前回の続きです。
産業構造審議会では、情報漏えいに対する抑止力の強化が検討されています。
情報が盗まれて大きな問題になっている例が増えてるからです。
営業秘密に関しては、不正競争防止法(不競法)により、民事と刑事の両面から規律されているので、その改正をしようという話。
中間取りまとめ案をみると、検討されている方向性としては、次のような感じです。
※一部省略したものもあります。
☆ 処罰対象の拡大
・国外で情報を不正取得した場合も処罰対象とする。
・未遂行為も処罰する。
未遂というのは、犯罪行為に着手したけど、結果が発生しなかったという場合のこと。
情報を不正に取得しようとしたけど、結果的には取得できなかったという場合でも処罰しようということです。
・不正取得された情報の三次取得者も処罰する。
・不正に取得された情報を使った商品だと知りながら販売したり、輸入したりする行為も処罰。
☆ その他の見直し
・個人や法人に対する罰金刑の引き上げ。
・不正に取得された情報を使って得た収益の没収
・非親告罪化
現状では、親告罪といって、被害会社からの告訴がないと、警察による捜査がされず、起訴もできません。
これを、告訴がなくてもできるようにしようということです。
☆ 民事規定
・被害を受けた会社の立証責任軽減
被害会社としては、盗まれた情報を使っている会社に対し、情報の使用差止めや損害賠償を請求できます。
ただ、その場合には、相手が盗まれた情報を使っているとの証明をしなければならないのですが、それがなかなか難しい。
そこで、被害会社がもう少し証明の簡単な事実を証明すれば、相手が盗まれた情報を使っていると推定するという形にしましょうというもの。
・除斥期間の延長
除斥期間というのは、その期間が過ぎると、民事上の請求ができなくなるというもの。
民法の原則では20年なのですが、現状の不競法では10年に短縮されてしまっています。
これを20年まで延長しようという話です。
・不正取得された情報を使った商品の販売や輸出入差止め
現状ではこれができないのですが、できるようにするという話です。
中間とりまとめ案の段階なので、最終的にどこに落ち着くのかはまだわかりません。
気になった点は、法定刑の引き上げですね。
法定刑をいくら重くしても、結局、情報を盗む人は盗むわけです。
また、情報を盗んだ人がいきなり実刑くらって即刑務所行き、ということもこれまでにない。
初犯だと執行猶予付きになるの通常なので。
そんな中で、法定刑引き上げが抑止力なるのか、ということで、そこは審議会でも問題提起されているようです。
こうやって制度を整備したとしても、それだけでもう安心だよね、という話にはならないです。
でも、対策がいろいろ整備されているという状況は、ないよりあった方がいいはずなので、議論が進むことを期待したいですね。
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