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会津の旅人宿 地域との交流・旅人との交流が盛んな【会津野】宿主ブログ

地域の話題、旅人のホットな話題、季節のおいしい食べ物の話題など、会津へ旅する人々への話題中心の宿主ブログです。

【会津野】キッズ・ファイヤー・ドットコム

2017年10月04日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

昨日のエントリー【会津野】ショック・ドクトリン で、下巻を早く読みたいと言ったにもかかわらず、並行して読んでいた「キッズ・ファイヤー・ドットコム」(海猫沢めろん著)を、つい読んでしまいました。

この本は小説なので、現実で起きていることとは違うものの、社会で起きていることをとてもよく観察し、よく考え、物語を作成している様子が強く伝わってくる作品でした。

一番心に残ったのは、「チルドレンファースト」という言葉。明らかに「都民ファースト」から創造したものだと思いますが、物語では、主人公が東京都知事に就任し、子育て向けの政策をどんどんと実行します。2020年に予定されているオリンピックを中止し、子育て予算に振り向けます。さらに、建設中の新国立競技場も工事を中止し、巨大保育園へと転用してしまう。

この話の背景には、既得権益と富の大半を持つ高齢者から、子育てをする資金を寄付形式で移転させるクラウドファンディングサイト「kids-fire.com」を通じる話が前段にあります。そこには2014年にベストセラーとなった「その問題、経済学で解決できます」(ウリ・ニーズィー、ジョン・A・リスト共著)が示した、「一度寄付いただければ、もう2度と寄付のお願いはしません」という寄付形式を取れば、そうしない場合より多くの寄付が集まるという経済学の実験結果が盛り込まれていたりします。

実際にアカデミックで研究されていることが、かなり盛り込まれているのです。

経済学と言えば、先日、「収穫逓増」と「収穫逓減」という概念を知りました。

収穫逓増とは、たとえば、ある自動車工場で生産量を増大させればさせるほど一台あたりの生産コストが低下していく、つまりは有利になっていくというとき、この工場は生産規模に関して収穫逓増であると言います。

一方、収穫逓減とは、ある一定の農地で働く人が多くなればなるほど、一人あたりの収穫量が減少する、つまりは不利になっていくというとき、この農地は労働投入に関して収穫逓減であると言います。

これは、ある一定のインフラがあり活用の余地がある場合には、人口増加により地域経済が成長するけれど、耕作面積のように頭打ちのインフラの場合は、人工が増加するとむしろ経済活動が低下する議論に出てくるものです。

これを高齢者の働き手に応用すると、定年延長や働き方改革で働く期間を長くすることは、収穫逓増で経済成長するか、それとも、若年者の労働を奪い収穫逓減するかということを考えさせられるものです。

収穫逓増する場合は、高齢者も若年者もハッピーですが、収穫逓減する場合は、高齢者を支える年金の担い手が払えなくなることになり、高齢者も若年者もアンハッピーなことになります。

なので、収穫逓増を目指すしかないのですが、ほとんど経済成長しない時代が長く続いている現実を見ると、収穫逓増を目指すことは無理なのではないか?と、多くの人が感じているのも実際でしょう。

そういう社会状況のなか、新たな妙手として映るのがこの作品であり、現実的に不可能ではないなと思うところも多々あることに感心しました。

人口減少社会に生きるいま、収穫逓減を味方につけるようなことも考えなければと思わされる作品です。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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【会津野】ショック・ドクトリン

2017年10月03日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

カナダ、トロント在住のジャーナリスト ナオミ・クライン氏の著書「ショック・ドクトリン」を読んでいます。

この書籍は上下巻計686ページにもおよぶ大作。やっと、その半分の上巻だけを読み終わりました。

内容は、ミルトン・フリードマンを中心としたシカゴ学派の掲げる新自由主義が、世界にどのような影響を及ぼしてきたかということを、緻密な取材活動を経て、ケースごとに記してあるものです。

具体的には、1973年のチリでのクーデターから南米諸国がシカゴ学派の唱えた経済改革でどのようになったかに始まり、1982年のフォークランド紛争勃発で低迷していたイギリスの政治・経済がどのように変化したか、1985年のボリビア民主化の波、1979年のヴォルガーショックにより膨大な債務が膨らんだ発展途上国に対しIMFが課す制限で経済がどのように変化したか、また、ポーランド、中国、ロシアの東側諸国あるいは共産主義勢力の改革に与えたシカゴ学派の影響などが、こと細かく記されているものです。

これらの過程では、民主化による自由を得ることと同時に行われた国家資産の民営化により、全体的に豊かさを向上させることを求めたものの、格差の拡大という現象が起き、貧困層を増大させる結果となったことがわかります。

下巻では、米国内での災害時ショック療法によりどう変わったかや、イラク戦争での変化など、より日本にも関係しそうなシカゴ学派の経済政策が記されています。

先日あるジャーナリストが、現在の政治変化について「我々は日本の保守二大政党制が生まれる歴史的瞬間に立ち会っている」と言っていました。

また、参加型民主主義と権威主義という軸を考えると、自民党・希望の党は権威主義側に位置し、市場主義と再配分主義の軸では、やはり両党は市場主義に位置していると、コメントしている論者もいました。

これらの位置は、シカゴ学派の指向するものと一致しています。

このどちらが政権をとっても、日本は格差拡大の方向性に行くだろうと感じます。

いまの状況は、ここに北朝鮮の問題も絡みますので、下巻もケーススタディーも熟読し、方向性を考えなければなりません。

読書の秋と言われるけれど、読書に費やす時間が足りなくて、悩み多き秋を迎えております。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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