」

開間臣
「さよう」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「ん?
どんな策略か聞きたくないのか?」

光日出
「では、教えてくだされ」

開間臣
「そうじゃろ 聞きたいじゃろ」

光日出
「・・・・」

開間臣
「・・・・・」

開間臣
「儂なんぞは、武士の情けで聞いたんじゃが
教えてもらえなんだ」

光日出
「教えたくなければ・・・・」

開間臣
「いいや、ちょとだけなら構わんじゃろう」

光日出
「・・・・」

開間臣
「これは右府様の深いお考えあってのことなのじゃ」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「どうじゃ?聞きたかろー」

光日出
「右府様の考えていることがでございますか?
わたくし愚昧なれは・・・・」

開間臣
「謙遜なさるな
見せしめじゃよ」

光日出
「さようでございましたか・・・」

開間臣
「じゃがのぉ
見せしめは、右府様の深きお考えではござらん」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「なぜ黙っておるのじゃ
儂じゃったら頭をさげてでも聞きたいがのぉ」

光日出
「いや、気が付きませなんだ
光日出 この通り頭を下げてお願い申し上げる」

開間臣
「だめじゃ内緒なんじゃ・・♪」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「だから
何で黙るんじゃ」

光日出
「開間臣様のお考えが分かりかねるのでございます」

開間臣
「だから、そうじゃなくて
聞きたいことを聞いたらいいんじゃよ」

光日出
「さようで?
それでは、是非お話しくださいませ」

開間臣
「内緒じゃ・・・
敵を欺くには見方からと言うでな♪」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「また黙る」

光日出
「???」




日出吉
「右府様から厳命より北方への援軍を命ぜられたのじゃが
断ったんじゃ」

光日出
「なんと、上意をお断りなされたので?」

日出吉
「命がけの賭けに出たのだよ」

光日出
「お手打ち覚悟でございましたか?」

日出吉
「右府様は儂を失いたくないのじゃよ
その代わりに厳しい罰を貰い申した」
「中国地方を儂だけで攻めよと」

光日出
「援軍無しでございますか?」

日出吉
「援軍は歓迎だが、指揮下に下るは御免こうむるでな」

光日出
「実は、右府様より命じられた接待役を再度解任と!」

日出吉
「ほーそれで・・・・」

光日出
「我らは日出吉様の指揮下に入るように援軍を命じられ申した」

日出吉
「ほーぉ・・・・
光日出様が我らの指揮下にのぉ・・・」

光日出
「山陰道を攻めよとの命令であります」

日出吉
「ほーぉ・・・
それは援軍無しでは敵わぬ!」

光日出
「我らも背水の陣なのであります
接待役再解任の件で領土召し上げ・・・」

日出吉
「ほーぉ 右府様も手厳しい」

光日出
「このまま日出吉殿の指揮下にありましては
領土を持たぬ大名になってしまいまする」
「今回の中国攻めは我らに手柄を取らせて貰うわけには・・」

日出吉
「おぉ・・・
それは難儀じゃのぉ
山陰道は手付かずじゃ存分に暴れまわるがよいぞ!」

光日出
「恐れ入りまする」



アプリコット
「こんにちは、わたしアプリコットよ」

アプリコット
「・・・・・・・」

「チューリップ国から日出国に遊びに来たのよ」

アプリコット
「・・・・・・・」
「光日出様
如何なされましたか?」

光日出
「ん?」



光日出
「いや 気が付かなんだ」
「異国の姫様が光日出に用事がおありかな?」

アプリコット
「皆さん、私のことをおチビちゃんと呼んでるのよ」
あのね、わたし・・・・日の出国の王様に追い出されちゃった」

光日出
「右府様に追い出された?」

アプリコット
「右府様に説教をしてきたのよ」

光日出
「むうぅぅ
あのお方に説教を!」

アプリコット
「えへへへ
説教なんて言ったら怒られちゃうわね」

光日出
「おチビちゃんは怖くないのかね?」

アプリコット
「信長様は完全主義だと思ったから・・・
だって、完璧なものには魔物が潜むと言うわ!」

光日出
「右府様に魔物が潜んでいると・・・」

アプリコット
「光日出様・・・
それを言うならば・・・・
光日出様にも魔物が・・・・・」

光日出
「・・・・・」

アプリコット
「私は愛の使者なのよ!
戦国の世で虐げられている人々に愛を捧げたいの!」


光日出
「そうか💡
分かったぞ💡
王女はキリスト教徒だな」

アプリコット
「いいえ、違うわ」
「わたしは布教のために異国に来たのではないのよ」

光日出
「エゲレスやエスパニャは布教をつうじて
人心を奪い征服を目論んでおる
うかつに愛だなどと申すではないぞ
お主が右府様に追い出されたのは必然!
その場でお手打ちになり殺されていたところぞ!」

アプリコット
「そうなのね😢
良く分かったわ・・・
神様の愛が征服に利用されているのね・・・

光日出
「うむぅ、分かってくれたか・・・
これからは、国事にかかわらんこと
きつく申し付けるぞ」

アプリコット
「日の出国のあり方に口をはさむことはしないわ
だけど、虐げられて苦しんでいる人々を見捨てることは出来ないわ」



光日出
「武士はのぉ 愛などと言ってはならん
お家大事なのだよ」
「おチビちゃんには分からんだろうが
この国は戦乱により荒んでおる
天下泰平は愛をもっては成されず
力と絶対的な支配によりもたらされるのじゃ」

アプリコット
「光日出様も右府様と同じお考えなのね・・・」

光日出
「ははは・・・・
右府様と比較されるとは光栄至極」

アプリコット
「わたし気になってきました」

光日出
「気にする必要はない」

アプリコット
「光日出様は迷っていますね
お家を、そして家臣のために
大きな決断をしようとしているように感じるわ」

光日出
「ははは・・・
武士はのォ迷いは禁物じゃ
勝つか負けるか
生きるか死ぬかじゃよ」

アプリコット
「この国では敗戦の将は自殺するの?」

光日出
「自殺?
切腹のことじゃな」
「これは武士の死にざまじゃよ
切腹をいさぎよしとして称賛するのじゃ」


アプリコット
「自殺は天界で最も大きな罪になるわ
この世の誉は神の世には通じないのよ
自殺するのではなく生きる道を探す必要があります」

光日出
「将は家臣にお咎めなしを条件に
切腹するのじゃ
あの世のことは知らぬが
数十万石のお取り潰しと儂一人の命を天秤にかけたら
天界など関係なかろうな」

アプリコット
「それは違うわ
確かに逃げの自殺とは比べようがないけど
切腹も自殺に変わりないのよ
絶対にだめよ」

光日出
「おチビちゃんには
光日出が苦悩が見えるようじゃ」
はははは・・・・
しかし、儂も天下の大名じゃ
敗戦の将は潔しを良しとするのじゃ」



日出吉の指揮下に下ることに腹を立てた光日出家臣達は
再度解任された接待役を乱暴に放棄した。
このことが右大臣信長の知ることとなり、
光日出は窮地に陥っていた。

光日出
「右府様は激怒され、切腹の使者を遣わされた」

家臣
「殿を御守りいたすが家臣の務めでございます」
「このような横暴は断じて容認できません」

光日出
「御命令とはいえ、堪忍の限度を超えている」
「しかし、逆らえばお家は取り潰しをまのがれまいぞ」

家臣
「では、殿は切腹すると・・・・」

光日出
「光日出一人の命 惜しくはないが
生きる道を探すべきかもしれんと思うてな」

家臣
「上様は名門大名にございますぞ
我らは上様のために命を捧げてございます」
「上様が堪忍しようとも我らは断じて許しませんぞ」

光日出
「そうか、良く言ってくれた
これで光日出の決意は固まったぞ」

家臣
「殿!
我らは無念でござったが
決意のほど、ここに仰せつかり
良き死に場所が見つかりました。
胸のつかえが降りましてございます」

光日出
「敵は本能寺じゃ
山陰道に援軍を送る道すがら
本能寺を攻める」

家臣
「我らは、都の出入り口を全ておさえ
手薄になっている敵の将を一網打尽にすることが
できまする」

光日出
「取り逃がすではないぞ」

家臣
「幸い、戦勝による安堵から
敵の軍備は手薄にございますれば
本能寺攻めから一挙に制圧できる計画にございます」

光日出
「日出吉は我らが援軍に来るを待っており
立往生することになれば
残るは東の将だけだ」
「幸い、東の御仁は手薄の境にある
野武士どもにも報奨して懸賞金を与え亡き者とせよ」

光日出
「東の御仁は殺すに忍びないお方じゃ
しかし、生かしておくことはできぬ」




光日出が謀反を決意したとき、
開間臣が使者として訪れた。
光日出は信長に謀反を疑われたのだと
警戒したが、そうではなかった。

開間臣
「いや・・よかった間に合った」

光日出
「如何なされました」

開間臣
「光日出様に遣わされた、切腹の使者は誤りじゃ」
「許してくだされ」

光日出
「右府様のお怒り、当然至極にございますれば、
光日出に許そうなど恐れ多きにございまする」

開間臣
「右府様は東の方と和やかに会談なされ、
上機嫌でござったが、
東の方が堺に向かい日出吉の援軍としての
準備をすることを深くお気に召され、
光日出殿に気を配ることを忘れていたのでございます。

光日出
「右府様よりの、お気遣い
光日出、心苦しゅうほどに感服仕り
恐縮至極にございますれば、
いっそうの奉公を決意するものと
申し伝えくださいませ」

開間臣
「でな、右府様お戯れの件じゃが、
家臣どもへの見せしめと、
肝心な右府様の深きお考えの件じゃが
聞きとうはないか?」

光日出
「そのことは、開間臣様から教えられぬと
仰せつかったところで・・・・」

開間臣
「特別に少しだけ教えてもよいぞ」

光日出
「さようですか・・・」

開間臣
「聞きたかろー」

光日出
「・・・・」

開間臣
「右府様ご静養中に
いきなり踏み込んで
白目を向けてアッカンベーをしながら
お尻ぺんぺんして、
光日出は、お主を見損なった
謀反じゃ謀反じゃと言ってきなされ」

光日出
「何を仰りたいので・・・・」

開間臣
「これは、右府様の御命令じゃ
厳命じゃぞ」

光日出
「では、開間臣様は謀反を考えておられるのですか?」

開間臣
「これは、右府様の深きお考えなのじゃが
全てではないのじゃ
どうじゃ、知りたかろーが」

光日出
「・・・・・」

開間臣
「知りたいと言え!」

光日出
「それでは、教えてくだされ」

開間臣
「だめじゃ、内緒なんじゃ
敵を欺くには見方からじゃからな」

光日出には開間臣が謀反を企んでいるようには
見えなかったが、
お道化て馬鹿にしているようにも
思えなかった。



日出吉
「開間臣殿の働きは第一殊勲者に匹敵するのぉ」

開間臣
「今度は、毛利を騙し打ちでござりますな!」

日出吉
「そうじゃ お主も知恵を付けてきたのぉ」

開間臣
「では、今度は毛利に光日出が裏切り
味方すると申し付ければ宜しいのですな」

日出吉
「儂はのぉ
お主に、今回の手柄を全て譲ろうと思うとるのよ」

開間臣
「なんと!
毛利攻めの手柄を儂に譲ると?」

日出吉
「別に驚くこともあるまい
開間臣殿はそれだけの働きをしたのじゃから当たり前じゃろ」

開間臣
「しかし、儂は今回の戦には一切関与しておらんぞ!」

日出吉
「儂はのォ
毛利には興味が無くなったのじゃ
全軍を率いて、もっと大きな獲物を
捕らえに行くことにしたのじゃ」

開間臣
「ちょと待って下され!
全軍を引かれては、毛利攻めは成りませぬぞ!」

日出吉
「大丈夫じゃ
敵は水攻めで立往生しており、
反攻は成らんからのぉ
開間臣殿は黙って敵が降伏するのを
待っておればよいのじゃ」

開間臣
「????」

日出吉
「また浮かぬ顔をしておるのぉ」

開間臣
「貴様はいつも何かを企んどるのぉ・・・・
もっと大きな獲物とは何じゃ」

日出吉
「内緒じゃ」

開間臣
「んー まあ良い
お主の考えは結果が出ないと分からんでな・・・」

日出吉
「この日出吉が命懸けで手に入れようとした手柄じゃ
安くはないぞ!
この手柄を貴様にタダで渡そうというのじゃ
簡単に分かってもろうては困るわ!」

開間臣
「しかし、お主は不思議な奴じゃ
心臓に毛が生えて毛むくじゃらになっておるぞ」

日出吉
「ははは・・・妙な褒め言葉じゃ

では、後を頼んだぞ」