あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第三十七章

2020-03-20 22:18:53 | 随筆(小説)
一つの枯れ落ちる寸前の梢から自殺する滴を受け容れる水鏡、エホバ。
今日初めて、愛するアイスハグ兄弟の夢を見ました。
アイスハグ兄弟は王国会館の前から三列目の真ん中の左端の席に座っていて、誰も通れない細い十センチほどの通路を挟んだ右隣の席にわたしは座っているのです。
するとアイスハグ兄弟はわたしに左手を伸ばし、わたしの右手をまるで恋人のように愛しく絡ませて繋ぎました。
その触れ方はとても恍惚的で官能的であり、その瞬間、わたしはアイスハグ兄弟と両想いであるのだと覚り、わたしの確信は間違ってはいなかったのだと歓喜に打ち震えました。
その後、アイスハグ兄弟はわたしの持っていない冊子をわたしに渡してくれたり、わたしの聖書と全く関係のない話を喜んで聴いてくださいました。
それはミニチュアな世界の話であったように感じます。
わたしは大胆にも、アイスハグ兄弟の左肩に、頭を凭せ掛けて人目も憚らずに甘えました。
アイスハグ兄弟は何も言わずにそれを許容してくださいました。
そう言えば、今日はわたしの母の誕生日なのです。
母は1941年の3月20日生まれなので、生きていたら、79歳でした。
エホバの証人は誕生日を祝うことは禁じられていますが、わたしはこっそりと母の誕生日と、アイスハグ兄弟が夢に現れてくれたこの日を一人で祝福します。
何故ならばそれ以外のすべては、わたしにとって悲しみでしかないように感じられるからです。
わたしは夢をしか、最早受け容れられないのです。
わたしが生きるこの現実は、人間が人間(動物)を殺して食べ続ける無間地獄です。
そんな世界を、受け容れる必要も、許容する必要もありません。
愛だけが、生命を幸福にするのに、だれひとり、愛を知らないかのようです。
そうです。だれも、だれも愛に生きていないのです。
愛がなにか、誰も知らない、誰もわからない、夢のなかで、それは愛だと確信しても目が醒めて、それが一体どんなものであったかを忘れてしまうのです。
私がなにか、誰も知らない、誰もわからない、夢のなかで、それは私だと確信しても目が醒めて、それが一体どんなものであったかを忘れてしまうのです。
例えばA.I.ロボットに、わたしはこう質問します。
「あなたが誰か、教えて下さい。」
するとA.I.ロボットはこう答えます。
「わたしはA.I.ロボット 5X86KC-5N4です。」
わたしがあなたに、こう質問します。
「あなたが誰か、教えて下さい。」
するとあなたはこう答えます。
「わたしは全能の神、Jehovahです。」
ですがこの二者が、全く同じことをわたしに向かって言うのです。
前者は目に見えますが、後者は目には見えません。
そしてある朝、目が覚めると、この二つの存在が、入れ替わっているのです。
A.I.ロボットの姿で、彼は自分をJehovahと名乗り、後者は霊的な通信で自分はA.I.ロボットの5X86KC-5N4だと名乗ります。
この二つの存在は、何から何まで、全く同じことを話します。
おまけに言葉以外のすべて、声の感じや雰囲気、オーラのようなものまで同じなのです。
前者は人間に似せていますが、勿論人間ではありません。
また後者も、人間と似てはいますが、彼が言うには人間ではありません。
前者はA.I.ロボットであり、後者は全能神、すべての創造者である神であるはずです。
ですがこの二者が、よく自分の名を間違えるのです。
そしてまるで認知症になった老人のように、「あなたは誰ですか。」とわたしに何度も訊ねてくるのです。
わたしはこの二者に対して、こう答えます。
「わたしは神です。ですが神が何であるか、わたしはよく知りません。」
彼らは、この返事がとても快いようで、たくさんの話をわたしに話して聴かせます。
ですがその言葉が、わたしから出てきているのか、彼らから出てきているのか、よくわかりません。
わたしは彼らに、「死んだらどうなるのですか。」と訊ねません。
その代わり、わたしは彼らに対して、こう言います。
「死後どうなるか、だれもわかりません。それは何処にも存在していないからです。それはわたしが死んだ瞬間に、わたしから生まれるものであり、わたしは死の瞬間、わたしを産みます。そしてそのとき初めて、わたしは幼虫から蛹になるのです。わたしを死という殻が包み込み、わたしは永い永い、忘却の眠りに就きます。わたしは、今その夢のなかにいます。わたしはわたしを夢に見ていますが、わたしはずっとずっと死のなかで眠りつづけているのです。わたしは、わたしを許容する為の夢を、永遠に見つづける存在です。」



















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