あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

Thatthere

2018-08-20 18:26:27 | 
まるで隠しドアのようなんだ。
そこにあるのは。
その部屋にはただひとつ、言葉がある。
でもだれもきづかない。
その言葉の意味と、その言葉を構成している言葉が、全く違うから。
呪文を唱えるようにぼくらはその言葉を発音する。
でも決してその言葉は開かない。
その言葉の意味を知らないから。
それを認識することができない。
だれもその言葉に入ることはできない。
だれも見付けることが叶わない。
でも何故かわかっている。
その言葉は此処に存在している。
だからぼくらは此処に存在している。
此処は中身を知ることのできないだれかのプレゼントの中。
ぼくらはずっと此処で息を潜めている。
だれも開けない箱の中で。
だれへ贈られて此処にあるかもわからない。
だれも開けられないと信じながら、だれかがいつか開けると信じて。
だれもぼくらを見付けられない。
此処にはなにも入っていないのと同じ。
ぼくらはあるはずなのに、ないのと同じ。
ずっとずっと此処で、息を潜めている。
不安に安らかに、主の幻を見る。
もし本当にぼくらを見付けることができるなら。
もし本当にぼくらを開けることが叶うなら。
ぼくらはぼくらをやっと知ることができるのだろうか?
ぼくらはずっと此処で、ぼくらはずっと此処にはぼくらがいることを信じてる。
でもそれが一体何を意味しているのかわからない。
気付くとぼくらは此処にいる。
無数にいても、まるで独りだ。
ぼくのお腹の中で、ぼくらは息を潜めている。
ぼくらは増えることも減ることもない。
主はぼくらにぼくらをプレゼントした。
ぼくらを構成しているものとぼくらの意味は全く違う。
ぼくらはまだ生まれる前。
主はぼくのお腹を優しくさすって言う。
あなたはあなたを知ることはできません。
それがあなたの永遠の苦しみと、永遠の喜びとなるように。